1章 総則
1条 (趣旨)
1項 この法律は、生殖補助医療をめぐる現状等に鑑み、生殖補助医療の提供等に関し、基本理念を明らかにし、並びに国及び医療関係者の責務並びに国が講ずべき措置について定めるとともに、生殖補助医療の提供を受ける者以外の者の卵子又は精子を用いた生殖補助医療により出生した子の親子関係に関し、 民法 (1896年法律第89号)の特例を定めるものとする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 生殖補助医療 」とは、人工授精又は体外受精若しくは体外受精胚移植を用いた医療をいう。
2項 前項において「 人工授精 」とは、男性から提供され、処置された精子を、女性の生殖器に注入することをいい、「体外受精」とは、女性の卵巣から採取され、処置された未受精卵を、男性から提供され、処置された精子により受精させることをいい、「体外受精胚移植」とは、体外受精により生じた胚を女性の子宮に移植することをいう。
2章 生殖補助医療の提供等
3条 (基本理念)
1項 生殖補助医療 は、不妊治療として、その提供を受ける者の心身の状況等に応じて、適切に行われるようにするとともに、これにより懐胎及び出産をすることとなる女性の健康の保護が図られなければならない。
2項 生殖補助医療 の実施に当たっては、必要かつ適切な説明が行われ、各当事者の10分な理解を得た上で、その意思に基づいて行われるようにしなければならない。
3項 生殖補助医療 に用いられる精子又は卵子の採取、管理等については、それらの安全性が確保されるようにしなければならない。
4項 生殖補助医療 により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする。
4条 (国の責務)
1項 国は、前条の基本理念を踏まえ、 生殖補助医療 の適切な提供等を確保するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2項 国は、前項の施策の策定及び実施に当たっては、 生殖補助医療 の特性等に鑑み、生命倫理に配慮するとともに、国民の理解を得るよう努めなければならない。
5条 (医療関係者の責務)
1項 医師その他の医療関係者は、
第3条
《基本理念 生殖補助医療は、不妊治療とし…》
て、その提供を受ける者の心身の状況等に応じて、適切に行われるようにするとともに、これにより懐胎及び出産をすることとなる女性の健康の保護が図られなければならない。 2 生殖補助医療の実施に当たっては、必
の基本理念を踏まえ、良質かつ適切な 生殖補助医療 を提供するよう努めなければならない。
6条 (知識の普及等)
1項 国は、広報活動、教育活動等を通じて、妊娠及び出産並びに不妊治療に関する正しい知識の普及及び啓発に努めなければならない。
7条 (相談体制の整備)
1項 国は、 生殖補助医療 の提供を受けようとする者、その提供を受けた者、生殖補助医療により生まれた子等からの生殖補助医療、子の成育等に関連する各種の相談に応ずることができるよう、必要な相談体制の整備を図らなければならない。
8条 (法制上の措置等)
1項 国は、この章の規定に基づき、 生殖補助医療 の適切な提供等を確保するために必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならない。
3章 生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例
9条 (他人の卵子を用いた生殖補助医療により出生した子の母)
1項 女性が自己以外の女性の卵子(その卵子に由来する胚を含む。)を用いた 生殖補助医療 により子を懐胎し、出産したときは、その出産をした女性をその子の母とする。
10条 (他人の精子を用いる生殖補助医療により出生した子についての嫡出否認の特則)
1項 妻が、夫の同意を得て、夫以外の男性の精子(その精子に由来する胚を含む。)を用いた 生殖補助医療 により懐胎した子については、夫、子又は妻は、 民法
第774条第1項
《第772条の規定により子の父が定められる…》
場合において、父又は子は、子が嫡出であることを否認することができる。
及び第3項の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない。