知的財産基本法《本則》

法番号:2002年法律第122号

略称: 知財法

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1章 総則

1条 (目的)

1項 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の作成について定めるとともに、知的財産戦略本部を設置することにより、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。

2条 (定義)

1項 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

2項 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

3項 この法律で「大学等」とは、大学及び高等専門学校( 学校教育法 1947年法律第26号第1条 《 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、…》 中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。 に規定する大学及び高等専門学校をいう。 第7条第3項 《3 国及び地方公共団体は、知的財産の創造…》 、保護及び活用に関する施策であって、大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関に係るものを策定し、並びにこれを実施するに当たっては、研究者の自主性の尊重その他大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関 において同じ。)、大学共同利用機関( 国立大学法人法 2003年法律第112号第2条第4項 《4 この法律において「大学共同利用機関」…》 とは、別表第2の第二欄に掲げる研究分野について、大学における学術研究の発展等に資するために設置される大学の共同利用の研究所をいう。 に規定する大学共同利用機関をいう。 第7条第3項 《3 政府は、必要があると認めるときは、前…》 項の規定にかかわらず、土地、建物その他の土地の定着物及びその建物に附属する工作物第6項、第33条の三及び第33条の4において「土地等」という。を出資の目的として、国立大学法人等に追加して出資することが において同じ。)、独立行政法人( 独立行政法人通則法 1999年法律第103号第2条第1項 《この法律において「独立行政法人」とは、国…》 民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそ に規定する独立行政法人をいう。 第30条第1項 《中期目標管理法人は、前条第1項の指示を受…》 けたときは、中期目標に基づき、主務省令で定めるところにより、当該中期目標を達成するための計画以下この節において「中期計画」という。を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。 これを変更しようとす において同じ。及び地方独立行政法人( 地方独立行政法人法 2003年法律第118号第2条第1項 《この法律において「地方独立行政法人」とは…》 、住民の生活、地域社会及び地域経済の安定等の公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主 に規定する地方独立行政法人をいう。 第30条第1項 《設立団体の長は、第28条第1項第2号に規…》 定する中期目標の期間の終了時に見込まれる中期目標の期間における業務の実績に関する評価を行ったときは、中期目標の期間の終了時までに、当該地方独立行政法人の業務の継続又は組織の存続の必要性その他その業務及 において同じ。)であって試験研究に関する業務を行うもの、特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、 総務省設置法 1999年法律第91号第4条第1項第8号 《総務省は、前条第1項の任務を達成するため…》 、次に掲げる事務をつかさどる。 1 恩給制度に関する企画及び立案に関すること。 2 恩給を受ける権利の裁定並びに恩給の支給及び負担に関すること。 3 行政制度一般に関する基本的事項の企画及び立案に関す の規定の適用を受けるものをいう。 第30条第1項 《国家行政組織法第3条第2項の規定に基づい…》 て総務省に置かれる外局は、次のとおりとする。 公害等調整委員会 消防庁 において同じ。)であって研究開発を目的とするもの並びに及び地方公共団体の試験研究機関をいう。

3条 (国民経済の健全な発展及び豊かな文化の創造)

1項 知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の推進は、創造力の豊かな人材が育成され、その創造力が10分に発揮され、技術革新の進展にも対応した知的財産の国内及び国外における迅速かつ適正な保護が図られ、並びに経済社会において知的財産が積極的に活用されつつ、その価値が最大限に発揮されるために必要な環境の整備を行うことにより、広く国民が知的財産の恵沢を享受できる社会を実現するとともに、将来にわたり新たな知的財産の創造がなされる基盤を確立し、もって国民経済の健全な発展及び豊かな文化の創造に寄与するものとなることを旨として、行われなければならない。

4条 (我が国産業の国際競争力の強化及び持続的な発展)

1項 知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の推進は、創造性のある研究及び開発の成果の円滑な企業化を図り、知的財産を基軸とする新たな事業分野の開拓並びに経営の革新及び創業を促進することにより、我が国産業の技術力の強化及び活力の再生、地域における経済の活性化、並びに就業機会の増大をもたらし、もって我が国産業の国際競争力の強化及び内外の経済的環境の変化に的確に対応した我が国産業の持続的な発展に寄与するものとなることを旨として、行われなければならない。

5条 (国の責務)

1項 国は、前2条に規定する知的財産の創造、保護及び活用に関する 基本理念 以下「 基本理念 」という。)にのっとり、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

6条 (地方公共団体の責務)

1項 地方公共団体は、 基本理念 にのっとり、知的財産の創造、保護及び活用に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

7条 (大学等の責務等)

1項 大学等は、その活動が社会全体における知的財産の創造に資するものであることにかんがみ、人材の育成並びに研究及びその成果の普及に自主的かつ積極的に努めるものとする。

2項 大学等は、研究者及び技術者の職務及び職場環境がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、研究者及び技術者の適切な処遇の確保並びに研究施設の整備及び充実に努めるものとする。

3項 及び地方公共団体は、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策であって、大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関に係るものを策定し、並びにこれを実施するに当たっては、研究者の自主性の尊重その他大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関における研究の特性に配慮しなければならない。

8条 (事業者の責務)

1項 事業者は、我が国産業の発展において知的財産が果たす役割の重要性にかんがみ、 基本理念 にのっとり、活力ある事業活動を通じた生産性の向上、事業基盤の強化等を図ることができるよう、当該事業者若しくは他の事業者が創造した知的財産又は大学等で創造された知的財産の積極的な活用を図るとともに、当該事業者が有する知的財産の適切な管理に努めるものとする。

2項 事業者は、発明者その他の創造的活動を行う者の職務がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、発明者その他の創造的活動を行う者の適切な処遇の確保に努めるものとする。

9条 (連携の強化)

1項 国は、国、地方公共団体、大学等及び事業者が相互に連携を図りながら協力することにより、知的財産の創造、保護及び活用の効果的な実施が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。

10条 (競争促進への配慮)

1項 知的財産の保護及び活用に関する施策を推進するに当たっては、その公正な利用及び公共の利益の確保に留意するとともに、公正かつ自由な競争の促進が図られるよう配慮するものとする。

11条 (法制上の措置等)

1項 政府は、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

2章 基本的施策

12条 (研究開発の推進)

1項 国は、大学等における付加価値の高い知的財産の創造が我が国の経済社会の持続的な発展の源泉であることに鑑み、 科学技術・イノベーション基本法 1995年法律第130号第3条 《科学技術・イノベーション創出の振興に関す…》 る方針 科学技術・イノベーション創出の振興は、科学技術及びイノベーションの創出が我が国及び人類社会の将来の発展をもたらす源泉であり、科学技術に係る知識の集積が人類にとっての知的資産であることに鑑み、 に規定する科学技術・イノベーション創出の振興に関する方針に配慮しつつ、創造力の豊かな研究者の確保及び養成、研究施設等の整備並びに研究開発に係る資金の効果的な使用その他研究開発の推進に必要な施策を講ずるものとする。

13条 (研究成果の移転の促進等)

1項 国は、大学等における研究成果が新たな事業分野の開拓及び産業の技術の向上等に有用であることにかんがみ、大学等において当該研究成果の適切な管理及び事業者への円滑な移転が行われるよう、大学等における知的財産に関する専門的知識を有する人材を活用した体制の整備、知的財産権に係る設定の登録その他の手続の改善、市場等に関する調査研究及び情報提供その他必要な施策を講ずるものとする。

14条 (権利の付与の迅速化等)

1項 国は、発明、植物の新品種、意匠、商標その他の国の登録により権利が発生する知的財産について、早期に権利を確定することにより事業者が事業活動の円滑な実施を図ることができるよう、所要の手続の迅速かつ的確な実施を可能とする審査体制の整備その他必要な施策を講ずるものとする。

2項 前項の施策を講ずるに当たり、その実効的な遂行を確保する観点から、事業者の理解と協力を得るよう努めるものとする。

15条 (訴訟手続の充実及び迅速化等)

1項 国は、経済社会における知的財産の活用の進展に伴い、知的財産権の保護に関し司法の果たすべき役割がより重要となることにかんがみ、知的財産権に関する事件について、訴訟手続の一層の充実及び迅速化、裁判所の専門的な処理体制の整備並びに裁判外における紛争処理制度の拡充を図るために必要な施策を講ずるものとする。

16条 (権利侵害への措置等)

1項 国は、国内市場における知的財産権の侵害及び知的財産権を侵害する物品の輸入について、事業者又は事業者団体その他関係団体との緊密な連携協力体制の下、知的財産権を侵害する事犯の取締り、権利を侵害する物品の没収その他必要な措置を講ずるものとする。

2項 国は、本邦の法令に基づいて設立された法人その他の団体又は日本の国籍を有する者( 本邦法人等 」という。次条において同じ。)の有する知的財産が外国において適正に保護されない場合には、当該外国政府、国際機関及び関係団体と状況に応じて連携を図りつつ、知的財産に関する条約に定める権利の的確な行使その他必要な措置を講ずるものとする。

17条 (国際的な制度の構築等)

1項 国は、知的財産に関する国際機関その他の国際的な枠組みへの協力を通じて、各国政府と共同して国際的に整合のとれた知的財産に係る制度の構築に努めるとともに、知的財産の保護に関する制度の整備が10分に行われていない国又は地域において、 本邦法人等 が迅速かつ確実に知的財産権の取得又は行使をすることができる環境が整備されるよう必要な施策を講ずるものとする。

18条 (新分野における知的財産の保護等)

1項 国は、生命科学その他技術革新の進展が著しい分野における研究開発の有用な成果を知的財産権として迅速かつ適正に保護することにより、活発な起業化等を通じて新たな事業の創出が期待されることにかんがみ、適正に保護すべき権利の範囲に関する検討の結果を踏まえつつ、法制上の措置その他必要な措置を講ずるものとする。

2項 国は、インターネットの普及その他社会経済情勢の変化に伴う知的財産の利用方法の多様化に的確に対応した知的財産権の適正な保護が図られるよう、権利の内容の見直し、事業者の技術的保護手段の開発及び利用に対する支援その他必要な施策を講ずるものとする。

19条 (事業者が知的財産を有効かつ適正に活用することができる環境の整備)

1項 国は、事業者が知的財産を活用した新たな事業の創出及び当該事業の円滑な実施を図ることができるよう、知的財産の適正な評価方法の確立、事業者に参考となるべき経営上の指針の策定その他事業者が知的財産を有効かつ適正に活用することができる環境の整備に必要な施策を講ずるものとする。

2項 前項の施策を講ずるに当たっては、中小企業が我が国経済の活力の維持及び強化に果たすべき重要な使命を有するものであることにかんがみ、個人による創業及び事業意欲のある中小企業者による新事業の開拓に対する特別の配慮がなされなければならない。

20条 (情報の提供)

1項 国は、知的財産に関する内外の動向の調査及び分析を行い、必要な統計その他の資料の作成を行うとともに、知的財産に関するデータベースの整備を図り、事業者、大学等その他の関係者にインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて迅速に情報を提供できるよう必要な施策を講ずるものとする。

21条 (教育の振興等)

1項 国は、国民が広く知的財産に対する理解と関心を深めることにより、知的財産権が尊重される社会を実現できるよう、知的財産に関する教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じた知的財産に関する知識の普及のために必要な施策を講ずるものとする。

22条 (人材の確保等)

1項 国は、知的財産の創造、保護及び活用を促進するため、大学等及び事業者と緊密な連携協力を図りながら、知的財産に関する専門的知識を有する人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。

3章 知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画

23条

1項 知的財産戦略本部は、この章の定めるところにより、知的財産の創造、保護及び活用に関する 推進計画 以下「 推進計画 」という。)を作成しなければならない。

2項 推進計画 は、次に掲げる事項について定めるものとする。

1号 知的財産の創造、保護及び活用のために政府が集中的かつ計画的に実施すべき施策に関する基本的な方針

2号 知的財産の創造、保護及び活用に関し政府が集中的かつ計画的に講ずべき施策

3号 知的財産に関する教育の振興及び人材の確保等に関し政府が集中的かつ計画的に講ずべき施策

4号 前各号に定めるもののほか、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を政府が集中的かつ計画的に推進するために必要な事項

3項 推進計画 に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。

4項 知的財産戦略本部は、第1項の規定により 推進計画 を作成したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

5項 知的財産戦略本部は、適時に、第3項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

6項 知的財産戦略本部は、知的財産を取り巻く状況の変化を勘案し、並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも毎年度一回、 推進計画 に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

7項 第4項の規定は、 推進計画 の変更について準用する。

4章 知的財産戦略本部

24条 (設置)

1項 知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、内閣に、知的財産戦略 本部 以下「 本部 」という。)を置く。

25条 (所掌事務)

1項 本部 は、次に掲げる事務をつかさどる。

1号 推進計画 を作成し、並びにその実施を推進すること。

2号 前号に掲げるもののほか、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策で重要なものの企画に関する調査審議、その施策の実施の推進並びに総合調整に関すること。

26条 (組織)

1項 本部 は、知的財産戦略本部長、知的財産戦略副本部長及び知的財産戦略本部員をもって組織する。

27条 (知的財産戦略本部長)

1項 本部 の長は、知的財産戦略本部長(以下「 本部長 」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2項 本部 長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

28条 (知的財産戦略副本部長)

1項 本部 に、知的財産戦略 副本部長 以下「 副本部長 」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。

2項 副本部長 は、 本部 長の職務を助ける。

29条 (知的財産戦略本部員)

1項 本部 に、知的財産戦略本部員(以下「 本部員 」という。)を置く。

2項 本部 員は、次に掲げる者をもって充てる。

1号 本部 及び 副本部長 以外のすべての国務大臣

2号 知的財産の創造、保護及び活用に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者

30条 (資料の提出その他の協力)

1項 本部 は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人及び地方独立行政法人の長並びに特殊法人の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。

2項 本部 は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

31条 (事務)

1項 本部 に関する事務は、内閣府において処理する。

32条 (主任の大臣)

1項 本部 に係る事項については、 内閣法 1947年法律第5号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

33条 (政令への委任)

1項 この法律に定めるもののほか、 本部 に関し必要な事項は、政令で定める。

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