民事保全法《本則》

法番号:平成元年法律第91号

略称: 民保法

附則 >  

1章 総則

1条 (趣旨)

1項 民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「 民事保全 」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

2条 (民事保全の機関及び保全執行裁判所)

1項 民事保全 の命令(以下「 保全命令 」という。)は、申立てにより、裁判所が行う。

2項 民事保全 の執行(以下「 保全執行 」という。)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。

3項 裁判所が行う 保全執行 に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもって、執行官が行う保全執行の執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもって保全執行裁判所とする。

3条 (任意的口頭弁論)

1項 民事保全 の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

4条 (担保の提供)

1項 この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は 保全執行 裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券( 社債、株式等の振替に関する法律 2001年法律第75号第278条第1項 《法令の規定により担保若しくは保証として、…》 又は公職選挙法1950年法律第100号の規定により、第2条第1項第1号から第10号まで及び第11号に掲げるもので振替機関が取り扱うもの以下この条において「振替債」という。の供託をしようとする者は、主務 に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。

2項 民事訴訟法 1996年法律第109号第77条 《担保物に対する被告の権利 被告は、訴訟…》 費用に関し、前条の規定により供託した金銭又は有価証券について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。第79条 《担保の取消し 担保を立てた者が担保の事…》 由が消滅したことを証明したときは、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない。 2 担保を立てた者が担保の取消しについて担保権利者の同意を得たことを証明したときも、前項と同様とする 及び 第80条 《担保の変換 裁判所は、担保を立てた者の…》 申立てにより、決定で、その担保の変換を命ずることができる。 ただし、その担保を契約によって他の担保に変換することを妨げない。 の規定は、前項の担保について準用する。

5条 (非電磁的事件記録の閲覧等)

1項 保全命令 に関する手続又は 保全執行 に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、非電磁的事件記録(事件の記録中次条第1項に規定する電磁的事件記録を除いた部分をいう。)の閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付を請求することができる。

2項 民事訴訟法 第91条第4項 《4 前項の規定は、非電磁的訴訟記録中の録…》 音テープ又はビデオテープこれらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。に関しては、適用しない。 この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所 及び第5項の規定は、前項の規定による請求について準用する。

5条の2 (電磁的事件記録の閲覧等)

1項 保全命令 に関する手続又は 保全執行 に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的事件記録(事件の記録中この法律その他の法令の規定により裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この条及び次条において同じ。)に備えられたファイル( 第43条第1項 《保全執行は、保全命令の正本保全命令に係る…》 電磁的記録がファイルに記録されたものである場合にあっては、記録事項証明書ファイルに記録されている事項を記載した書面であって裁判所書記官が当該書面の内容が当該ファイルに記録されている事項と同一であること において単に「ファイル」という。)に記録された事項に係る部分をいう。以下この条において同じ。)の内容を最高裁判所規則で定める方法により表示したものの閲覧を請求することができる。

2項 保全命令 に関する手続又は 保全執行 に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、電磁的事件記録に記録されている事項について、最高裁判所規則で定めるところにより、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織(裁判所の使用に係る電子計算機と手続の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。次項及び次条において同じ。)を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法による複写を請求することができる。

3項 保全命令 に関する手続又は 保全執行 に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的事件記録に記録されている事項の全部若しくは一部を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容が電磁的事件記録に記録されている事項と同一であることを証明したものを交付し、又は当該事項の全部若しくは一部を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該電磁的記録の内容が電磁的事件記録に記録されている事項と同一であることを証明したものを最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法により提供することを請求することができる。

4項 民事訴訟法 第91条第5項 《5 非電磁的訴訟記録の閲覧、謄写及び複製…》 の請求は、非電磁的訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。 の規定は、第1項及び第2項の規定による請求について準用する。

5条の3 (事件に関する事項の証明)

1項 保全命令 に関する手続又は 保全執行 に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、事件に関する事項を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該事項を証明したものを交付し、又は当該事項を記録した電磁的記録であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該事項を証明したものを最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法により提供することを請求することができる。

5条の4 (事件の記録の閲覧等の特則)

1項 前3条の規定にかかわらず、債権者以外の者は、 保全命令 の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、これらの規定による請求をすることができない。

6条 (専属管轄)

1項 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。

7条 (民事訴訟法の準用)

1項 特別の定めがある場合を除き、 民事保全 の手続に関しては、その性質に反しない限り、 民事訴訟法 第1編から第4編までの規定を準用する。この場合において、同法第109条の4第1項中「第132条の11第1項各号に掲げる者」とあるのは「第132条の11第1項各号に掲げる者( 保全執行 に関する手続にあっては、 民事保全法 第46条 《民事執行法の準用 この章に特別の定めが…》 ある場合を除き、民事執行法第5条から第14条まで、第16条、第18条、第18条の二、第19条の2から第19条の六まで、第23条第1項、第26条、第27条第2項、第28条、第30条第2項、第32条から第 において準用する 民事執行法 1979年法律第4号第19条の3第1項 《次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に…》 定める事件について、裁判所に対する申立て等当該裁判所の裁判長、受命裁判官、受託裁判官又は裁判所書記官に対するものを含む。次条において同じ。をするときは、前条第1項の方法により、これを行わなければならな 各号(同法第19条の6において読み替えて準用する場合を含む。)に掲げる者)」と、同法第132条の11第1項第2号中「規定」とあるのは「規定(これらの規定を同法第9条において準用する場合を含む。)」と読み替えるものとする。

8条 (最高裁判所規則)

1項 この法律に定めるもののほか、 民事保全 の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

2章 保全命令に関する手続 > 1節 総則

9条 (釈明処分の特例)

1項 裁判所は、争いに係る事実関係に関し、当事者の主張を明瞭にさせる必要があるときは、口頭弁論又は審尋の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で、裁判所が相当と認めるものに陳述をさせることができる。

10条

1項 削除

2節 保全命令 > 1款 通則

11条 (保全命令事件の管轄)

1項 保全命令 の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができる。

12条

1項 保全命令 事件は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

2項 本案の訴えが 民事訴訟法 第6条第1項 《特許権、実用新案権、回路配置利用権又はプ…》 ログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え以下「特許権等に関する訴え」という。について、前2条の規定によれば次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有すべき場合には、その訴えは、それぞれ当該各号に定め に規定する特許権等に関する訴えである場合には、 保全命令 事件は、前項の規定にかかわらず、本案の管轄裁判所が管轄する。ただし、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が同条第1項各号に定める裁判所であるときは、その裁判所もこれを管轄する。

3項 本案の管轄裁判所は、第一審裁判所とする。ただし、本案が控訴審に係属するときは、控訴裁判所とする。

4項 仮に差し押さえるべき物又は係争物が債権( 民事執行法 1979年法律第4号第143条 《債権執行の開始 金銭の支払又は船舶若し…》 くは動産の引渡しを目的とする債権動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。に対する強制執行第167条の2第2項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この に規定する債権をいう。以下この条において同じ。)であるときは、その債権は、その債権の債務者(以下「 第三債務者 」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶(同法第112条に規定する船舶をいう。以下同じ。又は動産(同法第122条に規定する動産をいう。以下同じ。)の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。

5項 前項本文の規定は、仮に差し押さえるべき物又は係争物が 民事執行法 第167条第1項 《不動産、船舶、動産及び債権以外の財産権以…》 下この条において「その他の財産権」という。に対する強制執行については、特別の定めがあるもののほか、債権執行の例による。 に規定する財産権(以下「 その他の財産権 」という。)で 第三債務者 又はこれに準ずる者があるものである場合(次項に規定する場合を除く。)について準用する。

6項 仮に差し押さえるべき物又は係争物が その他の財産権 で権利の移転について登記又は登録を要するものであるときは、その財産権は、その登記又は登録の地にあるものとする。

13条 (申立て及び疎明)

1項 保全命令 の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。

2項 保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。

14条 (保全命令の担保)

1項 保全命令 は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを 保全執行 の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。

2項 前項の担保を立てる場合において、遅滞なく 第4条第1項 《この法律の規定により担保を立てるには、担…》 保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券社債、株式等の振替に関する法律200 の供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地又は事務所の所在地その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

15条 (裁判長の権限)

1項 保全命令 は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる。

16条 (決定の理由)

1項 保全命令 の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。

17条 (送達)

1項 保全命令 は、当事者に送達しなければならない。

18条 (保全命令の申立ての取下げ)

1項 保全命令 の申立てを取り下げるには、保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においても、債務者の同意を得ることを要しない。

19条 (却下の裁判に対する即時抗告)

1項 保全命令 の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

2項 前項の即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができない。

3項 第16条 《決定の理由 保全命令の申立てについての…》 決定には、理由を付さなければならない。 ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。 本文の規定は、第1項の即時抗告についての決定について準用する。

2款 仮差押命令

20条 (仮差押命令の必要性)

1項 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2項 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。

21条 (仮差押命令の対象)

1項 仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる。

22条 (仮差押解放金)

1項 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。

2項 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は 保全執行 裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

3款 仮処分命令

23条 (仮処分命令の必要性等)

1項 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2項 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

3項 第20条第2項 《2 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は…》 期限付である場合においても、これを発することができる。 の規定は、仮処分命令について準用する。

4項 第2項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

24条 (仮処分の方法)

1項 裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができる。

25条 (仮処分解放金)

1項 裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。

2項 第22条第2項 《2 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発し…》 た裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。 の規定は、前項の金銭の供託について準用する。

25条の2 (債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分命令)

1項 占有移転禁止の仮処分命令(係争物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するための仮処分命令のうち、次に掲げる事項を内容とするものをいう。以下この条、 第54条 《不動産に関する権利以外の権利についての登…》 又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行 前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記仮登記を除く。 の二及び 第62条 《占有移転禁止の仮処分命令の効力 占有移…》 転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、次に掲げる者に対し、係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。 1 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたこと において同じ。)であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる。

1号 債務者に対し、係争物の占有の移転を禁止し、及び係争物の占有を解いて執行官に引き渡すべきことを命ずること。

2号 執行官に、係争物の保管をさせ、かつ、債務者が係争物の占有の移転を禁止されている旨及び執行官が係争物を保管している旨を公示させること。

2項 前項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、当該執行によって係争物である不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

3項 第1項の規定による占有移転禁止の仮処分命令は、 第43条第2項 《2 保全執行は、債権者に対して保全命令が…》 送達された日から2週間を経過したときは、これをしてはならない。 の期間内にその執行がされなかったときは、債務者に対して送達することを要しない。この場合において、 第4条第2項 《2 民事訴訟法1996年法律第109号第…》 77条、第79条及び第80条の規定は、前項の担保について準用する。 において準用する 民事訴訟法 第79条第1項 《担保を立てた者が担保の事由が消滅したこと…》 を証明したときは、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない。 の規定による担保の取消しの決定で 第14条第1項 《裁判所は、管轄に関する事項について、職権…》 で証拠調べをすることができる。 の規定により立てさせた担保に係るものは、裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによって、その効力を生ずる。

3節 保全異議

26条 (保全異議の申立て)

1項 保全命令 に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。

27条 (保全執行の停止の裁判等)

1項 保全異議の申立てがあった場合において、 保全命令 の取消しの原因となることが明らかな事情及び 保全執行 により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において第3項の規定による裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全執行の停止又は既にした執行処分の取消しを命ずることができる。

2項 抗告裁判所が 保全命令 を発した場合において、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、前項の規定による裁判をすることができる。

3項 裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、既にした第1項の規定による裁判を取り消し、変更し、又は認可しなければならない。

4項 第1項及び前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

5項 第15条 《裁判長の権限 保全命令は、急迫の事情が…》 あるときに限り、裁判長が発することができる。 の規定は、第1項の規定による裁判について準用する。

28条 (事件の移送)

1項 裁判所は、当事者、尋問を受けるべき証人及び審尋を受けるべき参考人の住所その他の事情を考慮して、保全異議事件につき著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るために必要があるときは、申立てにより又は職権で、当該 保全命令 事件につき管轄権を有する他の裁判所に事件を移送することができる。

29条 (保全異議の審理)

1項 裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。

30条

1項 削除

31条 (審理の終結)

1項 裁判所は、審理を終結するには、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。

32条 (保全異議の申立てについての決定)

1項 裁判所は、保全異議の申立てについての決定においては、 保全命令 を認可し、変更し、又は取り消さなければならない。

2項 裁判所は、前項の決定において、相当と認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は 第14条第1項 《保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相…》 当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。 の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを 保全執行 の実施又は続行の条件とする旨を定めることができる。

3項 裁判所は、第1項の規定による 保全命令 を取り消す決定について、債務者が担保を立てることを条件とすることができる。

4項 第16条 《決定の理由 保全命令の申立てについての…》 決定には、理由を付さなければならない。 ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。 本文及び 第17条 《送達 保全命令は、当事者に送達しなけれ…》 ばならない。 の規定は、第1項の決定について準用する。

33条 (原状回復の裁判)

1項 仮処分命令に基づき、債権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第1項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、債務者が引き渡し、若しくは明け渡した物の返還、債務者が支払った金銭の返還又は債権者が使用若しくは保管をしている物の返還を命ずることができる。

34条 (保全命令を取り消す決定の効力)

1項 裁判所は、 第32条第1項 《裁判所は、保全異議の申立てについての決定…》 においては、保全命令を認可し、変更し、又は取り消さなければならない。 の規定により 保全命令 を取り消す決定において、その送達を受けた日から2週間を超えない範囲内で相当と認める一定の期間を経過しなければその決定の効力が生じない旨を宣言することができる。ただし、その決定に対して保全抗告をすることができないときは、この限りでない。

35条 (保全異議の申立ての取下げ)

1項 保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない。

36条 (判事補の権限の特例)

1項 保全異議の申立てについての裁判は、判事補が単独ですることができない。

4節 保全取消し

37条 (本案の訴えの不提起等による保全取消し)

1項 保全命令 を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面又は電磁的記録を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面又は電磁的記録を提出すべきことを命じなければならない。

2項 前項の期間は、2週間以上でなければならない。

3項 債権者が第1項の規定により定められた期間内に同項の書面又は電磁的記録を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、 保全命令 を取り消さなければならない。

4項 第1項の書面又は電磁的記録が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面又は電磁的記録を提出しなかったものとみなす。

5項 第1項及び第3項の規定の適用については、本案が 家事事件手続法 2011年法律第52号第257条第1項 《第244条の規定により調停を行うことがで…》 きる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。 に規定する事件であるときは家庭裁判所に対する調停の申立てを、本案が 労働審判法 2004年法律第45号第1条 《目的 この法律は、労働契約の存否その他…》 の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争以下「個別労働関係民事紛争」という。に関し、裁判所において、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で組織す に規定する事件であるときは地方裁判所に対する労働審判手続の申立てを、本案に関し仲裁合意があるときは仲裁手続の開始の手続を、本案が 公害紛争処理法 1970年法律第108号第2条 《定義 この法律において「公害」とは、環…》 境基本法1993年法律第91号第3項に規定する公害をいう。 に規定する公害に係る被害についての損害賠償の請求に関する事件であるときは同法第42条の12第1項に規定する損害賠償の責任に関する裁定(次項において「 責任裁定 」という。)の申請を本案の訴えの提起とみなす。

6項 前項の調停の事件、同項の労働審判手続、同項の仲裁手続又は同項の 責任裁定 の手続が調停の成立、労働審判( 労働審判法 第29条第2項 《2 民事調停法1951年法律第222号第…》 11条、第12条、第16条、第16条の二及び第36条の規定は、労働審判事件について準用する。 この場合において、同法第11条中「調停の」とあるのは「労働審判手続の」と、「調停委員会」とあるのは「労働審 において準用する 民事調停法 1951年法律第222号第16条第1項 《調停において当事者間に合意が成立した場合…》 において、その合意について電子調書を作成し、これをファイルに記録したときは、調停が成立したものとし、その記録は、裁判上の和解と同1の効力を有する。 の規定による調停の成立及び 労働審判法 第24条第1項 《労働審判委員会は、事案の性質に照らし、労…》 働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させることができる。 の規定による労働審判事件の終了を含む。)、仲裁判断又は責任裁定( 公害紛争処理法 第42条の24第2項 《2 前項の規定により事件を調停に付した場…》 合において、当事者間に合意が成立したときは、責任裁定の申請は、取り下げられたものとみなす。 の当事者間の合意の成立を含む。)によらないで終了したときは、債権者は、その終了の日から第1項の規定により定められた期間と同1の期間内に本案の訴えを提起しなければならない。

7項 第3項の規定は債権者が前項の規定による本案の訴えの提起をしなかった場合について、第4項の規定は前項の本案の訴えが提起され、又は 労働審判法 第22条第1項 《労働審判に対し適法な異議の申立てがあった…》 ときは、労働審判手続の申立てに係る請求については、当該労働審判手続の申立ての時に、当該労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。 この場合において、当同法第23条第2項及び第24条第2項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされた後にその訴えが取り下げられ、又は却下された場合について準用する。

8項 第16条 《決定の理由 保全命令の申立てについての…》 決定には、理由を付さなければならない。 ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。 本文及び 第17条 《送達 保全命令は、当事者に送達しなけれ…》 ばならない。 の規定は、第3項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定について準用する。

38条 (事情の変更による保全取消し)

1項 保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、 保全命令 を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。

2項 前項の事情の変更は、疎明しなければならない。

3項 第16条 《決定の理由 保全命令の申立てについての…》 決定には、理由を付さなければならない。 ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。 本文、 第17条 《送達 保全命令は、当事者に送達しなけれ…》 ばならない。 並びに 第32条第2項 《2 裁判所は、前項の決定において、相当と…》 認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は第14条第1項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨 及び第3項の規定は、第1項の申立てについての決定について準用する。

39条 (特別の事情による保全取消し)

1項 仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、仮処分命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。

2項 前項の特別の事情は、疎明しなければならない。

3項 第16条 《決定の理由 保全命令の申立てについての…》 決定には、理由を付さなければならない。 ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。 本文及び 第17条 《送達 保全命令は、当事者に送達しなけれ…》 ばならない。 の規定は、第1項の申立てについての決定について準用する。

40条 (保全異議の規定の準用等)

1項 第27条 《保全執行の停止の裁判等 保全異議の申立…》 てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申 から 第29条 《保全異議の審理 裁判所は、口頭弁論又は…》 当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。 まで、 第31条 《審理の終結 裁判所は、審理を終結するに…》 は、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。 ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。 及び 第33条 《原状回復の裁判 仮処分命令に基づき、債…》 権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第1項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、 から 第36条 《判事補の権限の特例 保全異議の申立てに…》 ついての裁判は、判事補が単独ですることができない。 までの規定は、保全取消しに関する裁判について準用する。ただし、 第27条 《保全執行の停止の裁判等 保全異議の申立…》 てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申 から 第29条 《保全異議の審理 裁判所は、口頭弁論又は…》 当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。 まで、 第31条 《審理の終結 裁判所は、審理を終結するに…》 は、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。 ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。第33条 《原状回復の裁判 仮処分命令に基づき、債…》 権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第1項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、第34条 《保全命令を取り消す決定の効力 裁判所は…》 、第32条第1項の規定により保全命令を取り消す決定において、その送達を受けた日から2週間を超えない範囲内で相当と認める一定の期間を経過しなければその決定の効力が生じない旨を宣言することができる。 ただ 及び 第36条 《判事補の権限の特例 保全異議の申立てに…》 ついての裁判は、判事補が単独ですることができない。 の規定は、 第37条第1項 《保全命令を発した裁判所は、債務者の申立て…》 により、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面又は電磁的記録を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面又は電磁的記録を提出すべ の規定による裁判については、この限りでない。

2項 前項において準用する 第27条第1項 《保全異議の申立てがあった場合において、保…》 全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において の規定による裁判は、保全取消しの申立てが 保全命令 を発した裁判所以外の本案の裁判所にされた場合において、事件の記録が保全命令を発した裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。

5節 保全抗告

41条 (保全抗告)

1項 保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判( 第33条 《原状回復の裁判 仮処分命令に基づき、債…》 権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第1項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、前条第1項において準用する場合を含む。)の規定による裁判を含む。)に対しては、その送達を受けた日から2週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した 保全命令 に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない。

2項 原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない。

3項 保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない。

4項 第16条 《決定の理由 保全命令の申立てについての…》 決定には、理由を付さなければならない。 ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。 本文、 第17条 《送達 保全命令は、当事者に送達しなけれ…》 ばならない。 並びに 第32条第2項 《2 裁判所は、前項の決定において、相当と…》 認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は第14条第1項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨 及び第3項の規定は保全抗告についての決定について、 第27条第1項 《保全異議の申立てがあった場合において、保…》 全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において 、第4項及び第5項、 第29条 《保全異議の審理 裁判所は、口頭弁論又は…》 当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。第31条 《審理の終結 裁判所は、審理を終結するに…》 は、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。 ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。 並びに 第33条 《原状回復の裁判 仮処分命令に基づき、債…》 権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条第1項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、 の規定は保全抗告に関する裁判について、 民事訴訟法 第349条 《決定又は命令に対する再審 即時抗告をも…》 って不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては、再審の申立てをすることができる。 2 第338条から前条までの規定は、前項の申立てについて準用する。 の規定は保全抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。

5項 前項において準用する 第27条第1項 《この節の規定は、裁判所書記官について準用…》 する。 この場合においては、裁判は、裁判所書記官の所属する裁判所がする。 の規定による裁判は、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。

42条 (保全命令を取り消す決定の効力の停止の裁判)

1項 保全命令 を取り消す決定に対して保全抗告があった場合において、原決定の取消しの原因となることが明らかな事情及びその命令の取消しにより償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、保全抗告についての裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全命令を取り消す決定の効力の停止を命ずることができる。

2項 第15条 《裁判長の権限 保全命令は、急迫の事情が…》 あるときに限り、裁判長が発することができる。第27条第4項 《4 第1項及び前項の規定による裁判に対し…》 ては、不服を申し立てることができない。 及び前条第5項の規定は、前項の規定による裁判について準用する。

3章 保全執行に関する手続 > 1節 総則

43条 (保全執行の要件)

1項 保全執行 は、 保全命令 の正本(保全命令に係る電磁的記録がファイルに記録されたものである場合にあっては、記録事項証明書(ファイルに記録されている事項を記載した書面であって裁判所書記官が当該書面の内容が当該ファイルに記録されている事項と同一であることを証明したものをいう。次条第2項において同じ。)。以下この項において同じ。)に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。

2項 保全執行 は、債権者に対して 保全命令 が送達された日から2週間を経過したときは、これをしてはならない。

3項 保全執行 は、 保全命令 が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。

44条 (追加担保を提供しないことによる保全執行の取消し)

1項 第32条第2項 《2 裁判所は、前項の決定において、相当と…》 認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は第14条第1項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨 第38条第3項 《3 第16条本文、第17条並びに第32条…》 第2項及び第3項の規定は、第1項の申立てについての決定について準用する。 及び 第41条第4項 《4 第16条本文、第17条並びに第32条…》 第2項及び第3項の規定は保全抗告についての決定について、第27条第1項、第4項及び第5項、第29条、第31条並びに第33条の規定は保全抗告に関する裁判について、民事訴訟法第349条の規定は保全抗告をす において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により担保を立てることを 保全執行 の続行の条件とする旨の裁判があったときは、債権者は、 第32条第2項 《2 裁判所は、前項の決定において、相当と…》 認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は第14条第1項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨 の規定により定められた期間内に担保を立てたことを証する書面又は電磁的記録をその期間の末日から1週間以内に保全執行裁判所又は執行官に提出しなければならない。

2項 債権者が前項の規定による書面又は電磁的記録の提出をしない場合において、債務者が同項の裁判の正本又は記録事項証明書を提出したときは、 保全執行 裁判所又は執行官は、既にした執行処分を取り消さなければならない。

3項 民事執行法 第40条第2項 《2 第12条の規定は、前項の規定により執…》 行処分を取り消す場合については適用しない。 の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合について準用する。

45条 (第三者異議の訴えの管轄裁判所の特例)

1項 高等裁判所が 保全執行 裁判所としてした保全執行に対する第三者異議の訴えは、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

46条 (民事執行法の準用)

1項 この章に特別の定めがある場合を除き、 民事執行法 第5条 《審尋 執行裁判所は、執行処分をするに際…》 し、必要があると認めるときは、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができる。 から 第14条 《費用の予納等 執行裁判所に対し民事執行…》 の申立てをするときは、申立人は、民事執行の手続に必要な費用として裁判所書記官の定める金額を予納しなければならない。 予納した費用が不足する場合において、裁判所書記官が相当の期間を定めてその不足する費用 まで、 第16条 《送達の特例 民事執行の手続について、執…》 行裁判所に対し申立て、申出若しくは届出をし、又は執行裁判所から文書若しくは電磁的記録電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報第18条 《官庁等に対する援助請求等 民事執行のた…》 め必要がある場合には、執行裁判所又は執行官は、官庁又は公署に対し、援助を求めることができる。 2 前項に規定する場合には、執行裁判所又は執行官は、民事執行の目的である財産財産が土地である場合にはその上第18条 《官庁等に対する援助請求等 民事執行のた…》 め必要がある場合には、執行裁判所又は執行官は、官庁又は公署に対し、援助を求めることができる。 2 前項に規定する場合には、執行裁判所又は執行官は、民事執行の目的である財産財産が土地である場合にはその上 の二、 第19条の2 《裁判所に対する電子情報処理組織による申立…》 て等 民事執行の手続における申立てその他の申述以下この条から第19条の六までにおいて「申立て等」という。のうち、当該申立て等に関するこの法律その他の法令の規定により書面等書面、書類、文書、謄本、抄本 から 第19条 《専属管轄 この法律に規定する裁判所の管…》 轄は、専属とする。 の六まで、 第23条第1項 《執行証書以外の債務名義による強制執行は、…》 次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。 1 債務名義に表示された当事者 2 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人 3 前2号に掲げる者の債務名義成立後第26条 《執行文の付与 執行文は、申立てにより、…》 執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本執行証書が電磁的記録をもつて作成されている場合にあつては、当該電磁的記録を保存する公証人が付与する。第27条第2項 《2 債務名義に表示された当事者以外の者を…》 債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書若しくは電磁的記録を提出した第28条 《執行文の再度付与等 執行文は、債権の完…》 全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき、又はこれが滅失したときに限り、更に付与することができる。 2 前項の規定は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴第30条第2項 《2 担保を立てることを強制執行の実施の条…》 件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書又は電磁的記録を提出したときに限り、開始することができる。第32条 《執行文の付与等に関する異議の申立て 執…》 行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができ から 第34条 《執行文付与に対する異議の訴え 第27条…》 の規定により執行文が付与された場合において、債権者の証明すべき事実の到来したこと又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることができることについて異議のある債務 まで、 第36条 《執行文付与に対する異議の訴え等に係る執行…》 停止の裁判 執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起があつた場合において、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたときは、受訴裁判所は、申立て から 第38条 《第三者異議の訴え 強制執行の目的物につ…》 いて所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。 2 前項に規定する第三者は、同項の訴えに併 まで、 第39条第1項第1号 《強制執行は、次に掲げる文書又は電磁的記録…》 の提出があつたときは、停止しなければならない。 1 債務名義執行証書を除く。若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本又は記録事項証明書 2 債務名義に係 から第4号の二まで、第6号及び第7号並びに第4項、 第40条 《執行処分の取消し 前条第1項第1号から…》 第6号までに掲げる文書又は電磁的記録が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。 2 第12条の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合については適 並びに 第41条 《債務者が死亡した場合の強制執行の続行 …》 強制執行は、その開始後に債務者が死亡した場合においても、続行することができる。 2 前項の場合において、債務者の相続人の存在又はその所在が明らかでないときは、執行裁判所は、申立てにより、相続財産又は の規定は、 保全執行 について準用する。

2節 仮差押えの執行

47条 (不動産に対する仮差押えの執行)

1項 民事執行法 第43条第1項 《不動産登記することができない土地の定着物…》 を除く。以下この節において同じ。に対する強制執行以下「不動産執行」という。は、強制競売又は強制管理の方法により行う。 これらの方法は、併用することができる。 に規定する不動産(同条第2項の規定により不動産とみなされるものを含む。)に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。

2項 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、 保全執行 裁判所として管轄する。

3項 仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託する。

4項 強制管理の方法による仮差押えの執行においては、管理人は、次項において準用する 民事執行法 第107条第1項 《管理人は、前条第1項に規定する費用を支払…》 い、執行裁判所の定める期間ごとに、配当等に充てるべき金銭の額を計算して、配当等を実施しなければならない。 の規定により計算した配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を 保全執行 裁判所に届け出なければならない。

5項 民事執行法 第46条第2項 《2 差押えは、債務者が通常の用法に従つて…》 不動産を使用し、又は収益することを妨げない。第47条第1項 《強制競売又は担保権の実行としての競売以下…》 この節において「競売」という。の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする。第48条第2項 《2 登記官は、前項の規定による嘱託に基づ…》 いて差押えの登記をしたときは、その旨及び最高裁判所規則で定める事項を執行裁判所に通知しなければならない。第53条 《不動産の滅失等による強制競売の手続の取消…》 し 不動産の滅失その他売却による不動産の移転を妨げる事情が明らかとなつたときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。 及び 第54条 《差押えの登記の抹まつ消の嘱託 強制競売…》 の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その開始決定に係る差押えの登記の抹まつ消を嘱託しなければならない。 2 前項の規定による嘱託に要する の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法第44条、 第46条第1項 《この章に特別の定めがある場合を除き、民事…》 執行法第5条から第14条まで、第16条、第18条、第18条の二、第19条の2から第19条の六まで、第23条第1項、第26条、第27条第2項、第28条、第30条第2項、第32条から第34条まで、第36条第47条第2項 《2 仮差押えの登記をする方法による仮差押…》 えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。 、第6項本文及び第7項、 第48条 《船舶に対する仮差押えの執行 船舶に対す…》 る仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は執行官に対し船舶の国籍を証する文書その他の船舶の航行のために必要な文書以下この条において「船舶国籍証書等」という。を取り上げて保全執行裁判所に提出すべき第53条 《不動産の登記請求権を保全するための処分禁…》 止の仮処分の執行 不動産に関する権利についての登記仮登記を除く。を請求する権利以下「登記請求権」という。を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。 2 不動産に関第54条 《不動産に関する権利以外の権利についての登…》 又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行 前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記仮登記を除く。 、第93条から第93条の三まで、第94条から第104条まで、第106条並びに第107条第1項の規定は強制管理の方法による仮差押えの執行について準用する。

48条 (船舶に対する仮差押えの執行)

1項 船舶に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は執行官に対し船舶の国籍を証する文書その他の船舶の航行のために必要な文書(以下この条において「 船舶国籍証書等 」という。)を取り上げて 保全執行 裁判所に提出すべきことを命ずる方法により行う。これらの方法は、併用することができる。

2項 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行は仮差押命令を発した裁判所が、 船舶国籍証書等 の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行は船舶の所在地を管轄する地方裁判所が、 保全執行 裁判所として管轄する。

3項 前条第3項並びに 民事執行法 第46条第2項 《2 差押えは、債務者が通常の用法に従つて…》 不動産を使用し、又は収益することを妨げない。第47条第1項 《強制競売又は担保権の実行としての競売以下…》 この節において「競売」という。の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする。第48条第2項 《2 登記官は、前項の規定による嘱託に基づ…》 いて差押えの登記をしたときは、その旨及び最高裁判所規則で定める事項を執行裁判所に通知しなければならない。第53条 《不動産の滅失等による強制競売の手続の取消…》 し 不動産の滅失その他売却による不動産の移転を妨げる事情が明らかとなつたときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。 及び 第54条 《差押えの登記の抹まつ消の嘱託 強制競売…》 の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その開始決定に係る差押えの登記の抹まつ消を嘱託しなければならない。 2 前項の規定による嘱託に要する の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法第45条第3項、 第47条第1項 《民事執行法第43条第1項に規定する不動産…》 同条第2項の規定により不動産とみなされるものを含む。に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。 これらの方法は、併用することができる。第53条 《不動産の登記請求権を保全するための処分禁…》 止の仮処分の執行 不動産に関する権利についての登記仮登記を除く。を請求する権利以下「登記請求権」という。を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。 2 不動産に関 、第116条及び第118条の規定は 船舶国籍証書等 の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行について準用する。

49条 (動産に対する仮差押えの執行)

1項 動産に対する仮差押えの執行は、執行官が目的物を占有する方法により行う。

2項 執行官は、仮差押えの執行に係る金銭を供託しなければならない。仮差押えの執行に係る手形、小切手その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求を要するものについて執行官が支払を受けた金銭についても、同様とする。

3項 仮差押えの執行に係る動産について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、 民事執行法 の規定による動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を供託しなければならない。

4項 民事執行法 第123条 《債務者の占有する動産の差押え 債務者の…》 占有する動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行う。 2 執行官は、前項の差押えをするに際し、債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り、その場所において、又は債務者の占有する金庫その他の容 から 第129条 《剰余を生ずる見込みのない場合の差押えの禁…》 止等 差し押さえるべき動産の売得金の額が手続費用の額を超える見込みがないときは、執行官は、差押えをしてはならない。 2 差押物の売得金の額が手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権の額の合計額以上 まで、 第131条 《差押禁止動産 次に掲げる動産は、差し押…》 さえてはならない。 1 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具 2 債務者等の1月間の生活に必要な食料及び燃料 3 標準的な世帯の2月間の必要生計費を勘案して政令で定第132条 《差押禁止動産の範囲の変更 執行裁判所は…》 、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押えの全部若しくは一部の取消しを命じ、又は前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる。 2 事情の変更があつたときは、執行裁判 及び 第136条 《手形等の提示義務 執行官は、手形、小切…》 手その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求以下「提示等」という。を要するもの以下「手形等」という。を差し押さえた場合に の規定は、動産に対する仮差押えの執行について準用する。

50条 (債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行)

1項 民事執行法 第143条 《債権執行の開始 金銭の支払又は船舶若し…》 くは動産の引渡しを目的とする債権動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。に対する強制執行第167条の2第2項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この に規定する債権に対する仮差押えの執行は、 保全執行 裁判所が 第三債務者 に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行う。

2項 前項の仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、 保全執行 裁判所として管轄する。

3項 第三債務者 が仮差押えの執行がされた金銭の支払を目的とする債権の額に相当する金銭を供託した場合には、債務者が 第22条第1項 《強制執行は、次に掲げるもの以下「債務名義…》 」という。により行う。 1 確定判決 2 仮執行の宣言を付した判決 3 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。 3の2 の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したものとみなす。ただし、その金銭の額を超える部分については、この限りでない。

4項 第1項及び第2項の規定は、 その他の財産権 に対する仮差押えの執行について準用する。

5項 民事執行法 第145条第2項 《2 差押命令は、債務者及び第三債務者を審…》 尋しないで発する。 から第6項まで、 第146条 《差押えの範囲 執行裁判所は、差し押さえ…》 るべき債権の全部について差押命令を発することができる。 2 差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、他の債権を差し押さえてはならない。 から 第153条 《差押禁止債権の範囲の変更 執行裁判所は…》 、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。 2 まで、 第156条 《第三債務者の供託 第三債務者は、差押え…》 に係る金銭債権差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。以下この条及び第161条の2において同じ。の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。 2 第三債務者は、次条第1項に第3項を除く。)、 第164条第5項 《5 第150条の規定により登記等がされた…》 場合において、差し押さえられた債権について支払又は供託があつたことを証する文書又は電磁的記録が提出されたときは、裁判所書記官は、申立てにより、その登記等の抹消を嘱託しなければならない。 債権執行の申立 及び第6項並びに 第167条 《その他の財産権に対する強制執行 不動産…》 、船舶、動産及び債権以外の財産権以下この条において「その他の財産権」という。に対する強制執行については、特別の定めがあるもののほか、債権執行の例による。 2 その他の財産権で権利の移転について登記等を の規定は、第1項の債権及び その他の財産権 に対する仮差押えの執行について準用する。

51条 (仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し)

1項 債務者が 第22条第1項 《仮差押命令においては、仮差押えの執行の停…》 止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。 の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、 保全執行 裁判所は、仮差押えの執行を取り消さなければならない。

2項 前項の規定による決定は、 第46条 《民事執行法の準用 この章に特別の定めが…》 ある場合を除き、民事執行法第5条から第14条まで、第16条、第18条、第18条の二、第19条の2から第19条の六まで、第23条第1項、第26条、第27条第2項、第28条、第30条第2項、第32条から第 において準用する 民事執行法 第12条第2項 《2 前項の規定により執行抗告をすることが…》 できる裁判は、確定しなければその効力を生じない。 の規定にかかわらず、即時にその効力を生ずる。

3節 仮処分の執行

52条 (仮処分の執行)

1項 仮処分の執行については、この節に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。

2項 物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令を債務名義とみなす。

53条 (不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)

1項 不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「 登記請求権 」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

2項 不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての 登記請求権 を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「 保全仮登記 」という。)をする方法により行う。

3項 第47条第2項 《2 仮差押えの登記をする方法による仮差押…》 えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。 及び第3項並びに 民事執行法 第48条第2項 《2 登記官は、前項の規定による嘱託に基づ…》 いて差押えの登記をしたときは、その旨及び最高裁判所規則で定める事項を執行裁判所に通知しなければならない。第53条 《不動産の滅失等による強制競売の手続の取消…》 し 不動産の滅失その他売却による不動産の移転を妨げる事情が明らかとなつたときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。 及び 第54条 《差押えの登記の抹まつ消の嘱託 強制競売…》 の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その開始決定に係る差押えの登記の抹まつ消を嘱託しなければならない。 2 前項の規定による嘱託に要する の規定は、前2項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

54条 (不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)

1項 前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記(仮登記を除く。又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分の執行について準用する。

54条の2 (債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行)

1項 第25条の2第1項 《占有移転禁止の仮処分命令係争物の引渡し又…》 は明渡しの請求権を保全するための仮処分命令のうち、次に掲げる事項を内容とするものをいう。以下この条、第54条の二及び第62条において同じ。であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務 の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行は、係争物である不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。

55条 (建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)

1項 建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

2項 第47条第2項 《2 仮差押えの登記をする方法による仮差押…》 えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。 及び第3項並びに 民事執行法 第48条第2項 《2 登記官は、前項の規定による嘱託に基づ…》 いて差押えの登記をしたときは、その旨及び最高裁判所規則で定める事項を執行裁判所に通知しなければならない。第53条 《不動産の滅失等による強制競売の手続の取消…》 し 不動産の滅失その他売却による不動産の移転を妨げる事情が明らかとなつたときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。 及び 第54条 《差押えの登記の抹まつ消の嘱託 強制競売…》 の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その開始決定に係る差押えの登記の抹まつ消を嘱託しなければならない。 2 前項の規定による嘱託に要する の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

56条 (法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託)

1項 法人を代表する者その他法人の役員として登記された者について、その職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、裁判所書記官は、法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。ただし、これらの事項が登記すべきものでないときは、この限りでない。

57条 (仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し)

1項 債務者が 第25条第1項 《裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受…》 けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処 の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、 保全執行 裁判所は、仮処分の執行を取り消さなければならない。

2項 第51条第2項 《2 前項の規定による決定は、第46条にお…》 いて準用する民事執行法第12条第2項の規定にかかわらず、即時にその効力を生ずる。 の規定は、前項の規定による決定について準用する。

4章 仮処分の効力

58条 (不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)

1項 第53条第1項 《不動産に関する権利についての登記仮登記を…》 除く。を請求する権利以下「登記請求権」という。を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。 の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき 登記請求権 に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。

2項 前項の場合においては、 第53条第1項 《不動産に関する権利についての登記仮登記を…》 除く。を請求する権利以下「登記請求権」という。を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。 の仮処分の債権者(同条第2項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第1項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。

3項 第53条第2項 《2 不動産に関する所有権以外の権利の保存…》 、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記以下「保全仮登記」という。をする方法により行う。 の仮処分の債権者が保全すべき 登記請求権 に係る登記をするには、 保全仮登記 に基づく本登記をする方法による。

4項 第53条第2項 《2 不動産に関する所有権以外の権利の保存…》 、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記以下「保全仮登記」という。をする方法により行う。 の仮処分の債権者は、前項の規定により登記をする場合において、その仮処分により保全すべき 登記請求権 に係る権利が不動産の使用又は収益をするものであるときは、不動産の使用若しくは収益をする権利(所有権を除く。又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で、同条第1項の処分禁止の登記に後れるものを抹消することができる。

59条 (登記の抹消の通知)

1項 仮処分の債権者が前条第2項又は第4項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。

2項 前項の規定による通知は、これを発する時の同項の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から1週間を経過した時に到達したものとみなす。

60条 (仮処分命令の更正等)

1項 保全仮登記 に係る権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義における権利の表示と符合しないときは、 第53条第2項 《2 不動産に関する所有権以外の権利の保存…》 、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記以下「保全仮登記」という。をする方法により行う。 の処分禁止の仮処分の命令を発した裁判所は、債権者の申立てにより、その命令を更正しなければならない。

2項 前項の規定による更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。

3項 第1項の規定による更正決定が確定したときは、裁判所書記官は、 保全仮登記 の更正を嘱託しなければならない。

61条 (不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)

1項 前3条の規定は、 第54条 《不動産に関する権利以外の権利についての登…》 又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行 前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記仮登記を除く。 に規定する処分禁止の仮処分の効力について準用する。

62条 (占有移転禁止の仮処分命令の効力)

1項 占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、次に掲げる者に対し、係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。

1号 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたことを知って当該係争物を占有した者

2号 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者

2項 占有移転禁止の仮処分命令の執行後に当該係争物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定する。

63条 (執行文の付与に対する異議の申立ての理由)

1項 前条第1項の本案の債務名義につき同項の債務者以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により当該物を占有していること、又はその仮処分の執行がされたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。

64条 (建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の効力)

1項 第55条第1項 《建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を…》 保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。 の処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行をすることができる。

65条 (詐害行為取消権を保全するための仮処分における解放金に対する権利の行使)

1項 民法 1896年法律第89号第424条第1項 《債権者は、債務者が債権者を害することを知…》 ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。 ただし、その行為によって利益を受けた者以下この款において「受益者」という。がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りで の規定による詐害行為取消権を保全するための仮処分命令において定められた 第25条第1項 《従来の住所又は居所を去った者以下「不在者…》 」という。がその財産の管理人以下この節において単に「管理人」という。を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。 本人の の金銭の額に相当する金銭が供託されたときは、同法第424条第1項の債務者は、供託金の還付を請求する権利(以下「 還付請求権 」という。)を取得する。この場合において、その 還付請求権 は、その仮処分の執行が 第57条第1項 《債務者が第25条第1項の規定により定めら…》 れた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮処分の執行を取り消さなければならない。 の規定により取り消され、かつ、保全すべき権利についての本案の判決が確定した後に、その仮処分の債権者が同法第424条第1項の債務者に対する債務名義によりその還付請求権に対し強制執行をするときに限り、これを行使することができる。

5章 罰則

66条 (公示書等損壊罪)

1項 第52条第1項 《仮処分の執行については、この節に定めるも…》 ののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。 の規定によりその例によることとされる 民事執行法 第168条の2第3項 《3 執行官は、明渡しの催告をしたときは、…》 その旨、引渡し期限及び第5項の規定により債務者が不動産等の占有を移転することを禁止されている旨を、当該不動産等の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。 又は第4項の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者は、1年以下の拘禁刑又は1,010,000円以下の罰金に処する。

67条 (陳述等拒絶の罪)

1項 第52条第1項 《仮処分の執行については、この節に定めるも…》 ののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。 の規定によりその例によることとされる 民事執行法 第168条第2項 《2 執行官は、前項の強制執行をするため同…》 項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。 の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者は、6月以下の拘禁刑又は510,000円以下の罰金に処する。

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