こども基本法《本則》

法番号:2022年法律第77号

略称:

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1章 総則

1条 (目的)

1項 この法律は、 日本国憲法 及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 こども 」とは、心身の発達の過程にある者をいう。

2項 この法律において「 こども施策 」とは、次に掲げる施策その他の こども に関する施策及びこれと一体的に講ずべき施策をいう。

1号 新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過程を通じて切れ目なく行われる こども の健やかな成長に対する支援

2号 子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資するため、就労、結婚、妊娠、出産、育児等の各段階に応じて行われる支援

3号 家庭における養育環境その他の こども の養育環境の整備

3条 (基本理念)

1項 こども 施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

1号 全ての こども について、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。

2号 全ての こども について、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、 教育基本法 2006年法律第120号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。

3号 全ての こども について、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。

4号 全ての こども について、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。

5号 こども の養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し10分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。

6号 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

4条 (国の責務)

1項 国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、 こども 施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

5条 (地方公共団体の責務)

1項 地方公共団体は、基本理念にのっとり、 こども 施策に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内におけるこどもの状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

6条 (事業主の努力)

1項 事業主は、基本理念にのっとり、その雇用する労働者の職業生活及び家庭生活の充実が図られるよう、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。

7条 (国民の努力)

1項 国民は、基本理念にのっとり、 こども 施策について関心と理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が実施するこども施策に協力するよう努めるものとする。

8条 (年次報告)

1項 政府は、毎年、国会に、我が国における こども をめぐる状況及び政府が講じたこども施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。

2項 前項の報告は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。

1号 少子化社会対策基本法 2003年法律第133号第9条第1項 《政府は、毎年、国会に、少子化の状況及び少…》 子化に対処するために講じた施策の概況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。 に規定する少子化の状況及び少子化に対処するために講じた施策の概況

2号 子ども・若者育成支援推進法 2009年法律第71号第6条第1項 《政府は、毎年、国会に、我が国における子ど…》 も・若者の状況及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。 に規定する我が国における子ども・若者の状況及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況

3号 こども の貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律(2013年法律第64号)第8条第1項に規定するこどもの貧困の状況及びこどもの貧困の解消に向けた対策の実施の状況

2章 基本的施策

9条 (こども施策に関する大綱)

1項 政府は、 こども 施策を総合的に推進するため、こども施策に関する大綱(以下「 こども大綱 」という。)を定めなければならない。

2項 こども 大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。

1号 こども 施策に関する基本的な方針

2号 こども 施策に関する重要事項

3号 前2号に掲げるもののほか、 こども 施策を推進するために必要な事項

3項 こども 大綱は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。

1号 少子化社会対策基本法 第7条第1項 《政府は、少子化に対処するための施策の指針…》 として、総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策の大綱を定めなければならない。 に規定する総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策

2号 子ども・若者育成支援推進法 第8条第2項 《2 子ども・若者育成支援推進大綱は、次に…》 掲げる事項について定めるものとする。 1 子ども・若者育成支援施策に関する基本的な方針 2 子ども・若者育成支援施策に関する次に掲げる事項 イ 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関 各号に掲げる事項

3号 こども の貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律第9条第2項各号に掲げる事項

4項 こども 大綱に定めるこども施策については、原則として、当該こども施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとする。

5項 内閣総理大臣は、 こども 大綱の案につき閣議の決定を求めなければならない。

6項 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、 こども 大綱を公表しなければならない。

7項 前2項の規定は、 こども 大綱の変更について準用する。

10条 (都道府県こども計画等)

1項 都道府県は、 こども 大綱を勘案して、当該都道府県におけるこども施策についての計画(以下この条において「 都道府県こども計画 」という。)を定めるよう努めるものとする。

2項 市町村は、 こども 大綱( 都道府県こども計画 が定められているときは、こども大綱及び都道府県こども計画)を勘案して、当該市町村におけるこども施策についての計画(以下この条において「 市町村こども計画 」という。)を定めるよう努めるものとする。

3項 都道府県又は市町村は、 都道府県こども計画 又は 市町村こども計画 を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4項 都道府県こども計画 は、 子ども・若者育成支援推進法 第9条第1項 《都道府県は、子ども・若者育成支援推進大綱…》 を勘案して、当該都道府県の区域内における子ども・若者育成支援についての計画以下この条において「都道府県子ども・若者計画」という。を定めるよう努めるものとする。 に規定する都道府県子ども・若者計画、 こども の貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律第10条第1項に規定する都道府県計画その他法令の規定により都道府県が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。

5項 市町村こども計画 は、 子ども・若者育成支援推進法 第9条第2項 《2 市町村は、子ども・若者育成支援推進大…》 綱都道府県子ども・若者計画が定められているときは、子ども・若者育成支援推進大綱及び都道府県子ども・若者計画を勘案して、当該市町村の区域内における子ども・若者育成支援についての計画次項において「市町村子 に規定する市町村子ども・若者計画、 こども の貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律第10条第2項に規定する市町村計画その他法令の規定により市町村が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。

11条 (こども施策に対するこども等の意見の反映)

1項 及び地方公共団体は、 こども 施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

12条 (こども施策に係る支援の総合的かつ一体的な提供のための体制の整備等)

1項 国は、 こども 施策に係る支援が、支援を必要とする事由、支援を行う関係機関、支援の対象となる者の年齢又は居住する地域等にかかわらず、切れ目なく行われるようにするため、当該支援を総合的かつ一体的に行う体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

13条 (関係者相互の有機的な連携の確保等)

1項 国は、 こども 施策が適正かつ円滑に行われるよう、医療、保健、福祉、教育、療育等に関する業務を行う関係機関相互の有機的な連携の確保に努めなければならない。

2項 都道府県及び市町村は、 こども 施策が適正かつ円滑に行われるよう、前項に規定する業務を行う関係機関及び地域においてこどもに関する支援を行う民間団体相互の有機的な連携の確保に努めなければならない。

3項 都道府県又は市町村は、前項の有機的な連携の確保に資するため、 こども 施策に係る事務の実施に係る協議及び連絡調整を行うための協議会を組織することができる。

4項 前項の協議会は、第2項の関係機関及び民間団体その他の都道府県又は市町村が必要と認める者をもって構成する。

14条

1項 国は、前条第1項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関が行う こども に関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置を講ずるものとする。

2項 都道府県及び市町村は、前条第2項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関及び民間団体が行う こども に関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

15条 (この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容についての周知)

1項 国は、この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものとする。

16条 (こども施策の充実及び財政上の措置等)

1項 政府は、 こども 大綱の定めるところにより、こども施策の幅広い展開その他のこども施策の一層の充実を図るとともに、その実施に必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

3章 こども政策推進会議

17条 (設置及び所掌事務等)

1項 こども 家庭庁に、特別の機関として、こども政策推進 会議 以下「 会議 」という。)を置く。

2項 会議 は、次に掲げる事務をつかさどる。

1号 こども 大綱の案を作成すること。

2号 前号に掲げるもののほか、 こども 施策に関する重要事項について審議し、及びこども施策の実施を推進すること。

3号 こども 施策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。

4号 前3号に掲げるもののほか、他の法令の規定により 会議 に属させられた事務

3項 会議 は、前項の規定により こども 大綱の案を作成するに当たり、こども及びこどもを養育する者、学識経験者、地域においてこどもに関する支援を行う民間団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

18条 (組織等)

1項 会議 は、会長及び委員をもって組織する。

2項 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。

3項 委員は、次に掲げる者をもって充てる。

1号 内閣府設置法 1999年法律第89号第9条第1項 《内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関して行…》 政各部の施策の統1を図るために特に必要がある場合においては、内閣府に、内閣総理大臣を助け、命を受けて第4条第1項及び第2項に規定する事務並びにこれに関連する同条第3項に規定する事務これらの事務のうち大 に規定する特命担当大臣であって、同項の規定により命を受けて同法第11条の3に規定する事務を掌理するもの

2号 会長及び前号に掲げる者以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者

19条 (資料提出の要求等)

1項 会議 は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。

2項 会議 は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

20条 (政令への委任)

1項 前3条に定めるもののほか、 会議 の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

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