特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律《本則》

法番号:1999年法律第158号

略称: 特定調停法

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1条 (目的)

1項 この法律は、支払不能に陥るおそれのある債務者等の経済的再生に資するため、 民事調停法 1951年法律第222号)の特例として特定調停の手続を定めることにより、このような債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進することを目的とする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 特定債務者 」とは、金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人をいう。

2項 この法律において「 特定債務等の調整 」とは、 特定債務者 及びこれに対して金銭債権を有する者その他の利害関係人の間における金銭債務の内容の変更、担保関係の変更その他の金銭債務に係る利害関係の調整であって、当該特定債務者の経済的再生に資するためのものをいう。

3項 この法律において「 特定調停 」とは、 特定債務者 民事調停法 第2条 《調停事件 民事に関して紛争を生じたとき…》 は、当事者は、裁判所に調停の申立てをすることができる。 の規定により申し立てる 特定債務等の調整 に係る調停であって、当該調停の申立ての際に次条第1項の規定により 特定調停 手続により調停を行うことを求める旨の申述があったものをいう。

4項 この法律において「 関係権利者 」とは、 特定債務者 に対して財産上の請求権を有する者及び特定債務者の財産の上に担保権を有する者をいう。

3条 (特定調停手続)

1項 特定債務者 は、 特定債務等の調整 に係る調停の申立てをするときは、 特定調停 手続により調停を行うことを求めることができる。

2項 特定調停 手続により調停を行うことを求める旨の申述は、調停の申立ての際にしなければならない。

3項 前項の申述をする申立人は、申立てと同時に(やむを得ない理由がある場合にあっては、申立ての後遅滞なく)、財産の状況を示すべき明細書その他 特定債務者 であることを明らかにする資料及び 関係権利者 の一覧表を提出しなければならない。

4条 (移送等)

1項 裁判所は、 民事調停法 第4条第1項 《裁判所は、調停事件の全部又は一部がその管…》 轄に属しないと認めるとき次項本文に規定するときを除く。は、申立てにより又は職権で、これを管轄権のある地方裁判所又は簡易裁判所に移送しなければならない。 ただし、事件を処理するために特に必要があると認め ただし書の規定にかかわらず、その管轄に属しない 特定調停 に係る事件について申立てを受けた場合において、事件を処理するために適当であると認めるときは、職権で、土地管轄の規定にかかわらず、事件を他の管轄裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。

5条

1項 削除

6条 (併合)

1項 同1の申立人に係る複数の 特定調停 に係る事件が同1の裁判所に各別に係属するときは、これらの事件に係る調停手続は、できる限り、併合して行わなければならない。

7条 (民事執行手続の停止)

1項 特定調停 に係る事件の係属する裁判所は、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる。ただし、給料、賃金、賞与、退職手当及び退職年金並びにこれらの性質を有する給与に係る債権に基づく民事執行の手続については、この限りでない。

2項 前項の裁判所は、同項の規定により民事執行の手続の停止を命じた場合において、必要があると認めるときは、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、その続行を命ずることができる。

3項 前2項の申立てをするには、その理由を疎明しなければならない。

4項 第1項及び第2項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

5項 民事訴訟法 1996年法律第109号第76条 《担保提供の方法 担保を立てるには、担保…》 を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は裁判所が相当と認める有価証券社債、株式等の振替に関する法律2001年法律第75号第278条第1項に規定する振替債第77条 《担保物に対する被告の権利 被告は、訴訟…》 費用に関し、前条の規定により供託した金銭又は有価証券について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。第79条 《担保の取消し 担保を立てた者が担保の事…》 由が消滅したことを証明したときは、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない。 2 担保を立てた者が担保の取消しについて担保権利者の同意を得たことを証明したときも、前項と同様とする 及び 第80条 《担保の変換 裁判所は、担保を立てた者の…》 申立てにより、決定で、その担保の変換を命ずることができる。 ただし、その担保を契約によって他の担保に変換することを妨げない。 の規定は、第1項及び第2項の担保について準用する。

8条 (民事調停委員の指定)

1項 裁判所は、 特定調停 を行う調停委員会を組織する民事調停委員として、事案の性質に応じて必要な法律、税務、金融、企業の財務、資産の評価等に関する専門的な知識経験を有する者を指定するものとする。

9条 (関係権利者の参加)

1項 特定調停 の結果について利害関係を有する 関係権利者 が特定調停手続に参加する場合には、 民事調停法 第11条第1項 《調停の結果について利害関係を有する者は、…》 調停委員会の許可を受けて、調停手続に参加することができる。 の規定にかかわらず、調停委員会の許可を受けることを要しない。

10条 (当事者の責務)

1項 特定調停 においては、当事者は、調停委員会に対し、債権又は債務の発生原因及び内容、弁済等による債権又は債務の内容の変更及び担保関係の変更等に関する事実を明らかにしなければならない。

11条 (特定調停をしない場合)

1項 特定調停 においては、調停委員会は、 民事調停法 第13条 《調停をしない場合 調停委員会は、事件が…》 性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、事件を終了させることができる。 に規定する場合のほか、申立人が 特定債務者 であるとは認められないとき、又は事件が性質上特定調停をするのに適当でないと認めるときは、特定調停をしないものとして、事件を終了させることができる。

12条 (文書等の提出)

1項 調停委員会は、 特定調停 のために特に必要があると認めるときは、当事者又は参加人に対し、事件に関係のある文書、物件又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。 第24条第1項 《当事者又は参加人が正当な理由なく第12条…》 第19条において準用する場合を含む。の規定による文書、物件又は電磁的記録の提出の要求に応じないときは、裁判所は、110,000円以下の過料に処する。 において同じ。)の提出を求めることができる。

13条

1項 削除

14条 (官庁等からの意見聴取)

1項 調停委員会は、 特定調停 のために必要があると認めるときは、官庁、公署その他適当であると認める者に対し、意見を求めることができる。

2項 調停委員会は、法人の申立てに係る事件について 特定調停 をしようとするときは、当該申立人の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、当該申立人の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは当該申立人の使用人その他の従業者の過半数を代表する者の意見を求めるものとする。

15条 (調停委員会が提示する調停条項案)

1項 調停委員会が 特定調停 に係る事件の当事者に対し調停条項案を提示する場合には、当該調停条項案は、 特定債務者 の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。

16条 (調停条項案の書面による受諾)

1項 特定調停 に係る事件の当事者の一方が出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ調停委員会から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が期日に出頭してその調停条項案を受諾したときは、特定調停において当事者間に合意が成立したものとみなす。

2項 特定調停 に係る事件の当事者双方が出頭することが困難であると認められる場合において、当事者双方があらかじめ調停委員会から当事者間に合意が成立すべき日時を定めて提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、その日時が経過したときは、その日時に、特定調停において当事者間に合意が成立したものとみなす。

17条 (調停委員会が定める調停条項)

1項 特定調停 においては、調停委員会は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。

2項 前項の調停条項は、 特定債務者 の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。

3項 第1項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の調停条項に服する旨を記載しなければならない。

4項 第1項の規定による調停条項の定めは、期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。

5項 当事者は、前項の告知前に限り、第1項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。

6項 第4項の告知が当事者双方にされたときは、 特定調停 において当事者間に合意が成立したものとみなす。

18条 (特定調停の不成立)

1項 特定調停 においては、調停委員会は、 民事調停法 第14条 《調停の不成立 調停委員会は、当事者間に…》 合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、裁判所が第17条の決定をしないときは、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができる。 の規定にかかわらず、 特定債務者 の経済的再生に資するとの観点から、当事者間に公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容の合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものであるとは認められない場合において、裁判所が同法第17条の決定をしないときは、特定調停が成立しないものとして、事件を終了させることができる。

2項 民事調停法 第19条 《調停不成立等の場合の訴の提起 第14条…》 第15条において準用する場合を含む。の規定により事件が終了し、又は前条第4項の規定により決定が効力を失った場合において、申立人がその旨の通知を受けた日から2週間以内に調停の目的となった請求について訴え の規定は、前項の規定により事件が終了した場合について準用する。

19条 (裁判官の特定調停への準用)

1項 第9条 《関係権利者の参加 特定調停の結果につい…》 て利害関係を有する関係権利者が特定調停手続に参加する場合には、民事調停法第11条第1項の規定にかかわらず、調停委員会の許可を受けることを要しない。 から前条までの規定は、裁判官だけで 特定調停 を行う場合について準用する。

20条 (特定調停に代わる決定への準用)

1項 第17条第2項 《2 前項の調停条項は、特定債務者の経済的…》 再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。 の規定は、 特定調停 に係る事件に関し裁判所がする 民事調停法 第17条 《調停に代わる決定 裁判所は、調停委員会…》 の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に の決定について準用する。

21条

1項 削除

22条 (民事調停法との関係)

1項 特定調停 については、この法律に定めるもののほか、 民事調停法 の定めるところによる。

23条 (最高裁判所規則)

1項 この法律に定めるもののほか、 特定調停 に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

24条 (文書等の不提出に対する制裁)

1項 当事者又は参加人が正当な理由なく 第12条 《文書等の提出 調停委員会は、特定調停の…》 ために特に必要があると認めるときは、当事者又は参加人に対し、事件に関係のある文書、物件又は電磁的記録電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子 第19条 《裁判官の特定調停への準用 第9条から前…》 条までの規定は、裁判官だけで特定調停を行う場合について準用する。 において準用する場合を含む。)の規定による文書、物件又は電磁的記録の提出の要求に応じないときは、裁判所は、110,000円以下の過料に処する。

2項 民事調停法 第36条 《過料についての決定 前2条の過料の決定…》 は、裁判官の命令で執行する。 この命令は、執行力のある債務名義と同1の効力を有する。 2 前項に規定するもののほか、過料についての決定に関しては、非訟事件手続法第5編の規定同法第119条並びに第121 の規定は、前項の過料の決定について準用する。

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