1条 (この法律の趣旨)
1項 刑事事件における被告人以外の者の所有に属する物の没収手続については、当分の間、この法律の定めるところによる。
1条の2 (適用対象)
1項 この法律の適用については、被告人以外の者に帰属する電磁的記録は、その者の所有に属するものとみなす。
2条 (告知)
1項 検察官は、公訴を提起した場合において、被告人以外の者(以下「 第三者 」という。)の所有に属する物(被告人の所有に属するか 第三者 の所有に属するかが明らかでない物を含む。以下同じ。)の没収を必要と認めるときは、すみやかに、その第三者に対し、書面により、次の事項を告知しなければならない。
1号 被告事件の係属する裁判所
2号 被告事件名及び被告人の氏名
3号 没収すべき物の品名、数量その他その物を特定するに足りる事項
4号 没収の理由となるべき事実の要旨
5号 被告事件の係属する裁判所に対し、被告事件の手続への参加を申し立てることができる旨
6号 参加の申立てをすることができる期間
7号 被告事件について公判期日が定められているときは、公判期日
2項 第三者 の所在が分からないため、又はその他の理由によつて、前項の告知をすることができないときは、検察官は、同項に掲げる事項を政令で定める方法によつて公告しなければならない。
3項 検察官は、前2項の規定による告知又は公告をしたときは、これを証明する書面を裁判所に提出しなければならない。
3条 (参加の手続)
1項 没収されるおそれのある物を所有する 第三者 は、第一審の裁判があるまで(略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判があつたときは、正式裁判の請求をすることのできる期間が経過するまでとし、この場合において、正式裁判の請求があつたときは、さらに通常の規定による第一審の裁判があるまでとする。以下同じ。)、被告事件の係属する裁判所に対し、書面により、被告事件の手続への参加を申し立てることができる。ただし、前条第1項又は第2項の規定による告知又は公告があつたときは、告知又は公告があつた日から14日以内に限る。
2項 検察官が前条第1項又は第2項の規定により告知し又は公告した裁判所が被告事件を移送した場合において、その裁判所に参加の申立てがあつたときは、申立てを受けた裁判所は、被告事件の移送を受けた裁判所にその申立ての書面を送付しなければならない。この場合において、その書面が送付されたときは、参加の申立ては、はじめから、被告事件の移送を受けた裁判所に対してされたものとみなす。
3項 裁判所は、参加の申立てが法令上の方式に違反し、若しくは第1項に規定する期間の経過後にされたとき、又は没収すべき物が申立人の所有に属しないことが明らかであるときは、参加の申立てを棄却しなければならない。ただし、第1項ただし書に規定する期間内に参加の申立てをしなかつたことが、申立人の責めに帰することのできない理由によると認めるときは、第一審の裁判があるまで参加を許すことができる。
4項 前項の場合を除き、裁判所は、申立人の参加を許さなければならない。ただし、没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加の申立てを棄却することができる。
5項 裁判所は、参加を許した場合において、没収すべき物が参加を許された者(以下「 参加人 」という。)の所有に属しないことが明らかになつたときは、参加を許す裁判を取り消さなければならない。没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加を許す裁判を取り消すことができる。
6項 参加に関する裁判は、申立人又は 参加人 、検察官及び被告人又は弁護人の意見をきき、決定でしなければならない。検察官又は申立人若しくは参加人は、参加の申立てを棄却する決定又は参加を許す裁判を取り消す決定(第4項ただし書又は前項後段の規定による決定を除く。)に対し、即時抗告をすることができる。
7項 参加の取下げは、書面でしなければならない。ただし、公判期日においては、口頭ですることができる。
4条 (参加人の権利)
1項 参加人 は、この法律に特別の規定がある場合のほか、没収に関し、被告人と同1の訴訟上の権利を有する。
2項 前項の規定は、 参加人 を証人として取り調べることを妨げるものではない。
5条 (参加人の出頭等)
1項 参加人 は、公判期日に出頭することを要しない。
2項 裁判所は、 参加人 の所在がわからないときは、公判期日の通知その他書類の送達をすることを要しない。
3項 裁判所は、公判期日に出頭した 参加人 に対し、没収の理由となるべき事実の要旨、その参加前の公判期日における審理に関する重要な事項その他参加人の権利を保護するために必要と認める事項を告げたうえ、没収について陳述する機会を与えなければならない。
6条 (証拠)
1項 参加人 の参加は、 刑事訴訟法 (1948年法律第131号)
第320条
《 第321条ないし[から〜まで]第328…》
条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。 第291条の2の決定があつた事件の証拠については
から
第328条
《 第321条ないし[から〜まで]第324…》
条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。
までの規定の適用に影響を及ぼさない。
2項 裁判所は、 刑事訴訟法
第320条第2項
《第291条の2の決定があつた事件の証拠に…》
ついては、前項の規定は、これを適用しない。 但し、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。
本文、
第326条
《 検察官及び被告人が証拠とすることに同意…》
した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第321条ないし[から〜まで]前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。 被告人が出頭しない
又は
第327条
《 裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人が…》
合意の上、文書の内容又は公判期日に出頭すれば供述することが予想されるその供述の内容を書面に記載して提出したときは、その文書又は供述すべき者を取り調べないでも、その書面を証拠とすることができる。 この場
の規定により証拠とすることができる書面又は供述を取り調べた場合において、 参加人 がその書面又は供述の内容となつた供述をした者を証人として取り調べることを請求したときは、その権利の保護に必要と認める限り、これを取り調べなければならない。参加人の参加前に取り調べた証人について、参加人がさらにその取調べを請求したときも、同様とする。
7条 (没収の裁判の制限)
1項 第三者 の所有に属する物については、その第三者が参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
1号 第2条第1項
《検察官は、公訴を提起した場合において、被…》
告人以外の者以下「第三者」という。の所有に属する物被告人の所有に属するか第三者の所有に属するかが明らかでない物を含む。以下同じ。の没収を必要と認めるときは、すみやかに、その第三者に対し、書面により、次
又は第2項の規定による告知又は公告があつた場合において、
第3条第1項
《没収されるおそれのある物を所有する第三者…》
は、第一審の裁判があるまで略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判があつたときは、正式裁判の請求をすることのできる期間が経過するまでとし、この場合において、正式裁判の請求があつたときは、さらに通常の
ただし書に規定する期間が経過したとき(没収すべき物が申立人若しくは 参加人 の所有に属しないことが明らかであることを理由とし、又は没収をすることができないか若しくはこれを必要としない旨の検察官の意見に基づいて、参加の申立てが棄却され、又は参加を許す裁判が取り消された場合を除く。)。
2号 参加の申立てが法令上の方式に違反したため棄却されたとき。
3号 参加の取下げがあつたとき。
8条 (上訴)
1項 原審における 参加人 は、上訴審においても、参加人としての地位を失わない。
2項 参加人 が上訴をしたときは、検察官及び被告人が上訴をせず、又は上訴の放棄若しくは取下げをした場合においても、原審の裁判中没収に関する部分は、確定しない。
3項 前項の場合において、被告人は、上訴審及びその後の審級における公判期日に出頭することを要しない。 刑事訴訟法
第36条
《 被告人が貧困その他の事由により弁護人を…》
選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。 但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。
、
第37条
《 左の場合に被告人に弁護人がないときは、…》
裁判所は、職権で弁護人を附することができる。 1 被告人が未成年者であるとき。 2 被告人が年齢70年以上の者であるとき。 3 被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。 4 被告人が心神喪
、
第289条
《 死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘…》
禁刑に当たる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないと
及び
第290条
《 第37条各号の場合に弁護人が出頭しない…》
ときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
の規定は、適用しない。
4項 前2項の規定は、略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判に対して 参加人 が正式裁判の請求をした場合に準用する。
9条 (訴訟能力)
1項 第三者 が法人であるときは、その代表者が、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人が、訴訟行為についてこれを代表する。
2項 第三者 が意思能力を有しないときは、その法定代理人(2人以上あるときは、各自)が、訴訟行為についてこれを代理する。
3項 刑事訴訟法
第27条第2項
《数人が共同して法人を代表する場合にも、訴…》
訟行為については、各自が、これを代表する。
並びに
第29条第1項
《前2条の規定により被告人を代表し、又は代…》
理する者がないときは、検察官の請求により又は職権で、特別代理人を選任しなければならない。
及び第3項の規定は、この法律の規定により被告事件の手続に関与する 第三者 に準用する。この場合において、同法第29条第1項中「前2条」とあるのは、「 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法
第9条第1項
《第三者が法人であるときは、その代表者が、…》
法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人が、訴訟行為についてこれを代表する。
又は第2項」と読み替えるものとする。
10条 (代理人)
1項 この法律の規定により被告事件の手続に関与する 第三者 は、弁護士の中から代理人を選任し、これに訴訟行為を代理させることができる。
2項 代理人の選任は、審級ごとに、代理人と連署した書面を差し出してしなければならない。
3項 代理人は、 参加人 の書面による同意がなければ、参加の取下げ、正式裁判の請求の取下げ又は上訴の放棄若しくは取下げをすることができない。
4項 刑事訴訟法
第33条
《 被告人に数人の弁護人があるときは、裁判…》
所の規則で、主任弁護人を定めなければならない。
から
第35条
《 裁判所は、裁判所の規則の定めるところに…》
より、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。 但し、被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る。
まで及び
第40条
《 弁護人は、公訴の提起後は、裁判所におい…》
て、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。 但し、証拠物を謄写するについては、裁判長の許可を受けなければならない。 前項の規定にかかわらず、第157条の6第4項に規定する記録媒
の規定は、代理人に準用する。
11条 (訴訟費用)
1項 没収の裁判をしたときは、被告人に負担させるものを除き、参加によつて生じた訴訟費用を 参加人 に負担させることができる。参加を許す裁判を取り消したとき、又は参加の取下げがあつたときも、同様とする。
2項 前項前段の規定により 参加人 に訴訟費用を負担させるときは、没収の裁判と同時に、職権でその裁判をしなければならない。この裁判に対しては、没収の裁判について上訴があつたときに限り、不服を申し立てることができる。
3項 刑事訴訟法
第181条第3項
《検察官のみが上訴を申し立てた場合において…》
、上訴が棄却されたとき、又は上訴の取下げがあつたときは、上訴に関する訴訟費用は、これを被告人に負担させることができない。 ただし、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、この限りでない
及び第368条から第371条までの規定は、 参加人 又は参加人であつた者に準用する。この場合において、同法第369条中「弁護人であつた者」とあるのは、「代理人であつた者」と読み替えるものとする。
12条 (刑事訴訟法との関係)
13条 (没収の裁判の取消し)
1項 法律上没収することのできない物について没収の裁判が確定したときは、その物の所有者で、自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたものは、没収の確定裁判を知つた日から14日以内に限り、没収の裁判をした裁判所に対し、その裁判の取消しを請求することができる。ただし、没収の裁判が確定した日から5年を経過したときは、その請求をすることができない。
2項 前項の請求は、その理由となる事実を明示した趣意書を差し出してしなければならない。
3項 第1項の規定による請求が法令上の方式に違反し、若しくは同項に規定する期間の経過後にされたとき、請求人がその責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたと認められないとき、又は没収された物が請求人の所有に属しないものであつたことが明らかであるときは、請求人及び検察官の意見をきき、決定で請求を棄却しなければならない。請求人は、この決定に対し、即時抗告をすることができる。
4項 前項の場合を除き、請求が理由がないときは、判決でこれを棄却し、理由があるときは、判決で没収の裁判を取り消さなければならない。請求人又は検察官は、この判決に対し、上訴をすることができる。
5項 裁判所は、趣意書に包含された事項について、請求人及び検察官に陳述をさせ、並びに請求人若しくは検察官の申立てにより又は職権で、必要と認める証拠の取調べをしなければならない。請求人が公判期日に出頭しない場合においても、その不出頭について正当な理由がないと認めるときは、その期日の公判手続を行ない、又は判決の宣告をすることができる。
6項 請求を棄却したときは、訴訟費用を請求人に負担させることができる。請求の取下げがあつたときも、同様とする。
7項 請求に関する裁判手続については、
第3条第7項
《7 参加の取下げは、書面でしなければなら…》
ない。 ただし、公判期日においては、口頭ですることができる。
、
第5条第2項
《2 裁判所は、参加人の所在がわからないと…》
きは、公判期日の通知その他書類の送達をすることを要しない。
、
第9条
《訴訟能力 第三者が法人であるときは、そ…》
の代表者が、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人が、訴訟行為についてこれを代表する。 2 第三者が意思能力を有しないときは、その法定代理人2人以上
、
第10条
《代理人 この法律の規定により被告事件の…》
手続に関与する第三者は、弁護士の中から代理人を選任し、これに訴訟行為を代理させることができる。 2 代理人の選任は、審級ごとに、代理人と連署した書面を差し出してしなければならない。 3 代理人は、参加
並びに
第11条第2項
《2 前項前段の規定により参加人に訴訟費用…》
を負担させるときは、没収の裁判と同時に、職権でその裁判をしなければならない。 この裁判に対しては、没収の裁判について上訴があつたときに限り、不服を申し立てることができる。
及び第3項の規定を準用するほか、刑事訴訟の例による。
8項 前項の規定にかかわらず、請求に関する裁判手続においては、請求人を証人として取り調べ、又は公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、若しくは公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることができる。
9項 没収の裁判が取り消されたときは、 刑事補償法 (1950年法律第1号)に定める没収の執行による補償の例により、補償を行なう。