1条 (目的)
1項 この法律は、農村地域への産業の導入を積極的かつ計画的に促進するとともに農業従事者がその希望及び能力に従ってその導入される産業に就業することを促進するための措置を講じ、並びにこれらの措置と相まって農地の集団化その他 農業構造の改善 (以下「 農業構造の改善 」という。)を促進するための措置を講ずることにより、農業とその導入される産業との均衡ある発展を図るとともに、雇用構造の高度化に資することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 農村地域 」とは、次に掲げる市町村の区域(大都市及びその周辺の地域で政令で定めるもの並びにその人口が政令で定める規模以上である市の区域のうち、政令で定める要件に該当するものを除く。)をいう。
1号 農業振興地域の整備に関する法律 (1969年法律第58号)
第6条第1項
《都道府県知事は、農業振興地域整備基本方針…》
に基づき、一定の地域を農業振興地域として指定するものとする。
の規定により指定された農業振興地域又は同法第4条第1項の農業振興地域整備基本方針において農業振興地域として指定することを相当とする地域として定められた地域の区域の全部又は一部がその区域内にある市町村
2号 前号に掲げる市町村以外の市町村であって、 山村振興法 (1965年法律第64号)
第7条第1項
《主務大臣は、都道府県知事の申請に基づき、…》
関係行政機関の長に協議し、かつ、国土審議会の意見を聴いて、山村振興に関する計画を作成しこれに基づいてその振興を図ることが必要かつ適当である山村を振興山村として指定することができる。
の規定により指定された振興山村の区域の全部又は一部がその区域内にあるもの
3号 前2号に掲げる市町村以外の市町村であって、 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法 (2021年法律第19号)
第2条第1項
《この法律において「過疎地域」とは、次の各…》
号のいずれかに該当する市町村地方税の収入以外の政令で定める収入の額が政令で定める金額を超える市町村を除く。の区域をいう。 1 次のいずれかに該当し、かつ、地方交付税法1950年法律第211号第14条の
に規定する過疎地域をその区域とするもの
3条 (基本方針)
1項 主務大臣は、 農村地域 への産業の導入に関する 基本方針 (以下「 基本方針 」という。)を定めなければならない。
2項 基本方針 においては、次に掲げる事項につき、次条第1項の基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。
1号 農村地域 への産業の導入の目標
2号 農村地域 に導入される産業への農業従事者(その家族を含む。以下同じ。)の就業の目標
3号 農村地域 への産業の導入と相まって促進すべき 農業構造の改善 に関する目標
4号 前3号の目標を達成するために必要な事業の実施に関する事項
5号 その他 農村地域 への産業の導入に関する重要事項
3項 主務大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、 基本方針 を変更するものとする。
4項 主務大臣は、 基本方針 を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5項 主務大臣は、 基本方針 を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4条 (基本計画)
1項 都道府県は、当該都道府県における 農村地域 への産業の導入に関する 基本計画 (以下「 基本計画 」という。)を定めることができる。
2項 基本計画 においては、次に掲げる事項の大綱を定めるものとする。
1号 農村地域 への産業の導入の目標
2号 農村地域 に導入される産業への農業従事者の就業の目標
3号 農村地域 への産業の導入と相まって促進すべき 農業構造の改善 に関する目標
4号 農村地域 への産業の導入に伴う施設用地(工場、事業場その他の施設の用に供する土地をいう。以下同じ。)と農用地等( 農業振興地域の整備に関する法律
第3条
《定義 この法律において「農用地等」とは…》
、次に掲げる土地をいう。 1 耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の業務のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地以下「農用地」という。 2 木竹の生育に供され、併せて耕作又は養畜の業務のた
に規定する農用地等をいう。以下同じ。)との利用の調整に関する方針
3項 基本計画 においては、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項の大綱を定めるよう努めるものとする。
1号 農村地域 に導入される産業の用に供する施設の整備に関する事項
2号 労働力の需給の調整及び農業従事者の 農村地域 に導入される産業への就業の円滑化に関する事項
3号 農村地域 への産業の導入と相まって 農業構造の改善 を促進するために必要な農業生産の基盤の整備及び開発その他の事業に関する事項
4号 その他必要な事項
4項 基本計画 は、 基本方針 に即するとともに、国土形成計画、首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、山村振興計画、農業振興地域整備計画、過疎地域持続的発展計画その他法律の規定による地域振興に関する計画及び道路、鉄道等の施設に関する国の計画並びに都市計画との調和が保たれたものでなければならない。
5項 都道府県は、 基本計画 を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣に協議し、その同意を得なければならない。この場合において、主務大臣は、当該同意をしようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとする。
6項 都道府県は、 基本計画 を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5条 (実施計画)
1項 市町村は、 農村地域 内の一定の地区を定め、当該地区への産業の導入に関する 実施計画 (以下「 実施計画 」という。)を定めることができる。
2項 実施計画 においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
1号 産業を導入すべき地区(以下「 産業導入地区 」という。)の区域
2号 導入すべき産業の業種及びその規模
3号 導入される産業への農業従事者の就業の目標
4号 産業の導入と相まって促進すべき 農業構造の改善 に関する目標
5号 産業の導入に伴う施設用地と農用地等との利用の調整に関する事項
3項 実施計画 においては、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
1号 導入される産業の用に供する施設の整備に関する事項
2号 労働力の需給の調整及び農業従事者の導入される産業への就業の円滑化に関する事項
3号 産業の導入と相まって 農業構造の改善 を促進するために必要な農業生産の基盤の整備及び開発その他の事業に関する事項
4号 その他必要な事項
4項 実施計画 は、次に掲げる要件のいずれにも該当するものでなければならない。
1号 産業を導入することにより、 農村地域 における農業従事者の安定した就業機会の確保に資すること。
2号 産業の導入と相まって 農村地域 における 農業構造の改善 が図られると認められること。
3号 産業の導入に伴う施設用地と農用地等との利用の調整が行われることにより、 農村地域 における農用地等の保有及び利用の状況、農業就業人口その他の農業経営に関する基本的条件の現況等からみて、当該農村地域における農地保有の合理化が図られると見込まれること。
5項 実施計画 は、 基本計画 の内容に即するとともに、前条第4項に規定する計画との調和が保たれたものでなければならない。
6項 市町村は、 実施計画 を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県知事に協議し、その同意を得なければならない。
7項 市町村は、 実施計画 を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、その概要を公表するよう努めるとともに、都道府県知事を経由して主務大臣に、実施計画書(実施計画を変更した場合にあっては、当該変更後の実施計画書。以下同じ。)の写しを送付しなければならない。
8項 主務大臣は、前項の規定により 実施計画 書の写しの送付があった場合においては、その内容を関係行政機関の長に通知しなければならない。この場合において、関係行政機関の長は、主務大臣に対し、当該実施計画に関し意見を述べることができる。
9項 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法
第2条第1項
《この法律において「過疎地域」とは、次の各…》
号のいずれかに該当する市町村地方税の収入以外の政令で定める収入の額が政令で定める金額を超える市町村を除く。の区域をいう。 1 次のいずれかに該当し、かつ、地方交付税法1950年法律第211号第14条の
に規定する過疎地域の区域内の一定の地区を定めて、これにつき 実施計画 を定め、又はこれを変更した場合において、当該実施計画(実施計画を変更した場合にあっては、当該変更後の実施計画。以下この項において同じ。)が同法第7条第1項の持続的発展方針に適合するものであるときは、市町村は、当該実施計画を、当該市町村の議会の議決を経て同法第8条第1項の市町村計画の内容の一部とすることができる。
10項 市町村が前項の規定により 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法
第8条第1項
《過疎地域の市町村は、持続的発展方針に基づ…》
き、当該市町村の議会の議決を経て過疎地域持続的発展市町村計画以下単に「市町村計画」という。を定めることができる。
の市町村計画を変更した場合における同条第10項の規定の適用については、同項中「準用する」とあるのは、「準用する。この場合において、第8項中「提出しなければ」とあるのは「その旨を報告しなければ」と、前項中「の提出があった場合においては、直ちに、その内容」とあるのは「を変更した旨の報告があった場合においては、直ちに、その旨」と読み替えるものとする」とする。
6条 (基本計画及び実施計画の作成のための援助)
1項 国は都道府県及び市町村に対し、都道府県は市町村に対し、それぞれ、 基本計画 又は 実施計画 の作成のために必要な助言、指導その他の援助を行うように努めなければならない。
7条 (農用地等の譲渡に係る所得税の軽減)
1項 個人がその有する 産業導入地区 内の農用地等(農用地等の上に存する権利を含む。)を 実施計画 で定める施設用地の用に供するため譲渡した場合には、 租税特別措置法 (1957年法律第26号)の定めるところにより、その譲渡に係る 所得税法 (1965年法律第33号)
第33条第1項
《譲渡所得とは、資産の譲渡建物又は構築物の…》
所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。による所得をいう。
に規定する譲渡所得についての所得税を軽減する。
8条 (資金の確保等)
1項 国及び地方公共団体は、 産業導入地区 内において導入される産業の用に供する施設で 実施計画 に適合するものの整備につき、必要な資金の確保その他の援助に努めなければならない。
9条 (地方債についての配慮)
1項 地方公共団体が 実施計画 を達成するために行う施設用地の造成その他の事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、適切な配慮をするものとする。
10条 (施設の整備)
1項 国及び地方公共団体は、 実施計画 で定める 農村地域 への産業の導入を促進するため、施設用地、道路、工業用水道及び通信運輸施設の整備の促進に努めなければならない。
11条 (職業紹介の充実等)
1項 国は、 実施計画 で定めるところに従い導入される産業に農業従事者が円滑に就業することを促進するため、関係団体の協力を得て、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めなければならない。
2項 国及び地方公共団体は、 実施計画 で定めるところに従い導入される産業に農業従事者が円滑に就業することを促進するため、職業訓練(作業環境に適応させる訓練を含む。)の実施、職業転換給付金( 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 (1966年法律第132号)
第18条
《職業転換給付金の支給 国及び都道府県は…》
、他の法令の規定に基づき支給するものを除くほか、労働者がその有する能力に適合する職業に就くことを容易にし、及び促進するため、求職者その他の労働者又は事業主に対して、政令で定める区分に従い、次に掲げる給
の職業転換給付金をいう。)の支給等必要な措置を講ずるように努めなければならない。
12条 (農業構造改善の促進)
1項 国及び地方公共団体は、 実施計画 で定める 農業構造の改善 を促進するため、農業生産の基盤の整備及び開発、農業経営の近代化のための施設の整備等の事業の推進に努めなければならない。
13条 (農地法等による処分についての配慮)
1項 国の行政機関の長又は都道府県知事は、土地を 実施計画 で定める用途に供するため 農地法 (1952年法律第229号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該実施計画で定める 農村地域 への産業の導入が促進されるよう配慮するものとする。
14条 (都道府県又は市町村の審議会)
1項 基本計画 の作成その他 農村地域 への産業の導入の促進に関する重要事項を調査審議させるため、都道府県は、条例で、審議会を置くことができる。
2項 実施計画 の作成その他 農村地域 への産業の導入の促進に関する重要事項を調査審議させるため、市町村は、条例で、審議会を置くことができる。
3項 前2項に規定するもののほか、都道府県又は市町村に置かれる審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定める。
15条 (主務大臣)
1項 この法律において主務大臣は、農林水産大臣、経済産業大臣及び厚生労働大臣とする。