1章 総則
1条 (目的)
1項 この法律は、交通に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、 交通安全対策基本法 (1970年法律第110号)と相まって、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。
2条 (交通に関する施策の推進に当たっての基本的認識)
1項 交通に関する施策の推進は、交通が、国民の自立した日常生活及び社会生活の確保、活発な地域間交流及び国際交流並びに物資の円滑な流通を実現する機能を有するものであり、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図るために欠くことのできないものであることに鑑み、将来にわたって、その機能が10分に発揮されることにより、国民その他の者(以下「 国民等 」という。)の交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要であるという基本的認識の下に行われなければならない。
3条 (交通の機能の確保及び向上)
1項 交通に関する施策の推進は、交通が、国民の日常生活及び社会生活の基盤であること、国民の社会経済活動への積極的な参加に際して重要な役割を担っていること及び経済活動の基盤であることに鑑み、我が国における近年の急速な少子高齢化の進展、人口の減少その他の社会経済情勢の変化に対応しつつ、交通が、豊かな国民生活の実現に寄与するとともに、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化並びに地域経済の活性化、地域社会の維持及び発展その他地域の活力の向上に寄与するものとなるよう、その機能の確保及び向上が図られることを旨として行われなければならない。
2項 交通の機能の確保及び向上を図るに当たっては、国土強靱化の観点を踏まえ、大規模な災害が発生した場合においても交通の機能が維持されるとともに、当該災害からの避難のための移動が円滑に行われること等を通じて、我が国の社会経済活動の持続可能性を確保することの重要性に鑑み、できる限り、当該災害による交通の機能の低下の抑制及びその迅速な回復に資するとともに、当該災害の発生時における避難のための移動に的確に対応し得るものとなるように配慮しなければならない。
4条 (交通による環境への負荷の低減)
1項 交通に関する施策の推進は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び交通が環境に与える影響に鑑み、将来にわたって、国民が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受することができるよう、交通による環境への負荷の低減が図られることを旨として行われなければならない。
5条 (交通の適切な役割分担及び有機的かつ効率的な連携)
1項 交通に関する施策の推進は、徒歩、自転車、自動車、鉄道車両、船舶、航空機その他の手段による交通が、交通手段(交通施設及び輸送サービスを含む。以下同じ。)の選択に係る競争及び 国民等 の自由な選好を踏まえつつそれぞれの特性に応じて適切に役割を分担し、かつ、有機的かつ効率的に連携することを旨として行われなければならない。
6条 (連携等による施策の推進)
1項 交通に関する施策の推進は、まちづくり、観光立国の実現その他の観点を踏まえ、当該施策相互間の連携及びこれと関連する施策との連携を図りながら、国、地方公共団体、運輸事業その他交通に関する事業を行う者(以下「 交通関連事業者 」という。)、交通施設の管理を行う者(以下「 交通施設管理者 」という。)、住民その他の関係者が連携し、及び協働しつつ、行われなければならない。
7条 (交通の安全の確保)
1項 交通の安全の確保に関する施策については、当該施策が 国民等 の生命、身体及び財産の保護を図る上で重要な役割を果たすものであることに鑑み、 交通安全対策基本法 その他の関係法律で定めるところによる。
2項 交通に関する施策の推進に当たっては、前項に定めるところにより行われる交通の安全の確保に関する施策との10分な連携が確保されなければならない。
8条 (国の責務)
1項 国は、
第2条
《交通に関する施策の推進に当たっての基本的…》
認識 交通に関する施策の推進は、交通が、国民の自立した日常生活及び社会生活の確保、活発な地域間交流及び国際交流並びに物資の円滑な流通を実現する機能を有するものであり、国民生活の安定向上及び国民経済の
から
第6条
《連携等による施策の推進 交通に関する施…》
策の推進は、まちづくり、観光立国の実現その他の観点を踏まえ、当該施策相互間の連携及びこれと関連する施策との連携を図りながら、国、地方公共団体、運輸事業その他交通に関する事業を行う者以下「交通関連事業者
までに定める交通に関する施策についての基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、交通に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2項 国は、情報の提供その他の活動を通じて、基本理念に関する 国民等 の理解を深め、かつ、その協力を得るよう努めなければならない。
9条 (地方公共団体の責務)
1項 地方公共団体は、基本理念にのっとり、交通に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2項 地方公共団体は、情報の提供その他の活動を通じて、基本理念に関する住民その他の者の理解を深め、かつ、その協力を得るよう努めなければならない。
10条 (交通関連事業者及び交通施設管理者の責務)
1項 交通関連事業者 及び 交通施設管理者 は、基本理念の実現に重要な役割を有していることに鑑み、その業務を適切に行うよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する交通に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2項 前項に定めるもののほか、 交通関連事業者 及び 交通施設管理者 は、基本理念にのっとり、その業務を行うに当たっては、当該業務に係る正確かつ適切な情報の提供に努めるものとする。
11条 (国民等の役割)
1項 国民等 は、基本理念についての理解を深め、その実現に向けて自ら取り組むことができる活動に主体的に取り組むよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する交通に関する施策に協力するよう努めることによって、基本理念の実現に積極的な役割を果たすものとする。
12条 (関係者の連携及び協力)
1項 国、地方公共団体、 交通関連事業者 、 交通施設管理者 、住民その他の関係者は、基本理念の実現に向けて、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。
13条 (法制上の措置等)
1項 政府は、交通に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
14条 (年次報告等)
1項 政府は、毎年、国会に、交通の動向及び政府が交通に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2項 政府は、毎年、前項の報告に係る交通の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
2章 交通に関する基本的施策 > 1節 交通政策基本計画
15条
1項 政府は、交通に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、交通に関する施策に関する基本的な計画(以下この条において「 交通政策基本計画 」という。)を定めなければならない。
2項 交通政策基本計画 は、次に掲げる事項について定めるものとする。
1号 交通に関する施策についての基本的な方針
2号 交通に関する施策についての目標
3号 交通に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
4号 前3号に掲げるもののほか、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3項 交通政策基本計画 は、国土の総合的な利用、整備及び保全に関する国の計画並びに環境の保全に関する国の基本的な計画との調和が保たれたものでなければならない。
4項 内閣総理大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣は、 交通政策基本計画 の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
5項 内閣総理大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣は、前項の規定により 交通政策基本計画 の案を作成しようとするときは、あらかじめ、その趣旨、内容その他の必要な事項を公表し、広く 国民等 の意見を求めなければならない。
6項 国土交通大臣は、第4項の規定により 交通政策基本計画 の案を作成しようとするときは、あらかじめ、交通政策審議会及び社会資本整備審議会の意見を聴かなければならない。
7項 内閣総理大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣は、第4項の規定により 交通政策基本計画 の案を作成しようとするときは、あらかじめ、環境の保全の観点から、環境大臣に協議しなければならない。
8項 政府は、 交通政策基本計画 を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
9項 第4項から前項までの規定は、 交通政策基本計画 の変更について準用する。
2節 国の施策
16条 (日常生活等に必要不可欠な交通手段の確保等)
1項 国は、少子高齢化の進展、人口の減少その他の社会経済情勢の変化に伴い、国民の交通に対する需要が多様化し、又は減少する状況においても、国民が日常生活及び社会生活を営むに当たって必要不可欠な通勤、通学、通院その他の人又は物の移動を円滑に行うことができるようにするため、離島に係る交通事情その他地域における自然的経済的社会的諸条件に配慮しつつ、交通手段の確保その他必要な施策を講ずるものとする。
17条 (高齢者、障害者、妊産婦等の円滑な移動のための施策)
1項 国は、高齢者、障害者、妊産婦その他の者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるもの及び乳幼児を同伴する者が日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑に移動することができるようにするため、自動車、鉄道車両、船舶及び航空機、旅客施設、道路並びに駐車場に係る構造及び設備の改善の推進その他必要な施策を講ずるものとする。
17条の2 (公共交通機関に係る旅客施設等の安全及び衛生の確保)
1項 国は、国民が安全にかつ安心して公共交通機関を利用することができるようにするため、公共交通機関に係る旅客施設及びサービスに関する安全及び衛生の確保の支援その他必要な施策を講ずるものとする。
18条 (交通の利便性向上、円滑化及び効率化)
1項 国は、前3条に定めるもののほか、 国民等 の日常生活又は社会生活における交通に対する基本的な需要が適切に充足されるようにするため、定時性の確保(設定された発着時刻に従って運行することをいう。)、速達性の向上(目的地に到達するまでに要する時間を短縮することをいう。)、快適性の確保、乗継ぎの円滑化その他交通結節機能の高度化(交通施設及びその周辺の施設における相当数の人の移動について、複数の交通手段の間を結節する機能を高度化することをいう。)、輸送の合理化その他の交通の利便性の向上、円滑化及び効率化のために必要な施策を講ずるものとする。
19条 (国際競争力の強化に必要な施策)
1項 国は、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化を図るため、国際海上輸送網及び国際航空輸送網の形成、これらの輸送網の拠点となる港湾及び空港の整備、これらの輸送網と全国的な国内交通網とを結節する機能の強化その他必要な施策を講ずるものとする。
20条 (地域の活力の向上に必要な施策)
1項 国は、地域経済の活性化、地域社会の維持及び発展その他の地域の活力の向上を図るため、地域における企業の立地並びに地域内及び地域間の交流及び物資の流通の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の形成(基幹的な高速交通網の形成を含む。)、輸送サービスの提供の確保その他必要な施策を講ずるものとする。
21条 (運輸事業その他交通に関する事業の健全な発展)
1項 国は、運輸事業その他交通に関する事業の安定的な運営が交通の機能の確保及び向上に資するものであることに鑑み、その健全な発展を図るため、事業基盤の強化、人材の確保(これに必要な労働条件の改善を含む。)の支援、人材の育成その他必要な施策を講ずるものとする。
22条 (大規模な災害が発生した場合における交通の機能の低下の抑制及びその迅速な回復等に必要な施策)
1項 国は、国土強靱化の観点から、我が国の社会経済活動の持続可能性を確保することの重要性に鑑み、大規模な災害が発生した場合における交通の機能の低下の抑制及びその迅速な回復を図るとともに、当該災害からの避難のための移動を円滑に行うことができるようにするため、交通施設の地震に対する安全性の向上、相互に代替性のある交通手段の確保、交通の機能の速やかな復旧を図るための関係者相互間の連携の確保、災害時において1時に多数の者の避難のための移動が生じ得ることを踏まえた交通手段の整備その他必要な施策を講ずるものとする。
23条 (交通に係る環境負荷の低減に必要な施策)
1項 国は、交通に係る温室効果ガスの排出の抑制、大気汚染、海洋汚染及び騒音の防止その他交通による環境への負荷の低減を図るため、温室効果ガスその他環境への負荷の原因となる物質の排出の抑制に資する自動車その他の輸送用機械器具の開発、普及及び適正な使用の促進並びに交通の円滑化の推進、鉄道及び船舶による貨物輸送への転換その他の物の移動の効率化の促進、公共交通機関の利用者の利便の増進、船舶からの海洋への廃棄物の排出の防止、航空機の騒音により生ずる障害の防止その他必要な施策を講ずるものとする。
24条 (総合的な交通体系の整備等)
1項 国は、徒歩、自転車、自動車、鉄道車両、船舶、航空機その他の手段による交通が、それぞれの特性に応じて適切に役割を分担し、かつ、有機的かつ効率的な交通網を形成することが必要であることを踏まえつつ、道路交通、鉄道交通、海上交通及び航空交通の間における連携並びに公共交通機関相互間の連携の強化の促進その他の総合的な交通体系の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。
2項 国は、交通に係る需要の動向、交通施設の老朽化の進展の状況その他の事情に配慮しつつ、前項に規定する連携の下に、交通手段の整備を重点的、効果的かつ効率的に推進するために必要な施策を講ずるものとする。
25条 (まちづくりの観点からの施策の促進)
1項 国は、地方公共団体による交通に関する施策が、まちづくりの観点から、土地利用その他の事項に関する総合的な計画を踏まえ、国、 交通関連事業者 、 交通施設管理者 、住民その他の関係者との連携及び協力の下に推進されるよう、必要な施策を講ずるものとする。この場合においては、当該連携及び協力が、住民その他の者の交通に対する需要その他の事情に配慮されたものとなるように努めるものとする。
26条 (観光立国の実現の観点からの施策の推進)
1項 国は、観光立国の実現が、我が国経済社会の発展のために極めて重要であるとともに、観光旅客の往来の促進が、地域間交流及び国際交流の拡大を通じて、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図り、並びに国際相互理解の増進に寄与することに鑑み、観光旅客の円滑な往来に必要な交通手段の提供の推進、自動車、鉄道車両、船舶及び航空機、旅客施設並びに道路に係る外国語その他の方法による外国人観光旅客に対する情報の提供の推進その他の交通に関連する観光旅客の往来の促進に必要な施策を講ずるものとする。
27条 (協議の促進等)
1項 国は、国、地方公共団体、 交通関連事業者 、 交通施設管理者 、住民その他の関係者が相互に連携と協働を図ることにより、交通に関する施策の効果的な推進が図られることに鑑み、これらの者の間における協議の促進その他の関係者相互間の連携と協働を促進するために必要な施策を講ずるものとする。
28条 (調査研究)
1項 国は、交通の動向に関する調査研究その他の交通に関する施策の策定に必要な調査研究を推進するものとする。
29条 (技術の開発及び普及)
1項 国は、情報通信技術その他の技術の活用が交通に関する施策の効果的な推進に寄与することに鑑み、交通に関する技術の研究開発及び普及の効果的な推進を図るため、これらの技術の研究開発の目標の明確化、国及び独立行政法人の試験研究機関、大学、民間その他の研究開発を行う者の間の連携の強化、基本理念の実現に資する技術を活用した交通手段の導入の促進その他必要な施策を講ずるものとする。
30条 (国際的な連携の確保及び国際協力の推進)
1項 国は、交通に関する施策を国際的協調の下で推進することの重要性に鑑み、交通に関し、我が国に蓄積された技術及び知識が海外において活用されるように配慮しつつ、国際的な規格の標準化その他の国際的な連携の確保及び開発途上地域に対する技術協力その他の国際協力を推進するため、必要な施策を講ずるものとする。
31条 (国民等の立場に立った施策の実施のための措置)
1項 国は、 国民等 の立場に立って、その意見を踏まえつつ交通に関する施策を講ずるため、国民等の意見を反映させるために必要な措置その他の措置を講ずるものとする。
3節 地方公共団体の施策
32条
1項 地方公共団体は、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた交通に関する施策を、まちづくりその他の観点を踏まえながら、当該施策相互間の連携及びこれと関連する施策との連携を図りつつ、総合的かつ計画的に実施するものとする。