海難審判法《本則》

法番号:1947年法律第135号

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1章 総則

1条 (目的)

1項 この法律は、職務上の故意又は過失によつて海難を発生させた海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人に対する懲戒を行うため、国土交通省に設置する海難審判所における審判の手続等を定め、もつて海難の発生の防止に寄与することを目的とする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 海難 」とは、次に掲げるものをいう。

1号 船舶の運用に関連した船舶又は船舶以外の施設の損傷

2号 船舶の構造、設備又は運用に関連した人の死傷

3号 船舶の安全又は運航の阻害

3条 (懲戒)

1項 海難 審判所は、海難が海技士( 船舶職員及び小型船舶操縦者法 1951年法律第149号第23条第1項 《1978年の船員の訓練及び資格証明並びに…》 当直の基準に関する国際条約以下「条約」という。の締約国が発給した条約に適合する船舶の運航又は機関の運転に関する資格証明書以下「締約国資格証明書」という。を受有する者であつて国土交通大臣の承認を受けたも の承認を受けた者を含む。 第8条 《海技免許の失効 海技士が上級の資格につ…》 いての海技免許を受けたとき、又は船橋当直限定若しくは機関当直限定若しくは機関限定をした海技免許を受けた者が同1の資格についての限定をしない海技免許を受けたときは、下級の資格についての海技免許又は船橋当 及び 第28条第1項 《第20条の事務その他国土交通省令で定める…》 事務は、外国においては、領事官が行う。 において同じ。)若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失によつて発生したものであるときは、裁決をもつてこれを懲戒しなければならない。

4条 (懲戒の種類)

1項 懲戒は、次の3種とし、その適用は、行為の軽重に従つてこれを定める。

1号 免許( 船舶職員及び小型船舶操縦者法 第23条第1項 《1978年の船員の訓練及び資格証明並びに…》 当直の基準に関する国際条約以下「条約」という。の締約国が発給した条約に適合する船舶の運航又は機関の運転に関する資格証明書以下「締約国資格証明書」という。を受有する者であつて国土交通大臣の承認を受けたも の承認を含む。 第49条 《免許取消しの裁決の執行 免許の取消しの…》 裁決があつたときは、理事官は、海技免状船舶職員及び小型船舶操縦者法第23条第7項において読み替えて準用する同法第7条第1項の承認証を含む。次条及び第51条において同じ。若しくは小型船舶操縦免許証又は 及び 第51条 《海技免状等の無効の告示 免許の取消し又…》 は業務の停止を言い渡された者が理事官に海技免状若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状を差し出さないときは、理事官は、その海技免状若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状の無効を宣し、これを官報に告示しな において同じ。)の取消し

2号 業務の停止

3号 戒告

2項 業務の停止の期間は、1箇月以上3年以下とする。

5条 (懲戒免除)

1項 海難 審判所は、海難の性質若しくは状況又はその者の経歴その他の情状により、懲戒の必要がないと認めるときは、特にこれを免除することができる。

6条 (裁決の効力)

1項 海難 審判所は、本案につき既に確定裁決のあつた事件については、審判を行うことはできない。

2章 海難審判所の組織及び管轄 > 1節 組織

7条 (設置)

1項 国土交通省に、特別の機関として、 海難 審判所を置く。

8条 (任務)

1項 海難 審判所は、海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人に対する懲戒を行うための海難の調査及び審判を行うことを任務とする。

9条 (所掌事務)

1項 海難 審判所は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。

1号 審判の請求に係る 海難 の調査を行うこと。

2号 審判を行うこと。

3号 裁決を執行すること。

4号 海事補佐人の監督に関すること。

5号 前各号に掲げるもののほか、 海難 の審判に関すること。

10条 (海難審判所長)

1項 海難 審判所の長は、海難審判所長とし、審判官をもつて充てる。

11条 (地方海難審判所)

1項 海難 審判所の事務の一部を取り扱わせるため、所要の地に、地方海難審判所を置く。

2項 地方 海難 審判所の名称、位置、管轄区域及び内部組織は、国土交通省令で定める。

12条 (審判官及び理事官)

1項 海難 審判所に審判官及び理事官を置く。

2項 理事官は、審判の請求及びこれに係る 海難 の調査並びに裁決の執行に関することをつかさどる。

3項 審判官及び理事官は、 海難 の調査及び審判を行うについて必要な法律及び海事に関する知識経験を有する者として政令で定める者の中から、国土交通大臣がこれを任命する。

4項 審判官及び理事官の定数は、政令でこれを定める。

13条 (職権の行使)

1項 審判官は、独立してその職権を行う。

14条 (構成)

1項 海難 審判所は、三名の審判官で構成する合議体で審判を行う。ただし、地方海難審判所においては、一名の審判官で審判を行う。

2項 地方 海難 審判所において、審判官は、事件が一名の審判官で審判を行うことが不適当であると認めるときは、前項の規定にかかわらず、三名の審判官で構成する合議体で審判を行う旨の決定をすることができる。

3項 合議体で審判を行う場合においては、審判官のうち1人を審判長とする。

15条 (国土交通省令への委任)

1項 この節に定めるもののほか、 海難 審判所の位置及び内部組織は、国土交通省令で定める。

2節 管轄

16条 (事件の管轄)

1項 審判に付すべき事件のうち、旅客の死亡を伴う 海難 その他の国土交通省令で定める重大な海難以外の海難に係るものは、当該海難の発生した地点を管轄する地方海難審判所(海難の発生した地点が明らかでない場合には、その海難に係る船舶の船籍港を管轄する地方海難審判所)が管轄する。

2項 同一事件が二以上の地方 海難 審判所に係属するときは、最初に審判開始の申立てを受けた地方海難審判所においてこれを審判する。

3項 国外で発生する事件の管轄については、国土交通省令の定めるところによる。

17条 (事件の移送)

1項 地方 海難 審判所は、事件がその管轄に属しないと認めるときは、決定をもつてこれを当該事件を管轄する地方海難審判所に移送しなければならない。

2項 前項の規定により移送を受けた地方 海難 審判所は、更に事件を他の地方海難審判所に移送することはできない。

3項 第1項の場合には、事件は、初めから移送を受けた地方 海難 審判所に係属したものとみなす。

18条 (管轄の移転)

1項 理事官又は受審人は、国土交通省令の定めるところにより、 海難 審判所長に管轄の移転を請求することができる。

2項 海難 審判所長は、前項の規定による請求があつた場合において、審判上便益があると認めるときは、管轄を移転することができる。

3章 補佐人

19条 (補佐人の選任)

1項 受審人は、国土交通省令の定めるところにより、補佐人を選任することができる。

20条 (補佐人の権限)

1項 補佐人は、この法律に定めるもののほか、国土交通省令の定める行為に限り、独立してこれをすることができる。

21条 (補佐人の要件等)

1項 補佐人は、 海難 審判所に海事補佐人として登録した者の中からこれを選任しなければならない。ただし、海難審判所の許可を受けたときは、この限りでない。

2項 海事補佐人の資格及び登録に関する事項は、国土交通省令でこれを定める。

22条 (海事補佐人の義務)

1項 海事補佐人は、誠実にその職務を行わなければならない。

2項 海事補佐人は、職務上知り得た秘密を守らなければならない。

23条 (海事補佐人に対する監督)

1項 海事補佐人は、 海難 審判所長の監督を受ける。

4章 審判前の手続

24条 (海難の発生の通報)

1項 国土交通大臣( 船員法 1947年法律第100号第103条第1項 《この法律によつて国土交通大臣の行うべき事…》 務は、外国にあつては、国土交通省令の定めるところにより、日本の領事官がこれを行う。 の規定により国土交通大臣の行うべき事務を日本の領事官が行う場合にあつては、当該領事官)は、同法第19条の規定により 海難 について報告があつたとき、又は海難が発生したことを知つたときは、直ちに管轄する海難審判所の理事官にその旨を通報しなければならない。

2項 海上保安官、警察官及び市町村長は、 海難 が発生したことを知つたときは、直ちに管轄する海難審判所の理事官にその旨を通報しなければならない。

25条 (理事官による調査)

1項 理事官は、この法律によつて審判を行わなければならない事実があつたことを認知したときは、直ちに、事実を調査し、かつ、証拠を集取しなければならない。

26条 (理事官の義務)

1項 理事官は、事実の調査及び証拠の集取については、秘密を守り、関係人の名誉を傷つけないように注意しなければならない。

27条 (調査のための処分)

1項 理事官は、その職務を行うため必要があるときは、次の処分をすることができる。

1号 海難 関係人に出頭をさせ、又は質問をすること。

2号 船舶その他の場所を検査すること。

3号 海難 関係人に報告をさせ、又は帳簿書類その他の物件の提出を命ずること。

4号 国土交通大臣、運輸安全委員会、気象庁長官、海上保安庁長官その他の関係行政機関に対して報告又は資料の提出を求めること。

5号 鑑定人、通訳人若しくは翻訳人に出頭をさせ、又は鑑定、通訳若しくは翻訳をさせること。

2項 理事官は、前項第2号の処分をするには、その身分を示す証票を携帯しなければならない。

28条 (審判開始の申立て)

1項 理事官は、 海難 が海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失によつて発生したものであると認めたときは、海難審判所に対して、その者を受審人とする審判開始の申立てをしなければならない。ただし、理事官は、事実発生の後5年を経過した海難については、審判開始の申立てをすることはできない。

2項 前項の申立ては、 海難 の事実及び受審人に係る職務上の故意又は過失の内容を示して、書面でこれをしなければならない。

29条 (通告)

1項 理事官は、国土交通省令の定めるところにより、審判開始の申立てをした旨を受審人に通告しなければならない。

5章 審判

30条 (審判の開始)

1項 海難 審判所は、理事官の審判開始の申立てによつて、審判を開始する。

31条 (審判の公開)

1項 審判の対審及び裁決は、公開の審判廷でこれを行う。

32条 (審判長等の権限)

1項 審判長又は審判を開始した一名の審判官は、開廷中審判を指揮し、審判廷の秩序を維持する。

2項 審判長又は審判を開始した一名の審判官は、審判を妨げる者に対し退廷を命じその他審判廷の秩序を維持するため必要な措置を執ることができる。

33条 (受審人の尋問)

1項 海難 審判所は、審判期日に受審人を召喚し、これを尋問することができる。

34条 (口頭弁論)

1項 裁決は、口頭弁論に基づいてこれをしなければならない。ただし、受審人が正当の理由なく審判期日に出頭しないときは、その陳述を聴かないで裁決をすることができる。

35条 (証拠の取調べ)

1項 海難 審判所は、申立てにより又は職権で、必要な証拠を取り調べることができる。

2項 海難 審判所は、第一回の審判期日前においては、次の方法以外の方法により、証拠を取り調べることができない。

1号 船舶その他の場所を検査すること。

2号 帳簿書類その他の物件の提出を命ずること。

3号 国土交通大臣、運輸安全委員会、気象庁長官、海上保安庁長官その他の関係行政機関に対して報告又は資料の提出を求めること。

3項 海難 審判所は、こう引、押収、捜索その他人の身体、物若しくは場所についての強制の処分をし、若しくはさせ、又は過料の決定をすることができない。

36条 (宣誓)

1項 海難 審判所は、前条第1項の証拠の取調べとして証人に証言をさせ、鑑定人に鑑定をさせ、通訳人に通訳をさせ、又は翻訳人に翻訳をさせる場合には、これらの者に国土交通省令で定める方法により宣誓をさせなければならない。ただし、国土交通省令で定める者には、宣誓をさせないことができる。

37条 (証拠による事実認定)

1項 事実の認定は、審判期日に取り調べた証拠によらなければならない。

38条 (自由心証主義)

1項 証拠の証明力は、審判官の自由な判断にゆだねる。

39条 (審判開始の申立ての棄却)

1項 海難 審判所は、次の場合には、裁決をもつて審判開始の申立てを棄却しなければならない。

1号 事件について審判権を有しないとき。

2号 審判開始の申立てがその規定に違反してされたとき。

3号 第6条 《裁決の効力 海難審判所は、本案につき既…》 に確定裁決のあつた事件については、審判を行うことはできない。 又は 第16条第2項 《2 同一事件が二以上の地方海難審判所に係…》 属するときは、最初に審判開始の申立てを受けた地方海難審判所においてこれを審判する。 の規定により審判を行うべきでないとき。

40条 (裁決の方式)

1項 裁決には、理由を付さなければならない。

41条

1項 本案の裁決には、 海難 の事実及び受審人に係る職務上の故意又は過失の内容を明らかにし、かつ、証拠によつてこれらの事実を認めた理由を示さなければならない。ただし、海難の事実がなかつたと認めるときは、その旨を明らかにすれば足りる。

42条 (裁決の告知)

1項 裁決の告知は、審判廷における言渡しによつてこれをする。

43条 (国土交通省令への委任)

1項 この法律に定めるもののほか、審判の手続に関し必要な事項は、国土交通省令でこれを定める。

6章 裁決の取消しの訴え

44条 (裁決の取消しの訴え)

1項 裁決の取消しの訴えは、東京高等裁判所の管轄に専属する。

2項 前項の訴えは、裁決の言渡しの日から30日以内に、これを提起しなければならない。

3項 前項の期間は、これを不変期間とする。

45条 (被告適格)

1項 前条第1項の訴えにおいては、 海難 審判所長を被告とする。

46条 (裁決の取消し)

1項 裁判所は、請求が理由があると認めるときは、裁決を取り消さなければならない。

2項 前項の場合には、 海難 審判所は、更に審判を行わなければならない。

3項 裁判所の裁判において裁決の取消しの理由とした判断は、その事件について 海難 審判所を拘束する。

7章 裁決の執行

47条 (裁決の執行時期)

1項 裁決は、確定の後これを執行する。

48条 (裁決の執行者)

1項 海難 審判所の裁決は、理事官が、これを執行する。

49条 (免許取消しの裁決の執行)

1項 免許の取消しの裁決があつたときは、理事官は、海技免状( 船舶職員及び小型船舶操縦者法 第23条第7項 《7 第6条、第7条及び第16条の規定は第…》 1項の承認について、第10条、第11条、第25条及び第25条の2の規定は同項の承認を受けた者又はその承認について準用する。 この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞ において読み替えて準用する同法第7条第1項の承認証を含む。次条及び 第51条 《海技免状等の無効の告示 免許の取消し又…》 は業務の停止を言い渡された者が理事官に海技免状若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状を差し出さないときは、理事官は、その海技免状若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状の無効を宣し、これを官報に告示しな において同じ。)若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状を取り上げ、これを国土交通大臣に送付しなければならない。

50条 (業務停止の裁決の執行)

1項 業務の停止の裁決があつたときは、理事官は、海技免状若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状を取り上げ、期間満了の後これを本人に還付しなければならない。

51条 (海技免状等の無効の告示)

1項 免許の取消し又は業務の停止を言い渡された者が理事官に海技免状若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状を差し出さないときは、理事官は、その海技免状若しくは小型船舶操縦免許証又は水先免状の無効を宣し、これを官報に告示しなければならない。

8章 雑則

52条 (証人等の費用)

1項 この法律の規定により出頭した証人、鑑定人、通訳人及び翻訳人には、国土交通省令の定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。

2項 鑑定人、通訳人又は翻訳人は、それぞれ政令で定めるところにより鑑定料、通訳料又は翻訳料を請求することができる。

53条 (行政手続法の適用除外)

1項 この法律に基づいてされる処分及び行政指導については、 行政手続法 1993年法律第88号)第2章から第4章の二までの規定は、適用しない。

54条 (審査請求)

1項 この法律に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。

55条 (国土交通省令への委任)

1項 この法律に定めるもののほか、 海難 審判所の事務処理その他この法律の施行に関して必要な事項は、国土交通省令で定める。

56条 (過料)

1項 次の各号のいずれかに該当する者は、310,000円以下の過料に処する。

1号 海難 審判所から受審人として再度の召喚を受け、正当の理由がないのに出頭しない者

2号 海難 審判所から証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人として召喚を受け、正当の理由がないのに出頭せず、又はその義務を尽さない者

3号 海難 審判所の検査を拒み、妨げ又は忌避した者

4号 海難 審判所から提出を命ぜられた帳簿書類その他の物件を提出せず、又は虚偽の記載をした帳簿書類を提出した者

57条

1項 第32条第2項 《2 審判長又は審判を開始した一名の審判官…》 は、審判を妨げる者に対し退廷を命じその他審判廷の秩序を維持するため必要な措置を執ることができる。 の規定による審判長又は審判を開始した一名の審判官の命令に従わなかつた者は、これを110,000円以下の過料に処する。

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