食料・農業・農村基本法《本則》

法番号:1999年法律第106号

略称: 新農業基本法

附則 >  

1章 総則

1条 (目的)

1項 この法律は、食料、農業及び農村に関する施策について、食料安全保障の確保等の基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。

2条 (食料安全保障の確保)

1項 食料については、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることに鑑み、将来にわたって、食料安全保障(良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民1人1人がこれを入手できる状態をいう。以下同じ。)の確保が図られなければならない。

2項 国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることに鑑み、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと併せて安定的な輸入及び備蓄の確保を図ることにより行われなければならない。

3項 食料の供給は、農業の生産性の向上を促進しつつ、農業と食品産業の健全な発展を総合的に図ることを通じ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即して行われなければならない。

4項 国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、農業生産の基盤、食品産業の事業基盤等の食料の供給能力が確保されていることが重要であることに鑑み、国内の人口の減少に伴う国内の食料の需要の減少が見込まれる中においては、国内への食料の供給に加え、海外への輸出を図ることで、農業及び食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持が図られなければならない。

5項 食料の合理的な価格の形成については、需給事情及び品質評価が適切に反映されつつ、食料の持続的な供給が行われるよう、農業者、食品産業の事業者、消費者その他の食料システム(食料の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することにより、全体として機能を発揮する一連の活動の総体をいう。以下同じ。)の関係者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない。

6項 国民が最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じないよう、供給の確保が図られなければならない。

3条 (環境と調和のとれた食料システムの確立)

1項 食料システムについては、食料の供給の各段階において環境に負荷を与える側面があることに鑑み、その負荷の低減が図られることにより、環境との調和が図られなければならない。

4条 (多面的機能の発揮)

1項 国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能(以下「 多面的機能 」という。)については、国民生活及び国民経済の安定に果たす役割に鑑み、将来にわたって、環境への負荷の低減が図られつつ、適切かつ10分に発揮されなければならない。

5条 (農業の持続的な発展)

1項 農業については、その有する食料その他の農産物の供給の機能及び 多面的機能 の重要性に鑑み、人口の減少に伴う農業者の減少、気候の変動その他の農業をめぐる情勢の変化が生ずる状況においても、これらの機能が発揮されるよう、必要な農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担い手が確保され、地域の特性に応じてこれらが効率的に組み合わされた望ましい農業構造が確立されるとともに、農業の生産性の向上及び農産物の付加価値の向上並びに農業生産活動における環境への負荷の低減が図られることにより、その持続的な発展が図られなければならない。

2項 農業生産活動における環境への負荷の低減は、農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。以下同じ。)の維持増進に配慮して図られなければならない。

6条 (農村の振興)

1項 農村については、農業者を含めた地域住民の生活の場で農業が営まれていることにより、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしていることに鑑み、農村の人口の減少その他の農村をめぐる情勢の変化が生ずる状況においても、地域社会が維持され、農業の有する食料その他の農産物の供給の機能及び 多面的機能 が適切かつ10分に発揮されるよう、農業の生産条件の整備及び生活環境の整備その他の福祉の向上により、その振興が図られなければならない。

7条 (水産業及び林業への配慮)

1項 食料、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たっては、水産業及び林業との密接な関連性を有することに鑑み、その振興に必要な配慮がなされるものとする。

8条 (国の責務)

1項 国は、 第2条 《食料安全保障の確保 食料については、人…》 間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることに鑑み、将来にわたって、食料安全保障良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民1人1人 から 第6条 《農村の振興 農村については、農業者を含…》 めた地域住民の生活の場で農業が営まれていることにより、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしていることに鑑み、農村の人口の減少その他の農村をめぐる情勢の変化が生ずる状況においても、地域社会が維持され までに定める食料、農業及び農村に関する施策についての 基本理念 以下「 基本理念 」という。)にのっとり、食料、農業及び農村に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2項 国は、食料、農業及び農村に関する情報の提供等を通じて、 基本理念 に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。

9条 (地方公共団体の責務)

1項 地方公共団体は、 基本理念 にのっとり、食料、農業及び農村に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

10条 (農業者の努力)

1項 農業者は、農業及びこれに関連する活動を行うに当たっては、 基本理念 の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。

11条 (事業者の努力)

1項 食品産業の事業者は、その事業活動を行うに当たっては、 基本理念 の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。

12条 (団体の努力)

1項 食料、農業及び農村に関する団体は、その行う農業者、食品産業の事業者、地域住民又は消費者のための活動が、 基本理念 の実現に重要な役割を果たすものであることに鑑み、これらの活動に積極的に取り組むよう努めるものとする。

13条 (農業者等の努力の支援)

1項 及び地方公共団体は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たっては、農業者及び食品産業の事業者並びに食料、農業及び農村に関する団体がする自主的な努力を支援することを旨とするものとする。

14条 (消費者の役割)

1項 消費者は、食料、農業及び農村に関する理解を深めるとともに、食料の消費に際し、環境への負荷の低減に資する物その他の食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることによって、食料の持続的な供給に寄与しつつ、食料の消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。

15条 (法制上の措置等)

1項 政府は、食料、農業及び農村に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。

16条 (年次報告)

1項 政府は、毎年、国会に、食料、農業及び農村の動向並びに政府が食料、農業及び農村に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。

2章 基本的施策 > 1節 食料・農業・農村基本計画

17条

1項 政府は、食料、農業及び農村に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食料・農業・農村 基本計画 以下「 基本計画 」という。)を定めなければならない。

2項 基本計画 は、次に掲げる事項について定めるものとする。

1号 食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針

2号 食料安全保障の動向に関する事項

3号 食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標

4号 食料、農業及び農村に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

5号 前各号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3項 前項第3号の目標は、食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に関する事項の改善が図られるよう農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めるものとする。

4項 基本計画 のうち農村に関する施策に係る部分については、国土の総合的な利用、整備及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない。

5項 政府は、第1項の規定により 基本計画 を定めようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

6項 政府は、第1項の規定により 基本計画 を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

7項 政府は、少なくとも毎年一回、第2項第3号の目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

8項 政府は、世界の食料需給の状況その他の食料、農業及び農村をめぐる情勢の変化を勘案し、並びに食料、農業及び農村に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね5年ごとに、 基本計画 を変更するものとする。

9項 第5項及び第6項の規定は、 基本計画 の変更について準用する。

2節 食料安全保障の確保に関する施策

18条 (食料消費に関する施策の充実)

1項 国は、食料の安全性の確保及び品質の改善を図るとともに、消費者の合理的な選択に資するため、食品の製造過程の管理の高度化その他の食品の衛生管理及び品質管理の高度化、食品の表示の適正化その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、食料消費の改善及び農業資源の有効利用に資するため、健全な食生活に関する指針の策定、食料の消費に関する知識の普及及び情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする。

19条 (食料の円滑な入手の確保)

1項 国は、地方公共団体、食品産業の事業者その他の関係者と連携し、地理的な制約、経済的な状況その他の要因にかかわらず食料の円滑な入手が可能となるよう、食料の輸送手段の確保の促進、食料の寄附が円滑に行われるための環境整備その他必要な施策を講ずるものとする。

20条 (食品産業の健全な発展)

1項 国は、食品産業が食料の供給において果たす役割の重要性に鑑み、その健全な発展を図るため、環境への負荷の低減及び資源の有効利用の確保その他の食料の持続的な供給に資する事業活動の促進、事業基盤の強化、円滑な事業承継の促進、農業との連携の推進、流通の合理化、先端的な技術を活用した食品産業及びその関連産業に関する新たな事業の創出の促進、海外における事業の展開の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

21条 (農産物等の輸入に関する措置)

1項 国は、国内生産では需要を満たすことができない農産物の安定的な輸入を確保するため、国と民間との連携による輸入の相手国の多様化、輸入の相手国への投資の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、農産物の輸入によってこれと競争関係にある農産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする。

3項 国は、肥料その他の農業資材の安定的な輸入を確保するため、国と民間との連携による輸入の相手国の多様化、輸入の相手国への投資の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

22条 (農産物の輸出の促進)

1項 国は、農業者及び食品産業の事業者の収益性の向上に資するよう海外の需要に応じた農産物の輸出を促進するため、輸出を行う産地の育成、農産物の生産から販売に至る各段階の関係者が組織する団体による輸出のための取組の促進等により農産物の競争力を強化するとともに、市場調査の充実、情報の提供、普及宣伝の強化等の輸出の相手国における需要の開拓を包括的に支援する体制の整備、輸出する農産物に係る知的財産権の保護、輸出の相手国とのその相手国が定める輸入についての動植物の検疫その他の事項についての条件に関する協議その他必要な施策を講ずるものとする。

23条 (食料の持続的な供給に要する費用の考慮)

1項 国は、食料の価格の形成に当たり食料システムの関係者により食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、食料システムの関係者による食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進及びこれらの合理的な費用の明確化の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

24条 (不測時における措置)

1項 国は、凶作、輸入の減少等の不測の要因により国内の食料の供給が不足し国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に支障が生ずる事態の発生をできる限り回避し、又はこれらの事態が国民生活及び国民経済に及ぼす支障が最小となるようにするため、これらの事態が発生するおそれがあると認めたときから、関係行政機関相互間の連携の強化を図るとともに、備蓄する食料の供給、食料の輸入の拡大その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、 第2条第6項 《6 国民が最低限度必要とする食料は、凶作…》 、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じないよう、供給の確保が図ら に規定する場合において、国民が最低限度必要とする食料の供給を確保するため必要があると認めるときは、食料の増産、流通の制限その他必要な施策を講ずるものとする。

25条 (国際協力の推進)

1項 国は、世界の食料需給の将来にわたる安定並びにこれによる我が国への農産物及び農業資材の安定的な輸入の確保に資するため、開発途上地域における農業及び農村の振興に関する技術協力及び資金協力、これらの地域に対する食料援助その他の国際協力の推進に努めるものとする。

3節 農業の持続的な発展に関する施策

26条 (望ましい農業構造の確立)

1項 国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するため、営農の類型及び地域の特性に応じ、農業生産の基盤の整備の推進、農業経営の規模の拡大その他農業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、望ましい農業構造の確立に当たっては、地域における協議に基づき、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われることで農業生産の基盤である農地の確保が図られるように配慮するものとする。

27条 (専ら農業を営む者等による農業経営の展開)

1項 国は、専ら農業を営む者その他経営意欲のある農業者が創意工夫を生かした農業経営を展開できるようにすることが重要であることに鑑み、経営管理の合理化その他の経営の発展及びその円滑な継承に資する条件を整備し、家族農業経営の活性化を図るとともに、農業経営の法人化を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、農業を営む法人の経営基盤の強化を図るため、その経営に従事する者の経営管理能力の向上、雇用の確保に資する労働環境の整備、自己資本の充実の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

28条 (農地の確保及び有効利用)

1項 国は、国内の農業生産に必要な農地の確保及びその有効利用を図るため、農地として利用すべき土地の農業上の利用の確保、効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地の利用の集積及びこれらの農地の集団化、農地の適正かつ効率的な利用の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

29条 (農業生産の基盤の整備及び保全)

1項 国は、良好な営農条件を備えた農地及び農業用水を確保し、これらの有効利用を図ることにより農業の生産性の向上を促進するとともに、気候の変動その他の要因による災害の防止又は軽減を図ることにより農業生産活動が継続的に行われるようにするため、地域の特性に応じて、環境との調和及び先端的な技術を活用した生産方式との適合に配慮しつつ、農業生産の基盤の整備及び保全に係る最新の技術的な知見を踏まえた事業の効率的な実施を旨として、農地の区画の拡大、水田の汎用化及び畑地化、農業用用排水施設の機能の維持増進その他の農業生産の基盤の整備及び保全に必要な施策を講ずるものとする。

30条 (先端的な技術等を活用した生産性の向上)

1項 国は、農業の生産性の向上に資するため、情報通信技術その他の先端的な技術を活用した生産、加工又は流通の方式の導入の促進、省力化又は多収化等に資する新品種の育成及び導入の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

31条 (農産物の付加価値の向上等)

1項 国は、農産物の付加価値の向上及び創出を図るため、高い品質を有する品種の導入の促進及び農産物を活用した新たな事業の創出の促進、植物の新品種、家畜の遺伝資源、地理的表示( 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律 2014年法律第84号第2条第3項 《3 この法律において「地理的表示」とは、…》 特定農林水産物等の名称当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。の表示をいう。 に規定する地理的表示をいう。)、農業生産に関する有用な技術及び営業上の情報その他の知的財産の保護及び活用の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

32条 (環境への負荷の低減の促進)

1項 国は、農業生産活動における環境への負荷の低減を図るため、農業の自然循環機能の維持増進に配慮しつつ、農薬及び肥料の適正な使用の確保、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進、環境への負荷の低減に資する技術を活用した生産方式の導入の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、環境への負荷の低減に資する農産物の流通及び消費が広く行われるよう、これらの農産物の円滑な流通の確保、消費者への適切な情報の提供の推進、環境への負荷の低減の状況の把握及び評価の手法の開発その他必要な施策を講ずるものとする。

33条 (人材の育成及び確保)

1項 国は、効率的かつ安定的な農業経営を担うべき人材の育成及び確保を図るため、農業者の農業の技術及び経営管理能力の向上、新たに就農しようとする者に対する農業の技術及び経営方法の習得の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、国民が農業に対する理解と関心を深めるよう、農業に関する教育の振興その他必要な施策を講ずるものとする。

34条 (女性の参画の促進)

1項 国は、男女が社会の対等な構成員としてあらゆる活動に参画する機会を確保することが重要であることに鑑み、女性の農業経営における役割を適正に評価するとともに、女性が自らの意思によって農業経営及びこれに関連する活動に参画する機会を確保するための環境整備を推進するものとする。

35条 (高齢農業者の活動の促進)

1項 国は、地域の農業における高齢農業者の役割分担並びにその有する技術及び能力に応じて、生きがいを持って農業に関する活動を行うことができる環境整備を推進し、高齢農業者の福祉の向上を図るものとする。

36条 (農業生産組織の活動の促進)

1項 国は、地域の農業における効率的な農業生産の確保に資するため、集落を基礎とした農業者の組織その他の農業生産活動を共同して行う農業者の組織、委託を受けて農作業を行う組織等の活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。

37条 (農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進)

1項 国は、農業者の経営の発展及び農業の生産性の向上に資するため、農作業の受託、農業機械の貸渡し、農作業を行う人材の派遣、農業経営に係る情報の分析及び助言その他の農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。

38条 (技術の開発及び普及)

1項 国は、農業並びに食品の加工及び流通に関する技術の研究開発及び普及の効果的な推進を図るため、これらの技術の研究開発の目標の明確化、国、独立行政法人、都道府県及び地方独立行政法人の試験研究機関、大学、民間等の連携の強化、地域の特性に応じた農業に関する技術の普及事業の推進、民間が行う情報通信技術その他の先端的な技術の研究開発及び普及の迅速化その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、食料システムにおいて情報通信技術を用いて情報が効果的に活用されるよう、食料システムの関係者による情報の円滑な共有のための環境整備を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

39条 (農産物の価格の形成と経営の安定)

1項 国は、農産物の価格の形成について、 第23条 《食料の持続的な供給に要する費用の考慮 …》 国は、食料の価格の形成に当たり食料システムの関係者により食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、食料システムの関係者による食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進及びこれらの合理的 に規定する施策を講ずるほか、消費者の需要に即した農業生産を推進するため、需給事情及び品質評価が適切に反映されるよう、必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるものとする。

40条 (農業災害による損失の補塡)

1項 国は、災害によって農業の再生産が阻害されることを防止するとともに、農業経営の安定を図るため、災害による損失の合理的な補塡その他必要な施策を講ずるものとする。

41条 (伝染性疾病等の発生予防等)

1項 国は、家畜の伝染性疾病及び植物に有害な動植物が国内で発生及びまん延をした場合には、農業に著しい損害を生ずるおそれがあることに鑑み、その発生の予防及びまん延の防止のために必要な施策を講ずるものとする。

42条 (農業資材の生産及び流通の確保と経営の安定)

1項 国は、農業資材の安定的な供給を確保するため、輸入に依存する農業資材及びその原料について、国内で生産できる良質な代替物への転換の推進、備蓄への支援その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、農業経営における農業資材費の低減に資するため、農業資材の生産及び流通の合理化の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

3項 国は、農業資材の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるものとする。

4節 農村の振興に関する施策

43条 (農村の総合的な振興)

1項 国は、農村における土地の農業上の利用と他の利用との調整に留意して、農業の振興その他農村の総合的な振興に関する施策を計画的に推進するものとする。

2項 国は、地域の農業の健全な発展を図るとともに、景観が優れ、豊かで住みよい農村とするため、地域の特性に応じた農業生産の基盤の整備及び保全並びに農村との関わりを持つ者の増加に資する産業の振興と防災、交通、情報通信、衛生、教育、文化等の生活環境の整備その他の福祉の向上とを総合的に推進するよう、必要な施策を講ずるものとする。

44条 (農地の保全に資する共同活動の促進)

1項 国は、農業者その他の農村との関わりを持つ者による農地の保全に資する共同活動が、地域の農業生産活動の継続及びこれによる 多面的機能 の発揮に重要な役割を果たしていることに鑑み、これらの共同活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。

45条 (地域の資源を活用した事業活動の促進)

1項 国は、農業と農業以外の産業の連携による地域の資源を活用した事業活動を通じて農村との関わりを持つ者の増加を図るため、これらの事業活動の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

46条 (障害者等の農業に関する活動の環境整備)

1項 国は、障害者その他の社会生活上支援を必要とする者の就業機会の増大を通じ、地域の農業の振興を図るため、これらの者がその有する能力に応じて農業に関する活動を行うことができる環境整備に必要な施策を講ずるものとする。

47条 (中山間地域等の振興)

1項 国は、山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域(以下「 中山間地域等 」という。)において、その地域の特性に応じて、新規の作物の導入、地域特産物の生産及び販売等を通じた農業その他の産業の振興による就業機会の増大、生活環境の整備による定住の促進、地域社会の維持に資する生活の利便性の確保その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、 中山間地域等 においては、適切な農業生産活動が継続的に行われるよう農業の生産条件に関する不利を補正するための支援を行うこと等により、 多面的機能 の確保を特に図るための施策を講ずるものとする。

48条 (鳥獣害の対策)

1項 国は、鳥獣による農業及び農村の生活環境に係る被害の防止のため、鳥獣の農地への侵入の防止、捕獲した鳥獣の食品等としての利用の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

49条 (都市と農村の交流等)

1項 国は、国民の農業及び農村に対する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆとりのある生活に資するため、余暇を利用した農村への滞在の機会を提供する事業活動の促進その他の都市と農村との間の交流の促進、都市と農村との双方に居所を有する生活をすることのできる環境整備、市民農園の整備の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 国は、都市及びその周辺における農業について、消費地に近い特性を生かし、都市住民の需要に即した農業生産の振興を図るために必要な施策を講ずるものとする。

3章 行政機関及び団体

50条 (行政組織の整備等)

1項 及び地方公共団体は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、行政組織の整備並びに行政運営の効率化及び透明性の向上に努めるものとする。

51条 (団体の相互連携及び再編整備)

1項 国は、 基本理念 の実現に資することができるよう、食料、農業及び農村に関する団体について、相互の連携を促進するとともに、効率的な再編整備につき必要な施策を講ずるものとする。

4章 食料・農業・農村政策審議会

52条 (設置)

1項 農林水産省に、食料・農業・農村政策 審議会 以下「 審議会 」という。)を置く。

53条 (権限)

1項 審議会 は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、農林水産大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議する。

2項 審議会 は、前項に規定する事項に関し農林水産大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。

3項 審議会 は、前2項に規定するもののほか、 土地改良法 1949年法律第195号)、 家畜改良増殖法 1950年法律第209号)、 家畜伝染病予防法 1951年法律第166号)、 飼料需給安定法 1952年法律第356号)、 酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律 1954年法律第182号)、 果樹農業振興特別措置法 1961年法律第15号)、 畜産経営の安定に関する法律 1961年法律第183号)、 宅地造成及び特定盛土等規制法 1961年法律第191号)、 砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律 1965年法律第109号)、 農業振興地域の整備に関する法律 1969年法律第58号)、 卸売市場法 1971年法律第35号)、 肉用子牛生産安定等特別措置法 1988年法律第98号)、 食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律 1991年法律第59号)、 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律 1994年法律第113号)、 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律 2000年法律第116号)、 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律 2006年法律第88号)、 有機農業の推進に関する法律 2006年法律第112号)、 中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律 2008年法律第38号)、 米穀の新用途への利用の促進に関する法律 2009年法律第25号)、 都市農業振興基本法 2015年法律第14号)、 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律 2022年法律第37号及び 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律 2024年法律第63号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。

54条 (組織)

1項 審議会 は、委員30人以内で組織する。

2項 委員は、前条第1項に規定する事項に関し学識経験のある者のうちから、農林水産大臣が任命する。

3項 委員は、非常勤とする。

4項 第2項に定めるもののほか、 審議会 の職員で政令で定めるものは、農林水産大臣が任命する。

55条 (資料の提出等の要求)

1項 審議会 は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。

56条 (委任規定)

1項 この法律に定めるもののほか、 審議会 の組織、所掌事務及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

《本則》 ここまで 附則 >  

国の法令検索サービス《E-Gov》の法令データ、法令APIを利用しています。