1条 (趣旨)
1項 この法律は、 少年法 (1948年法律第168号)に定める少年の 保護事件 (以下「 保護事件 」という。)に関する手続において同法第3条第1項各号に掲げる審判に付すべき少年に該当する事由(以下「 審判事由 」という。)の存在が認められるに至らなかった少年等に対し、その身体の自由の拘束等による補償を行う措置を定めるものとする。
2条 (補償の要件)
1項 少年法 に規定する 保護事件 を終結させるいずれかの決定においてその全部又は一部の 審判事由 の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされ、その決定が確定した場合において、その決定を受けた者が当該全部又は一部の審判事由に関して次に掲げる身体の自由の拘束を受けたものであるときは、国は、その者に対し、この法律の定めるところにより、当該身体の自由の拘束による補償をするものとする。
1号 少年法 の規定による同行、同法第17条第1項第2号の措置(同法第17条の4第1項又は第26条の2の規定による措置を含む。)又は同法第24条第1項第3号若しくは第64条第1項第2号(同法第66条第1項の規定による決定を受けた場合に限る。)若しくは第3号の保護処分( 少年院法 (2014年法律第58号)
第138条第2項
《2 前項の申請を受けた家庭裁判所は、当該…》
申請に係る保護処分在院者について、その申請に理由があると認めるときは、その収容を継続する旨の決定をしなければならない。 この場合においては、当該決定と同時に、その者が23歳を超えない期間の範囲内で、少
若しくは第4項(同法第139条第3項において準用する場合を含む。)若しくは第139条第2項の規定による措置又は 更生保護法 (2007年法律第88号)
第72条第1項
《前条の申請を受けた家庭裁判所は、当該申請…》
に係る少年院仮退院者について、相当と認めるときは、これを少年院に戻して収容する旨の決定をすることができる。
若しくは
第73条の2第1項
《地方委員会は、保護観察所の長の申出により…》
、少年院仮退院者少年法第64条第1項第3号の保護処分に付されているものに限る。第73条の4第1項において同じ。が遵守事項を遵守せず、少年院に収容するのを相当と認めるときは、決定をもって、第41条の規定
の規定による措置を含む。)に基づく身体の自由の拘束並びに 更生保護法 の規定による引致及び留置
2号 刑事訴訟法 (1948年法律第131号)の規定による逮捕、勾留及び勾引、同法第167条第1項( 少年法
第14条第2項
《2 刑事訴訟法中、裁判所の行う証人尋問、…》
鑑定、通訳及び翻訳に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する。
において準用する場合を含む。)又は 刑事訴訟法
第224条第2項
《裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは…》
、第167条の場合に準じてその処分をしなければならない。 この場合には、第167条の2の規定を準用する。
の規定による留置並びに 刑事補償法 (1950年法律第1号)
第26条
《逃亡犯罪人の引渡を請求した場合における補…》
償 日本国が外国に対し逃亡犯罪人の引渡を請求した場合において、当該外国がその引渡のためにした抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留又は拘禁とみなす。
に規定する外国がした抑留又は拘禁
2項 審判事由 の存在が認められないことにより 少年法
第27条の2第1項
《保護処分の継続中、本人に対し審判権がなか…》
つたこと、又は14歳に満たない少年について、都道府県知事若しくは児童相談所長から送致の手続がなかつたにもかかわらず、保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、保護処分をした家庭裁
又は第2項の規定による保護処分の取消しの決定が確定した場合において、当該決定を受けた者が前項各号に掲げる身体の自由の拘束又は同法第24条の2の規定による没取を受けたものであるときも、同項と同様とする。
3条 (補償をしないことができる場合)
1項 次の各号のいずれかに該当するときは、前条の規定にかかわらず、補償の全部又は一部をしないことができる。
1号 本人が、家庭裁判所の調査若しくは審判又は捜査を誤らせる目的で、虚偽の自白をし、その他 審判事由 があることの証拠を作ることにより、身体の自由の拘束を受け、又は没取を受けるに至ったと認められるとき。
2号 数個の 審判事由 のうちその一部のみの存在が認められない場合において、本人が受けた身体の自由の拘束が他の審判事由をも理由とするものであったとき、又は当該身体の自由の拘束がされなかったとしたならば他の審判事由を理由として身体の自由の拘束をする必要があったと認められるとき。
3号 本人が補償を辞退しているときその他補償の必要性を失わせ又は減殺する特別の事情があるとき。
4条 (補償の内容)
1項 身体の自由の拘束による補償においては、その拘束の日数に応じて、 刑事補償法
第4条第1項
《抑留又は拘禁による補償においては、前条及…》
び次条第2項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、1日1,000円以上12,500円以下の割合による額の補償金を交付する。 拘禁刑若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。
に定める1日当たりの割合の範囲内で、相当と認められる額の補償金を交付する。
2項 没取による補償においては、没取に係る物を返付し、これを返付することができないときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付する。
5条 (補償に関する決定)
1項 補償の要否及び補償の内容についての判断は、
第2条
《補償の要件 少年法に規定する保護事件を…》
終結させるいずれかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされ、その決定が確定した場合におい
に規定する決定をした家庭裁判所が、決定をもって行う。
2項 前項の補償に関する決定は、
第2条
《補償の要件 少年法に規定する保護事件を…》
終結させるいずれかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされ、その決定が確定した場合におい
に規定する決定が確定した日から30日以内にするように努めなければならない。
3項 家庭裁判所は、第1項の補償に関する決定の告知をした日から14日以内に本人からその変更をすべき旨の申出があった場合において、相当と認めるときは、決定をもって、これを変更することができる。
6条 (特別関係者に対する補償)
1項 前条第1項の補償に関する決定を受ける前に本人が死亡した場合において、その特別関係者(本人の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)、子、父母、祖父母若しくは兄弟姉妹であって本人の死亡の当時本人と生計を同じくしていたもの又はこれらの者以外の者であって
第2条
《補償の要件 少年法に規定する保護事件を…》
終結させるいずれかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされ、その決定が確定した場合におい
に規定する決定の当時本人の保護者( 少年法
第2条第2項
《2 この法律において「保護者」とは、少年…》
に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。
に規定する者をいう。)であったものをいう。以下同じ。)から申出があり、かつ、補償をすることが相当と認められるときは、国は、前条第1項の家庭裁判所の決定により、本人が生存していたとしたならば受けたものと認められる補償と同1の補償をすることができる。
2項 前項の場合において、2人以上の特別関係者に補償をするときは、これを等分する。ただし、等分することが相当でないと認められる特別の事情があるときは、これと異なる配分を定めることができる。
3項 第1項の申出は、本人が死亡した日から60日以内にしなければならない。
7条 (調査)
1項 家庭裁判所は、補償に関する決定をするに当たっては、必要な調査を行い、又は家庭裁判所調査官に命じて必要な調査を行わせることができる。この場合における家庭裁判所の調査については、 少年法
第14条
《証人尋問・鑑定・通訳・翻訳 家庭裁判所…》
は、証人を尋問し、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。 2 刑事訴訟法中、裁判所の行う証人尋問、鑑定、通訳及び翻訳に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する
、
第16条
《援助、協力 家庭裁判所は、調査及び観察…》
のため、警察官、保護観察官、保護司、児童福祉司児童福祉法第12条の3第2項第6号に規定する児童福祉司をいう。第26条第1項において同じ。又は児童委員に対して、必要な援助をさせることができる。 2 家庭
、
第30条
《証人等の費用 証人、鑑定人、翻訳人及び…》
通訳人に支給する旅費、日当、宿泊料その他の費用の額については、刑事訴訟費用に関する法令の規定を準用する。 2 参考人は、旅費、日当、宿泊料を請求することができる。 3 参考人に支給する費用は、これを証
及び
第30条の2
《 家庭裁判所は、第16条第1項の規定によ…》
り保護司又は児童委員をして、調査及び観察の援助をさせた場合には、最高裁判所の定めるところにより、その費用の一部又は全部を支払うことができる。
の規定を準用する。
8条 (補償の払渡し)
1項 補償金の払渡し及び没取に係る物の返付(以下「 補償の払渡し 」という。)は、
第5条第1項
《補償の要否及び補償の内容についての判断は…》
、第2条に規定する決定をした家庭裁判所が、決定をもって行う。
又は
第6条第1項
《前条第1項の補償に関する決定を受ける前に…》
本人が死亡した場合において、その特別関係者本人の配偶者婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。、子、父母、祖父母若しくは兄弟姉妹であって本人の死亡の当時本人と生計を同じくし
の決定をした家庭裁判所が行う。
9条 (準用)
1項 刑事補償法
第5条
《損害賠償との関係 この法律は、補償を受…》
けるべき者が国家賠償法1947年法律第125号その他の法律の定めるところにより損害賠償を請求することを妨げない。 2 補償を受けるべき者が同1の原因について他の法律によつて損害賠償を受けた場合において
の規定はこの法律による補償と他の法律による損害賠償との関係について、同法第22条の規定は 補償の払渡し について、 刑事訴訟法
第55条第1項
《期間の計算については、時で計算するものは…》
、即時からこれを起算し、日、月又は年で計算するものは、初日を算入しない。 但し、時効期間の初日は、時間を論じないで1日としてこれを計算する。
及び第3項の規定はこの法律に定める期間の計算について準用する。
10条 (最高裁判所の規則)
1項 この法律に定めるもののほか、決定の告知及び 補償の払渡し の方法その他補償の実施に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。