1章 総則
1条 (目的)
1項 この法律は、我が国を取り巻く国際経済環境の変化等に伴い、我が国がアジア地域その他の地域における国際的な経済活動の拠点となることが重要となっていることに鑑み、我が国において新たに研究開発事業及び統括事業を行おうとする特定多国籍企業の活動を促進するための特別の措置を講ずることにより、新たな事業の創出を図るとともに、就業の機会の増大に寄与し、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 特定多国籍企業 」とは、次の各号のいずれにも該当する法人をいう。
1号 法人の本店又は主たる事務所が所在する国又は地域(以下この号及び第4項において「 国等 」という。)以外の 国等 に当該法人の子法人等(当該法人がその総株主等の議決権(総株主又は総出資者の議決権をいう。以下同じ。)の過半数を保有していることその他の当該法人と密接な関係を有する法人として主務省令で定める法人をいう。)を設立している法人であって、国際的規模で事業活動を行っていると認められるものとして主務省令で定める法人
2号 高度な知識又は技術を有すると認められるものとして主務省令で定める法人
2項 この法律において「 国内関係会社 」とは、 特定多国籍企業 がその総株主等の議決権の過半数を保有していることその他の当該特定多国籍企業と密接な関係を有する国内の会社として主務省令で定める会社をいう。
3項 この法律において「 研究開発事業 」とは、技術革新の進展に即応した高度な産業技術(以下この項において「 高度技術 」という。)の研究開発を行う事業(当該 高度技術 を用いて製品又は役務を開発する事業を含む。)のうち、新たな事業の創出及び就業の機会の増大をもたらすことが見込まれるものとして主務省令で定めるものをいう。
4項 この法律において「 統括事業 」とは、二以上の法人(これらの法人の本店又は主たる事務所が所在する 国等 の数が二以上であるものに限る。)のそれぞれの総株主等の議決権の過半数を取得し、又は保有することにより、当該二以上の法人が行う事業の方針を策定するとともに、当該二以上の法人に対する出資その他の当該方針の実施を確保する事業その他の当該二以上の法人が行う事業を統括する事業のうち、新たな事業の創出及び就業の機会の増大をもたらすことが見込まれるものとして主務省令で定めるものをいう。
5項 この法律において「 中小企業者 」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
1号 資本金の額又は出資の総額が400,000,000円以下の会社及び常時使用する従業員の数が300人以下の会社であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第4号までに掲げる業種及び第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
2号 資本金の額又は出資の総額が200,000,000円以下の会社及び常時使用する従業員の数が100人以下の会社であって、卸売業(第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
3号 資本金の額又は出資の総額が50,010,000円以下の会社及び常時使用する従業員の数が100人以下の会社であって、サービス業(第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
4号 資本金の額又は出資の総額が50,010,000円以下の会社及び常時使用する従業員の数が50人以下の会社であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
5号 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社及び常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
3条 (基本方針)
1項 主務大臣は、 特定多国籍企業 による 研究開発事業 及び 統括事業 の促進に関する 基本方針 (以下「 基本方針 」という。)を定めなければならない。
2項 基本方針 には、次に掲げる事項について定めるものとする。
1号 特定多国籍企業 による 研究開発事業 及び 統括事業 の促進の意義及び基本的な方向に関する事項
2号 特定多国籍企業 による 研究開発事業 及び 統括事業 の内容に関する事項
3号 我が国事業者の特許発明、技術等の国外流出の防止その他 特定多国籍企業 による 研究開発事業 及び 統括事業 の促進に際し配慮すべき事項
3項 主務大臣は、 基本方針 を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4項 主務大臣は、 基本方針 を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
2章 研究開発事業等の促進
4条 (研究開発事業計画の認定)
1項 我が国において新たに 研究開発事業 を行うため、当該研究開発事業を行う 国内関係会社 を設立しようとする 特定多国籍企業 (その子法人等(当該特定多国籍企業がその総株主等の議決権の過半数を保有していることその他の当該特定多国籍企業と密接な関係を有する法人として主務省令で定める法人をいう。
第6条第1項
《我が国において新たに統括事業を行うため、…》
当該統括事業を行う国内関係会社を設立しようとする特定多国籍企業その子法人等が既に我が国において当該統括事業を行っている場合における当該特定多国籍企業を除く。は、当該統括事業に関する計画以下「統括事業計
において同じ。)が既に我が国において当該研究開発事業を行っている場合における当該特定多国籍企業を除く。)は、当該研究開発事業に関する計画(以下「 研究開発事業計画 」という。)を作成し、主務省令で定めるところにより、これを主務大臣に提出して、その研究開発事業計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2項 研究開発事業 計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
1号 研究開発事業 の内容
2号 研究開発事業 に常時使用する従業員の数その他従業員に関し主務省令で定める事項
3号 実施期間
4号 研究開発事業 を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
3項 主務大臣は、第1項の認定の申請があった場合において、当該申請に係る 研究開発事業 計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
1号 前項第1号に掲げる事項が 基本方針 に照らして適切なものであること。
2号 前項第2号に掲げる従業員の数が主務省令で定める数以上であることその他従業員に関し主務省令で定める要件に適合するものであること。
3号 前項第3号に掲げる実施期間が主務省令で定める期間であること。
4号 前項各号に掲げる事項が 研究開発事業 を円滑かつ確実に遂行するために適切なものであること。
5条 (研究開発事業計画の変更等)
1項 前条第1項の認定を受けた者(当該認定に係る 研究開発事業 計画に従って設立された 国内関係会社 を含む。以下「 認定研究開発事業者 」という。)は、当該認定に係る研究開発事業計画を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣の認定を受けなければならない。
2項 主務大臣は、 認定研究開発事業者 が前条第1項の認定に係る 研究開発事業 計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「 認定研究開発事業計画 」という。)に従って研究開発事業を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
3項 主務大臣は、 認定研究開発事業計画 が前条第3項各号のいずれかに適合しないものとなったと認めるときは、 認定研究開発事業者 に対して、当該認定研究開発事業計画の変更を指示し、又はその認定を取り消すことができる。
4項 前条第3項の規定は、第1項の認定に準用する。
6条 (統括事業計画の認定)
1項 我が国において新たに 統括事業 を行うため、当該統括事業を行う 国内関係会社 を設立しようとする 特定多国籍企業 (その子法人等が既に我が国において当該統括事業を行っている場合における当該特定多国籍企業を除く。)は、当該統括事業に関する計画(以下「 統括事業計画 」という。)を作成し、主務省令で定めるところにより、これを主務大臣に提出して、その統括事業計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2項 統括事業 計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
1号 統括事業 の内容
2号 統括事業 に常時使用する従業員の数その他従業員に関し主務省令で定める事項
3号 実施期間
4号 統括事業 を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
3項 主務大臣は、第1項の認定の申請があった場合において、当該申請に係る 統括事業 計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
1号 前項第1号に掲げる事項が 基本方針 に照らして適切なものであること。
2号 前項第2号に掲げる従業員の数が主務省令で定める数以上であることその他従業員に関し主務省令で定める要件に適合するものであること。
3号 前項第3号に掲げる実施期間が主務省令で定める期間であること。
4号 前項各号に掲げる事項が 統括事業 を円滑かつ確実に遂行するために適切なものであること。
7条 (統括事業計画の変更等)
1項 前条第1項の認定を受けた者(当該認定に係る 統括事業 計画に従って設立された 国内関係会社 を含む。以下「 認定統括事業者 」という。)は、当該認定に係る統括事業計画を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣の認定を受けなければならない。
2項 主務大臣は、 認定統括事業者 が前条第1項の認定に係る 統括事業 計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「 認定統括事業計画 」という。)に従って統括事業を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
3項 主務大臣は、 認定統括事業計画 が前条第3項各号のいずれかに適合しないものとなったと認めるときは、 認定統括事業者 に対して、当該認定統括事業計画の変更を指示し、又はその認定を取り消すことができる。
4項 前条第3項の規定は、第1項の認定に準用する。
8条 (外国為替及び外国貿易法の特例)
1項 外国為替及び外国貿易法 (1949年法律第228号)
第26条第1項
《外国投資家とは、次に掲げるもので、次項各…》
号に掲げる対内直接投資等又は第3項に規定する特定取得を行うものをいう。 1 非居住者である個人 2 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体第4号に規
に規定する外国投資家が 認定研究開発事業計画 又は 認定統括事業計画 に従って行おうとする 国内関係会社 の株式又は持分の取得について同法第27条第1項の規定による届出をした場合における同条第2項の規定の適用については、同項中「30日」とあるのは、「2週間」とする。
9条 (中小企業投資育成株式会社法の特例)
1項 中小企業投資育成株式会社は、 中小企業投資育成株式会社法 (1963年法律第101号)
第5条第1項
《会社は、その目的を達成するため、次の事業…》
を営むものとする。 1 資本金の額が400,000,000円以下の株式会社の設立に際して発行する株式の引受け及び当該引受けに係る株式の保有 2 資本金の額が400,000,000円以下の株式会社の発行
各号に掲げる事業のほか、次に掲げる事業を行うことができる。
1号 認定研究開発事業者 又は 認定統括事業者 である 中小企業者 が 認定研究開発事業計画 又は 認定統括事業計画 に従って 研究開発事業 又は 統括事業 を行うために資本金の額が400,000,000円を超える株式会社を設立する際に発行する株式の引受け及び当該引受けに係る株式の保有
2号 認定研究開発事業者 又は 認定統括事業者 である 中小企業者 のうち資本金の額が400,000,000円を超える株式会社が 認定研究開発事業計画 又は 認定統括事業計画 に従って 研究開発事業 又は 統括事業 を行うために必要とする資金の調達を図るために発行する株式、新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は新株予約権付社債等( 中小企業投資育成株式会社法
第5条第1項第2号
《会社は、その目的を達成するため、次の事業…》
を営むものとする。 1 資本金の額が400,000,000円以下の株式会社の設立に際して発行する株式の引受け及び当該引受けに係る株式の保有 2 資本金の額が400,000,000円以下の株式会社の発行
に規定する新株予約権付社債等をいう。以下この号及び次項において同じ。)の引受け及び当該引受けに係る株式、新株予約権(その行使により発行され、又は移転された株式を含む。)又は新株予約権付社債等(新株予約権付社債等に付された新株予約権の行使により発行され、又は移転された株式を含む。)の保有
2項 前項第1号の規定による株式の引受け及び当該引受けに係る株式の保有並びに同項第2号の規定による株式、新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は新株予約権付社債等の引受け及び当該引受けに係る株式、新株予約権(その行使により発行され、又は移転された株式を含む。)又は新株予約権付社債等(新株予約権付社債等に付された新株予約権の行使により発行され、又は移転された株式を含む。)の保有は、 中小企業投資育成株式会社法 の適用については、それぞれ同法第5条第1項第1号及び第2号の事業とみなす。
3章 雑則
10条 (国、地方公共団体等の責務)
1項 国、地方公共団体及び独立行政法人日本貿易振興機構は、 特定多国籍企業 による 研究開発事業 及び 統括事業 を促進するため、当該研究開発事業及び統括事業の円滑な実施のための事業環境の整備その他必要な施策を総合的に推進するよう努めるものとする。
11条 (指導及び助言)
1項 国は、 認定研究開発事業者 又は 認定統括事業者 に対し、当該 認定研究開発事業計画 又は 認定統括事業計画 に従って行われる 研究開発事業 又は 統括事業 の適確な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。
12条 (報告の徴収)
1項 主務大臣は、 認定研究開発事業者 に対し、当該 認定研究開発事業計画 の実施状況について報告を求めることができる。
2項 主務大臣は、 認定統括事業者 に対し、当該 認定統括事業計画 の実施状況について報告を求めることができる。
13条 (主務大臣等)
1項 第3条第1項
《主務大臣は、特定多国籍企業による研究開発…》
事業及び統括事業の促進に関する基本方針以下「基本方針」という。を定めなければならない。
、第3項及び第4項における主務大臣は、経済産業大臣、 研究開発事業 の成果が直接利用される事業を所管する大臣及び 統括事業 に係る事業を所管する大臣とする。
2項 第4条第1項
《我が国において新たに研究開発事業を行うた…》
め、当該研究開発事業を行う国内関係会社を設立しようとする特定多国籍企業その子法人等当該特定多国籍企業がその総株主等の議決権の過半数を保有していることその他の当該特定多国籍企業と密接な関係を有する法人と
、同条第3項(
第5条第4項
《4 前条第3項の規定は、第1項の認定に準…》
用する。
において準用する場合を含む。)、
第5条第1項
《前条第1項の認定を受けた者当該認定に係る…》
研究開発事業計画に従って設立された国内関係会社を含む。以下「認定研究開発事業者」という。は、当該認定に係る研究開発事業計画を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣の認定を受けな
から第3項まで及び前条第1項における主務大臣は、経済産業大臣及び 研究開発事業 の成果が直接利用される事業を所管する大臣とする。
3項 第6条第1項
《我が国において新たに統括事業を行うため、…》
当該統括事業を行う国内関係会社を設立しようとする特定多国籍企業その子法人等が既に我が国において当該統括事業を行っている場合における当該特定多国籍企業を除く。は、当該統括事業に関する計画以下「統括事業計
、同条第3項(
第7条第4項
《4 前条第3項の規定は、第1項の認定に準…》
用する。
において準用する場合を含む。)、
第7条第1項
《前条第1項の認定を受けた者当該認定に係る…》
統括事業計画に従って設立された国内関係会社を含む。以下「認定統括事業者」という。は、当該認定に係る統括事業計画を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣の認定を受けなければならな
から第3項まで及び前条第2項における主務大臣は、経済産業大臣及び 統括事業 に係る事業を所管する大臣とする。
4項 第2条第1項第1号
《この法律において「特定多国籍企業」とは、…》
次の各号のいずれにも該当する法人をいう。 1 法人の本店又は主たる事務所が所在する国又は地域以下この号及び第4項において「国等」という。以外の国等に当該法人の子法人等当該法人がその総株主等の議決権総株
及び第2号並びに第2項における主務省令は、第1項に規定する主務大臣の共同で発する命令とし、同条第3項、
第4条第1項
《我が国において新たに研究開発事業を行うた…》
め、当該研究開発事業を行う国内関係会社を設立しようとする特定多国籍企業その子法人等当該特定多国籍企業がその総株主等の議決権の過半数を保有していることその他の当該特定多国籍企業と密接な関係を有する法人と
、第2項第2号並びに第3項第2号及び第3号並びに
第5条第1項
《前条第1項の認定を受けた者当該認定に係る…》
研究開発事業計画に従って設立された国内関係会社を含む。以下「認定研究開発事業者」という。は、当該認定に係る研究開発事業計画を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣の認定を受けな
における主務省令は、第2項に規定する主務大臣の共同で発する命令とし、
第2条第4項
《4 この法律において「統括事業」とは、二…》
以上の法人これらの法人の本店又は主たる事務所が所在する国等の数が二以上であるものに限る。のそれぞれの総株主等の議決権の過半数を取得し、又は保有することにより、当該二以上の法人が行う事業の方針を策定する
、
第6条第1項
《我が国において新たに統括事業を行うため、…》
当該統括事業を行う国内関係会社を設立しようとする特定多国籍企業その子法人等が既に我が国において当該統括事業を行っている場合における当該特定多国籍企業を除く。は、当該統括事業に関する計画以下「統括事業計
、第2項第2号並びに第3項第2号及び第3号並びに
第7条第1項
《前条第1項の認定を受けた者当該認定に係る…》
統括事業計画に従って設立された国内関係会社を含む。以下「認定統括事業者」という。は、当該認定に係る統括事業計画を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣の認定を受けなければならな
における主務省令は、前項に規定する主務大臣の共同で発する命令とする。
4章 罰則
14条
1項 第12条
《報告の徴収 主務大臣は、認定研究開発事…》
業者に対し、当該認定研究開発事業計画の実施状況について報告を求めることができる。 2 主務大臣は、認定統括事業者に対し、当該認定統括事業計画の実施状況について報告を求めることができる。
の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、310,000円以下の罰金に処する。
2項 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても、同項の刑を科する。