調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律《本則》

法番号:2023年法律第16号

略称:

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1条 (趣旨)

1項 この法律は、調停による国際的な和解合意に関する国際連合 条約 以下「 条約 」という。)の実施に関し必要な事項を定めるものとする。

2条 (定義)

1項 この法律において「 調停 」とは、その名称や開始の原因となる事実のいかんにかかわらず、一定の法律関係(契約に基づくものであるかどうかを問わない。)に関する民事又は商事の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、当事者に対して紛争の解決を強制する権限を有しない第三者が和解の仲介を実施し、その解決を図る手続をいう。

2項 この法律において「 調停人 」とは、 調停 において和解の仲介を実施する者をいう。

3項 この法律において「 国際和解合意 」とは、 調停 において当事者間に成立した合意であって、合意が成立した当時において次の各号に掲げる事由のいずれかに該当するものをいう。

1号 当事者の全部又は一部が日本国外に住所又は主たる事務所若しくは営業所を有するとき(当事者の全部又は一部の発行済株式(議決権のあるものに限る。又は出資の総数又は総額の100分の50を超える数又は額の株式(議決権のあるものに限る。又は持分を有する者その他これと同等のものとして法務省令で定める者が日本国外に住所又は主たる事務所若しくは営業所を有するときを含む。)。

2号 当事者の全部又は一部が互いに異なる国に住所又は事務所若しくは営業所(当事者が二以上の事務所又は営業所を有する場合にあっては、合意が成立した当時において当事者が知っていたか、又は予見することのできた事情に照らして、合意によって解決された紛争と最も密接な関係がある事務所又は営業所。次号において同じ。)を有するとき。

3号 当事者の全部又は一部が住所又は事務所若しくは営業所を有する国が、合意に基づく債務の重要な部分の履行地又は合意の対象である事項と最も密接な関係がある地が属する国と異なるとき。

3条 (適用範囲)

1項 この法律の規定は、 国際和解合意 の当事者が、 条約 又は条約の実施に関する法令に基づき民事執行をすることができる旨の合意をした場合について、適用する。

4条 (適用除外)

1項 この法律の規定は、次に掲げる 国際和解合意 については、適用しない。

1号 民事上の契約又は取引のうち、その当事者の全部又は一部が個人(事業として又は事業のために契約又は取引の当事者となる場合におけるものを除く。)であるものに関する紛争に係る 国際和解合意

2号 個別労働関係紛争( 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律 2001年法律第112号第1条 《目的 この法律は、労働条件その他労働関…》 係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争労働者の募集及び採用に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争を含む。以下「個別労働関係紛争」という。について、あっせんの制度を設け に規定する個別労働関係紛争をいう。)に係る 国際和解合意

3号 人事に関する紛争その他家庭に関する紛争に係る 国際和解合意

4号 外国の裁判所の認可を受け、又は日本若しくは外国の裁判所の手続において成立した 国際和解合意 であって、その裁判所が属する国でこれに基づく強制執行をすることができるもの

5号 仲裁判断としての効力を有する 国際和解合意 であって、これに基づく強制執行をすることができるもの

5条 (国際和解合意の執行決定)

1項 国際和解合意 に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定(国際和解合意に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める申立てをしなければならない。

2項 前項の申立てをする者(以下この条において「 申立人 」という。)は、次に掲げる書面を提出しなければならない。

1号 当事者が作成した 国際和解合意 の内容が記載された書面

2号 調停 人その他調停に関する記録の作成、保存その他の管理に関する事務を行う者が作成した 国際和解合意 が調停において成立したものであることを証明する書面

3項 前項の書面については、これに記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)の提出をもって、当該書面の提出に代えることができる。この場合において、当該電磁的記録を提出した 申立人 は、当該書面を提出したものとみなす。

4項 申立人 は、前2項の規定により書面又は電磁的記録を提出するときは、併せて、当該書面(日本語で作成されたものを除く。又は当該電磁的記録(日本語で作成されたものを除く。)の日本語による翻訳文又は翻訳の内容を記録した電磁的記録を提出しなければならない。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、被申立人の意見を聴いて、前2項の規定により提出すべき書面又は電磁的記録の全部又は一部について日本語による翻訳文又は翻訳の内容を記録した電磁的記録を提出することを要しないものとすることができる。

5項 第1項の申立てを受けた裁判所は、他の裁判機関又は仲裁廷に対して当該 国際和解合意 に関する他の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、同項の申立てに係る手続を中止することができる。この場合において、裁判所は、 申立人 の申立てにより、被申立人に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。

6項 第1項の申立てに係る事件は、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。

1号 当事者が合意により定めた地方裁判所

2号 当該事件の被 申立人 の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所

3号 請求の目的又は差し押さえることができる被 申立人 の財産の所在地を管轄する地方裁判所

4号 東京地方裁判所及び大阪地方裁判所( 申立人 の普通裁判籍の所在地又は請求の目的若しくは差し押さえることができる被申立人の財産の所在地が日本国内にある場合に限る。

7項 前項の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、先に申立てがあった裁判所が管轄する。

8項 裁判所は、第1項の申立てに係る事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。

9項 裁判所は、第7項の規定により管轄する事件について、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を同項の規定により管轄権を有しないこととされた裁判所に移送することができる。

10項 前2項の規定による決定に対しては、その告知を受けた日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

11項 裁判所は、次項の規定により第1項の申立てを却下する場合を除き、執行決定をしなければならない。

12項 裁判所は、第1項の申立てがあった場合において、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(第1号から第6号までに掲げる事由にあっては、被 申立人 が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。

1号 国際和解合意 が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。

2号 国際和解合意 が、当事者が合意により国際和解合意に適用すべきものとして有効に指定した法令(当該指定がないときは、裁判所が国際和解合意について適用すべきものと判断する法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。

3号 国際和解合意 に基づく債務の内容を特定することができないこと。

4号 国際和解合意 に基づく債務の全部が履行その他の事由により消滅したこと。

5号 調停 人が、法令その他当事者間の合意により当該調停人又は当該調停人が実施する調停に適用される準則(公の秩序に関しないものに限る。)に違反した場合であって、その違反する事実が重大であり、かつ、当該 国際和解合意 の成立に影響を及ぼすものであること。

6号 調停 人が、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実を開示しなかった場合であって、当該事実が重大であり、かつ、当該 国際和解合意 の成立に影響を及ぼすものであること。

7号 国際和解合意 の対象である事項が、日本の法令によれば、和解の対象とすることができない紛争に関するものであること。

8号 国際和解合意 に基づく民事執行が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。

13項 裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、第1項の申立てについての決定をすることができない。

14項 第1項の申立てについての決定に対しては、その告知を受けた日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

6条 (任意的口頭弁論)

1項 執行決定の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

7条 (非電磁的事件記録の閲覧等)

1項 執行決定の手続について利害関係を有する者(以下「 利害関係者 」という。)は、裁判所書記官に対し、非電磁的事件記録(事件の記録中次条第1項に規定する電磁的事件記録を除いた部分をいう。以下この条において同じ。)の閲覧又は謄写を請求することができる。

2項 利害関係者 は、裁判所書記官に対し、非電磁的事件記録の正本、謄本又は抄本の交付を請求することができる。

3項 前2項の規定は、非電磁的事件記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、 利害関係者 は、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。

4項 民事訴訟法 1996年法律第109号第91条第5項 《5 非電磁的訴訟記録の閲覧、謄写及び複製…》 の請求は、非電磁的訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。 の規定は、第1項及び前項の規定による請求について準用する。

8条 (電磁的事件記録の閲覧等)

1項 利害関係者 は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的事件記録(事件の記録中この法律その他の法令の規定により裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この条及び次条において同じ。)に備えられたファイルに記録された事項に係る部分をいう。以下この条において同じ。)の内容を最高裁判所規則で定める方法により表示したものの閲覧を請求することができる。

2項 利害関係者 は、裁判所書記官に対し、電磁的事件記録に記録されている事項について、最高裁判所規則で定めるところにより、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織(裁判所の使用に係る電子計算機と手続の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。次項及び次条において同じ。)を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法による複写を請求することができる。

3項 利害関係者 は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的事件記録に記録されている事項の全部若しくは一部を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容が電磁的事件記録に記録されている事項と同一であることを証明したものを交付し、又は当該事項の全部若しくは一部を記録した電磁的記録であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該電磁的記録の内容が電磁的事件記録に記録されている事項と同一であることを証明したものを最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法により提供することを請求することができる。

4項 民事訴訟法 第91条第5項 《5 非電磁的訴訟記録の閲覧、謄写及び複製…》 の請求は、非電磁的訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。 の規定は、第1項及び第2項の規定による請求について準用する。

9条 (事件に関する事項の証明)

1項 利害関係者 は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、事件に関する事項を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該事項を証明したものを交付し、又は当該事項を記録した電磁的記録であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該事項を証明したものを最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法により提供することを請求することができる。

10条 (民事訴訟法の準用)

1項 特別の定めがある場合を除き、執行決定の手続に関しては、その性質に反しない限り、 民事訴訟法 第1編から第4編までの規定を準用する。この場合において、同法第132条の11第1項第2号中「 第2条 《定義 この法律において「調停」とは、そ…》 の名称や開始の原因となる事実のいかんにかかわらず、一定の法律関係契約に基づくものであるかどうかを問わない。に関する民事又は商事の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、当事者に対して紛争の解決を強 」とあるのは、「 第9条 《事件に関する事項の証明 利害関係者は、…》 裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、事件に関する事項を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該事項を証明したものを交付し、又は当該事項を記録した電磁的 において準用する同法第2条」と読み替えるものとする。

11条 (最高裁判所規則)

1項 この法律に定めるもののほか、執行決定の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

《本則》 ここまで 附則 >  

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