海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律《本則》

法番号:2009年法律第55号

略称: 海賊対処法

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1条 (目的)

1項 この法律は、海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い我が国の経済社会及び国民生活にとって、海上輸送の用に供する船舶その他の海上を航行する船舶の航行の安全の確保が極めて重要であること、並びに海洋法に関する国際連合条約においてすべての国が最大限に可能な範囲で公海等における海賊行為の抑止に協力するとされていることにかんがみ、海賊行為の処罰について規定するとともに、我が国が海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な事項を定め、もって海上における公共の安全と秩序の維持を図ることを目的とする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 海賊行為 」とは、船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶を除く。)に乗り組み又は乗船した者が、私的目的で、公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。又は我が国の領海若しくは内水において行う次の各号のいずれかの行為をいう。

1号 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為

2号 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶内にある財物を強取し、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させる行為

3号 第三者に対して財物の交付その他義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求するための人質にする目的で、航行中の他の船舶内にある者を略取する行為

4号 強取され若しくはほしいままにその運航が支配された航行中の他の船舶内にある者又は航行中の他の船舶内において略取された者を人質にして、第三者に対し、財物の交付その他義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求する行為

5号 前各号のいずれかに係る 海賊行為 をする目的で、航行中の他の船舶に侵入し、又はこれを損壊する行為

6号 第1号から第4号までのいずれかに係る 海賊行為 をする目的で、船舶を航行させて、航行中の他の船舶に著しく接近し、若しくはつきまとい、又はその進行を妨げる行為

7号 第1号から第4号までのいずれかに係る 海賊行為 をする目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為

3条 (海賊行為に関する罪)

1項 前条第1号から第4号までのいずれかに係る 海賊行為 をした者は、無期又は5年以上の拘禁刑に処する。

2項 前項の罪(前条第4号に係る 海賊行為 に係るものを除く。)の未遂は、罰する。

3項 前条第5号又は第6号に係る 海賊行為 をした者は、5年以下の拘禁刑に処する。

4項 前条第7号に係る 海賊行為 をした者は、3年以下の拘禁刑に処する。ただし、第1項又は前項の罪の実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

4条

1項 前条第1項又は第2項の罪を犯した者が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。

2項 前項の罪の未遂は、罰する。

5条 (海上保安庁による海賊行為への対処)

1項 海賊行為 への対処は、この法律、 海上保安庁法 1948年法律第28号)その他の法令の定めるところにより、海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとする。

2項 前項の規定は、 海上保安庁法 第5条第19号 《第5条 海上保安庁は、第2条第1項の任務…》 を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。 1 法令の海上における励行に関すること。 2 海難の際の人命、積荷及び船舶の救助並びに天災事変その他救済を必要とする場合における援助に関すること。 3 遭 に規定する警察行政庁が関係法令の規定により 海賊行為 への対処に必要な措置を実施する権限を妨げるものと解してはならない。

6条

1項 海上保安官又は海上保安官補は、 海上保安庁法 第20条第1項 《海上保安官及び海上保安官補の武器の使用に…》 ついては、警察官職務執行法1948年法律第136号第7条の規定を準用する。 において準用する 警察官職務執行法 1948年法律第136号第7条 《武器の使用 警察官は、犯人の逮捕若しく…》 は逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することが の規定により武器を使用する場合のほか、現に行われている 第3条第3項 《3 第1項の規定による警察の保護は、24…》 時間をこえてはならない。 但し、引き続き保護することを承認する簡易裁判所当該保護をした警察官の属する警察署所在地を管轄する簡易裁判所をいう。以下同じ。の裁判官の許可状のある場合は、この限りでない。 の罪に当たる 海賊行為 第2条第6号 《質問 第2条 警察官は、異常な挙動その他…》 周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認めら に係るものに限る。)の制止に当たり、当該海賊行為を行っている者が、他の制止の措置に従わず、なお船舶を航行させて当該海賊行為を継続しようとする場合において、当該船舶の進行を停止させるために他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由のあるときには、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。

7条 (海賊対処行動)

1項 防衛大臣は、 海賊行為 に対処するため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において海賊行為に対処するため必要な行動をとることを命ずることができる。この場合においては、 自衛隊法 1954年法律第165号第82条 《海上における警備行動 防衛大臣は、海上…》 における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。 の規定は、適用しない。

2項 防衛大臣は、前項の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長と協議して、次に掲げる事項について定めた対処要項を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、現に行われている 海賊行為 に対処するために急を要するときは、必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りる。

1号 前項の行動(以下「 海賊対処行動 」という。)の必要性

2号 海賊対処行動 を行う海上の区域

3号 海賊対処行動 を命ずる自衛隊の部隊の規模及び構成並びに装備並びに期間

4号 その他 海賊対処行動 に関する重要事項

3項 内閣総理大臣は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。

1号 第1項の承認をしたときその旨及び前項各号に掲げる事項

2号 海賊対処行動 が終了したときその結果

8条 (海賊対処行動時の自衛隊の権限)

1項 海上保安庁法 第16条 《 海上保安官は、第5条第2号に掲げる職務…》 を行うため若しくは犯人を逮捕するに当たり、又は非常事変に際し、必要があるときは、付近にある人及び船舶に対し、協力を求めることができる。第17条第1項 《海上保安官は、その職務を行うため必要があ…》 るときは、船長又は船長に代わつて船舶を指揮する者に対し、法令により船舶に備え置くべき書類の提出を命じ、船舶の同一性、船籍港、船長の氏名、直前の出発港又は出発地、目的港又は目的地、積荷の性質又は積荷の有 及び 第18条 《 海上保安官は、海上における犯罪が正に行…》 われようとするのを認めた場合又は天災事変、海難、工作物の損壊、危険物の爆発等危険な事態がある場合であつて、人の生命若しくは身体に危険が及び又は財産に重大な損害が及ぶおそれがあり、かつ、急を要するとき の規定は、 海賊対処行動 を命ぜられた海上自衛隊の三等海曹以上の自衛官(主として海において行動する 自衛隊法 第21条の2第2項 《2 前項に定めるもののほか、陸上自衛隊、…》 海上自衛隊又は航空自衛隊の防衛大臣直轄部隊陸上総隊、方面隊、自衛艦隊、地方隊、教育航空集団、練習艦隊、航空総隊、航空支援集団、航空教育集団及び航空開発実験集団を除く。は、統合運用による円滑な任務遂行上 に規定する共同の部隊の使用する船舶に乗り組んでいる三等陸曹、三等海曹又は三等空曹以上の自衛官を含む。)の職務の執行について準用する。

2項 警察官職務執行法 第7条 《武器の使用 警察官は、犯人の逮捕若しく…》 は逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することが の規定及び 第6条 《立入 警察官は、前2条に規定する危険な…》 事態が発生し、人の生命、身体又は財産に対し危害が切迫した場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、已むを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において他人 の規定は、 海賊対処行動 を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について準用する。この場合において、同条中「 海上保安庁法 第20条第1項 《海上保安官及び海上保安官補の武器の使用に…》 ついては、警察官職務執行法1948年法律第136号第7条の規定を準用する。 」とあるのは、「 第8条第2項 《2 警察官職務執行法第7条の規定及び第6…》 条の規定は、海賊対処行動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について準用する。 この場合において、同条中「海上保安庁法第20条第1項」とあるのは、「」と読み替えるものとする。 」と読み替えるものとする。

3項 自衛隊法 第89条第2項 《2 前項において準用する警察官職務執行法…》 第7条の規定により自衛官が武器を使用するには、刑法1907年法律第45号第36条又は第37条に該当する場合を除き、当該部隊指揮官の命令によらなければならない。 の規定は、前項において準用する 警察官職務執行法 第7条 《武器の使用 警察官は、犯人の逮捕若しく…》 は逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することが 及び同項において準用する 第6条 《立入 警察官は、前2条に規定する危険な…》 事態が発生し、人の生命、身体又は財産に対し危害が切迫した場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、已むを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において他人 の規定により自衛官が武器を使用する場合について準用する。

9条 (我が国の法令の適用)

1項 第5条 《海上保安庁による海賊行為への対処 海賊…》 行為への対処は、この法律、海上保安庁法1948年法律第28号その他の法令の定めるところにより、海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとする。 2 前項の規定は、海上保安庁法第19号に規定する警察行 から前条までに定めるところによる 海賊行為 への対処に関する日本国外における我が国の公務員の職務の執行及びこれを妨げる行為については、我が国の法令(罰則を含む。)を適用する。

10条 (関係行政機関の協力)

1項 関係行政機関の長は、 第1条 《目的 この法律は、海に囲まれ、かつ、主…》 要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い我が国の経済社会及び国民生活にとって、海上輸送の用に供する船舶その他の海上を航行する船舶の航行の安全の確保が極めて重要であること、並びに海洋法 の目的を達成するため、 海賊行為 への対処に関し、海上保安庁長官及び防衛大臣に協力するものとする。

11条 (国等の責務)

1項 国は、 海賊行為 による被害の防止を図るために必要となる情報の収集、整理、分析及び提供に努めなければならない。

2項 海上運送法 1949年法律第187号第23条の3第2項 《2 前項の条件は、公共の利益を確保し、又…》 は許可若しくは認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最少限度のものに限り、かつ、船舶運航事業を営む者以下「船舶運航事業者」という。に不当な義務を課することとならないものでなければならない。 に規定する船舶運航事業者その他船舶の運航に関係する者は、 海賊行為 による被害の防止に自ら努めるとともに、海賊行為に係る情報を国に適切に提供するよう努めなければならない。

12条 (国際約束の誠実な履行等)

1項 この法律の施行に当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないよう留意するとともに、確立された国際法規を遵守しなければならない。

13条 (政令への委任)

1項 この法律に定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

《本則》 ここまで 附則 >  

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