2011年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律《本則》

法番号:2011年法律第91号

略称:

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1条 (趣旨)

1項 この法律は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電施設の事故(以下「 2011年原子力事故 」という。)による災害が大規模かつ長期間にわたる未曽有のものであり、これによる被害を受けた者を早期に救済する必要があること、これらの者に対する特定原子力損害の賠償の支払に時間を要すること等の特別の事情があることに鑑み、当該被害に係る対策に関し国が果たすべき役割を踏まえ、当該被害に係る応急の対策に関する緊急の措置として、 2011年原子力事故 による損害を填補するための国による仮払金の迅速かつ適正な支払及び原子力被害応急対策基金を設ける地方公共団体に対する補助に関し必要な事項を定めるものとする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 特定原子力損害 」とは、 2011年原子力事故 による損害であって原子力事業者( 原子力損害の賠償に関する法律 1961年法律第147号第2条第3項 《3 この法律において「原子力事業者」とは…》 、次の各号に掲げる者これらの者であつた者を含む。をいう。 1 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律1957年法律第166号。以下「規制法」という。第23条第1項の許可規制法第76条の規定 に規定する原子力事業者をいう。以下同じ。)が同法第3条第1項の規定により賠償の責めに任ずべきものをいう。

3条 (仮払金の支払)

1項 国は、この法律の定めるところにより、 特定原子力損害 であって政令で定めるものを受けた者に対し、当該特定原子力損害を填補するためのものとして、仮払金を支払う。

2項 前項の規定に基づき国が行う仮払金の支払は、 特定原子力損害 を受けた者の早期の救済のために迅速なものであり、かつ、国民負担の観点から適正なものでなければならない。

4条 (仮払金の額)

1項 仮払金の額は、その者が受けた前条第1項に規定する 特定原子力損害 につき、当該者が提出した政令で定める資料に基づき、政令で定める簡易な方法により算定した当該特定原子力損害の概算額に10分の5を下らない政令で定める割合を乗じて得た額とする。ただし、当該者が当該資料を提出することが困難であると認められるときは、政令で定めるところにより、当該者が居住する地域又は事業を営む地域、当該特定原子力損害の種類等の事情に基づいて推計した当該特定原子力損害の額に当該割合を乗じて得た額とする。

2項 前条第1項及び前項の政令は、原子力損害賠償紛争審査会が定める 特定原子力損害 の賠償に係る 原子力損害の賠償に関する法律 第18条第2項第2号 《2 審査会は、次に掲げる事務を処理する。…》 1 原子力損害の賠償に関する紛争について和解の仲介を行うこと。 2 原子力損害の賠償に関する紛争について原子力損害の範囲の判定の指針その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針を定 の指針に定められた事項に基づき、かつ、特定原子力損害を受けた者の早期の救済に資するものとなるように定めるものとする。

5条 (仮払金の支払の請求)

1項 仮払金の支払を受けようとする者は、政令で定めるところにより、主務大臣にこれを請求しなければならない。

2項 仮払金の支払を受ける権利を有する者について相続、合併又は分割(その者が受けた 第3条第1項 《国は、この法律の定めるところにより、特定…》 原子力損害であって政令で定めるものを受けた者に対し、当該特定原子力損害を填補するためのものとして、仮払金を支払う。 に規定する 特定原子力損害 に係る事業を承継させるものに限る。)があった場合において、その者が死亡、解散又は分割の前に仮払金の支払を請求していなかったときは、その者の相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業を承継した法人は、自己の名で、その者の仮払金の支払を請求することができる。

3項 前項の規定により仮払金の支払を受けることができる同順位の相続人が2人以上あるときは、その1人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支払は、全員に対してしたものとみなす。

6条 (書類の作成等についての援助)

1項 地方公共団体及び農業協同組合、漁業協同組合、商工会議所、商工会その他の事業者を直接又は間接の構成員とする団体は、仮払金の支払の請求を行う者の便宜を図るため、当該請求を行うに当たって必要となる書類の作成等について、必要な援助を行うよう努めるものとする。

7条 (資料の提供その他の協力等の求め)

1項 主務大臣は、仮払金の支払を迅速かつ適正に行うため必要があると認めるときは、地方公共団体、当該原子力事業者その他公私の団体に対し、資料の提供その他必要な協力又は確認を求めることができる。

8条 (事務の処理等)

1項 仮払金の支払に関する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。

2項 前項の政令を定めるに当たっては、都道府県知事に過重な負担を課することのないよう10分に配慮するものとする。

3項 主務大臣又は第1項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事は、政令で定めるところにより、仮払金の支払に関する事務の一部( 会計法 1947年法律第35号)に基づく支出の決定及び交付の事務を除く。)を、その事務を行うのにふさわしい者として政令で定める者に委託することができる。

4項 主務大臣又は第1項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事は、前項に規定する政令で定める者に対し、仮払金の支払に必要となる資金を交付することができる。

5項 前項の規定により資金の交付を受けた者は、 会計法 第17条 《 各省各庁の長は、交通通信の不便な地方で…》 支払う経費、庁中常用の雑費その他経費の性質上主任の職員をして現金支払をなさしめなければ事務の取扱に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、当該職員をして現金支払をなさしめるため、政令の定め の規定により資金の交付を受けた職員とみなし、同法、 予算執行職員等の責任に関する法律 1950年法律第172号)その他関係法令の適用を受けるものとする。この場合において、必要な読替えは、政令で定める。

6項 農業協同組合、漁業協同組合その他の政令で定める団体は、他の法律の規定にかかわらず、第3項の規定による事務の委託を受け、当該事務を行うことができる。

7項 第3項の規定による事務の委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その委託を受けた事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

8項 都道府県知事が第1項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行い、又は第3項の規定によりその委託を行う場合においては、国は、予算の範囲内で、政令で定めるところにより、当該事務の処理及び委託に要する費用の全部を負担する。

9項 前項に規定する場合においては、国は、同項に定めるもののほか、当該都道府県に対し、その円滑な実施を図るために必要な支援その他の措置を講ずるものとする。

10項 関係行政機関の長は、仮払金の支払に関し、主務大臣、第1項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事又は第3項の規定による事務の委託を受けた者に協力するものとする。

9条 (損害賠償との関係)

1項 第3条第1項 《国は、この法律の定めるところにより、特定…》 原子力損害であって政令で定めるものを受けた者に対し、当該特定原子力損害を填補するためのものとして、仮払金を支払う。 に規定する 特定原子力損害 を受けた者又は 第5条第2項 《2 仮払金の支払を受ける権利を有する者に…》 ついて相続、合併又は分割その者が受けた第3条第1項に規定する特定原子力損害に係る事業を承継させるものに限る。があった場合において、その者が死亡、解散又は分割の前に仮払金の支払を請求していなかったときは の規定により自己の名で仮払金の支払を請求することができる者が当該特定原子力損害の賠償(これに相当する金銭の支払として政令で定めるものを含む。)を受けたときは、その価額の限度において、仮払金を支払わない。

2項 国は、仮払金を支払ったときは、その額の限度において、当該仮払金の支払を受けた者が有する 特定原子力損害 の賠償請求権を取得する。

3項 前項の場合において、国は、速やかに当該損害賠償請求権を行使するものとする。

10条 (仮払金の返還)

1項 仮払金の支払を受けた者は、その者に係る 特定原子力損害 の賠償の額が確定した場合において、その額が仮払金の額に満たないときは、その差額を返還しなければならない。

11条 (不正利得の徴収)

1項 偽りその他不正の手段により仮払金の支払を受けた者があるときは、主務大臣は、国税徴収の例により、その者から、その支払を受けた仮払金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。

2項 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

12条 (仮払金の支払を受ける権利の保護)

1項 仮払金の支払を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

13条 (税制上の措置)

1項 及び地方公共団体は、 特定原子力損害 を受けた者の置かれている状況に配慮し、その支払を受けた仮払金について必要な税制上の措置を講じなければならない。

14条 (原子力被害応急対策基金)

1項 地方公共団体が、 2011年原子力事故 による被害について 原子力災害対策特別措置法 1999年法律第156号又は関係法令の規定に基づいて地方公共団体が行う応急の対策に関する事業並びに 特別会計に関する法律 2007年法律第23号第85条第4項 《4 この節において「電源立地対策」とは、…》 発電用施設周辺地域整備法1974年法律第78号第7条同法第10条第4項において準用する場合を含む。の規定に基づく交付金第92条第3項及び第5項において「周辺地域整備交付金」という。の交付及び同法第2条 及び第6項の措置の対象となり得る地方公共団体の事業(その区域内の経済社会若しくは住民の生活への2011年原子力事故による影響の防止若しくは緩和又はその影響からの回復を図るために行う応急の対策に関する事業に限る。)に要する経費の全部又は一部を支弁するため、 地方自治法 1947年法律第67号第241条 《基金 普通地方公共団体は、条例の定める…》 ところにより、特定の目的のために財産を維持し、資金を積み立て、又は定額の資金を運用するための基金を設けることができる。 2 基金は、これを前項の条例で定める特定の目的に応じ、及び確実かつ効率的に運用し の基金として、原子力被害応急対策基金を設ける場合には、国は、予算の範囲内において、その財源に充てるために必要な資金の全部又は一部を当該地方公共団体に対して補助することができる。

2項 前項の規定は、地方公共団体がその経費を原子力被害応急対策基金から支弁して 特定原子力損害 に係る措置を講じた場合において、国が当該原子力事業者に対して、同項の規定により補助した額に相当する額の限度において求償することを妨げるものではない。

3項 国は、第1項の規定の運用に当たっては、関係地方公共団体の意見に配慮するものとする。

15条 (主務大臣)

1項 この法律における主務大臣は、文部科学大臣及び 特定原子力損害 を受けた事業者の事業を所管する大臣その他の政令で定める大臣とする。

16条 (政令への委任)

1項 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

17条 (罰則)

1項 第8条第7項 《7 第3項の規定による事務の委託を受けた…》 者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その委託を受けた事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。 の規定に違反した者は、1年以下の拘禁刑又は1,010,000円以下の罰金に処する。

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