臓器の移植に関する法律《本則》

法番号:1997年法律第104号

略称: 臓器移植法

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1条 (目的)

1項 この法律は、臓器の移植についての基本的理念を定めるとともに、臓器の機能に障害がある者に対し臓器の機能の回復又は付与を目的として行われる臓器の移植術(以下単に「移植術」という。)に使用されるための臓器を死体から摘出すること、臓器売買等を禁止すること等につき必要な事項を規定することにより、移植医療の適正な実施に資することを目的とする。

2条 (基本的理念)

1項 死亡した者が生存中に有していた自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思は、尊重されなければならない。

2項 移植術に使用されるための臓器の提供は、任意にされたものでなければならない。

3項 臓器の移植は、移植術に使用されるための臓器が人道的精神に基づいて提供されるものであることにかんがみ、移植術を必要とする者に対して適切に行われなければならない。

4項 移植術を必要とする者に係る移植術を受ける機会は、公平に与えられるよう配慮されなければならない。

3条 (国及び地方公共団体の責務)

1項 及び地方公共団体は、移植医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

4条 (医師の責務)

1項 医師は、臓器の移植を行うに当たっては、診療上必要な注意を払うとともに、移植術を受ける者又はその家族に対し必要な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。

5条 (定義)

1項 この法律において「 臓器 」とは、人の心臓、肺、肝臓、じん臓その他厚生労働省令で定める内臓及び眼球をいう。

6条 (臓器の摘出)

1項 医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には、移植術に使用されるための 臓器 を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。

1号 死亡した者が生存中に当該 臓器 を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。

2号 死亡した者が生存中に当該 臓器 を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。

2項 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。

3項 臓器 の摘出に係る前項の判定は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、行うことができる。

1号 当該者が第1項第1号に規定する意思を書面により表示している場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないとき。

2号 当該者が第1項第1号に規定する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その者の家族が当該判定を行うことを書面により承諾しているとき。

4項 臓器 の摘出に係る第2項の判定は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する2人以上の医師(当該判定がなされた場合に当該脳死した者の身体から臓器を摘出し、又は当該臓器を使用した移植術を行うこととなる医師を除く。)の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。

5項 前項の規定により第2項の判定を行った医師は、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。

6項 臓器 の摘出に係る第2項の判定に基づいて脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は、あらかじめ、当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。

6条の2 (親族への優先提供の意思表示)

1項 移植術に使用されるための 臓器 を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。

7条 (臓器の摘出の制限)

1項 医師は、 第6条 《臓器の摘出 医師は、次の各号のいずれか…》 に該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体脳死した者の身体を含む。以下同じ。から摘出することができる。 1 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により の規定により死体から 臓器 を摘出しようとする場合において、当該死体について 刑事訴訟法 1948年法律第131号第229条第1項 《変死者又は変死の疑のある死体があるときは…》 、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。 の検視その他の犯罪捜査に関する手続が行われるときは、当該手続が終了した後でなければ、当該死体から臓器を摘出してはならない。

8条 (礼意の保持)

1項 第6条 《臓器の摘出 医師は、次の各号のいずれか…》 に該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体脳死した者の身体を含む。以下同じ。から摘出することができる。 1 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により の規定により死体から 臓器 を摘出するに当たっては、礼意を失わないよう特に注意しなければならない。

9条 (使用されなかった部分の臓器の処理)

1項 病院又は診療所の管理者は、 第6条 《臓器の摘出 医師は、次の各号のいずれか…》 に該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体脳死した者の身体を含む。以下同じ。から摘出することができる。 1 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により の規定により死体から摘出された 臓器 であって、移植術に使用されなかった部分の臓器を、厚生労働省令で定めるところにより処理しなければならない。

10条 (記録の作成、保存及び閲覧)

1項 医師は、 第6条第2項 《2 前項に規定する「脳死した者の身体」と…》 は、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。 の判定、同条の規定による 臓器 の摘出又は当該臓器を使用した移植術(以下この項において「 判定等 」という。)を行った場合には、厚生労働省令で定めるところにより、 判定等 に関する記録を作成しなければならない。

2項 前項の記録は、病院又は診療所に勤務する医師が作成した場合にあっては当該病院又は診療所の管理者が、病院又は診療所に勤務する医師以外の医師が作成した場合にあっては当該医師が、5年間保存しなければならない。

3項 前項の規定により第1項の記録を保存する者は、移植術に使用されるための 臓器 を提供した遺族その他の厚生労働省令で定める者から当該記録の閲覧の請求があった場合には、厚生労働省令で定めるところにより、閲覧を拒むことについて正当な理由がある場合を除き、当該記録のうち個人の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして厚生労働省令で定めるものを閲覧に供するものとする。

11条 (臓器売買等の禁止)

1項 何人も、移植術に使用されるための 臓器 を提供すること若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。

2項 何人も、移植術に使用されるための 臓器 の提供を受けること若しくは受けたことの対価として財産上の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

3項 何人も、移植術に使用されるための 臓器 を提供すること若しくはその提供を受けることのあっせんをすること若しくはあっせんをしたことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。

4項 何人も、移植術に使用されるための 臓器 を提供すること若しくはその提供を受けることのあっせんを受けること若しくはあっせんを受けたことの対価として財産上の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

5項 何人も、 臓器 が前各項の規定のいずれかに違反する行為に係るものであることを知って、当該臓器を摘出し、又は移植術に使用してはならない。

6項 第1項から第4項までの対価には、交通、通信、移植術に使用されるための 臓器 の摘出、保存若しくは移送又は移植術等に要する費用であって、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくはその提供を受けること又はそれらのあっせんをすることに関して通常必要であると認められるものは、含まれない。

12条 (業として行う臓器のあっせんの許可)

1項 業として移植術に使用されるための 臓器 死体から摘出されるもの又は摘出されたものに限る。)を提供すること又はその提供を受けることのあっせん(以下「 業として行う臓器のあっせん 」という。)をしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

2項 厚生労働大臣は、前項の許可の申請をした者が次の各号のいずれかに該当する場合には、同項の許可をしてはならない。

1号 営利を目的とするおそれがあると認められる者

2号 業として行う臓器のあっせん に当たって当該 臓器 を使用した移植術を受ける者の選択を公平かつ適正に行わないおそれがあると認められる者

13条 (秘密保持義務)

1項 前条第1項の許可を受けた者(以下「 臓器あっせん機関 」という。)若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、 業として行う臓器のあっせん に関して職務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。

14条 (帳簿の備付け等)

1項 臓器 あっせん機関は、厚生労働省令で定めるところにより、帳簿を備え、その業務に関する事項を記載しなければならない。

2項 臓器 あっせん機関は、前項の帳簿を、最終の記載の日から5年間保存しなければならない。

15条 (報告の徴収等)

1項 厚生労働大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、 臓器 あっせん機関に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、臓器あっせん機関の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2項 前項の規定により立入検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3項 第1項の規定による立入検査及び質問をする権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

16条 (指示)

1項 厚生労働大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、 臓器 あっせん機関に対し、その業務に関し必要な指示を行うことができる。

17条 (許可の取消し)

1項 厚生労働大臣は、 臓器 あっせん機関が前条の規定による指示に従わないときは、 第12条第1項 《業として移植術に使用されるための臓器死体…》 から摘出されるもの又は摘出されたものに限る。を提供すること又はその提供を受けることのあっせん以下「業として行う臓器のあっせん」という。をしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごと の許可を取り消すことができる。

17条の2 (移植医療に関する啓発等)

1項 及び地方公共団体は、国民があらゆる機会を通じて移植医療に対する理解を深めることができるよう、移植術に使用されるための 臓器 を死亡した後に提供する意思の有無を運転免許証及び個人番号カード( 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 2013年法律第27号第2条第7項 《7 この法律において「個人番号カード」と…》 は、次に掲げる事項のうち第5号に掲げるもの以外のもの外国人住民住民基本台帳法第30条の45に規定する外国人住民をいう。次項において同じ。にあっては、次に掲げる事項のうち第2号及び第5号に掲げるもの以外 に規定する個人番号カードをいう。)等に記載することができることとする等、移植医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。

18条 (経過措置)

1項 この法律の規定に基づき厚生労働省令を制定し、又は改廃する場合においては、その厚生労働省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

19条 (厚生労働省令への委任)

1項 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

20条 (罰則)

1項 第11条第1項 《何人も、移植術に使用されるための臓器を提…》 供すること若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。 から第5項までの規定に違反した者は、5年以下の拘禁刑若しくは5,010,000円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2項 前項の罪は、 刑法 1907年法律第45号第3条 《国民の国外犯 この法律は、日本国外にお…》 いて次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。 1 第108条現住建造物等放火及び第109条第1項非現住建造物等放火の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪 2 第119条現住建 の例に従う。

21条

1項 第6条第5項 《5 前項の規定により第2項の判定を行った…》 医師は、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。 の書面に虚偽の記載をした者は、3年以下の拘禁刑又は510,000円以下の罰金に処する。

2項 第6条第6項 《6 臓器の摘出に係る第2項の判定に基づい…》 て脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は、あらかじめ、当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。 の規定に違反して同条第5項の書面の交付を受けないで 臓器 の摘出をした者は、1年以下の拘禁刑又は310,000円以下の罰金に処する。

22条

1項 第12条第1項 《業として移植術に使用されるための臓器死体…》 から摘出されるもの又は摘出されたものに限る。を提供すること又はその提供を受けることのあっせん以下「業として行う臓器のあっせん」という。をしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごと の許可を受けないで、 業として行う臓器のあっせん をした者は、1年以下の拘禁刑若しくは1,010,000円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

23条

1項 次の各号のいずれかに該当する者は、510,000円以下の罰金に処する。

1号 第9条 《使用されなかった部分の臓器の処理 病院…》 又は診療所の管理者は、第6条の規定により死体から摘出された臓器であって、移植術に使用されなかった部分の臓器を、厚生労働省令で定めるところにより処理しなければならない。 の規定に違反した者

2号 第10条第1項 《医師は、第6条第2項の判定、同条の規定に…》 よる臓器の摘出又は当該臓器を使用した移植術以下この項において「判定等」という。を行った場合には、厚生労働省令で定めるところにより、判定等に関する記録を作成しなければならない。 の規定に違反して、記録を作成せず、若しくは虚偽の記録を作成し、又は同条第2項の規定に違反して記録を保存しなかった者

3号 第13条 《秘密保持義務 前条第1項の許可を受けた…》 者以下「臓器あっせん機関」という。若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、業として行う臓器のあっせんに関して職務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。 の規定に違反した者

4号 第14条第1項 《臓器あっせん機関は、厚生労働省令で定める…》 ところにより、帳簿を備え、その業務に関する事項を記載しなければならない。 の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は同条第2項の規定に違反して帳簿を保存しなかった者

5号 第15条第1項 《厚生労働大臣は、この法律を施行するため必…》 要があると認めるときは、臓器あっせん機関に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、臓器あっせん機関の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。 の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

2項 前項第3号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

24条

1項 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、 第20条 《罰則 第11条第1項から第5項までの規…》 定に違反した者は、5年以下の拘禁刑若しくは5,010,000円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 2 前項の罪は、刑法1907年法律第45号第3条の例に従う。第22条 《 第12条第1項の許可を受けないで、業と…》 して行う臓器のあっせんをした者は、1年以下の拘禁刑若しくは1,010,000円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 及び前条(同条第1項第3号を除く。)の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

2項 前項の規定により法人でない団体を処罰する場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

25条

1項 第20条第1項 《第11条第1項から第5項までの規定に違反…》 した者は、5年以下の拘禁刑若しくは5,010,000円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 の場合において供与を受けた財産上の利益は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

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