外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律《本則》

法番号:2009年法律第24号

略称: 対外国民事裁判権法・民事裁判権法

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1章 総則

1条 (趣旨)

1項 この法律は、外国等に対して我が国の民事裁判権(裁判権のうち刑事に係るもの以外のものをいう。 第4条 《 外国等は、この法律に別段の定めがある場…》 合を除き、裁判権我が国の民事裁判権をいう。以下同じ。から免除されるものとする。 において同じ。)が及ぶ範囲及び外国等に係る民事の裁判手続についての特例を定めるものとする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 国等 」とは、次に掲げるもの(以下「 国等 」という。)のうち、日本国及び日本国に係るものを除くものをいう。

1号 及びその政府の機関

2号 連邦国家の州その他これに準ずる国の行政区画であって、主権的な権能を行使する権限を有するもの

3号 前2号に掲げるもののほか、主権的な権能を行使する権限を付与された団体(当該権能の行使としての行為をする場合に限る。

4号 前3号に掲げるものの代表者であって、その資格に基づき行動するもの

3条 (条約等に基づく特権又は免除との関係)

1項 この法律の規定は、条約又は確立された国際法規に基づき 外国等 が享有する特権又は免除に影響を及ぼすものではない。

2章 外国等に対して裁判権が及ぶ範囲 > 1節 免除の原則

4条

1項 外国等 は、この法律に別段の定めがある場合を除き、裁判権(我が国の民事裁判権をいう。以下同じ。)から免除されるものとする。

2節 裁判手続について免除されない場合

5条 (外国等の同意)

1項 外国等 は、次に掲げるいずれかの方法により、特定の事項又は事件に関して裁判権に服することについての同意を明示的にした場合には、訴訟手続その他の裁判所における手続(外国等の有する財産に対する保全処分及び民事執行の手続を除く。以下この節において「 裁判手続 」という。)のうち、当該特定の事項又は事件に関するものについて、裁判権から免除されない。

1号 条約その他の国際約束

2号 書面による契約

3号 当該 裁判手続 における陳述又は裁判所若しくは相手方に対する書面による通知

2項 外国等 が特定の事項又は事件に関して日本国の法令を適用することについて同意したことは、前項の同意と解してはならない。

6条 (同意の擬制)

1項 外国等 が次に掲げる行為をした場合には、前条第1項の同意があったものとみなす。

1号 訴えの提起その他の 裁判手続 の開始の申立て

2号 裁判手続 への参加(裁判権からの免除を主張することを目的とするものを除く。

3号 裁判手続 において異議を述べないで本案についてした弁論又は申述

2項 前項第2号及び第3号の規定は、当該 外国等 がこれらの行為をする前に裁判権から免除される根拠となる事実があることを知ることができなかったやむを得ない事情がある場合であって、当該事実を知った後当該事情を速やかに証明したときには、適用しない。

3項 口頭弁論期日その他の 裁判手続 の期日において 外国等 が出頭しないこと及び外国等の代表者が証人として出頭したことは、前条第1項の同意と解してはならない。

7条

1項 外国等 が訴えを提起した場合又は当事者として訴訟に参加した場合において、反訴が提起されたときは、当該反訴について、 第5条第1項 《外国等は、次に掲げるいずれかの方法により…》 、特定の事項又は事件に関して裁判権に服することについての同意を明示的にした場合には、訴訟手続その他の裁判所における手続外国等の有する財産に対する保全処分及び民事執行の手続を除く。以下この節において「裁 の同意があったものとみなす。

2項 外国等 が当該外国等を被告とする訴訟において反訴を提起したときは、本訴について、 第5条第1項 《外国等は、次に掲げるいずれかの方法により…》 、特定の事項又は事件に関して裁判権に服することについての同意を明示的にした場合には、訴訟手続その他の裁判所における手続外国等の有する財産に対する保全処分及び民事執行の手続を除く。以下この節において「裁 の同意があったものとみなす。

8条 (商業的取引)

1項 外国等 は、商業的取引(民事又は商事に係る物品の売買、役務の調達、金銭の貸借その他の事項についての契約又は取引(労働契約を除く。)をいう。次項及び 第16条 《仲裁合意 外国等は、当該外国等国以外の…》 ものにあっては、それらが所属する国。以下この条において同じ。以外の国の国民又は当該外国等以外の国若しくはこれに所属する国等の法令に基づいて設立された法人その他の団体との間の商業的取引に係る書面による仲 において同じ。)のうち、当該外国等と当該外国等(国以外のものにあっては、それらが所属する国。以下この項において同じ。)以外の国の国民又は当該外国等以外の国若しくはこれに所属する 国等 の法令に基づいて設立された法人その他の団体との間のものに関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

2項 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

1号 当該 外国等 と当該外国等以外の 国等 との間の商業的取引である場合

2号 当該商業的取引の当事者が明示的に別段の合意をした場合

9条 (労働契約)

1項 外国等 は、当該外国等と個人との間の労働契約であって、日本国内において労務の全部又は一部が提供され、又は提供されるべきものに関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

2項 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

1号 当該個人が次に掲げる者である場合

外交関係に関するウィーン条約第1条()に規定する外交官

領事関係に関するウィーン条約第1条1()に規定する領事官

国際機関に派遣されている常駐の使節団若しくは特別使節団の外交職員又は国際会議において当該 外国等 国以外のものにあっては、それらが所属する国。以下この項において同じ。)を代表するために雇用されている者

イからハまでに掲げる者のほか、外交上の免除を享有する者

2号 前号に掲げる場合のほか、当該個人が、当該 外国等 の安全、外交上の秘密その他の当該外国等の重大な利益に関する事項に係る任務を遂行するために雇用されている場合

3号 当該個人の採用又は再雇用の契約の成否に関する訴え又は申立て(いずれも損害の賠償を求めるものを除く。)である場合

4号 解雇その他の労働契約の終了の効力に関する訴え又は申立て(いずれも損害の賠償を求めるものを除く。)であって、当該 外国等 の元首、政府の長又は外務大臣によって当該訴え又は申立てに係る 裁判手続 が当該外国等の安全保障上の利益を害するおそれがあるとされた場合

5号 訴えの提起その他の 裁判手続 の開始の申立てがあった時において、当該個人が当該 外国等 の国民である場合。ただし、当該個人が日本国に通常居住するときは、この限りでない。

6号 当該労働契約の当事者間に書面による別段の合意がある場合。ただし、労働者の保護の見地から、当該労働契約に関する訴え又は申立てについて日本国の裁判所が管轄権を有しないとするならば、公の秩序に反することとなるときは、この限りでない。

10条 (人の死傷又は有体物の滅失等)

1項 外国等 は、人の死亡若しくは傷害又は有体物の滅失若しくは損が、当該外国等が責任を負うべきものと主張される行為によって生じた場合において、当該行為の全部又は一部が日本国内で行われ、かつ、当該行為をした者が当該行為の時に日本国内に所在していたときは、これによって生じた損害又は損失の金銭によるてん補に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

11条 (不動産に係る権利利益等)

1項 外国等 は、日本国内にある不動産に係る次に掲げる事項に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

1号 当該 外国等 の権利若しくは利益又は当該外国等による占有若しくは使用

2号 当該 外国等 の権利若しくは利益又は当該外国等による占有若しくは使用から生ずる当該外国等の義務

2項 外国等 は、動産又は不動産について相続その他の一般承継、贈与又は無主物の取得によって生ずる当該外国等の権利又は利益に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

12条 (裁判所が関与を行う財産の管理又は処分に係る権利利益)

1項 外国等 は、信託財産、破産財団に属する財産、清算中の会社の財産その他の日本国の裁判所が監督その他の関与を行う財産の管理又は処分に係る当該外国等の権利又は利益に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

13条 (知的財産権)

1項 外国等 は、次に掲げる事項に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

1号 当該 外国等 が有すると主張している知的財産権( 知的財産基本法 2002年法律第122号第2条第1項 《この法律で「知的財産」とは、発明、考案、…》 植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又 に規定する知的財産に関して日本国の法令により定められた権利又は日本国の法律上保護される利益に係る権利をいう。次号において同じ。)の存否、効力、帰属又は内容

2号 当該 外国等 が日本国内においてしたものと主張される知的財産権の侵害

14条 (団体の構成員としての資格等)

1項 外国等 は、法人その他の団体であって次の各号のいずれにも該当するものの社員その他の構成員である場合には、その資格又はその資格に基づく権利若しくは義務に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

1号 国等 及び国際機関以外の者をその社員その他の構成員とするものであること。

2号 日本国の法令に基づいて設立されたものであること、又は日本国内に主たる営業所若しくは事務所を有するものであること。

2項 前項の規定は、当該 裁判手続 の当事者間に当該 外国等 が裁判権から免除される旨の書面による合意がある場合又は当該団体の定款、規約その他これらに類する規則にその旨の定めがある場合には、適用しない。

15条 (船舶の運航等)

1項 船舶を所有し又は運航する 外国等 は、当該船舶の運航に関する紛争の原因となる事実が生じた時において当該船舶が政府の非商業的目的以外に使用されていた場合には、当該紛争に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

2項 前項の規定は、当該船舶が軍艦又は軍の支援船である場合には、適用しない。

3項 船舶を所有し又は運航する 外国等 は、当該船舶による貨物の運送に関する紛争の原因となる事実が生じた時において当該船舶が政府の非商業的目的以外に使用されていた場合には、当該紛争に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。

4項 前項の規定は、当該貨物が、軍艦若しくは軍の支援船により運送されていたものである場合又は 国等 が所有し、かつ、政府の非商業的目的のみに使用され、若しくは使用されることが予定されているものである場合には、適用しない。

16条 (仲裁合意)

1項 外国等 は、当該外国等(国以外のものにあっては、それらが所属する国。以下この条において同じ。)以外の国の国民又は当該外国等以外の国若しくはこれに所属する 国等 の法令に基づいて設立された法人その他の団体との間の商業的取引に係る書面による仲裁合意に関し、当該仲裁合意の存否若しくは効力又は当該仲裁合意に基づく仲裁手続に関する 裁判手続 について、裁判権から免除されない。ただし、当事者間に書面による別段の合意がある場合は、この限りでない。

3節 外国等の有する財産に対する保全処分及び民事執行の手続について免除されない場合

17条 (外国等の同意等)

1項 外国等 は、次に掲げるいずれかの方法により、その有する財産に対して保全処分又は民事執行をすることについての同意を明示的にした場合には、当該保全処分又は民事執行の手続について、裁判権から免除されない。

1号 条約その他の国際約束

2号 仲裁に関する合意

3号 書面による契約

4号 当該保全処分又は民事執行の手続における陳述又は裁判所若しくは相手方に対する書面による通知(相手方に対する通知にあっては、当該保全処分又は民事執行が申し立てられる原因となった権利関係に係る紛争が生じた後に発出されたものに限る。

2項 外国等 は、保全処分又は民事執行の目的を達することができるように指定し又は担保として提供した特定の財産がある場合には、当該財産に対する当該保全処分又は民事執行の手続について、裁判権から免除されない。

3項 第5条第1項 《外国等は、次に掲げるいずれかの方法により…》 、特定の事項又は事件に関して裁判権に服することについての同意を明示的にした場合には、訴訟手続その他の裁判所における手続外国等の有する財産に対する保全処分及び民事執行の手続を除く。以下この節において「裁 の同意は、第1項の同意と解してはならない。

18条 (特定の目的に使用される財産)

1項 外国等 は、当該外国等により政府の非商業的目的以外にのみ使用され、又は使用されることが予定されている当該外国等の有する財産に対する民事執行の手続について、裁判権から免除されない。

2項 次に掲げる 外国等 の有する財産は、前項の財産に含まれないものとする。

1号 外交使節団、領事機関、特別使節団、国際機関に派遣されている使節団又は国際機関の内部機関若しくは国際会議に派遣されている代表団の任務の遂行に当たって使用され、又は使用されることが予定されている財産

2号 軍事的な性質を有する財産又は軍事的な任務の遂行に当たって使用され、若しくは使用されることが予定されている財産

3号 次に掲げる財産であって、販売されておらず、かつ、販売されることが予定されていないもの

当該 外国等 に係る文化遺産

当該 外国等 が管理する公文書その他の記録

科学的、文化的又は歴史的意義を有する展示物

3項 前項の規定は、前条第1項及び第2項の規定の適用を妨げない。

19条 (外国中央銀行等の取扱い)

1項 日本国以外の国の中央銀行又はこれに準ずる金融当局(次項において「 外国中央銀行等 」という。)は、その有する財産に対する保全処分及び民事執行の手続については、 第2条第1号 《定義 第2条 この法律において「外国等」…》 とは、次に掲げるもの以下「国等」という。のうち、日本国及び日本国に係るものを除くものをいう。 1 国及びその政府の機関 2 連邦国家の州その他これに準ずる国の行政区画であって、主権的な権能を行使する権 から第3号までに該当しない場合においても、これを 外国等 とみなし、 第4条 《 外国等は、この法律に別段の定めがある場…》 合を除き、裁判権我が国の民事裁判権をいう。以下同じ。から免除されるものとする。 並びに 第17条第1項 《外国等は、次に掲げるいずれかの方法により…》 、その有する財産に対して保全処分又は民事執行をすることについての同意を明示的にした場合には、当該保全処分又は民事執行の手続について、裁判権から免除されない。 1 条約その他の国際約束 2 仲裁に関する 及び第2項の規定を適用する。

2項 外国中央銀行等 については、前条第1項の規定は適用しない。

3章 民事の裁判手続についての特例

20条 (訴状等の送達)

1項 外国等 に対する訴状その他これに類する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)に記録されている事項を出力することにより作成した書面及び訴訟手続その他の裁判所における手続の最初の期日の呼出状又は電子呼出状( 民事訴訟法 1996年法律第109号第94条第1項第1号 《期日の呼出しは、次の各号のいずれかに掲げ…》 る方法その他相当と認める方法によってする。 1 ファイルに記録された電子呼出状裁判所書記官が、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判長が指定した期日に出頭すべき旨を告知するために出頭すべき者において に規定する電子呼出状をいう。)について同法第109条の規定により作成した書面(以下この条及び次条第1項において「 訴状等 」という。)の送達は、次に掲げる方法によりするものとする。

1号 条約その他の国際約束で定める方法

2号 前号に掲げる方法がない場合には、次のイ又はロに掲げる方法

外交上の経路を通じてする方法

当該 外国等 が送達の方法として受け入れるその他の方法( 民事訴訟法 に規定する方法であるものに限る。

2項 前項第2号イに掲げる方法により送達をした場合においては、外務省に相当する当該 外国等 国以外のものにあっては、それらが所属する国)の機関が 訴状等 を受領した時に、送達があったものとみなす。

3項 外国等 は、異議を述べないで本案について弁論又は申述をしたときは、 訴状等 の送達の方法について異議を述べる権利を失う。

4項 第1項及び第2項に規定するもののほか、 外国等 に対する 訴状等 の送達に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

21条 (外国等の不出頭の場合の民事訴訟法の特例等)

1項 外国等 が口頭弁論の期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない場合における当該外国等に対する請求を認容する判決の言渡しは、 訴状等 の送達があった日又は前条第2項の規定により送達があったものとみなされる日から4月を経過しなければすることができない。

2項 前条第1項及び第2項の規定は、前項に規定する判決についての電子判決書( 民事訴訟法 第252条第1項 《裁判所は、判決の言渡しをするときは、最高…》 裁判所規則で定めるところにより、次に掲げる事項を記録した電磁的記録以下「電子判決書」という。を作成しなければならない。 1 主文 2 事実 3 理由 4 口頭弁論の終結の日 5 当事者及び法定代理人 に規定する電子判決書をいう。又は同法第254条第2項の電子調書に記録されている事項を記載した書面であって裁判所書記官が当該書面の内容が当該電子判決書又は当該電子調書に記録されている事項と同一であることを証明したもの(次項及び第4項において「 電子判決書等記録事項証明書 」という。)の当該 外国等 に対する送達について準用する。

3項 前項に規定するもののほか、 電子判決書等記録事項証明書 の送達に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

4項 第1項に規定する判決に対して 外国等 がする上訴又は異議の申立ては、 民事訴訟法 第285条 《控訴期間 控訴は、電子判決書又は第25…》 4条第2項の規定により当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨が記録された電子調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。 ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げ 本文(同法第313条(同法第318条第5項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。又は第357条本文(同法第367条第2項において準用する場合を含む。)若しくは第378条第1項本文の規定にかかわらず、 電子判決書等記録事項証明書 の送達があった日又は第2項において準用する前条第2項の規定により送達があったものとみなされる日から4月の不変期間内に提起しなければならない。

22条

1項 外国等 については、民事の 裁判手続 においてされた文書その他の物件の提出命令、証人の呼出しその他の当該裁判手続上の命令に従わないことを理由とするこう及び過料に関する 民事訴訟法 その他の法令の規定は、適用しない。

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