1条 (目的)
1項 この法律は、円滑化協定の適確な実施を確保するため、円滑化協定の実施に伴う 道路運送法 (1951年法律第183号)及び 道路運送車両法 (1951年法律第185号)の適用除外、刑事手続等の特例、国の賠償責任の特例並びに特殊海事損害に係る賠償の請求についての援助に関する措置を定め、もって我が国と我が国以外の 締約国 (以下「 締約国 」という。)との間における防衛の分野に係る協力の円滑化に資することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
1号 円滑化協定 :日本国の自衛隊と 締約国 の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と当該締約国との間の条約その他の国際約束であって、次に掲げる事項について定めるもののうち政令で定めるものをいう。
イ 公用車両( 締約国 が所有し、又は専ら締約国が賃借する 道路運送車両法 第2条第2項
《2 この法律で「自動車」とは、原動機によ…》
り陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽けん引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、次項に規定する原動機付自転車以外のものをい
に規定する自動車及び同条第3項に規定する原動機付自転車であって、締約国軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員が公務の執行のために使用するものをいう。次条において同じ。)に係る我が国における義務の免除に関する事項
ロ 刑事裁判権の行使の特例に関する事項
ハ 国の賠償責任の特例に関する事項
2号 締約国軍隊 : 円滑化協定 に基づいて、我が国と 締約国 との間で合意した活動に関連して、我が国の同意を得て日本国内に所在する締約国の軍隊をいう。
3号 締約国軍隊の構成員 : 締約国 軍隊に属する者をいう。
4号 締約国軍隊の文民構成員 : 締約国 軍隊に随伴する締約国の国籍を有する文民その他我が国及び締約国が適当であると認める者であって、締約国に雇用されるもの又は締約国軍隊に勤務するもの(我が国に通常居住する者及び締約国又は締約国に代わる者との役務の提供を内容とする契約に基づき行われる事業に従事する者を除く。)をいう。
1項 公用車両( 道路運送車両法 第2条第2項
《2 この法律で「自動車」とは、原動機によ…》
り陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽けん引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、次項に規定する原動機付自転車以外のものをい
に規定する自動車に限る。)には、 道路運送法 第94条
《報告、検査及び調査 国土交通大臣は、こ…》
の法律の施行に必要な限度において、道路運送事業者、自家用有償旅客運送者その他自動車を所有し、若しくは使用する者又はこれらの者の組織する団体に、国土交通省令で定める手続に従い、事業、自家用有償旅客運送の
及び
第95条
《自動車に関する表示 自動車軽自動車たる…》
自家用自動車、乗車定員10人以下の乗用の自家用自動車、特殊自動車たる自家用自動車その他国土交通省令で定めるものを除く。を使用する者は、その自動車の外側に、使用者の氏名、名称又は記号その他の国土交通省令
の規定は、適用しない。
2項 公用車両( 道路運送車両法 第2条第2項
《2 この法律で「自動車」とは、原動機によ…》
り陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽けん引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、次項に規定する原動機付自転車以外のものをい
に規定する自動車に限り、我が国において賃借されるものを除く。)には、同法第4条、第19条、第29条、第31条から第33条まで、第40条から第43条まで、第47条から第50条まで、第54条、第54条の二、第56条、第58条、第63条、第66条、第73条第1項、第97条の三、第99条から第99条の三まで及び第100条の規定は、適用しない。
3項 公用車両( 道路運送車両法 第2条第3項
《3 この法律で「原動機付自転車」とは、国…》
土交通省令で定める総排気量又は定格出力を有する原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽けん引して陸上を移動させることを目的として製作した
に規定する原動機付自転車に限り、我が国において賃借されるものを除く。)には、同法第44条及び第100条の規定は、適用しない。
4項 締約国 が所有し、又は専ら締約国が賃借する 道路運送車両法 第2条第4項
《4 この法律で「軽車両」とは、人力若しく…》
は畜力により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽けん引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、政令で定めるものをいう。
に規定する軽車両であって、締約国軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員が公務の執行のために使用するもの(我が国において賃借されるものを除く。)には、同法第45条及び第100条の規定は、適用しない。
4条 (逮捕された締約国軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員の引渡し)
1項 検察官又は司法警察員は、逮捕された者が 締約国 軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員であり、かつ、その者の犯した罪が専ら締約国の財産若しくは安全のみに対する罪、専ら締約国軍隊の構成員若しくは締約国軍隊の文民構成員の身体若しくは財産のみに対する罪又は公務執行中の作為若しくは不作為から生ずる罪のいずれかに明らかに該当すると認めたときは、 刑事訴訟法 (1948年法律第131号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を締約国軍隊に引き渡さなければならない。
2項 司法警察員は、前項の規定により被疑者を 締約国 軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、速やかに書類及び証拠物並びに電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)と共に事件を検察官に送致しなければならない。
5条 (締約国軍隊によって逮捕された者の受領)
1項 検察官又は司法警察員は、 締約国 軍隊から日本国の法令による罪を犯した締約国軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員を引き渡す旨の通知があった場合には、裁判官の発する逮捕状について 刑事訴訟法 第201条第1項
《逮捕状により被疑者を逮捕するには、被疑者…》
に対し、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める措置をとらなければならない。 1 逮捕状が書面である場合 逮捕状を示すこと。 2 逮捕状が電磁的記録である場合 裁判所の規則の定めるところによ
の規定による措置をとって、被疑者の引渡しを受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡しを受けさせなければならない。この場合において、同法第201条の2第2項の規定による逮捕状に代わるものの提供があったときは、当該逮捕状に代わるものについて同条第3項の規定による措置をとって、その引渡しを受けることができる。
2項 検察官又は司法警察員は、前項に規定する場合において、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があって、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡しを受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
3項 前2項の場合を除くほか、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取った後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
4項 第1項又は第2項の規定による引渡しがあった場合には、 刑事訴訟法 第199条
《 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、…》
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。 ただし、310,000円刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則
の規定により被疑者が逮捕された場合の手続の例による。ただし、同法第203条第1項、第204条第1項及び第205条第3項の時間の制限は、それぞれ第1項又は第2項の規定による引渡しがあった時から起算する。
6条 (締約国軍隊の財産の差押え、捜索等)
1項 締約国 軍隊の財産(締約国軍隊が日本国内に所在していない場合にあっては、日本国内に所在する締約国の軍隊の財産であって、締約国軍隊の用に供されていたものを含む。)についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押え(差押状の執行を含む。)、 刑事訴訟法 第102条の2第1項
《裁判所は、必要があるときは、電磁的記録提…》
供命令次の各号に掲げる者に対し、当該各号に定める方法により必要な電磁的記録を提供することを命ずる命令をいう。以下同じ。をすることができる。 1 電磁的記録を保管する者 次のイ又はロに掲げる方法 イ 電
に規定する電磁的記録提供命令(当該電磁的記録提供命令により電磁的記録を提供させることを含む。以下この条において単に「電磁的記録提供命令」という。)又は検証(検証状の執行を含む。)は、検察官若しくは司法警察員が締約国軍隊(締約国軍隊が日本国内に所在していない場合にあっては、締約国の軍隊。以下この条において同じ。)の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員から締約国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。ただし、裁判所又は裁判官が必要とする電磁的記録提供命令又は検証は、その裁判所若しくは裁判官が締約国軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又はその裁判所若しくは裁判官から締約国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。
7条 (締約国軍隊等への書類等の提供等)
1項 裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類若しくは証拠物又は電磁的記録について、 締約国 軍隊その他の締約国の権限ある当局から、締約国軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員が犯した罪に係る刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があったときは、次に掲げる措置をとることができる。
1号 その保管する書類の閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを1時貸与し、若しくは引き渡すこと。
2号 その保管する証拠物の閲覧若しくは謄写を許し、又はこれを1時貸与し、若しくは引き渡すこと。
3号 その保管する電磁的記録の閲覧若しくは謄写を許し、又は当該電磁的記録に記録されている事項を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録であってその内容がその保管する電磁的記録に記録されている事項と同一であることの証明がされたものを作成して提供すること。
2項 前項(第3号に係る部分に限る。)の場合において、その保管する電磁的記録の閲覧は、その内容を表示したものを閲覧し、又はその内容を再生したものを視聴する方法によるものとし、当該電磁的記録の謄写は、これを複写し、若しくは印刷し、又はその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する方法によるものとする。
8条 (日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力)
1項 検察官又は司法警察員は、 締約国 軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、締約国軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。
2項 前項の場合において、逮捕の要請があった者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官又は司法警察員は、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索し、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその場所に入りその者を捜索させることができる。ただし、追跡されている者がその場所に入ったことが明らかであって、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。
3項 第1項の規定により 締約国 軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を締約国軍隊に引き渡さなければならない。
4項 司法警察員は、前項の規定により 締約国 軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。
1項 検察官又は司法警察員は、 締約国 軍隊その他の締約国の権限ある当局から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者若しくは保管者にその物の提出を求め、若しくは電磁的記録の保管者若しくはこれを利用する権限を有する者にその電磁的記録の提出を求めることができる。
2項 検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさせることができる。
3項 前2項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して 締約国 軍隊その他の締約国の権限ある当局の要請による旨を明らかにしなければならない。
10条 (自衛隊員への準用)
1項 第5条
《締約国軍隊によって逮捕された者の受領 …》
検察官又は司法警察員は、締約国軍隊から日本国の法令による罪を犯した締約国軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員を引き渡す旨の通知があった場合には、裁判官の発する逮捕状について刑事訴訟法第201条第1項
の規定は、 締約国 の権限ある当局から、自衛隊員( 自衛隊法 (1954年法律第165号)
第2条第5項
《5 この法律第94条の7第3号を除く。に…》
おいて「隊員」とは、防衛省の職員で、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛大臣補佐官、防衛大臣政策参与、防衛大臣秘書官、第1項の政令で定める合議制の機関の委員、同項の政令で定める部局に勤務する職員
に規定する隊員であって、 円滑化協定 に基づいて、我が国と締約国との間で合意した活動に関連して、締約国の同意を得て締約国内に所在するものをいう。次項において同じ。)であって日本国の法令による罪を犯したものを引き渡す旨の通知があった場合について準用する。
2項 第7条
《内閣総理大臣の指揮監督権 内閣総理大臣…》
は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。
の規定は、 締約国 の権限ある当局から、自衛隊員が犯した罪に係る刑事事件の審判又は捜査のために必要があるものとして申出があったときについて準用する。
11条 (刑事補償)
1項 刑事補償法 (1950年法律第1号)又は 少年の保護事件に係る補償に関する法律 (1992年法律第84号)の規定の適用については、 締約国 軍隊その他の締約国の権限ある当局による抑留又は拘禁は、 刑事訴訟法 による抑留若しくは拘禁又は 少年の保護事件に係る補償に関する法律 第2条第1項第2号
《少年法に規定する保護事件を終結させるいず…》
れかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされ、その決定が確定した場合において、その決定を
に掲げる身体の自由の拘束とみなす。
12条 (職務遂行に係る賠償責任)
1項 締約国 軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、国の公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合の例により、国がその損害を賠償する責任を負う。
13条 (工作物等の設置等に係る賠償責任)
1項 締約国 軍隊が占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために日本国内において他人に損害を生じたときは、国が占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じた場合の例により、国がその損害を賠償する責任を負う。
14条 (適用除外)
1項 前2条の規定は、次に掲げる損害には、適用しない。
1号 締約国 軍隊の構成員又は締約国軍隊の文民構成員が被った損害
2号 民間の保険による塡補の対象となる車両の使用に起因する損害(当該保険が塡補する部分に係るものに限る。)
3号 契約に基づき処理することとなる損害
4号 特殊海事損害(船舶の航行若しくは運用若しくは貨物の船積み、運送若しくは陸揚げから生じ、又はこれらに関連して生ずる財産に対する損害(我が国と 締約国 との間の合意により決定する損害を除く。)をいう。次条において同じ。)
15条 (請求のあっせんの申請)
1項 特殊海事損害を被った日本国民又は日本国法人は、防衛省令で定めるところにより、その被った損害について 締約国 に対して行う賠償の請求のあっせんを防衛大臣に申請することができる。
16条 (請求のあっせん)
1項 防衛大臣は、前条の規定による請求のあっせんの申請があったときは、当該申請に係る請求のあっせんを行わなければならない。ただし、請求の理由がないと認められるときは、この限りでない。
17条 (訴訟の援助)
1項 政府は、前条本文の規定によるあっせんにより当該あっせんの申請をした者に係る請求が解決されない場合において、その者が 締約国 の裁判所に当該請求に係る訴訟を提起するときは、政令で定めるところにより、訴訟に関する費用の立替えその他当該訴訟について必要な援助を行うことができる。
2項 前項の立替金には、利息を付さない。
18条 (立替金の償還等)
1項 政府は、前条第1項の規定により費用の立替えを受けた者に係る訴訟が終了した場合には、その立替金を償還させなければならない。ただし、政令で定めるところにより、償還金の支払を猶予し、又は立替金の全部若しくは一部の償還を免除することができる。