1条 (趣旨)
1項 この法律は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るため、特定非常災害が発生した場合における行政上の権利利益に係る満了日の延長、履行されなかった義務に係る免責、法人の破産手続開始の決定の特例、相続の承認又は放棄をすべき期間の特例、 民事調停法 (1951年法律第222号)による調停の申立ての手数料の特例及び 景観法 (2004年法律第110号)による応急仮設住宅の存続期間の特例について定めるものとする。
2条 (特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定)
1項 著しく異常かつ激甚な非常災害であって、当該非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図り、又は当該非常災害により債務超過となった法人の存立、当該非常災害により相続の承認若しくは放棄をすべきか否かの判断を的確に行うことが困難となった者の保護、当該非常災害に起因する民事に関する紛争の迅速かつ円滑な解決若しくは当該非常災害に係る応急仮設住宅の入居者の居住の安定に資するための措置を講ずることが特に必要と認められるものが発生した場合には、当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする。この場合において、当該政令には、当該特定非常災害が発生した日を特定非常災害発生日として定めるものとする。
2項 前項の政令においては、次条以下に定める措置のうち当該特定非常災害に対し適用すべき措置を指定しなければならない。当該指定の後、新たにその余の措置を適用する必要が生じたときは、当該措置を政令で追加して指定するものとする。
3条 (行政上の権利利益に係る満了日の延長に関する措置)
1項 次に掲げる権利利益(以下「 特定権利利益 」という。)に係る法律、政令又は 内閣府設置法 (1999年法律第89号)
第7条第3項
《3 内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行…》
政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣府令を発することができる。
若しくは
第58条第4項
《4 各委員会及び各庁の長官は、法律の定め…》
るところにより、政令及び内閣府令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。
( 宮内庁法 (1947年法律第70号)
第18条第1項
《内閣府設置法1999年法律第89号第56…》
条及び第57条の規定は宮内庁について、同法第58条第4項の規定は長官について準用する。
において準用する場合を含む。)、 デジタル庁設置法 (2021年法律第36号)
第7条第3項
《3 内閣総理大臣は、デジタル庁に係る主任…》
の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、デジタル庁の命令としてデジタル庁令を発することができる。
若しくは 国家行政組織法 (1948年法律第120号)
第12条第1項
《各省大臣は、主任の行政事務について、法律…》
若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。
若しくは
第13条第1項
《各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定め…》
るところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。
の命令若しくは 内閣府設置法
第7条第5項
《5 内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務につ…》
いて、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
若しくは
第58条第6項
《6 各委員会及び各庁の長官は、その機関の…》
所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
若しくは 宮内庁法
第8条第5項
《5 長官は、宮内庁の所掌事務について、公…》
示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
、 デジタル庁設置法
第7条第5項
《5 内閣総理大臣は、デジタル庁の所掌事務…》
について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
若しくは 国家行政組織法
第14条第1項
《各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その…》
機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
の告示(以下「 法令 」という。)の施行に関する事務を所管する国の行政機関(内閣府、宮内庁並びに 内閣府設置法
第49条第1項
《内閣府には、その外局として、委員会及び庁…》
を置くことができる。
及び第2項に規定する機関、デジタル庁並びに 国家行政組織法
第3条第2項
《2 行政組織のため置かれる国の行政機関は…》
、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。
に規定する機関をいう。以下同じ。)の長(当該国の行政機関が 内閣府設置法
第49条第1項
《内閣府には、その外局として、委員会及び庁…》
を置くことができる。
若しくは第2項又は 国家行政組織法
第3条第2項
《2 行政組織のため置かれる国の行政機関は…》
、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。
に規定する委員会である場合にあっては、当該委員会)は、特定非常災害の被害者の 特定権利利益 であってその存続期間が満了前であるものを保全し、又は当該特定権利利益であってその存続期間が既に満了したものを回復させるため必要があると認めるときは、特定非常災害発生日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日(以下「 延長期日 」という。)を限度として、これらの特定権利利益に係る満了日を延長する措置をとることができる。
1号 法令 に基づく行政庁の処分(特定非常災害発生日以前に行ったものに限る。)により付与された権利その他の利益であって、その存続期間が特定非常災害発生日以後に満了するもの
2号 法令 に基づき何らかの利益を付与する処分その他の行為を当該行為に係る権限を有する行政機関(国の行政機関及びこれらに置かれる機関並びに地方公共団体の機関に限る。)に求めることができる権利であって、その存続期間が特定非常災害発生日以後に満了するもの
2項 前項の規定による延長の措置は、告示により、当該措置の対象となる 特定権利利益 の根拠となる 法令 の条項ごとに、地域を単位として、当該措置の対象者及び当該措置による延長後の満了日を指定して行うものとする。
3項 第1項の規定による延長の措置のほか、同項第1号の行政庁又は同項第2号の行政機関(次項において「 行政庁等 」という。)は、特定非常災害の被害者であって、その 特定権利利益 について保全又は回復を必要とする理由を記載した書面により満了日の延長の申出を行ったものについて、 延長期日 までの期日を指定してその満了日を延長することができる。
4項 延長期日 が定められた後、第1項又は前項の規定による満了日の延長の措置を延長期日の翌日以後においても特に継続して実施する必要があると認められるときは、第1項の国の行政機関の長又は 行政庁等 は、同項又は前項の例に準じ、 特定権利利益 の根拠となる 法令 の条項ごとに新たに政令で定める日を限度として、当該特定権利利益に係る満了日を更に延長する措置をとることができる。
5項 前各項の規定にかかわらず、災害その他やむを得ない事由がある場合における 特定権利利益 に係る期間に関する措置について他の 法令 に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4条 (期限内に履行されなかった義務に係る免責に関する措置)
1項 特定非常災害発生日以後に 法令 に規定されている履行期限が到来する義務(以下「 特定義務 」という。)であって、特定非常災害により当該履行期限が到来するまでに履行されなかったものについて、その不履行に係る行政上及び刑事上の責任(過料に係るものを含む。以下単に「責任」という。)が問われることを猶予する必要があるときは、政令で、特定非常災害発生日から起算して4月を超えない範囲内において 特定義務 の不履行についての免責に係る期限(以下「 免責期限 」という。)を定めることができる。
2項 免責期限 が定められた場合において、免責期限が到来する日の前日までに履行期限が到来する 特定義務 が免責期限が到来する日までに履行されたときは、当該特定義務が特定非常災害により履行されなかったことについて、責任は問われないものとする。
3項 免責期限 が定められた後、前2項に定める免責の措置を免責期限が到来する日の翌日以後においても特に継続して実施する必要があると認められるときは、政令で、 特定義務 の根拠となる 法令 の条項ごとに、新たに、当該特定義務の不履行についての免責に係る期限を定めることができる。前項の規定は、この場合について準用する。
4項 前3項の規定にかかわらず、 特定義務 が災害その他やむを得ない事由によりその履行期限が到来するまでに履行されなかった場合について他の 法令 に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
5条 (債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置)
1項 特定非常災害によりその財産をもって債務を完済することができなくなった法人に対しては、
第2条第1項
《著しく異常かつ激甚な非常災害であって、当…》
該非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図り、又は当該非常災害により債務超過となった法人の存立、当該非常災害により相続の承認若しくは放棄をすべきか否かの判断を的確に行うことが困難となった者の保護
又は第2項の政令でこの条に定める措置を指定するものの施行の日以後特定非常災害発生日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、破産手続開始の決定をすることができない。ただし、その法人が、清算中である場合、支払をすることができない場合又は破産手続開始の申立てをした場合は、この限りでない。
2項 裁判所は、法人に対して破産手続開始の申立てがあった場合において、前項の規定によりその法人に対して破産手続開始の決定をすることができないときは、当該決定を留保する決定をしなければならない。
3項 裁判所は、前項の規定による決定に係る法人が支払をすることができなくなったとき、その他同項の規定による決定をすべき第1項に規定する事情について変更があったときは、申立てにより又は職権で、その決定を取り消すことができる。
4項 前2項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5項 第1項本文の法人の理事又はこれに準ずる者は、特定非常災害発生日から同項に規定する政令で定める日までの間、他の法律の規定にかかわらず、その法人について破産手続開始の申立てをすることを要しない。
6条 (相続の承認又は放棄をすべき期間の特例に関する措置)
1項 相続人(次の各号に掲げる場合にあっては、当該各号に定める者)が、特定非常災害発生日において、特定非常災害により多数の住民が避難し、又は住所を移転することを余儀なくされた地区として政令で定めるものに住所を有していた場合において、 民法 (1896年法律第89号)
第915条第1項
《相続人は、自己のために相続の開始があった…》
ことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
の期間(この期間が同項ただし書の規定によって伸長された場合にあっては、その伸長された期間。以下この条において同じ。)の末日が特定非常災害発生日以後当該特定非常災害発生日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日の前日までに到来するときは、同項の期間は、当該政令で定める日まで伸長する。
1号 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡した場合その者の相続人
2号 相続人(前号の場合にあっては、同号に定める者)が未成年者又は成年被後見人である場合その法定代理人
7条 (民事調停法による調停の申立ての手数料の特例に関する措置)
1項 特定非常災害により借地借家関係その他の民事上の法律関係に著しい混乱を生ずるおそれがある地区として政令で定めるものに特定非常災害発生日において住所、居所、営業所又は事務所を有していた者が、当該特定非常災害に起因する民事に関する紛争につき、特定非常災害発生日以後当該特定非常災害発生日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日までの間に、 民事調停法 による調停の申立てをする場合には、 民事訴訟費用等に関する法律 (1971年法律第40号)
第3条第1項
《別表第1の上欄に掲げる申立てをするには、…》
申立ての区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる額の手数料を納めなければならない。
の規定にかかわらず、その申立ての手数料を納めることを要しない。
8条 (景観法による応急仮設住宅の存続期間の特例に関する措置)
1項 市町村長は、 景観法
第77条第1項
《非常災害があった場合において、その発生し…》
た区域又はこれに隣接する区域で市町村長が指定するものの内においては、災害により破損した建築物若しくは工作物の応急の修繕又は次の各号のいずれかに該当する応急仮設建築物の建築等若しくは応急仮設工作物の建設
の非常災害又は同条第2項の災害が特定非常災害である場合において、被災者の住宅の需要に応ずるに足りる適当な住宅が不足するため同条第4項に規定する期間を超えて当該被災者の居住の用に供されている応急仮設建築物である住宅を存続させる必要があり、かつ、これを存続させても良好な景観の形成に著しい支障がないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、更に1年を超えない範囲内において同項の許可の期間を延長することができる。当該延長に係る期間が満了した場合において、これを更に延長しようとするときも、同様とする。