刑事補償法《本則》

法番号:1950年法律第1号

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1条 (補償の要件)

1項 刑事訴訟法 1948年法律第131号)による通常手続又は再審若しくは非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が同法、 少年法 1948年法律第168号又は経済調査庁法(1948年法律第206号)によつて未決の抑留又は拘禁を受けた場合には、その者は、国に対して、抑留又は拘禁による補償を請求することができる。

2項 上訴権回復による上訴、再審又は非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が原判決によつて既に刑の執行を受け、又は 刑法 1907年法律第45号第11条第2項 《2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に…》 至るまで刑事施設に拘置する。 若しくは 刑事訴訟法 第494条の5 《 第345条の二又は第494条の3の規定…》 による決定をした裁判所は、罰金の裁判が確定した者で、次の各号のいずれかに該当するものについて、罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認めるときは、検察官の請求により、当該裁判が確定した後 の規定による拘置を受けた場合には、その者は、国に対して、刑の執行又は拘置による補償を請求することができる。

3項 刑事訴訟法 第484条 《 死刑、拘禁刑又は拘留の言渡しを受けた者…》 が拘禁されていないときは、検察官は、執行のため、出頭すべき日時及び場所を指定してこれを呼び出さなければならない。 呼出しに応じないときは、収容状を発しなければならない。第485条 《 死刑、拘禁刑又は拘留の言渡しを受けた者…》 が逃亡したとき、又は逃亡するおそれがあるときは、検察官は、直ちに収容状を発し、又は司法警察員にこれを発せしめることができる。第485条 《 死刑、拘禁刑又は拘留の言渡しを受けた者…》 が逃亡したとき、又は逃亡するおそれがあるときは、検察官は、直ちに収容状を発し、又は司法警察員にこれを発せしめることができる。 の二又は 第486条第2項 《請求を受けた検事長は、その管内の検察官に…》 収容状を発せしめなければならない。これらの規定を同法第505条において準用する場合を含む。)の収容状による抑留及び同法第481条第2項(同法第505条において準用する場合を含む。)の規定による留置並びに 更生保護法 2007年法律第88号第63条第2項 《2 保護観察所の長は、保護観察対象者につ…》 いて、次の各号のいずれかに該当すると認める場合には、裁判官のあらかじめ発する引致状により、当該保護観察対象者を引致することができる。 1 正当な理由がないのに、第50条第1項第4号に規定する住居に居住 又は第3項の引致状による抑留及び留置は、前項の規定の適用については、刑の執行又は拘置とみなす。

2条 (相続人による補償の請求)

1項 前条の規定により補償の請求をすることのできる者がその請求をしないで死亡した場合には、補償の請求は、相続人からすることができる。

2項 死亡した者について再審又は非常上告の手続において無罪の裁判があつた場合には、補償の請求については、死亡の時に無罪の裁判があつたものとみなす。

3条 (補償をしないことができる場合)

1項 左の場合には、裁判所の健全な裁量により、補償の一部又は全部をしないことができる。

1号 本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作為することにより、起訴、未決の抑留若しくは拘禁又は有罪の裁判を受けるに至つたものと認められる場合

2号 1個の裁判によつて併合罪の一部について無罪の裁判を受けても、他の部分について有罪の裁判を受けた場合

4条 (補償の内容)

1項 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第2項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、1日1,000円以上12,500円以下の割合による額の補償金を交付する。拘禁刑若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。

2項 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであつた利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。

3項 死刑の執行による補償においては、30,010,000円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。ただし、本人の死亡によつて生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に30,010,000円を加算した額の範囲内とする。

4項 裁判所は、前項の補償金の額を定めるには、同項但書の証明された損失額の外、本人の年齢、健康状態、収入能力その他の事情を考慮しなければならない。

5項 罰金又は科料の執行による補償においては、既に徴収した罰金又は科料の額に、これに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。労役場留置の執行をしたときは、第1項の規定を準用する。

6項 没収の執行による補償においては、没収物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、既に処分されているときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付し、また、徴収した追徴金についてはその額にこれに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ徴収の日の翌日の法定利率による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。

5条 (損害賠償との関係)

1項 この法律は、補償を受けるべき者が 国家賠償法 1947年法律第125号)その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げない。

2項 補償を受けるべき者が同1の原因について他の法律によつて損害賠償を受けた場合において、その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をしない。その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額より少いときは、損害賠償の額を差し引いて補償金の額を定めなければならない。

3項 他の法律によつて損害賠償を受けるべき者が同1の原因についてこの法律によつて補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。

6条 (管轄裁判所)

1項 補償の請求は、無罪の裁判をした裁判所に対してしなければならない。

7条 (補償請求の期間)

1項 補償の請求は、無罪の裁判が確定した日から3年以内にしなければならない。

8条 (相続人の疎明)

1項 相続人から補償の請求をする場合には、本人との続柄及び同順位の相続人の有無を疎明するに足りる資料を提出しなければならない。

9条 (代理人による補償の請求)

1項 補償の請求は、代理人によつてもすることができる。

10条 (同順位相続人の補償の請求)

1項 補償の請求をすることのできる同順位の相続人が数人ある場合には、その1人のした補償の請求は、全員のためその全部につきしたものとみなす。

2項 前項の場合には、請求をした者以外の相続人は、共同請求人として手続に参加することができる。

11条 (同順位相続人に対する通知)

1項 裁判所は、相続人から補償の請求を受けた場合において、他に同順位の相続人があることを知つたときは、すみやかにその同順位の相続人に対し補償の請求のあつた旨を通知しなければならない。

12条 (同順位相続人の補償請求の取消)

1項 補償の請求をすることのできる同順位の相続人が数人ある場合には、補償の請求をした者は、他の全員の同意がなければ、請求を取り消すことができない。

13条 (補償請求の取消の効果)

1項 補償の請求をした者が請求を取り消したときは、その取消をした者は、さらに補償の請求をすることができない。

14条 (補償請求に対する裁判)

1項 補償の請求があつたときは、裁判所は、検察官及び請求人の意見を聞き、決定をしなければならない。決定の謄本は、検察官及び請求人に送達しなければならない。

15条 (補償請求却下の決定)

1項 補償請求の手続が法令上の方式に違反し、補正することができないとき、若しくは請求人が裁判所から補正を命ぜられてこれに応じないとき、又は補償の請求が 第7条 《補償請求の期間 補償の請求は、無罪の裁…》 判が確定した日から3年以内にしなければならない。 の期間の経過後にされたときは、請求を却下する決定をしなければならない。

16条 (補償又は請求棄却の決定)

1項 補償の請求が理由のあるときは、補償の決定をしなければならない。理由がないときは、請求を棄却する決定をしなければならない。

17条 (同順位相続人に対する決定の効果)

1項 補償の請求をすることのできる同順位の相続人が数人ある場合には、その1人に対してした前条の決定は、同順位者全員に対してしたものとみなす。

18条 (補償請求手続の中断及び受継)

1項 補償の請求をした者が請求の手続中死亡し、又は相続人たる身分を失つた場合において、他に請求人がないときは、請求の手続は、中断する。この場合において、請求をした者の相続人及び請求をした者と同順位の相続人は、2箇月以内に請求の手続を受け継ぐことができる。

2項 裁判所は、前項の規定により手続を受け継ぐことのできる者で裁判所に知れているものに対しては、同項の期間内に請求の手続を受け継ぐことができる旨を通知しなければならない。

3項 第1項の期間内に手続を受け継ぐ旨の申立がないときは、裁判所は、決定で請求を却下しなければならない。

19条 (即時抗告又は異議の申立)

1項 第16条 《補償又は請求棄却の決定 補償の請求が理…》 由のあるときは、補償の決定をしなければならない。 理由がないときは、請求を棄却する決定をしなければならない。 の決定に対しては、請求人及びこれと同順位の相続人は、即時抗告をすることができる。但し、その決定をした裁判所が高等裁判所であるときは、その高等裁判所に異議の申立をすることができる。

2項 前項の即時抗告及び異議の申立についての決定に対しては、 刑事訴訟法 第405条 《 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決…》 に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 1 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。 2 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。 3 最高裁判所の判例が 各号に定める事由があるときは、最高裁判所に特に抗告をすることができる。

3項 第9条 《 数個の事件は、左の場合に関連するものと…》 する。 1 1人が数罪を犯したとき。 2 数人が共に同一又は別個の罪を犯したとき。 3 数人が通謀して各別に罪を犯したとき。 犯人蔵匿の罪、証憑湮滅の罪、偽証の罪、虚偽の鑑定通訳の罪及び贓物に関する罪 から 第15条 《 検察官は、左の場合には、関係のある第一…》 審裁判所に共通する直近上級の裁判所に管轄指定の請求をしなければならない。 1 裁判所の管轄区域が明らかでないため管轄裁判所が定まらないとき。 2 管轄違を言い渡した裁判が確定した事件について他に管轄裁 まで、 第17条 《 検察官は、左の場合には、直近上級の裁判…》 所に管轄移転の請求をしなければならない。 1 管轄裁判所が法律上の理由又は特別の事情により裁判権を行うことができないとき。 2 地方の民心、訴訟の状況その他の事情により裁判の公平を維持することができな 及び前条の規定は、前2項の場合に準用する。

20条 (補償払渡の請求)

1項 補償の払渡は、補償の決定をした裁判所に請求しなければならない。

2項 補償の払渡を受けることのできる者が数人ある場合には、その1人のした補償払渡の請求は、補償の決定を受けた者全員のためその全部につきしたものとみなす。

3項 第11条 《同順位相続人に対する通知 裁判所は、相…》 続人から補償の請求を受けた場合において、他に同順位の相続人があることを知つたときは、すみやかにその同順位の相続人に対し補償の請求のあつた旨を通知しなければならない。 の規定は、裁判所が補償払渡の請求を受けた場合に準用する。

21条 (補償払渡の効果)

1項 補償の払渡を受けることのできる者が数人ある場合には、その1人に対する補償の払渡は、その全員に対してしたものとみなす。

22条 (請求権の譲渡及び差押の禁止)

1項 補償の請求権は、これを譲り渡し、又は差し押えることができない。補償払渡の請求権も、同様である。

23条 (準用規定)

1項 この法律の決定、即時抗告、異議の申立及び 第19条第2項 《2 前項の即時抗告及び異議の申立について…》 の決定に対しては、刑事訴訟法第405条各号に定める事由があるときは、最高裁判所に特に抗告をすることができる。 の抗告については、この法律に特別の定のある場合を除いては、 刑事訴訟法 準用する。期間についても、同様である。

24条 (補償決定の公示)

1項 裁判所は、補償の決定が確定したときは、その決定を受けた者の申立により、すみやかに決定の要旨を、官報及び申立人の選択する3種以内の新聞紙に各一回以上掲載して公示しなければならない。

2項 前項の申立は、補償の決定が確定した後2箇月以内にしなければならない。

3項 第1項の公示があつたときは、さらに同項の申立をすることはできない。

4項 前3項の規定は、 第5条第2項 《2 補償を受けるべき者が同1の原因につい…》 て他の法律によつて損害賠償を受けた場合において、その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき補償金の額に等しいか、又はこれを越える場合には、補償をしない。 その損害賠償の額がこの法律によつて受けるべき 前段に規定する理由による補償の請求を棄却する決定が確定した場合に準用する。

25条 (免訴又は公訴棄却の場合における補償)

1項 刑事訴訟法 の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して、抑留若しくは拘禁による補償又は刑の執行若しくは拘置による補償を請求することができる。

2項 前項の規定による補償については、無罪の裁判を受けた者の補償に関する規定を準用する。補償決定の公示についても同様である。

26条 (逃亡犯罪人の引渡を請求した場合における補償)

1項 日本国が外国に対し逃亡犯罪人の引渡を請求した場合において、当該外国がその引渡のためにした抑留又は拘禁は、 刑事訴訟法 による抑留又は拘禁とみなす。

27条 (送出移送をした場合における補償)

1項 国際受刑者移送法 2002年法律第66号第2条第6号 《定義 第2条 この法律において、次の各号…》 に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 1 外国刑 拘禁刑に相当する外国の法令による刑をいう。 2 共助刑 受入移送犯罪に係る確定裁判の執行の共助として日本国が執行する外国刑をい の送出移送をした場合において、同条第8号の執行国が同条第12号の送出移送犯罪に係る拘禁刑の確定裁判の執行の共助としてした拘禁は、日本国による刑の執行とみなす。

28条 (国内受刑者に係る受刑者証人移送をした場合における補償)

1項 国際捜査共助等に関する法律 1980年法律第69号第19条 《受刑者証人移送の決定等 法務大臣は、要…》 請国から、条約に基づき、国内受刑者日本国において拘禁刑又は国際受刑者移送法2002年法律第66号第2条第2号に定める共助刑の執行として拘禁されている者をいう。以下同じ。に係る受刑者証人移送の要請があつ の国内受刑者に係る受刑者証人移送をした場合において、当該国内受刑者が受刑者証人移送として移送されていた期間における身体の拘束は、日本国による刑の執行とみなす。

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