水難救護法《本則》

法番号:1899年法律第95号

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1章 遭難船舶

1条

1項 遭難船舶救護の事務は最初に事件を認知したる市町村長之を行ふ

2条

1項 遭難船舶あることを発見したる者は遅滞なく最近地の市町村長又は警察官吏に報告すべし

2項 警察官吏に於て報告に接したるときは市町村長に通知すべし

3条

1項 遭難船舶あることを認知したるときは市町村長は直に現場に臨み救護に必要なる処分を為すべし

4条

1項 警察官吏は救護の事務に関し市町村長を助け市町村長現場に在らさるときは之に代り其の職務を執行すべし

5条

1項 救護は船長の意に反して之を為すことを得す

2項 前項の規定は市町村長に於て船長の人命を保護する手段を不充分なりと認め又は船長に悪意ありと認めたる場合には之を適用せす

6条

1項 市町村長は救護の為人を招集し船舶車馬其の他の物件を徴用し又は他人の所有地を使用することを得

2項 前項の規定に依り招集せられたる者は市町村長の指揮に従ひ救護に従事すべし

7条

1項 市町村長は救護に際し必要ならすと認むる者、妨害を為したる者又は不正の行為を為したる者を退去せしむることを得

2項 市町村長は救護に際し暴行を為したる者の身体を拘束することを得

3項 市町村長前項の処分を為すに当り助力を命せられたる者は之を拒むことを得す

8条

1項 市町村長は救護に際し遭難物件を隠匿したる者ありと認むるときは其の物件を捜索し又は之を差押ふることを得

9条

1項 市町村長は遭難船舶其の他救上けたる物件及前条の規定に依り差押へたる物件を保管すべし

2項 前項の物件中に郵便物又は 民間事業者による信書の送達に関する法律 2002年法律第99号第2条第3項 《3 この法律において「信書便物」とは、信…》 書便の役務により送達される信書その包装及びその包装に封入される信書以外の物を含む。をいう。 に規定する信書便物あるときは市町村長は遅滞なく最寄の日本郵便株式会社の事業所(郵便の業務を行ふものに限る又は同条第6項に規定する一般信書便事業者若は同条第9項に規定する特定信書便事業者の事業所に引渡すべし

10条

1項 船長は遭難後遅滞なく船難報告書を作り市町村長に差出すべし但し船舶国籍証書の交付を申請することを要せさる船舶又は湖川港湾のみを限り航行する船舶の遭難に付ては此の限にあらす

2項 市町村長は報告書の事実を審査し相当と認むるときは船長の請求に依り認証を与ふへし

3項 市町村長は報告書の事実を審査する為船内書類の提出を命し又は船員、旅客其の他船中に在りたる者を呼出し訊問を為すことを得

11条

1項 市町村長は救上けたる物件左に掲くる事項の一に該当すと認めたるときは之を公売し其の代金を保管すべし

1号 物件久に耐へ難きこと又は著しく其の価格を減する虞あること

2号 爆発物、容易に燃焼すへき物又は其の他の物件にして保管上危険の虞あること

3号 保管の費用其の物件の価格に超過し又は其の価格に比し不相当なること

2項 前項の規定に依り公売を為さんとする場合に於て船長其の地に在るときは市町村長は期間を定め其の期間内に市町村長の相当と認むる担保を供して物件の引渡を請求せさるときは公売に付すへき旨を船長に告知すべし

3項 遭難船舶の所在地船籍港なるときは前項の告知は船舶所有者に之を為すべし

4項 船長又は船舶所有者に於て第2項の規定に依り物件の引渡を請求したるときは公売を為すことを得す

12条

1項 救護に関係したる者は市町村長より救護費用の支給を受くることを得

2項 前項の規定は左に掲くる者には之を適用せす

1号 救護せられたる船舶の所有者又は其の船舶の船員

2号 故意、懈怠又は過失に因り遭難を惹起したる者

3号 第5条 《 救護は船長の意に反して之を為すことを得…》 す 前項の規定は市町村長に於て船長の人命を保護する手段を不充分なりと認め又は船長に悪意ありと認めたる場合には之を適用せす の規定に違反して救護したる者

4号 救護に際し妨害を為し又は不正の行為を為したる者

5号 遭難物件を持去り又は其の引渡を拒みたる者

13条

1項 左に掲くるものを以て救護費用とす

1号 救護に関係したる者の労務の報酬

2号 第6条 《 市町村長は救護の為人を招集し船舶車馬其…》 の他の物件を徴用し又は他人の所有地を使用することを得 前項の規定に依り招集せられたる者は市町村長の指揮に従ひ救護に従事すべし の規定に依る土地の使用又は物件の徴用に対する補償

3号 救上けたる物件の運搬、保管又は公売に要したる費用

14条

1項 救護費用の支給を受けんとする者は市町村長の指定する期間内に其の金額を申立つへし

2項 前項の手続を為ささる者は救護費用の支給を受くることを得す

15条

1項 救護費用の金額は命令の規定に依り市町村長之を定む

2項 市町村長は救護費用の金額を船長に告知し期間を定めて之を納付せしむへし

3項 遭難船舶の所在地船籍港なるとき又は船長在らさるときは前項の告知は船舶所有者に之を為すべし

16条

1項 船長又は船舶所有者は救護費用を納付して市町村長の保管に係る金銭其の他の物件の引渡を受くへし

2項 船長又は船舶所有者に於て市町村長の相当と認むる担保を供するときは前項の金銭其の他の物件の全部若は一部の引渡を受くることを得

3項 左に掲くる物件は前2項の規定に拘らす其の引渡を受くることを得

1号 船員の所持品

2号 船員及旅客の食料

3号 運送賃を支払ふことなくして船中に携帯する旅客の手荷物

4号 第17条第2項 《前項の規定は市町村長に於て公売を為すも其…》 の代金を以て公売の費用を償ふに足らすと認めたる物件には之を適用せす に掲くる物件

4項 市町村長の保管する船舶又は積荷を売却し抵当と為し又は質入せんとするときは市町村長の認可を受くへし此の場合に於て市町村長必要ありと認むるときは之に立会ふへし

5項 前項の処分に因り取得したる金銭其の他の物件は市町村長之を保管すべし

6項 市町村長に於て 第11条 《 市町村長は救上けたる物件左に掲くる事項…》 の一に該当すと認めたるときは之を公売し其の代金を保管すべし 1 物件久に耐へ難きこと又は著しく其の価格を減する虞あること 2 爆発物、容易に燃焼すへき物又は其の他の物件にして保管上危険の虞あること 3 又は前項の規定に依り金銭を保管する場合に其の金銭救護費用の金額に達したるときは直に其の金銭を以て救護費用を支弁し其の残額は保管に係る他の物件と共に船長又は船舶所有者に引渡すべし

17条

1項 船長又は船舶所有者に於て市町村長の定めたる期間内に救護費用を納付せさるときは市町村長は保管の物件又は担保として差出したる物件を公売し其の代金を保管すべし

2項 前項の規定は市町村長に於て公売を為すも其の代金を以て公売の費用を償ふに足らすと認めたる物件には之を適用せす

18条

1項 市町村長は納付を受けたる金額又は其の保管に係る金銭を以て救護費用を支弁すべし

19条

1項 船長又は船舶所有者救護費用を納付せさる場合に於て 第17条 《 船長又は船舶所有者に於て市町村長の定め…》 たる期間内に救護費用を納付せさるときは市町村長は保管の物件又は担保として差出したる物件を公売し其の代金を保管すべし 前項の規定は市町村長に於て公売を為すも其の代金を以て公売の費用を償ふに足らすと認めた に定むる手続を為したる後市町村長の保管に係る金額を以て救護費用を支弁するに残余あるときは船長又は船舶所有者に之を還付す

20条

1項 本章の規定は市町村長の招集を待たすして救護に従事したる者にまた之を適用す但し市町村長に於て救護に干与せさるときは此の限にあらす

21条

1項 本章中船長に関する規定は船長に代りて其の職務を行ふ者にまた之を適用す

22条

1項 第1条 《 遭難船舶救護の事務は最初に事件を認知し…》 たる市町村長之を行ふ ないし[から〜まで] 第4条 《 警察官吏は救護の事務に関し市町村長を助…》 け市町村長現場に在らさるときは之に代り其の職務を執行すべし第5条第1項 《救護は船長の意に反して之を為すことを得す…》 第6条 《 市町村長は救護の為人を招集し船舶車馬其…》 の他の物件を徴用し又は他人の所有地を使用することを得 前項の規定に依り招集せられたる者は市町村長の指揮に従ひ救護に従事すべし ないし[から〜まで] 第9条 《 市町村長は遭難船舶其の他救上けたる物件…》 及前条の規定に依り差押へたる物件を保管すべし 前項の物件中に郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律2002年法律第99号第2条第3項に規定する信書便物あるときは市町村長は遅滞なく最寄の日本郵第12条 《 救護に関係したる者は市町村長より救護費…》 用の支給を受くることを得 前項の規定は左に掲くる者には之を適用せす 1 救護せられたる船舶の所有者又は其の船舶の船員 2 故意、懈怠又は過失に因り遭難を惹起したる者 3 第5条の規定に違反して救護した ないし[から〜まで] 第14条 《 救護費用の支給を受けんとする者は市町村…》 長の指定する期間内に其の金額を申立つへし 前項の手続を為ささる者は救護費用の支給を受くることを得す第15条第1項 《救護費用の金額は命令の規定に依り市町村長…》 之を定む 第2項、 第18条 《 市町村長は納付を受けたる金額又は其の保…》 管に係る金銭を以て救護費用を支弁すべし第20条 《 本章の規定は市町村長の招集を待たすして…》 救護に従事したる者にまた之を適用す 但し市町村長に於て救護に干与せさるときは此の限にあらす第21条 《 本章中船長に関する規定は船長に代りて其…》 の職務を行ふ者にまた之を適用す の規定は海軍艦船其の他官庁の所有する船舶にまた之を準用す

23条

1項 本章の規定は条約に別段の定ある場合には之を適用せす

2章 漂流物及沈没品

24条

1項 漂流物又は沈没品を拾得したる者は遅滞なく之を市町村長に引渡すべし但し其の物件の所有者分明なる場合に於ては拾得の日より7日以内に限り直に其の所有者に引渡すことを得

2項 前項但書の場合に於ては拾得者は所有者より河川に漂流する材木に在りては其の価格の15分の一、其の他の漂流物に在りては其の物件の価格の10分の一、沈没品に在りては其の物件の価格の3分の一に相当する金額以内の報酬を受くることを得

25条

1項 市町村長は引渡を受けたる物件を保管すべし

2項 市町村長は前項の物件を所有者に引渡すへきことを公告すべし但し其の所有者知れたるときは公告すへき事項を直に其の所有者に告知すべし此の場合に於ては公告を須いさることを得

26条

1項 第11条第1項 《市町村長は救上けたる物件左に掲くる事項の…》 一に該当すと認めたるときは之を公売し其の代金を保管すべし 1 物件久に耐へ難きこと又は著しく其の価格を減する虞あること 2 爆発物、容易に燃焼すへき物又は其の他の物件にして保管上危険の虞あること 3 の規定は漂流物及沈没品に之を準用す

27条

1項 市町村長に於て 第25条 《 市町村長は引渡を受けたる物件を保管すべ…》 し 市町村長は前項の物件を所有者に引渡すへきことを公告すべし 但し其の所有者知れたるときは公告すへき事項を直に其の所有者に告知すべし此の場合に於ては公告を須いさることを得 の公告又は告知を為したる日より6箇月(沈没品中政令を以て定むるものに在りては1箇年)以内に限り所有者は河川に漂流する材木に在りては其の価格の15分の一、其の他の漂流物に在りては其の物件の価格の10分の一、沈没品に在りては其の物件の価格の3分の一に相当する金額並公告、保管、公売又は評価に要したる費用を市町村長に納付して物件の引渡を受くることを得

2項 前項の場合に於ては市町村長は拾得者に河川に漂流する材木に在りては其の価格の15分の一、其の他の漂流物に在りては其の物件の価格の10分の一、沈没品に在りては其の物件の価格の3分の一に相当する金額を支給す

3項 物件の価格は市町村長之を定む但し鑑定人をして之を評価せしむることを得

28条

1項 前条の期間内に所有者物件の引渡を請求せさるとき又は物件の引渡を請求せさる意思を表示したるときは市町村長は期間を定め其の期間内に物件の引渡を受くへきことを拾得者に告知すべし

2項 拾得者は前項の期間内に公告、保管、公売又は評価に要したる費用を市町村長に納付し物件の引渡を受くるに因りて其の所有権を取得す

3項 拾得者に於て前項の期間内に物件の引渡を受けさるときは市町村長は其の物件を公売し其の代金より前項の費用を控除すべし此の場合に於て残余あるときは市町村の取得とす

29条

1項 警察官吏に於て航路、錨地又は建造物に障害を為すと認めたる漂流物又は沈没品を取除きたる場合に於ては警察官吏は其の物件を市町村長に引渡すべし

2項 前項に依り市町村長に於て引渡を受けたる物件に付ては 第11条第1項 《市町村長は救上けたる物件左に掲くる事項の…》 一に該当すと認めたるときは之を公売し其の代金を保管すべし 1 物件久に耐へ難きこと又は著しく其の価格を減する虞あること 2 爆発物、容易に燃焼すへき物又は其の他の物件にして保管上危険の虞あること 3 第25条第2項 《市町村長は前項の物件を所有者に引渡すへき…》 ことを公告すべし 但し其の所有者知れたるときは公告すへき事項を直に其の所有者に告知すべし此の場合に於ては公告を須いさることを得 の規定を適用す

30条

1項 前条に依り公告若は告知を為したる日より6箇月以内に所有者物件の引渡を請求したるときは市町村長は所有者をして取除、保管及公告に要したる費用を納付せしめ之に其の物件を引渡すべし

2項 前項の期間内に物件の引渡を請求する者なきときは市町村長は其の物件を公売し其の代金を以て取除、保管、公告及公売に要したる費用を支弁すべし此の場合に於て残余あるときは市町村の取得とす

3章 雑則

30条の2

1項 行政手続法 1993年法律第88号)第3章の規定は 第6条 《 市町村長は救護の為人を招集し船舶車馬其…》 の他の物件を徴用し又は他人の所有地を使用することを得 前項の規定に依り招集せられたる者は市町村長の指揮に従ひ救護に従事すべし 又は 第7条第3項 《市町村長前項の処分を為すに当り助力を命せ…》 られたる者は之を拒むことを得す の処分には之を適用せズ

30条の3

1項 本法に定むるものの外本法施行に関し必要なる事項は政令を以て之を定む

4章 罰則

31条

1項 遭難船舶救護の場合に於て左の各号に該当する者は30,000円以下の罰金に処す

1号 正当の理由なくして市町村長の招集に応せす又は物件の徴用若は土地の使用を拒みたる者

2号 第6条第2項 《前項の規定に依り招集せられたる者は市町村…》 長の指揮に従ひ救護に従事すべし の規定に違反したる者

3号 第7条第3項 《市町村長前項の処分を為すに当り助力を命せ…》 られたる者は之を拒むことを得す の規定に違反したる者

32条

1項 遭難船舶救護の場合に於て妨害を為したる者は6月以下の拘禁刑に処す

33条

1項 第10条第1項 《船長は遭難後遅滞なく船難報告書を作り市町…》 村長に差出すべし 但し船舶国籍証書の交付を申請することを要せさる船舶又は湖川港湾のみを限り航行する船舶の遭難に付ては此の限にあらす の手続を為すことを怠りたる者は30,000円以下の罰金に処す

34条

1項 詐偽の所為を以て船難報告書に認証を受けたる者は11日以上6月以下の拘禁刑に処し又は30,000円以下の罰金に処す

35条の1

1項 刑法 第385条及第387条の規定は沈没品にまた之を適用す

35条の2

1項 漂流の物件に対し現存する記号を塗抹毀損し若は新に付記押捺したる者は30,000円以下の罰金に処す

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