陪審法《本則》

法番号:1923年法律第50号

略称:

附則 >  

1章 総則

1条

1項 裁判所は本法の定むる所に依り刑事事件に付陪審の評議に付して事実の判断を為すことを得

2条

1項 死刑又は無期の懲役若は禁錮に該る事件は之を陪審の評議に付す

3条

1項 長期3年を超ゆる有期の懲役又は禁錮に該る事件にして地方裁判所の管轄に属するものに付被告人の請求ありたるときは之を陪審の評議に付す

4条

1項 左に掲くる罪に該る事件は前2条の規定に拘らす之を陪審の評議に付せす

1号 大審院の特別権限に属する罪

2号 刑法 第2編第1章ないし[から〜まで]第4章及第8章の罪

3号 治安維持法の罪

4号 軍機保護法、陸軍 刑法 又は海軍 刑法 の罪其の他軍機に関し犯したる罪

5号 法令に依りて行ふ公選に関し犯したる罪

5条

1項 第3条 《 長期3年を超ゆる有期の懲役又は禁錮に該…》 る事件にして地方裁判所の管轄に属するものに付被告人の請求ありたるときは之を陪審の評議に付す の請求は第一回公判期日前に之を為すべし但し其の期日前と雖最初に定めたる公判期日の召喚を受けたる日より10日を経過したるときは之を為すことを得す

6条

1項 被告人は検察官の被告事件陳述前は何時にても事件を陪審の評議に付することを辞し又は請求を取下くることを得

2項 前項の場合に於ては事件を陪審の評議に付することを得す

7条

1項 被告人公判又は公判準備に於ける取調に於て公訴事実を認めたるときは事件を陪審の評議に付することを得す但し共同被告人中公訴事実を認めさる者あるときは此の限に在らす

8条

1項 地方の情況に由り陪審の評議公平を失するの虞あるときは検察官は直近上級裁判所に管轄移転の請求を為すことを得

2項 公判に繋属する事件に付前項の請求ありたるときは訴訟手続を停止すべし

9条

1項 前条第1項の請求を為すには理由を附したる請求書を管轄裁判所に差出すべし

2項 前項の請求書を差出すには管轄裁判所に対応する検察庁の検察官を経由すべし

3項 公判に繋属する事件に付管轄移転の請求を為したるときは速に其の旨を裁判所に通知し且請求書の謄本を被告人に交付すべし

4項 被告人は謄本の交付を受けたる日より3日内に意見書を差出すことを得

5項 管轄裁判所は検察官の意見を聴き決定を為すべし

10条

1項 管轄移転の請求ありたるときは被告人は検察官の被告事件陳述後と雖其の決定ある迄事件を陪審の評議に付することを辞し又は請求を取下くることを得

2項 被告人事件を陪審の評議に付することを辞し又は請求を取下けたるに因り事件陪審の評議に付すへからさるに至りたるときは検察官の管轄移転の請求は之を取下けたるものと看做す

3項 共同被告人中事件を陪審の評議に付することを辞し又は請求を取下けたる者あるときは其の被告人に関する管轄移転の請求に付また前項に同し

11条

1項 上訴裁判所に於ては事件を陪審の評議に付することを得す

2章 陪審員及陪審の構成

12条

1項 陪審員は左の各号に該当する者たることを要す

1号 帝国臣民たる男子にして30歳以上たること

2号 引続き2年以上同一市町村内に住居すること

3号 引続き2年以上直接国税3円以上を納むること

4号 読み書きを為し得ること

2項 前項第2号及第3号の要件は其の年9月1日の現在に依る

13条

1項 左に掲くる者は陪審員たることを得す

1号 禁治産者、準禁治産者

2号 破産者にして復権を得さるもの

3号 聾者、唖者、盲者

4号 懲役、6年以上の禁錮、旧刑法の重罪の刑又は重禁錮に処せられたる者

14条

1項 左に掲くる者は陪審員の職務に就かしむることを得す

1号 国務大臣

2号 在職の判事、検察官、陸軍法務官、海軍法務官

3号 在職の行政裁判所長官、行政裁判所評定官

4号 在職の宮内官吏

5号 現役の陸軍軍人、海軍軍人

6号 在職の庁府県長官、郡長、島司、庁支庁長

7号 在職の警察官吏

8号 在職の監獄官吏

9号 在職の裁判所書記長、裁判所書記

10号 在職の収税官吏、税関官吏、専売官吏

11号 郵便電信電話鉄道及軌道の現業に従事する者並船員

12号 市町村長

13号 弁護士、弁理士

14号 公証人、執達吏、代書人

15号 在職の小学校教員

16号 神官、神職、僧侶、諸宗教師

17号 医師、歯科医師、薬剤師

18号 学生、生徒

15条

1項 陪審員は左の場合に於て職務の執行より除斥せらるへし

1号 陪審員被害者なるとき

2号 陪審員私訴当事者なるとき

3号 陪審員被告人、被害者若は私訴当事者の親族なるとき又は親族たりしとき

4号 陪審員被告人、被害者又は私訴当事者の属する家の戸主又は家族なるとき

5号 陪審員被告人、被害者又は私訴当事者の法定代理人、後見監督人又は保佐人なるとき

6号 陪審員被告人、被害者又は私訴当事者の同居人又は雇人なるとき

7号 陪審員事件に付告発を為したるとき

8号 陪審員事件に付証人又は鑑定人と為りたるとき

9号 陪審員事件に付被告人の代理人、弁護人、輔佐人又は私訴当事者の代理人と為りたるとき

10号 陪審員事件に付判事、検察官、司法警察官又は陪審員として職務を行ひたるとき

16条

1項 左に掲くる者は陪審員の職務を辞することを得

1号 60歳以上の者

2号 在職の官吏、公吏、教員

3号 貴族院議員、衆議院議員及法令を以て組織したる議会の議員但し会期中に限る

17条

1項 市町村長は4年毎に陪審員資格者名簿を調製し其の年の9月1日現在に依り其の市町村内に於て資格を有する者を之に登載すべし

2項 陪審員資格者名簿には資格者の氏名、身分、職業、住居地、生年月日及納税額を記載すべし

3項 市町村長は陪審員資格者名簿の副本を調製し之を管轄区裁判所判事に送付すべし

18条

1項 市町村長は10月1日より7日間其の庁に於て陪審員資格者名簿を縦覧に供すべし

19条

1項 法律に違反して陪審員資格者名簿に登載せられたる者は縦覧期間内及其の後7日内に市町村長に異議の申立を為すことを得

2項 法律に違反して陪審員資格者名簿に登載せられさる者は前項の規定に依り異議の申立を為すことを得

3項 異議の申立は書面を以てし其の理由を疏明すべし

20条

1項 市町村長異議の申立を正当とするときは遅滞なく陪審員資格者名簿を修正し其の旨を管轄区裁判所判事及異議申立人に通知すべし

2項 市町村長異議の申立を不当とするときは遅滞なく意見を附し申立書を管轄区裁判所判事に送付すべし

21条

1項 前条第2項の場合に於て区裁判所判事異議の申立を理由なしとするときは其の旨を市町村長及異議申立人に通知すべし異議の申立を理由ありとするときは陪審員資格者名簿を修正すへきことを命し其の旨を異議申立人に通知すべし

2項 前項の通知は異議申立書の送付を受けたる日より20日内に之を為すべし

22条

1項 地方裁判所長は陪審員資格者名簿を調製する年の9月1日迄に其の翌年より4年間所要の陪審員の員数を定め管轄区域内の市町村に割当て之を市町村長に通知すべし

23条

1項 市町村長前条の通知を受けたるときは 第20条 《 市町村長異議の申立を正当とするときは遅…》 滞なく陪審員資格者名簿を修正し其の旨を管轄区裁判所判事及異議申立人に通知すべし 市町村長異議の申立を不当とするときは遅滞なく意見を附し申立書を管轄区裁判所判事に送付すべし第21条 《 前条第2項の場合に於て区裁判所判事異議…》 の申立を理由なしとするときは其の旨を市町村長及異議申立人に通知すべし異議の申立を理由ありとするときは陪審員資格者名簿を修正すへきことを命し其の旨を異議申立人に通知すべし 前項の通知は異議申立書の送付を の規定に依り整理したる陪審員資格者名簿に基き抽籤を以て前条の規定に依り割当てられたる員数の陪審員候補者を選定し陪審員候補者名簿を調製すべし

2項 前項の抽籤は資格者3人以上の立会を以て之を為すべし

3項 第17条第2項 《陪審員資格者名簿には資格者の氏名、身分、…》 職業、住居地、生年月日及納税額を記載すべし 及第3項の規定は陪審員候補者名簿に之を準用す

24条

1項 区裁判所判事は陪審員候補者の選定に関する事務に付市町村長を監督す

2項 区裁判所判事は前項の事務に付市町村長に必要なる指示を為すことを得

25条

1項 市町村長は11月30日迄に陪審員候補者名簿を管轄地方裁判所長に送付すべし

2項 市町村長は陪審員候補者名簿に登載せられたる者に其の旨を通知し且其の氏名を告示すべし

26条

1項 市町村長前条の規定に依り陪審員候補者名簿を送付したる後其の候補者中死亡し若は国籍を喪失したる者あるとき又は 第13条 《 左に掲くる者は陪審員たることを得す 1…》 禁治産者、準禁治産者 2 破産者にして復権を得さるもの 3 聾者、唖者、盲者 4 懲役、6年以上の禁錮、旧刑法の重罪の刑又は重禁錮に処せられたる者 若は 第14条 《 左に掲くる者は陪審員の職務に就かしむる…》 ことを得す 1 国務大臣 2 在職の判事、検察官、陸軍法務官、海軍法務官 3 在職の行政裁判所長官、行政裁判所評定官 4 在職の宮内官吏 5 現役の陸軍軍人、海軍軍人 6 在職の庁府県長官、郡長、島司 の各号の一に該当するに至りたる者あるときは市町村長は遅滞なく之を管轄地方裁判所長に通知すべし

27条

1項 陪審の評議に付すへき事件に付公判期日定りたるときは地方裁判所長は予め定めたる市町村の順序に依り各陪審員候補者名簿より1人又は数人の陪審員を抽籤し陪審員36人を選定すべし

2項 前項の抽籤は裁判所書記の立会を以て之を為すべし

28条

1項 陪審員として呼出に応したる者は其の市町村に於ける陪審員候補者名簿に登載せられたる者4分の三呼出に応したる後に非されは其の陪審員候補者名簿調製の年の翌年より4年間再ひ陪審員に選定せらるることなし

29条

1項 陪審は12人の陪審員を以て之を構成す

30条

1項 陪審は検察官被告事件を陳述する時より裁判所書記陪審の答申を朗読する迄同一の陪審員を以て之を構成することを要す

31条

1項 裁判長は事件2日以上引続き開廷を要すと思料するときは12人の陪審員の外1人又は数人の補充陪審員を公判に立会はしむることを得

2項 補充陪審員は陪審を構成すへき陪審員疾病其の他の事由に因り職務を行ふこと能はさる場合に於て之に代るものとす

3項 補充陪審員数人ある場合に於て前項の職務を行ふは 第65条 《 裁判長は陪審員の氏名票を抽籤函に入れた…》 る後検察官及被告人の忌避することを得る員数を告知すべし 裁判長は氏名票を一票宛抽籤函より抽出し之を読上くへし 裁判長氏名を読上けたるときは検察官及被告人は承認又は忌避する旨を陳述すべし其の順序は検察官 の規定に依り為したる抽籤の順序に依る

32条

1項 同日に数箇の事件の公判を開く場合に於ては数箇の事件に付同一の陪審員を以て陪審を構成することを得此の場合に於ては最初の事件の取調前其の手続を為すべし

33条

1項 検察官及被告人異議なきときは一の事件の為構成せられたる陪審をして同日に審理すへき他の事件の為其の職務を行はしむることを得

34条

1項 陪審員には勅令の定むる所に依り旅費、日当及止宿料を給与す

3章 陪審手続 > 1節 公判準備

35条

1項 陪審の評議に付すへき事件に付ては裁判長は公判準備期日を定むへし

36条

1項 被告人公判準備期日前弁護人を選任せさるときは裁判長は其の裁判所所在地の弁護士中より之を選任すべし

2項 被告人の利害相反せさるときは同一の弁護人をして数人の弁護を為さしむることを得

37条

1項 公判準備期日には被告人及弁護人を召喚すべし

2項 公判準備期日は之を検察官に通知すべし

38条

1項 召喚状の送達の日と公判準備期日との間には少くとも5日の猶予期間を存すべし

39条

1項 公判期日を定めたる後被告人の請求に因り事件を陪審の評議に付すへきものとしたるときは其の公判期日を公判準備期日とす

40条

1項 公判準備期日に於ける取調は定数の判事、検察官及裁判所書記列席して之を為す

2項 公判準備期日に於ては弁護人出頭するに非されは取調を為すことを得す弁護人数人あるときは其の1人の出頭を以て足る

3項 公判準備期日に於ける取調は之を公行せす

41条

1項 第2条 《 死刑又は無期の懲役若は禁錮に該る事件は…》 之を陪審の評議に付す の規定に依り事件を陪審の評議に付するときは裁判長は被告人に対し事件を陪審の評議に付することを辞し得へき旨を告知すべし

42条

1項 公判準備期日に於ては裁判長は公訴事実に付出頭したる被告人を訊問すべし

2項 陪席判事は裁判長に告け被告人を訊問することを得

3項 検察官及弁護人は裁判長の許可を受け被告人を訊問することを得

43条

1項 公判準備期日に於ては裁判所は必要なる証拠調の決定を為すべし

2項 検察官、被告人及弁護人は証人訊問、鑑定、検証又は証拠物若は証拠書類の集取を請求することを得

3項 前項の請求を却下するときは裁判所は決定を為すべし

44条

1項 裁判所書記は公判準備調書を作り公判準備期日に於ける被告人に対する訊問及其の供述、検察官被告人弁護人の申立、裁判所の裁判其の他一切の訴訟手続を記載すべし

45条

1項 公判準備調書には前条に規定する事項の外被告事件、被告人及出頭したる弁護人の氏名並手続を為したる裁判所年月日及裁判長陪席判事検察官裁判所書記の官氏名を記載し被告人出頭せさるときは其の旨を記載すべし

46条

1項 公判準備調書は3日内に之を整理し裁判長及裁判所書記署名捺印すべし

2項 裁判長は署名捺印前に公判準備調書を検閲し意見あるときは其の旨を記載すべし

47条

1項 検察官、被告人及弁護人は公判準備期日前 第43条第2項 《検察官、被告人及弁護人は証人訊問、鑑定、…》 検証又は証拠物若は証拠書類の集取を請求することを得 の請求を為すことを得公判期日7日前迄また同し

2項 第43条第3項 《前項の請求を却下するときは裁判所は決定を…》 為すべし の規定は前項の場合に之を準用す

48条

1項 裁判所公判準備期日外に於て証拠決定を為したるときは之を検察官、被告人及弁護人に通知すべし

49条

1項 公判準備期日外に於て証人又は鑑定人の訊問を為すときは被告人もまた之に立会ふことを得

2項 裁判所外に於て前項の手続を為すときは拘禁せられたる被告人は之に立会ふことを得す但し裁判所必要と認むるときは之に立会はしむることを得

50条

1項 前条第1項の手続を為すへき日時及場所は被告人に之を通知すべし但し急速を要する場合は此の限に在らす

51条

1項 公判準備中陪審の評議に付すへからさる事由生したるときは通常の手続に従ひ審判を為すべし

2項 公判準備期日に於て前項の事由生したるときは其の期日を公判期日とす但し訴訟関係人中出頭せさる者あるときは此の限に在らす

52条

1項 被告人は公判準備期日に管轄違の申立を為すことを得

2項 前項の申立は予審を経たる事件に付ては予審判事に対して其の申立を為したる場合に非されは之を為すことを得す

53条

1項 裁判所公判準備期日に公訴棄却又は管轄違の原由あることを認めたるときは決定を為すべし

54条

1項 裁判所公判準備期日に免訴の原由あることを認めたるときは決定を為すべし

2項 免訴の決定確定したるときは同一の事件に付更に公訴を提起することを得す

55条

1項 前2条の決定を為すには訴訟関係人の意見を聴くへし

2項 決定に対しては即時抗告を為すことを得

56条

1項 第51条 《 公判準備中陪審の評議に付すへからさる事…》 由生したるときは通常の手続に従ひ審判を為すべし 公判準備期日に於て前項の事由生したるときは其の期日を公判期日とす但し訴訟関係人中出頭せさる者あるときは此の限に在らす 又は 第53条 《 裁判所公判準備期日に公訴棄却又は管轄違…》 の原由あることを認めたるときは決定を為すべし の場合に於て公判準備中に為したる手続は其の効力を失はす

57条

1項 公判期日には 第27条 《 陪審の評議に付すへき事件に付公判期日定…》 りたるときは地方裁判所長は予め定めたる市町村の順序に依り各陪審員候補者名簿より1人又は数人の陪審員を抽籤し陪審員36人を選定すべし 前項の抽籤は裁判所書記の立会を以て之を為すべし の規定に依りて選定したる陪審員を呼出すべし

2項 第38条 《 召喚状の送達の日と公判準備期日との間に…》 は少くとも5日の猶予期間を存すべし の規定は前項の場合に之を準用す

58条

1項 陪審員に対する呼出状には出頭すへき日時、場所及呼出に応せさるときは過料に処することあるへき旨を記載すべし

59条

1項 陪審員疾病其の他已むことを得さる事由に因り呼出に応すること能はさる場合に於ては其の職務を辞することを得此の場合に於ては書面を以て其の事由を疏明すべし

2節 公判手続及公判の裁判

60条

1項 陪審構成の手続は判事、検察官、裁判所書記、被告人、弁護人及陪審員列席し公判廷に於て之を行ふ

2項 前項の手続は之を公行せす

61条

1項 前条第1項の手続は陪審員24人以上出頭するに非されは之を行ふことを得す

2項 出頭したる陪審員24人に達せさるときは裁判長は之を補充する為裁判所所在地又は其の附近の市町村の陪審員候補者名簿より抽籤を以て必要なる員数の陪審員を選定し便宜の方法に依り之を呼出すべし

3項 前項の抽籤は裁判所書記の立会を以て之を為すべし

62条

1項 陪審員24人以上出頭したるときは裁判長は其の氏名、職業及住居地を記載したる書面を示し検察官及被告人に対し陪審員中除斥せらるへき者ありや否を問ふへし

2項 裁判長は陪審員に被告人の氏名、職業及住居地を告け除斥の原由ありや否を問ふへし

3項 検察官、被告人及陪審員除斥の原由ありとするときは其の旨の申立を為すべし

4項 除斥の原由ありとするときは裁判所は決定を為すべし

63条

1項 出頭したる陪審員中 第12条 《 陪審員は左の各号に該当する者たることを…》 要す 1 帝国臣民たる男子にして30歳以上たること 2 引続き2年以上同一市町村内に住居すること 3 引続き2年以上直接国税3円以上を納むること 4 読み書きを為し得ること 前項第2号及第3号の要件は ないし[から〜まで] 第14条 《 左に掲くる者は陪審員の職務に就かしむる…》 ことを得す 1 国務大臣 2 在職の判事、検察官、陸軍法務官、海軍法務官 3 在職の行政裁判所長官、行政裁判所評定官 4 在職の宮内官吏 5 現役の陸軍軍人、海軍軍人 6 在職の庁府県長官、郡長、島司 の規定に依り陪審員たる資格を有せさる者ありとするときは裁判所は決定を為すべし

64条

1項 検察官及被告人は陪審を構成すへき陪審員及補充陪審員の員数を超過する員数に付各其の半数を忌避することを得忌避することを得へき人員奇数なるときは被告人は尚1人を忌避することを得

2項 被告人数人あるときは忌避は共同して之を行ふ共同の方法に付協議整はさるときは忌避を行はしむる方法は裁判長之を定む

65条

1項 裁判長は陪審員の氏名票を抽籤函に入れたる後検察官及被告人の忌避することを得る員数を告知すべし

2項 裁判長は氏名票を一票宛抽籤函より抽出し之を読上くへし

3項 裁判長氏名を読上けたるときは検察官及被告人は承認又は忌避する旨を陳述すべし其の順序は検察官を先にし被告人を後にす

4項 忌避の理由は之を陳述することを得す

5項 次の氏名票を抽籤函より抽出す迄に陳述を為ささるときは承認の陳述を為したるものと看做す裁判長抽籤終りたる旨を宣言する迄陳述を為ささるときまた同し

6項 陳述は次の氏名票を抽出したる後は之を取消すことを得す裁判長抽籤終りたる旨を宣言したる後また同し

66条

1項 前条の手続に依り陪審を構成すへき陪審員及補充陪審員の数を充したるときは裁判長は抽籤終りたる旨を宣言すべし

67条

1項 陪審を構成すへき陪審員は初に当籤したる12人を以て之に充て補充陪審員は其の他の当籤者を以て之に充つ

68条

1項 陪審員は 第65条 《 裁判長は陪審員の氏名票を抽籤函に入れた…》 る後検察官及被告人の忌避することを得る員数を告知すべし 裁判長は氏名票を一票宛抽籤函より抽出し之を読上くへし 裁判長氏名を読上けたるときは検察官及被告人は承認又は忌避する旨を陳述すべし其の順序は検察官 の規定に依り為したる抽籤の順序に従ひ著席すべし

69条

1項 裁判長は検察官の被告事件陳述前陪審員に対し陪審員の心得を諭告し之をして宣誓を為さしむへし

2項 宣誓は宣誓書に依り之を為すべし

3項 宣誓書には良心に従ひ公平誠実に其の職務を行ふへきことを誓ふ旨を記載すべし

4項 裁判長は起立して宣誓書を朗読し陪審員をして之に署名捺印せしむへし

70条

1項 裁判長は陪席判事の1人をして被告人の訊問及証拠調を為さしむることを得

2項 陪審員は裁判長の許可を受け被告人、証人、鑑定人、通事及翻訳人を訊問することを得

71条

1項 証拠は別段の定ある場合を除くの外裁判所の直接に取調へたるものに限る

72条

1項 左に掲くる書類図画は之を証拠と為すことを得

1号 公判準備手続に於て取調へたる証人の訊問調書

2号 検証、押収又は捜索の調書及之を補充する書類図画

3号 公務員の職務を以て証明することを得へき事実に付公務員の作りたる書類

4号 前号の事実に付外国の公務員の作りたる書類にして其の真正なることの証明あるもの

5号 鑑定書又は鑑定調書及之を補充する書類図画

73条

1項 裁判所、予審判事、受命判事、受託判事其の他法令に依り特別に裁判権を有する官署、検察官、司法警察官又は訴訟上の共助を為す外国の官署の作りたる訊問調書及之を補充する書類図画は左の場合に限り之を証拠と為すことを得

1号 共同被告人若は証人死亡したるとき又は疾病其の他の事由に因り之を召喚し難きとき

2号 被告人又は証人公判外の訊問に対して為したる供述の重要なる部分を公判に於て変更したるとき

3号 被告人又は証人公判廷に於て供述を為ささるとき

74条

1項 前2条の場合の外裁判外に於て被告人其の他の者の供述を録取したる書類又は裁判外に於て作成したる書類図画は供述者若は作成者死亡したるとき又は疾病其の他の事由に因り召喚し難きときに限り之を証拠と為すことを得

75条

1項 証拠と為すことに付訴訟関係人の異議なき書類図画は前3条の規定に拘らす之を証拠と為すことを得

76条

1項 証拠調終りたる後検察官、被告人及弁護人は犯罪の構成要素に関する事実上及法律上の問題のみに付意見を陳述すべし

2項 弁護人数人ある場合に於て被告人の為にする意見の陳述は重複して之を為すことを得す

3項 公判廷に現はれさる証拠は之を援用することを得す

4項 被告人又は弁護人には最終に陳述する機会を与ふへし

77条

1項 前条の弁論終決後裁判長は陪審に対し犯罪の構成に関し法律上の論点及問題と為るへき事実並証拠の要領を説示し犯罪構成事実の有無を問ひ評議の結果を答申すへき旨を命すべし但し証拠の信否及罪責の有無に関し意見を表示することを得す

78条

1項 裁判長の説示に対しては異議を申立つることを得す

79条

1項 裁判長の問は主問と補問とに区別し陪審に於て然り又は然らすと答へ得へき文言を以て之を為すべし

2項 主問は公判に付せられたる犯罪構成事実の有無を評議せしむる為之を為すものとす

3項 補問は公判に付せられたるものと異りたる犯罪構成事実の有無を評議せしむる必要ありと認むる場合に於て之を為すものとす

4項 犯罪の成立を阻却する原由と為るへき事実の有無を評議せしむる必要ありと認むるときは其の問は他の問と分別して之を為すべし

80条

1項 陪審員、検察官、被告人及弁護人は問の変更の申立を為すことを得

2項 前項の申立ありたるときは裁判所は決定を為すべし

81条

1項 裁判長は問書に署名捺印し之を陪審に交付すべし

2項 陪審員は問書の謄本の交付を請求することを得

82条

1項 裁判長は評議を為さしむる為陪審員をして評議室に退かしむへし

2項 裁判長は公判廷に於て示したる証拠物及証拠書類を陪審に交付することを得

83条

1項 陪審員は裁判長の許可を受くるに非されは評議を了る前評議室を出て又は他人と交通することを得す

2項 陪審員に非さる者は裁判長の許可を受くるに非されは評議室に入ることを得す

84条

1項 陪審の答申前陪審員をして裁判所を退出せしむる場合に於ては裁判長は陪審員に対し滞留の場所及他人との交通に関し遵守すへき事項を指示すべし

85条

1項 陪審員 第83条第1項 《陪審員は裁判長の許可を受くるに非されは評…》 議を了る前評議室を出て又は他人と交通することを得す の規定に違反したるとき又は前条の規定に依り指示せられたる事項を遵守せさるときは裁判所は其の陪審員に対し職務の執行を禁止することを得

86条

1項 陪審員は陪審長を互選すべし

2項 陪審長は議事を整理す

87条

1項 陪審は評議を了る前更に説示を請求することを得此の場合に於ては公判廷に於て其の申立を為すべし

88条

1項 答申は問に対し然り又は然らすの語を以て之を為すべし但し問に掲くる事実の一部を肯定又は否定するときは之に付然り又は然らすの語を以て答申すべし

89条

1項 評議は先つ主問に付之を為すべし

2項 主問を否定したる場合に於て補問あるときは之に付評議を為すべし

90条

1項 陪審員は問に付各其の意見を表示すべし

2項 陪審長は最後に其の意見を表示すべし

91条

1項 犯罪構成事実を肯定するには陪審員の過半数の意見に依ることを要す

2項 犯罪構成事実を肯定する陪審員の意見其の過半数に達せさるときは之を否定したるものとす

92条

1項 答申は問書に記載し陪審長署名捺印して之を裁判長に提出すべし

2項 答申に不備又は齟齬あるときは裁判長は問書を返付し更に評議を為し答申を訂正すへき旨を命すべし

93条

1項 裁判長は公判廷に於て裁判所書記をして問及之に対する陪審の答申を朗読せしむへし

94条

1項 前条の手続終りたるときは裁判長は陪審員を退廷せしむへし

95条

1項 裁判所陪審の答申を不当と認むるときは訴訟の如何なる程度に在るを問はす決定を以て事件を更に他の陪審の評議に付することを得

96条

1項 陪審犯罪構成事実を肯定するの答申を為したる場合に於て裁判所前条の決定を為ささるときは検察官は適用すへき法令及刑に付意見を陳述すべし

2項 被告人及弁護人は意見を陳述することを得

3項 被告人又は弁護人には最終に陳述する機会を与ふへし

97条

1項 陪審の答申を採択して判決の言渡を為すには裁判所は陪審の評議に付して事実の判断を為したる旨を示すべし

2項 有罪の言渡を為すには罪と為るへき事実及法令の適用を示すべし刑の加重減免の原由たる事実上の主張ありたるときは之に対する判断を示すべし

3項 無罪の言渡を為すには犯罪構成事実を認めさること又は被告事件罪と為らさることを示すべし

98条

1項 引続き7日以上開廷せさりし場合に於ては公判手続を更新すべし

2項 陪審を構成すへき陪審員疾病其の他の事由に因り職務を行ふこと能はさる場合に於て補充陪審員なきときまた前項に同し

3項 前2項の場合に於ては新に陪審構成の手続を為すべし

99条

1項 裁判所は訴訟の如何なる程度に在るを問はす公訴棄却、管轄違又は免訴の裁判を為すへき原由あることを認めたる場合に於ては陪審の評議に付せすして審判を為すべし

100条

1項 裁判所書記は陪審員の氏名、陪審の構成其の他陪審に関する訴訟手続及裁判長の説示の要領を公判調書に記載すべし

3節 上訴

101条

1項 陪審の答申を採択して事実の判断を為したる事件の判決に対しては控訴を為すことを得す

102条

1項 陪審の答申を採択して事実の判断を為したる事件の判決に対しては大審院に上告を為すことを得

103条

1項 上告は 刑事訴訟法 に於て第二審の判決に対し上告を為すことを得る理由ある場合に於て之を為すことを得但し事実の誤認を理由とする場合は此の限に在らす

104条

1項 左の場合に於ては常に上告の理由あるものとす

1号 法律に従ひ陪審を構成せさりしとき

2号 第12条第1項第1号 《陪審員は左の各号に該当する者たることを要…》 す 1 帝国臣民たる男子にして30歳以上たること 2 引続き2年以上同一市町村内に住居すること 3 引続き2年以上直接国税3円以上を納むること 4 読み書きを為し得ること 又は 第13条 《 左に掲くる者は陪審員たることを得す 1…》 禁治産者、準禁治産者 2 破産者にして復権を得さるもの 3 聾者、唖者、盲者 4 懲役、6年以上の禁錮、旧刑法の重罪の刑又は重禁錮に処せられたる者 の規定に依り陪審員たることを得さる者評議に関与したるとき但し評議を了る前訴訟関係人異議を述へさりしときは此の限に在らす

3号 法律に依り職務の執行より除斥せらるへき陪審員評議に関与したるとき但し 第62条第3項 《検察官、被告人及陪審員除斥の原由ありとす…》 るときは其の旨の申立を為すべし の申立を為ささりしときは此の限に在らす

4号 忌避せられたる陪審員評議に関与したるとき但し評議を了る前訴訟関係人異議を述へさりしときは此の限に在らす

5号 裁判長の説示法律に違反したるとき

6号 裁判長証拠として説示したるもの法律上証拠と為すことを得さるものなるとき

7号 裁判長法律上の論点に関し不当の説示を為したるとき

105条

1項 上告裁判所原判決を破毀する場合に於ては事実の審理を為さすして自ら裁判を為す場合を除くの外事件を原裁判所に差戻し又は原裁判所と同等なる他の裁判所に移送すべし

2項 破毀の理由と為りたる事項陪審の評議の結果に影響なきものなるときは陪審の答申は其の効力を有す此の場合に於ては事件の差戻又は移送を受けたる裁判所は答申以後の手続のみを為すべし

4章 陪審費用

106条

1項 左に掲くるものを以て陪審費用とし訴訟費用の一部とす

1号 陪審員の呼出に要する費用

2号 陪審員に給与すへき旅費、日当及止宿料

107条

1項 陪審費用は 第3条 《 長期3年を超ゆる有期の懲役又は禁錮に該…》 る事件にして地方裁判所の管轄に属するものに付被告人の請求ありたるときは之を陪審の評議に付す の場合に於て刑の言渡を為すときは其の全部又は一部を被告人の負担とす

5章 罰則

108条

1項 陪審員は左の場合に於ては500円以下の過料に処す

1号 故なく呼出に応せさるとき

2号 宣誓を拒みたるとき

3号 第83条第1項 《陪審員は裁判長の許可を受くるに非されは評…》 議を了る前評議室を出て又は他人と交通することを得す の規定に違反したるとき

4号 故なく退廷したるとき

5号 第84条 《 陪審の答申前陪審員をして裁判所を退出せ…》 しむる場合に於ては裁判長は陪審員に対し滞留の場所及他人との交通に関し遵守すへき事項を指示すべし の指示に違反したるとき

109条

1項 陪審員評議の顛末又は各員の意見若は其の多少の数を漏泄したるときは1,000円以下の罰金に処す

2項 前項の事項を新聞紙其の他の出版物に掲載したるときは新聞紙に在りては編輯人及発行人其の他の出版物に在りては著作者及発行者を2,000円以下の罰金に処す

110条

1項 裁判長の許可を受けすして陪審の評議室に入り又は陪審の評議を了る前裁判所内に於て陪審員と交通したる者は500円以下の罰金に処す

111条

1項 陪審の評議に付せられたる事件に付陪審員に対し請託を為し又は評議を了る前私に意見を述へたる者は1年以下の懲役又は2,000円以下の罰金に処す

112条

1項 過料の裁判は陪審員を呼出したる裁判所検察官の意見を聴き決定を以て之を為すべし

2項 前項の決定に対しては抗告を為すことを得此の抗告は執行を停止する効力を有す

3項 過料の裁判の執行に付ては 非訟事件手続法 第208条の規定を準用す

6章 補則

113条

1項 市制 第6条 《 被告人は検察官の被告事件陳述前は何時に…》 ても事件を陪審の評議に付することを辞し又は請求を取下くることを得 前項の場合に於ては事件を陪審の評議に付することを得す の市に於ては本法中市に関する規定は区に、市長に関する規定は区長に之を適用す

2項 町村制を施行せさる地に於ては本法中町村に関する規定は町村に準すへきものに、町村長に関する規定は町村長に準すへき者に之を適用す

114条

1項 第12条 《 陪審員は左の各号に該当する者たることを…》 要す 1 帝国臣民たる男子にして30歳以上たること 2 引続き2年以上同一市町村内に住居すること 3 引続き2年以上直接国税3円以上を納むること 4 読み書きを為し得ること 前項第2号及第3号の要件は の直接国税の種類は勅令を以て之を定む

《本則》 ここまで 附則 >  

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