労働契約法《本則》

法番号:2007年法律第128号

略称: 労契法

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1章 総則

1条 (目的)

1項 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 労働者 」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。

2項 この法律において「 使用者 」とは、その使用する 労働者 に対して賃金を支払う者をいう。

3条 (労働契約の原則)

1項 労働契約は、 労働者 及び 使用者 が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

2項 労働契約は、 労働者 及び 使用者 が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

3項 労働契約は、 労働者 及び 使用者 が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

4項 労働者 及び 使用者 は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

5項 労働者 及び 使用者 は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

4条 (労働契約の内容の理解の促進)

1項 使用者 は、 労働者 に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。

2項 労働者 及び 使用者 は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

5条 (労働者の安全への配慮)

1項 使用者 は、労働契約に伴い、 労働者 がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

2章 労働契約の成立及び変更

6条 (労働契約の成立)

1項 労働契約は、 労働者 使用者 に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

7条

1項 労働者 及び 使用者 が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、 第12条 《就業規則違反の労働契約 就業規則で定め…》 る基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。 この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。 に該当する場合を除き、この限りでない。

8条 (労働契約の内容の変更)

1項 労働者 及び 使用者 は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

9条 (就業規則による労働契約の内容の変更)

1項 使用者 は、 労働者 と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

10条

1項 使用者 が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を 労働者 に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、 第12条 《就業規則違反の労働契約 就業規則で定め…》 る基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。 この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。 に該当する場合を除き、この限りでない。

11条 (就業規則の変更に係る手続)

1項 就業規則の変更の手続に関しては、 労働基準法 1947年法律第49号第89条 《作成及び届出の義務 常時10人以上の労…》 働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。 次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。 1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並 及び 第90条 《作成の手続 使用者は、就業規則の作成又…》 は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならな の定めるところによる。

12条 (就業規則違反の労働契約)

1項 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

13条 (法令及び労働協約と就業規則との関係)

1項 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、 第7条 《 労働者及び使用者が労働契約を締結する場…》 合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。 ただし、労働契約において、労働者及び使用第10条 《 使用者が就業規則の変更により労働条件を…》 変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就 及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける 労働者 との間の労働契約については、適用しない。

3章 労働契約の継続及び終了

14条 (出向)

1項 使用者 労働者 に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

15条 (懲戒)

1項 使用者 労働者 を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

16条 (解雇)

1項 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

4章 期間の定めのある労働契約

17条 (契約期間中の解雇等)

1項 使用者 は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「 有期労働契約 」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、 労働者 を解雇することができない。

2項 使用者 は、 有期労働契約 について、その有期労働契約により 労働者 を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

18条 (有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

1項 同1の 使用者 との間で締結された二以上の 有期労働契約 契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「 通算契約期間 」という。)が5年を超える 労働者 が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同1の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

2項 当該 使用者 との間で締結された1の 有期労働契約 の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「 空白期間 」という。)があり、当該 空白期間 が6月(当該空白期間の直前に満了した1の有期労働契約の契約期間(当該1の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が1年に満たない場合にあっては、当該1の有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、 通算契約期間 に算入しない。

19条 (有期労働契約の更新等)

1項 有期労働契約 であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に 労働者 が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、 使用者 が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同1の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

1号 当該 有期労働契約 が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している 労働者 に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

2号 当該 労働者 において当該 有期労働契約 の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

5章 雑則

20条 (船員に関する特例)

1項 第12条 《就業規則違反の労働契約 就業規則で定め…》 る基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。 この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。 及び前章の規定は、 船員 法(1947年法律第100号)の適用を受ける船員(次項において「 船員 」という。)に関しては、適用しない。

2項 船員 に関しては、 第7条 《 労働者及び使用者が労働契約を締結する場…》 合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。 ただし、労働契約において、労働者及び使用 中「 第12条 《就業規則違反の労働契約 就業規則で定め…》 る基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。 この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。 」とあるのは「 船員法 1947年法律第100号第100条 《就業規則の効力 就業規則で定める基準に…》 達しない労働条件を定める雇入契約は、その部分については、無効とする。 この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、就業規則で定める基準に達する労働条件を定めたものとみなす。 」と、 第10条 《甲板上の指揮 船長は、船舶が港を出入す…》 るとき、船舶が狭い水路を通過するときその他船舶に危険の虞があるときは、甲板にあつて自ら船舶を指揮しなければならない。 中「 第12条 《船舶に危険がある場合における処置 船長…》 は、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助並びに船舶及び積荷の救助に必要な手段を尽くさなければならない。 」とあるのは「 船員法 第100条 《就業規則の効力 就業規則で定める基準に…》 達しない労働条件を定める雇入契約は、その部分については、無効とする。 この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、就業規則で定める基準に達する労働条件を定めたものとみなす。 」と、 第11条 《在船義務 船長は、やむを得ない場合を除…》 いて、自己に代わつて船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乗込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去つてはならない。 中「 労働基準法 1947年法律第49号第89条 《作成及び届出の義務 常時10人以上の労…》 働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。 次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。 1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並 及び 第90条 《作成の手続 使用者は、就業規則の作成又…》 は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならな 」とあるのは「 船員法 第97条 《就業規則の作成及び届出 常時10人以上…》 の船員を使用する船舶所有者は、国土交通省令の定めるところにより、次の事項について就業規則を作成し、これを国土交通大臣に届け出なければならない。 これを変更したときも同様とする。 1 給料その他の報酬 及び 第98条 《就業規則の作成の手続 船舶所有者又は前…》 条第3項に規定する団体は、就業規則を作成し、又は変更するには、その就業規則の適用される船舶所有者の使用する船員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合、船員の過半数で組織する労働組合がない 」と、 第13条 《船舶が衝突した場合における処置 船長は…》 、船舶が衝突したときは、互に人命及び船舶の救助に必要な手段を尽し、且つ船舶の名称、所有者、船籍港、発航港及び到達港を告げなければならない。 但し、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、この限り 中「前条」とあるのは「 船員法 第100条 《就業規則の効力 就業規則で定める基準に…》 達しない労働条件を定める雇入契約は、その部分については、無効とする。 この場合には、雇入契約は、その無効の部分については、就業規則で定める基準に達する労働条件を定めたものとみなす。 」とする。

21条 (適用除外)

1項 この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。

2項 この法律は、 使用者 が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、適用しない。

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