1条 (目的)
1項 この法律は、近年、雇用形態が多様化する中で、雇用形態により労働者の待遇や雇用の安定性について格差が存在し、それが社会における格差の固定化につながることが懸念されていることに鑑み、それらの状況を是正するため、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにするとともに、労働者の雇用形態による職務及び待遇の相違の実態、雇用形態の転換の状況等に関する調査研究等について定めることにより、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を重点的に推進し、もって労働者がその雇用形態にかかわらず充実した職業生活を営むことができる社会の実現に資することを目的とする。
2条 (基本理念)
1項 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。
1号 労働者が、その雇用形態にかかわらずその従事する職務に応じた待遇を受けることができるようにすること。
2号 通常の労働者以外の労働者が通常の労働者となることを含め、労働者がその意欲及び能力に応じて自らの希望する雇用形態により就労する機会が与えられるようにすること。
3号 労働者が主体的に職業生活設計( 職業能力開発促進法 (1969年法律第64号)
第2条第4項
《4 この法律において「職業生活設計」とは…》
、労働者が、自らその長期にわたる職業生活における職業に関する目的を定めるとともに、その目的の実現を図るため、その適性、職業経験その他の実情に応じ、職業の選択、職業能力の開発及び向上のための取組その他の
に規定する職業生活設計をいう。次条第3項及び
第8条
《多様な職業能力開発の機会の確保 事業主…》
は、その雇用する労働者が多様な職業訓練を受けること等により職業能力の開発及び向上を図ることができるように、その機会の確保について、次条から第10条の四までに定める措置を通じて、配慮するものとする。
において同じ。)を行い、自らの選択に応じ充実した職業生活を営むことができるようにすること。
3条 (国の責務等)
1項 国は、前条の基本理念にのっとり、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2項 事業主は、国が実施する労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に協力するよう努めるものとする。
3項 労働者は、職業生活設計を行うことの重要性について理解を深めるとともに、主体的にこれを行うよう努めるものとする。
4条 (法制上の措置等)
1項 政府は、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を実施するため、必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
5条 (調査研究)
1項 国は、次に掲げる事項について調査研究を行うものとする。
1号 労働者の雇用形態の実態
2号 労働者の雇用形態による職務の相違及び賃金、教育訓練、福利厚生その他の待遇の相違の実態
3号 労働者の雇用形態の転換の状況
4号 職場における雇用形態による職務の分担及び管理的地位への登用の状況
2項 国は、前項第3号に掲げる事項について調査研究を行うに当たっては、通常の労働者以外の労働者が通常の労働者への転換を希望する場合における処遇その他の取扱いの実態、当該転換を妨げている要因等について重点的にこれを行うものとする。
6条 (職務に応じた待遇の確保)
1項 国は、雇用形態の異なる労働者についてもその待遇の相違が不合理なものとならないようにするため、事業主が行う通常の労働者及び通常の労働者以外の労働者の待遇に係る制度の共通化の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
2項 政府は、派遣労働者( 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 (1985年法律第88号)
第2条第2号
《用語の意義 第2条 この法律において、次…》
の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 1 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他
に規定する派遣労働者をいう。以下この項において同じ。)の置かれている状況に鑑み、派遣労働者について、派遣元事業主(同条第4号に規定する派遣元事業主をいう。)及び派遣先(同号に規定する派遣先をいう。以下この項において同じ。)に対し、派遣労働者の賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇についての規制等の措置を講ずることにより、派遣先に雇用される労働者との間においてその業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図るものとし、この法律の施行後、3年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずるとともに、当該措置の実施状況を勘案し、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする。
7条 (雇用環境の整備)
1項 国は、労働者がその意欲及び能力に応じて自らの希望する雇用形態により就労することが不当に妨げられることのないよう、労働者の就業形態の設定、採用及び管理的地位への登用等の雇用管理の方法の多様化の推進その他雇用環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。
2項 国は、前項の施策を講ずるに当たっては、雇用形態により労働者の待遇や雇用の安定性について格差が存在する現状を踏まえ、通常の労働者以外の労働者の雇用管理の改善及び通常の労働者以外の労働者から通常の労働者への転換が促進されるよう、必要な配慮を行うものとする。
8条 (教育の推進)
1項 国は、国民が職業生活設計の重要性について理解を深めるとともに、労働者が主体的に職業生活設計を行い、自らの選択に応じ充実した職業生活を営むことができるよう、職業生活設計についての教育の推進その他必要な施策を講ずるものとする。