1章 総則
1条
1項 本法に於て農業とは耕作、養畜又は養蚕の業務及之に附随する業務を謂ふ
2項 水産動植物の採捕若は養殖又は薪炭生産の業務及之に附随する業務は本法の適用に関しては之を農業と看做す
2条
1項 本法に於て農業用動産とは農業の経営の用に供する動産を謂ふ
2項 前項の農業用動産の範囲は勅令を以て之を定む
3条
1項 本法の先取特権又は農業用動産の抵当権を取得することを得る者は農業協同組合、信用組合及勅令を以て定むる法人に限る
2章 農業経営資金貸付の先取特権
4条
1項 農業協同組合、信用組合其の他勅令を以て定むる法人ガ農業を為す者に対し左に掲グる行為を為すに必要なる資金の貸付を為したるときは其の債権の元本及利息に付債務者の特定動産の上に先取特権を有す
1号 農業用動産又は農業生産物の保存
2号 農業用動産の購入
3号 種苗又は肥料の購入
4号 蚕種又は桑葉の購入
5号 薪炭原木の購入
6号 命令を以て定むる水産養殖用の種苗又は餌料の購入
2項 前項の法人ガ農事実行組合、養蚕実行組合其の他勅令を以て定むる法人に対し其の農業用動産を保存し又は購入する為に必要なる資金の貸付を為したるときまた前項に同ジ
5条
1項 農業用動産保存資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て保存したる農業用動産の上に存在す
2項 農業生産物保存資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て保存したる農業生産物の上に存在す
3項 前2項の先取特権は農業用動産又は農業生産物に関する権利を保存、追認又は実行せしむる為に必要なる資金の貸付に付てもまた存在す
6条
1項 農業用動産購入資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て購入したる農業用動産の上に存在す
7条
1項 種苗又は肥料の購入資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て購入したる種苗又は肥料を用ひたる後1年内に之を用ひたる土地より生ジたる果実の上に存在す尚桑樹の肥料購入資金貸付の先取特権に在りては其の果実たる桑葉より生ジたる物の上にもまた存在す
8条
1項 蚕種又は桑葉の購入資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て購入したる蚕種又は桑葉より生ジたる物の上に存在す
9条
1項 薪炭原木購入資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て購入したる薪炭原木より生産したる薪炭の上に存在す
10条
1項 水産養殖用種苗購入資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て購入したる種苗を養殖したる物の上に存在す
2項 水産養殖用餌料購入資金貸付の先取特権は貸付を受けたる資金を以て購入したる餌料を用ひて養殖したる物の上に存在す
11条
1項 先取特権の優先権の順位に付ては農業用動産又は農業生産物の保存資金貸付の先取特権は動産保存の先取特権と、農業用動産又は薪炭原木の購入資金貸付の先取特権は動産売買の先取特権と、種苗若は肥料、蚕種若は桑葉又は水産養殖用の種苗若は餌料の購入資金貸付の先取特権は種苗肥料供給の先取特権と看做す
3章 農業用動産の抵当権
12条
1項 農業用動産は農業を為す者又は農業協同組合、其の他勅令を以て定むる法人ガ其の所属する農業協同組合、信用組合又は勅令を以て定むる法人に対して負担する債務を担保する場合に限り之を目的として抵当権を設定することを得
2項 農業用動産の抵当権には本法其の他の法令に別段の定あるものの外不動産の抵当権に関する規定を準用す但し 民法
第379条
《抵当権消滅請求 抵当不動産の第三取得者…》
は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
ないし[から〜まで]
第386条
《抵当権消滅請求の効果 登記をしたすべて…》
の債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。
の規定は此の限に在らズ
13条
1項 農業用動産の抵当権の得喪及変更は其の登記を為すに非ザれバ之を以て善意の第三者に対抗することを得ズ
2項 前項の規定は登記の後といえども 民法
第192条
《即時取得 取引行為によって、平穏に、か…》
つ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
ないし[から〜まで]
第194条
《 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しく…》
は公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
の規定の適用を妨ゲズ
3項 第1項の登記に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む
14条
1項 抵当権の目的たる農業用動産の所有者ガ之を譲渡せんとするときは命令の定むる所に依り其の譲受人に対し抵当権の存在する旨を告知することを要す
2項 前項の規定は抵当権の目的たる農業用動産を他の債務の担保に供せんとするときに之を準用す
15条
1項 抵当権の目的たる農業用動産の所有者ガ之を譲渡し又は他の債務の担保に供したる場合に於ては遅滞なく前条の告知を為したる旨を抵当権者に告知することを要す
2項 抵当権の目的たる農業用動産に付第三者ガ差押を為したる場合に於ては其の所有者は遅滞なく其の旨を抵当権者に告知することを要す
16条
1項 先取特権と農業用動産の抵当権と競合する場合に於ては抵当権者は 民法
第330条
《動産の先取特権の順位 同1の動産につい…》
て特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。 この場合において、第2号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先
に掲グる第一順位の先取特権者と同一の権利を有す
17条
1項 農業用動産の抵当権の実行に関し必要なる事項は勅令を以て之を定む
4章 罰則
18条
1項 抵当権者に損害を加ふる目的を以て抵当権の目的たる農業用動産を損傷し又は隠匿したる者は1年以下の拘禁刑又は30,000円以下の罰金に処す但し所有者の意思に反して損傷したる者に付ては 刑法 (1907年法律第45号)に依る
19条
1項 抵当権の目的たる農業用動産の所有者抵当権者に損害を加ふる目的を以て該動産に関し譲渡、質入其の他抵当権を侵害すベき行為を為したるときは1年以下の拘禁刑又は30,000円以下の罰金に処す
2項 前項の動産所有者の代表者又は代理人本人の為に同項の行為を為したるときまた同ジ
20条
1項 前2条の罪は告訴あるに非ザれバ公訴を提起することを得ズ