1章 総則
1条 (目的)
1項 この法律は、消費者教育が、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差等に起因する消費者被害を防止するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるようその自立を支援する上で重要であることに鑑み、消費者教育の機会が提供されることが消費者の権利であることを踏まえ、消費者教育に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の消費者教育の推進に関し必要な事項を定めることにより、消費者教育を総合的かつ一体的に推進し、もって国民の消費生活の安定及び向上に寄与することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 消費者教育 」とは、消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育(消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育を含む。)及びこれに準ずる啓発活動をいう。
2項 この法律において「 消費者市民社会 」とは、消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会をいう。
3条 (基本理念)
1項 消費者教育 は、消費生活に関する知識を修得し、これを適切な行動に結び付けることができる実践的な能力が育まれることを旨として行われなければならない。
2項 消費者教育 は、消費者が 消費者市民社会 を構成する一員として主体的に消費者市民社会の形成に参画し、その発展に寄与することができるよう、その育成を積極的に支援することを旨として行われなければならない。
3項 消費者教育 は、幼児期から高齢期までの各段階に応じて体系的に行われるとともに、年齢、障害の有無その他の消費者の特性に配慮した適切な方法で行われなければならない。
4項 消費者教育 は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場の特性に応じた適切な方法により、かつ、それぞれの場における消費者教育を推進する多様な主体の連携及び他の消費者政策(消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策をいう。
第9条第2項第3号
《2 基本方針においては、次に掲げる事項を…》
定めるものとする。 1 消費者教育の推進の意義及び基本的な方向に関する事項 2 消費者教育の推進の内容に関する事項 3 関連する他の消費者政策との連携に関する基本的な事項 4 その他消費者教育の推進に
において同じ。)との有機的な連携を確保しつつ、効果的に行われなければならない。
5項 消費者教育 は、消費者の消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に与える影響に関する情報その他の多角的な視点に立った情報を提供することを旨として行われなければならない。
6項 消費者教育 は、災害その他非常の事態においても消費者が合理的に行動することができるよう、非常の事態における消費生活に関する知識と理解を深めることを旨として行われなければならない。
7項 消費者教育 に関する施策を講ずるに当たっては、環境教育、食育、国際理解教育その他の消費生活に関連する教育に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされなければならない。
4条 (国の責務)
1項 国は、自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができる自立した消費者の育成が極めて重要であることに鑑み、前条の 基本理念 (以下この章において「 基本理念 」という。)にのっとり、 消費者教育 の推進に関する総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2項 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、前項の施策が適切かつ効率的に策定され、及び実施されるよう、相互に又は関係行政機関の長との間の緊密な連携協力を図りつつ、それぞれの所掌に係る 消費者教育 の推進に関する施策を推進しなければならない。
5条 (地方公共団体の責務)
1項 地方公共団体は、 基本理念 にのっとり、消費生活センター( 消費者安全法 (2009年法律第50号)
第10条の2第1項第1号
《都道府県及び前条第2項の施設又は機関を設…》
置する市町村は、次に掲げる事項について条例で定めるものとする。 1 消費生活センター前条第1項又は第2項の施設又は機関をいう。次項及び第47条第2項において同じ。の組織及び運営に関する事項 2 第8条
に規定する消費生活センターをいう。
第13条第2項
《2 内閣総理大臣は、前項の規定により取り…》
まとめた結果を、関係行政機関、関係地方公共団体及び国民生活センターに提供するとともに、消費者委員会に報告するものとする。
及び
第20条第1項
《委員の任期は、2年とする。 ただし、補欠…》
の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
において同じ。)、教育委員会その他の関係機関相互間の緊密な連携の下に、 消費者教育 の推進に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の社会的、経済的状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
6条 (消費者団体の努力)
1項 消費者団体は、 基本理念 にのっとり、 消費者教育 の推進のための自主的な活動に努めるとともに、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場において行われる消費者教育に協力するよう努めるものとする。
7条 (事業者及び事業者団体の努力)
1項 事業者及び事業者団体は、事業者が商品及び役務を供給する立場において消費者の消費生活に密接に関係していることに鑑み、 基本理念 にのっとり、国及び地方公共団体が実施する 消費者教育 の推進に関する施策に協力するよう努めるとともに、消費者教育の推進のための自主的な活動に努めるものとする。
8条 (財政上の措置等)
1項 政府は、 消費者教育 の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
2項 地方公共団体は、 消費者教育 の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2章 基本方針等
9条 (基本方針)
1項 政府は、 消費者教育 の推進に関する基本的な方針(以下この章及び第4章において「 基本方針 」という。)を定めなければならない。
2項 基本方針 においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
1号 消費者教育 の推進の意義及び基本的な方向に関する事項
2号 消費者教育 の推進の内容に関する事項
3号 関連する他の消費者政策との連携に関する基本的な事項
4号 その他 消費者教育 の推進に関する重要事項
3項 基本方針 は、 消費者基本法 (1968年法律第78号)
第9条第1項
《政府は、消費者政策の計画的な推進を図るた…》
め、消費者政策の推進に関する基本的な計画以下「消費者基本計画」という。を定めなければならない。
に規定する消費者基本計画との調和が保たれたものでなければならない。
4項 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、 基本方針 の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
5項 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、 基本方針 の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、 消費者教育 推進会議及び消費者委員会の意見を聴くほか、消費者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
6項 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、第4項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、 基本方針 を公表しなければならない。
7項 政府は、消費生活を取り巻く環境の変化を勘案し、並びに 消費者教育 の推進に関する施策の実施の状況についての調査、分析及び評価を踏まえ、おおむね5年ごとに 基本方針 に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
8項 第4項から第6項までの規定は、 基本方針 の変更について準用する。
10条 (都道府県消費者教育推進計画等)
1項 都道府県は、 基本方針 を踏まえ、その都道府県の区域における 消費者教育 の推進に関する施策についての計画(以下この条及び
第20条第2項第2号
《2 消費者教育推進地域協議会は、次に掲げ…》
る事務を行うものとする。 1 当該都道府県又は市町村の区域における消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して消費者教育推進地域協議会の構成員相互の情報の交換及び調整を行うこと。 2 都道府県又
において「 都道府県消費者教育推進計画 」という。)を定めるよう努めなければならない。
2項 市町村は、 基本方針 ( 都道府県消費者教育推進計画 が定められているときは、基本方針及び都道府県消費者教育推進計画)を踏まえ、その市町村の区域における 消費者教育 の推進に関する施策についての計画(以下この条及び
第20条第2項第2号
《2 消費者教育推進地域協議会は、次に掲げ…》
る事務を行うものとする。 1 当該都道府県又は市町村の区域における消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して消費者教育推進地域協議会の構成員相互の情報の交換及び調整を行うこと。 2 都道府県又
において「 市町村消費者教育推進計画 」という。)を定めるよう努めなければならない。
3項 都道府県及び市町村は、 都道府県消費者教育推進計画 又は 市町村消費者教育推進計画 を定めようとするときは、あらかじめ、その都道府県又は市町村の区域の消費者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。この場合において、
第20条第1項
《都道府県及び市町村は、その都道府県又は市…》
町村の区域における消費者教育を推進するため、消費者、消費者団体、事業者、事業者団体、教育関係者、消費生活センターその他の当該都道府県又は市町村の関係機関等をもって構成する消費者教育推進地域協議会を組織
の規定により 消費者教育 推進地域協議会を組織している都道府県及び市町村にあっては、当該消費者教育推進地域協議会の意見を聴かなければならない。
4項 都道府県及び市町村は、 都道府県消費者教育推進計画 又は 市町村消費者教育推進計画 を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるものとする。
5項 都道府県及び市町村は、 都道府県消費者教育推進計画 又は 市町村消費者教育推進計画 を定めた場合は、その都道府県又は市町村の区域における 消費者教育 の推進に関する施策の実施の状況についての調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、都道府県消費者教育推進計画又は市町村消費者教育推進計画を変更するものとする。
6項 第3項及び第4項の規定は、 都道府県消費者教育推進計画 又は 市町村消費者教育推進計画 の変更について準用する。
3章 基本的施策
11条 (学校における消費者教育の推進)
1項 国及び地方公共団体は、幼児、児童及び生徒の発達段階に応じて、学校( 学校教育法 (1947年法律第26号)
第1条
《 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、…》
中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
に規定する学校をいい、大学及び高等専門学校を除く。第3項において同じ。)の授業その他の教育活動において適切かつ体系的な 消費者教育 の機会を確保するため、必要な施策を推進しなければならない。
2項 国及び地方公共団体は、教育職員に対する 消費者教育 に関する研修を充実するため、教育職員の職務の内容及び経験に応じ、必要な措置を講じなければならない。
3項 国及び地方公共団体は、学校において実践的な 消費者教育 が行われるよう、その内外を問わず、消費者教育に関する知識、経験等を有する人材の活用を推進するものとする。
12条 (大学等における消費者教育の推進)
1項 国及び地方公共団体は、大学等( 学校教育法
第1条
《 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、…》
中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
に規定する大学及び高等専門学校並びに専修学校、各種学校その他の同条に規定する学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うものをいう。以下この条及び
第16条第2項
《2 国及び地方公共団体は、大学等、研究機…》
関、消費者団体その他の関係機関及び関係団体に対し、消費者教育を担う人材の育成及び資質の向上のための講座の開設その他の自主的な取組を行うよう促すものとする。
において同じ。)において 消費者教育 が適切に行われるようにするため、大学等に対し、学生等の消費生活における被害を防止するための啓発その他の自主的な取組を行うよう促すものとする。
2項 国及び地方公共団体は、大学等が行う前項の取組を促進するため、関係団体の協力を得つつ、学生等に対する援助に関する業務に従事する教職員に対し、研修の機会の確保、情報の提供その他の必要な措置を講じなければならない。
13条 (地域における消費者教育の推進)
1項 国、地方公共団体及び独立行政法人 国民生活センター (以下この章において「 国民生活センター 」という。)は、地域において高齢者、障害者等に対する 消費者教育 が適切に行われるようにするため、 民生委員法 (1948年法律第198号)に定める民生委員、 社会福祉法 (1951年法律第45号)に定める社会福祉主事、介護福祉士その他の高齢者、障害者等が地域において日常生活を営むために必要な支援を行う者に対し、研修の実施、情報の提供その他の必要な措置を講じなければならない。
2項 国、地方公共団体及び 国民生活センター は、公民館その他の社会教育施設等において消費生活センター等の収集した情報の活用による実例を通じた 消費者教育 が行われるよう、必要な措置を講じなければならない。
14条 (事業者及び事業者団体による消費者教育の支援)
1項 事業者及び事業者団体は、消費者団体その他の関係団体との情報の交換その他の連携を通じ、消費者の消費生活に関する知識の向上が図られるよう努めるものとする。
2項 事業者は、消費者からの問合せ、相談等を通じて得た消費者に有用な消費生活に関する知識を広く提供するよう努めるものとする。
3項 事業者は、その従業者に対し、研修を実施し、又は事業者団体等が行う講習会を受講させること等を通じ、消費生活に関する知識及び理解を深めるよう努めるものとする。
4項 事業者団体は、消費者団体その他の民間の団体が行う 消費者教育 の推進のための活動に対し、資金の提供その他の援助に努めるものとする。
15条 (教材の充実等)
1項 国及び地方公共団体は、 消費者教育 に使用される教材の充実を図るとともに、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場において当該教材が有効に活用されるよう、消費者教育に関連する実務経験を有する者等の意見を反映した教材の開発及びその効果的な提供に努めなければならない。
16条 (人材の育成等)
1項 国、地方公共団体及び 国民生活センター は、 消費者安全法 に定める消費生活相談員その他の消費者の利益の擁護又は増進を図るための活動を行う者に対し、 消費者教育 に関する専門的知識を修得するための研修の実施その他その資質の向上のために必要な措置を講じなければならない。
2項 国及び地方公共団体は、大学等、研究機関、消費者団体その他の関係機関及び関係団体に対し、 消費者教育 を担う人材の育成及び資質の向上のための講座の開設その他の自主的な取組を行うよう促すものとする。
17条 (調査研究等)
1項 国及び地方公共団体は、 消費者教育 に関する調査研究を行う大学、研究機関その他の関係機関及び関係団体と協力を図りつつ、諸外国の学校における総合的、体系的かつ効果的な消費者教育の内容及び方法その他の国の内外における消費者教育の内容及び方法に関し、調査研究並びにその成果の普及及び活用に努めなければならない。
18条 (情報の収集及び提供等)
1項 国、地方公共団体及び 国民生活センター は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場において行われている 消費者教育 に関する先進的な取組に関する情報その他の消費者教育に関する情報について、年齢、障害の有無その他の消費者の特性に配慮しつつ、これを収集し、及び提供するよう努めなければならない。
2項 国は、消費生活における被害の防止を図るため、年齢、障害の有無その他の消費者の特性を勘案して、その収集した消費生活に関する情報が 消費者教育 の内容に的確かつ迅速に反映されるよう努めなければならない。
4章 消費者教育推進会議等
19条 (消費者教育推進会議)
1項 消費者庁に、 消費者教育 推進会議を置く。
2項 消費者教育 推進会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
1号 消費者教育 の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して消費者教育推進会議の委員相互の情報の交換及び調整を行うこと。
2号 基本方針 に関し、
第9条第5項
《5 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、基本…》
方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、消費者教育推進会議及び消費者委員会の意見を聴くほか、消費者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなけれ
(同条第8項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
3項 消費者教育 推進会議の委員は、消費者、事業者及び教育関係者、消費者団体、事業者団体その他の関係団体を代表する者、学識経験を有する者並びに関係行政機関及び関係する独立行政法人( 独立行政法人通則法 (1999年法律第103号)
第2条第1項
《この法律において「独立行政法人」とは、国…》
民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそ
に規定する独立行政法人をいう。)の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
4項 前2項に定めるもののほか、 消費者教育 推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
20条 (消費者教育推進地域協議会)
1項 都道府県及び市町村は、その都道府県又は市町村の区域における 消費者教育 を推進するため、消費者、消費者団体、事業者、事業者団体、教育関係者、消費生活センターその他の当該都道府県又は市町村の関係機関等をもって構成する消費者教育推進地域協議会を組織するよう努めなければならない。
2項 消費者教育 推進地域協議会は、次に掲げる事務を行うものとする。
1号 当該都道府県又は市町村の区域における 消費者教育 の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して消費者教育推進地域協議会の構成員相互の情報の交換及び調整を行うこと。
2号 都道府県又は市町村が 都道府県消費者教育推進計画 又は 市町村消費者教育推進計画 を作成し、又は変更しようとする場合においては、当該都道府県消費者教育推進計画又は市町村消費者教育推進計画の作成又は変更に関して意見を述べること。
3項 前2項に定めるもののほか、 消費者教育 推進地域協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、消費者教育推進地域協議会が定める。