日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法《本則》

法番号:1954年法律第151号

略称: 刑事特別法・刑特法

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1章 総則

1条 (定義)

1項 この法律において「 協定 」とは、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する 協定 をいう。

2項 この法律において「 派遣国 」とは、1950年6月25日、6月27日及び7月7日の国際連合安全保障理事会決議並びに1951年2月1日の国際連合総会決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣したアメリカ合衆国以外の国であつて、日本国との間に 協定 が効力を有している間におけるものをいう。

3項 この法律において「 国際連合の軍隊 」とは、 派遣国 が前項に規定する諸決議に従つて朝鮮に派遣した陸軍、海軍及び空軍であつて、日本国内にある間におけるものをいう。

4項 この法律において「 国際連合の軍隊の構成員 」とは、 国際連合の軍隊 に属する人員で、現に服役中のものをいう。

5項 この法律において「 軍属 」とは、 派遣国 の国籍を有する文民(派遣国及び日本国の二重国籍者については、当該派遣国が日本国内に入れた者に限る。)で、当該 国際連合の軍隊 に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国内に在留する者を除く。)をいう。

6項 この法律において「 家族 」とは、左に掲げる者(日本国の国籍のみを有する者を除く。)をいう。

1号 国際連合の軍隊 の構成員又は 軍属 の配偶者及び21歳未満の子

2号 国際連合の軍隊 の構成員又は 軍属 の父、母及び21歳以上の子で、その生計費の半額以上を当該国際連合の軍隊の構成員又は軍属に依存するもの

7項 この法律において「 国際連合の軍隊の使用する施設 」とは、 協定 第5条第1項の施設をいう。

2章 刑事手続

2条 (施設内の逮捕等)

1項 国際連合の軍隊 がその権限に基づいて警備している国際連合の軍隊の使用する施設内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、当該国際連合の軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は当該国際連合の軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。

2項 死刑又は無期若しくは長期3年以上の拘禁刑に当たる罪に係る現行犯人を追跡して前項の施設内で逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。

3条 (逮捕された国際連合の軍隊の構成員又は軍属の引渡)

1項 検察官又は司法警察員は、逮捕された者が 国際連合の軍隊 の構成員又は 軍属 であり、且つ、その者の犯した罪が 協定 第16条第3項()に掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、 刑事訴訟法 1948年法律第131号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を当該国際連合の軍隊に引き渡さなければならない。

2項 司法警察員は、前項の規定により被疑者を 国際連合の軍隊 に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。

4条 (国際連合の軍隊によつて逮捕された者の受領)

1項 検察官又は司法警察員は、 国際連合の軍隊 から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡しを受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡しを受けさせなければならない。この場合において、 刑事訴訟法 第201条の2第2項 《裁判官は、前項の規定による請求を受けた場…》 合において、第199条第2項の規定により逮捕状を発するときは、これと同時に、被疑者に示すものとして、当該請求に係る個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した逮捕状の抄本その他の逮捕 の規定による逮捕状に代わるものの交付があつたときは、当該逮捕状に代わるものを示して、その引渡しを受けることができる。

2項 検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる10分な理由があつて、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡しを受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。

3項 前2項の場合を除くほか、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取つた後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。

4項 第1項又は第2項の規定による引渡しがあつた場合には、 刑事訴訟法 第199条 《 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、…》 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。 ただし、310,000円刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則 の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。ただし、同法第203条、第204条及び第205条第2項に規定する時間は、引渡しがあつた時から起算する。

5条 (施設内の差押え、捜索等)

1項 国際連合の軍隊 がその権限に基づいて警備している国際連合の軍隊の使用する施設内における、又は国際連合の軍隊の財産についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押え(差押状の執行を含む。)、記録命令付差押え(記録命令付差押状の執行を含む。又は検証(検証状の執行を含む。)は、当該国際連合の軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員から当該国際連合の軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。ただし、裁判所又は裁判官が必要とする検証の嘱託は、その裁判所又は裁判官からするものとする。

6条 (日本国の法令による罪に係る事件についての捜査)

1項 協定 により 派遣国 の軍事裁判所が裁判権を行使する事件であつても、日本国の法令による罪に係る事件については、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、捜査をすることができる。

2項 前項の捜査に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他刑事訴訟に関する法令に定める権限を行使することができる。

7条 (証人の出頭等の義務)

1項 派遣国 の軍事裁判所の嘱託により、裁判官から派遣国の軍事裁判所に証人として出頭すべき旨を命ぜられ、又は派遣国の軍事裁判所において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。

2項 前項の者が、正当な理由がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、20,000円以下の過料に処する。

8条 (証人の勾引についての協力)

1項 正当な理由がないのに、前条第1項の規定による裁判官の出頭命令に応じない証人について 派遣国 の軍事裁判所から嘱託があつたときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを派遣国の軍事裁判所に勾引することができる。

2項 前項の勾引状には、 派遣国 の軍事裁判所の嘱託の趣旨を記載しなければならない。

3項 第1項の勾引状は、検察官の指揮により、司法警察職員が執行する。

4項 刑事訴訟法 第71条 《 検察事務官又は司法警察職員は、必要があ…》 るときは、管轄区域外で、勾引状若しくは勾留状を執行し、又はその地の検察事務官若しくは司法警察職員にその執行を求めることができる。 及び 第73条第1項 《勾引状を執行するには、これを被告人に示し…》 た上、できる限り速やかに且つ直接、指定された裁判所その他の場所に引致しなければならない。 第66条第4項の勾引状については、これを発した裁判官に引致しなければならない。 前段の規定は、第1項の規定による勾引に準用する。

9条 (書類又は証拠物の提供等)

1項 裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、 派遣国 の軍事裁判所又は 国際連合の軍隊 から、刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があつたときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを1時貸与し、若しくは引き渡すことができる。

10条 (日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力)

1項 検察官又は司法警察員は、 国際連合の軍隊 から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、当該国際連合の軍隊の構成員、 軍属 又は当該 派遣国 の軍法に服する 家族 の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。

2項 国際連合の軍隊 から逮捕の要請があつた者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索することができる。但し、追跡されている者がその場所に入つたことが明らかであつて、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。

3項 第1項の規定により 国際連合の軍隊 の構成員、 軍属 又は当該 派遣国 の軍法に服する 家族 を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を当該国際連合の軍隊に引き渡さなければならない。

4項 司法警察員は、前項の規定により 国際連合の軍隊 の構成員、 軍属 又は当該 派遣国 の軍法に服する 家族 を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。

11条

1項 検察官又は司法警察員は、 派遣国 の軍事裁判所又は 国際連合の軍隊 から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。

2項 検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさせることができる。

3項 前2項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して 派遣国 の軍事裁判所又は 国際連合の軍隊 の要請による旨を明らかにしなければならない。

4項 正当な理由がないのに、第1項又は第2項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の処分を拒み、妨げ、又は忌避した者は、20,000円以下の過料に処する。

12条 (刑事補償)

1項 刑事補償法 1950年法律第1号又は 少年の保護事件に係る補償に関する法律 1992年法律第84号)の適用については、 派遣国 の軍事裁判所又は 国際連合の軍隊 による抑留又は拘禁は、 刑事訴訟法 による抑留若しくは拘禁又は 少年の保護事件に係る補償に関する法律 第2条第1項第2号 《少年法に規定する保護事件を終結させるいず…》 れかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされ、その決定が確定した場合において、その決定を に掲げる身体の自由の拘束とみなす。

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