1条 (目的)
1項 この法律は、金融機関等が行う特定金融取引の一括清算についての破産手続等における取扱いを確定することにより、金融機関等が行う特定金融取引の決済の安定性の確保とこれによる特定金融取引の活性化を図り、もって我が国の金融の機能に対する内外の信頼の向上と国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 特定金融取引 」とは、金利、通貨の価格、金融商品市場( 金融商品取引法 (1948年法律第25号)
第2条第14項
《14 この法律において「金融商品市場」と…》
は、有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を行う市場商品関連市場デリバティブ取引のみを行うものを除く。をいう。
に規定する金融商品市場をいう。)における相場その他の指標に係る変動、市場間の格差等(以下この項において「 金利変動等 」という。)に基づいて算出される金銭の授受を約する取引その他の 金利変動等 を利用して行われる取引のうち、同条第22項に規定する店頭デリバティブ取引その他の内閣府令で定めるものをいう。
2項 この法律において「 金融機関等 」とは、次に掲げる法人をいう。
1号 銀行法(1981年法律第59号)第2条第1項に規定する銀行又は 長期信用銀行法 (1952年法律第187号)
第2条
《定義 この法律において「長期信用銀行」…》
とは、第4条第1項の規定により内閣総理大臣の免許を受けた者をいう。
に規定する長期信用銀行
2号 金融商品取引法
第2条第9項
《9 この法律において「金融商品取引業者」…》
とは、第29条の規定により内閣総理大臣の登録を受けた者をいう。
に規定する金融商品取引業者(同法第28条第1項に規定する第1種金融商品取引業を行う者(同法第29条の4の2第8項に規定する第1種少額電子募集取扱業者及び同法第29条の4の4第7項に規定する非上場有価証券特例仲介等業者を除く。)に限る。)
3号 その他我が国の法令により営業若しくは事業の免許、登録等を受けている法人又は特別の法律により設立された法人であって、自己又は顧客の計算において 特定金融取引 を相当の規模で行うものとして政令で定めるもの
3項 この法律において「 破産手続等 」とは、破産手続、再生手続又は更生手続をいう。
4項 この法律において「 一括清算事由 」とは、破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立てをいう。
5項 この法律において「 基本契約書 」とは、 特定金融取引 を行おうとする 金融機関等 とその相手方との間において二以上の特定金融取引を継続して行うために作成される契約書で、契約の当事者間において行われる特定金融取引に係る債務についてその履行の方法その他当該特定金融取引に関する基本的事項を定めるものをいう。
6項 この法律において「 一括清算 」とは、 基本契約書 に基づき 特定金融取引 を行っている当事者の一方に 一括清算事由 が生じた場合には、当該当事者の双方の意思にかかわらず、当該一括清算事由が生じた時において、当該基本契約書に基づいて行われている全ての特定金融取引についてその時における当該特定金融取引のそれぞれにつき内閣府令で定めるところにより算出した評価額を合算して得られる純合計額が、当該当事者間における1の債権又は1の債務となることをいう。
3条 (一括清算と破産手続等との関係)
1項 破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定(以下この条において「 破産手続開始決定等 」という。)がされた者が、 一括清算 の約定をした 基本契約書 に基づき 特定金融取引 を行っていた 金融機関等 又はその相手方である場合には、当該基本契約書に基づいて行われていた全ての特定金融取引についてこれらの者が有する次の各号に掲げる法律に規定する当該各号に定める財産又は債権は、当該 破産手続開始決定等 に係る 一括清算事由 が生じたことにより、それぞれ、当該破産手続開始決定等がされた者が当該約定に基づき有することとなった1の債権又はその相手方が当該約定に基づき有することとなった1の債権とする。
1号 破産法 (2004年法律第75号)破産財団に属する財産又は破産債権
2号 民事再生法 (1999年法律第225号)再生手続開始の時に再生債務者に属する財産又は再生債権
3号 会社更生法 (2002年法律第154号)又は 金融機関等 の更生手続の特例等に関する法律(1996年法律第95号)更生手続開始の時に株式会社若しくは同法第2条第2項に規定する協同組織金融機関若しくは同条第6項に規定する相互会社に属する財産又は 会社更生法
第2条第12項
《12 この法律において「更生債権等」とは…》
、更生債権又は更生担保権をいう。 ただし、次章第2節においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権又は更生担保権となるものをいう。
本文若しくは 金融機関等の更生手続の特例等に関する法律
第4条第12項
《12 この章において「更生債権等」とは、…》
更生債権又は更生担保権をいう。 ただし、次節第2款においては、開始前協同組織金融機関について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権又は更生担保権となるものをいう。
本文若しくは
第169条第12項
《12 この章において「更生債権等」とは、…》
更生債権又は更生担保権をいう。 ただし、次節第2款においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権又は更生担保権となるものをいう。
本文に規定する更生債権等
4条
1項 更生手続開始の決定がされた者( 一括清算 の約定をした 基本契約書 に基づき 特定金融取引 を行っていた 金融機関等 又はその相手方に限る。以下この条において同じ。)の特定金融取引の相手方が、前条の規定により1の債権(以下この条において「 一括清算後債権 」という。)を有することとなる場合において、当該更生手続開始の決定がされた者と当該相手方との間において更生手続開始の申立て前に締結された担保権の設定を目的とする契約(その契約条項中において、基本契約書に基づき特定金融取引を行っている当事者の一方に更生手続開始の申立てがあった場合は、担保権者に弁済として担保権の目的である財産を帰属させることができることを約定しているものに限る。)に基づく一括清算後債権に係る担保権を有するときは、当該担保権の目的である財産(特定金融取引を行う当事者が相手方に対し債務の履行を担保するために預託する有価証券その他の内閣府令で定めるものに限る。以下この条において「 一括清算対象財産 」という。)は、当該更生手続開始の申立てがあった時において当該相手方に帰属する。
2項 前項の場合において、当該相手方に帰属する 一括清算 対象財産の評価額(内閣府令で定めるところにより算出した額をいう。次項において同じ。)が一括清算後債権の額を超えるときは、当該相手方は、当該更生手続開始の決定がされた者に対して、その超える額に相当する金銭を遅滞なく支払わなければならない。ただし、当該一括清算対象財産の一部をもって、当該金銭の全部又は一部に代えることができる。
3項 第1項の規定により 一括清算 対象財産が更生手続開始の決定がされた者の相手方に帰属するときは、一括清算対象財産の評価額(その額が一括清算後債権の額を超えるときは、一括清算後債権の額)を一括清算後債権の額から控除するものとする。
4項 前3項(第2項ただし書を除く。)の規定は、更生手続開始の決定がされた者とその 特定金融取引 の相手方との間において、更生手続開始の申立て前に担保権の設定を目的とする契約(その契約条項中において、 基本契約書 に基づき特定金融取引を行っている当事者の一方に更生手続開始の申立てがあった場合は、担保権者に担保権の目的である財産を処分させることができることを約定しているものに限る。)が締結されている場合に準用する。この場合において、第1項中「当該更生手続開始の申立てがあった時」とあるのは「当該相手方が更生手続開始の申立て以後更生手続開始前に第三者に譲渡した時」と、「当該相手方に」とあるのは「当該第三者に」と、第2項中「当該相手方に」とあるのは「当該第三者に」と、「評価額内閣府令で定めるところにより算出した額をいう」とあるのは「譲渡価額その額が内閣府令で定めるところにより算出した評価額に照らして不当に低いときは、当該評価額」と、前項中「更生手続開始の決定がされた者の相手方」とあるのは「第三者」と、「評価額」とあるのは「譲渡価額」と読み替えるものとする。