1章 総則
1条 (目的)
1項 この法律は、日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の 協定 (以下「 協定 」という。)の適確な実施を確保するため、協定の実施に伴う 道路運送法 (1951年法律第183号)及び 道路運送車両法 (1951年法律第185号)の適用除外、刑事手続等の特例、国の賠償責任の特例並びに特殊海事損害に係る賠償の請求についての援助に関する措置を定め、もって我が国と英国との間における防衛の分野に係る協力の円滑化に資することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 英国軍隊 」とは、 協定 第1条(c)に規定する訪問部隊として日本国内に所在する英国の軍隊をいう。
2項 この法律において「 英国軍隊の文民構成員 」とは、 協定 第1条(a)に規定する文民構成員であって、 英国軍隊 に係るものをいう。
3項 この法律において「 英国軍隊の構成員 」とは、 協定 第1条(d)に規定する構成員であって、 英国軍隊 に係るものをいう。
2章 道路運送法及び道路運送車両法の適用除外
3条
1項 公用車両( 協定 第1条(e)に規定する公用車両であって、 英国軍隊 に係るものをいう。次項において同じ。)には、 道路運送法
第94条
《報告、検査及び調査 国土交通大臣は、こ…》
の法律の施行に必要な限度において、道路運送事業者、自家用有償旅客運送者その他自動車を所有し、若しくは使用する者又はこれらの者の組織する団体に、国土交通省令で定める手続に従い、事業、自家用有償旅客運送の
及び
第95条
《自動車に関する表示 自動車軽自動車たる…》
自家用自動車、乗車定員10人以下の乗用の自家用自動車、特殊自動車たる自家用自動車その他国土交通省令で定めるものを除く。を使用する者は、その自動車の外側に、使用者の氏名、名称又は記号その他の国土交通省令
の規定は、適用しない。
2項 公用車両(日本国において賃借されるものを除く。)には、 道路運送車両法
第4条
《登録の一般的効力 自動車軽自動車、小型…》
特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く。以下第29条から第32条までを除き本章において同じ。は、自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
、
第19条
《自動車登録番号標の表示の義務 自動車は…》
、第11条第1項同条第2項及び第14条第2項において準用する場合を含む。の規定により国土交通大臣又は第25条の自動車登録番号標交付代行者から交付を受けた自動車登録番号標を国土交通省令で定める位置に、か
、
第29条
《車台番号等の打刻 自動車の製作を業とす…》
る者、自動車の車台又は原動機の製作を業とする者及び国土交通大臣が指定した者以外の者は、自動車の車台番号又は原動機の型式を打刻してはならない。 2 自動車の製作を業とする者、自動車の車台又は原動機の製作
、
第31条
《打刻の塗まヽつヽ等の禁止 何人も、自動…》
車の車台番号又は原動機の型式の打刻を塗まヽつヽし、その他車台番号又は原動機の型式の識別を困難にするような行為をしてはならない。 但し、整備のため特に必要な場合その他やむを得ない場合において、国土交通大
から
第33条
《譲渡証明書等 自動車を譲渡する者は、次…》
に掲げる事項を記載した譲渡証明書を譲受人に交付しなければならない。 1 譲渡の年月日 2 車名及び型式 3 車台番号及び原動機の型式 4 譲渡人及び譲受人の氏名又は名称及び住所 2 前項の譲渡証明書は
まで、
第40条
《自動車の構造 自動車は、その構造が、次…》
に掲げる事項について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。 1 長さ、幅及び高さ 2 最低地上高 3 車両総重量車両
から
第45条
《軽車両の構造及び装置 軽車両は、次に掲…》
げる事項について、国土交通省令で定める保安上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。 1 長さ、幅及び高さ 2 接地部及び接地圧 3 制動装置 4 車体 5 警音器
まで、
第47条
《使用者の点検及び整備の義務 自動車の使…》
用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない。
から
第50条
《整備管理者 自動車の使用者は、自動車の…》
点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理させるため、自動車の点検及び整備に関し特に専門的知識を必要とすると認められる車両総重量八トン以上の自動車その他の国土交通省令で定める自動車であつて国
まで、
第54条
《整備命令等 地方運輸局長は、自動車が保…》
安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合しない状態にあるとき次条第1項に規定するときを除く。は、当該自動車の使用者に対し、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため、又は保安基準に適合させるた
、
第54条
《整備命令等 地方運輸局長は、自動車が保…》
安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合しない状態にあるとき次条第1項に規定するときを除く。は、当該自動車の使用者に対し、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため、又は保安基準に適合させるた
の二、
第56条
《自動車車庫に関する勧告 国土交通大臣は…》
、自動車の使用者に対し、その用に供する自動車車庫に関し、国土交通省令で定める技術上の基準によるべきことを勧告することができる。
、
第58条
《自動車の検査及び自動車検査証 自動車国…》
土交通省令で定める軽自動車以下「検査対象外軽自動車」という。及び小型特殊自動車を除く。以下この章において同じ。は、この章に定めるところにより、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受
、
第63条
《臨時検査 国土交通大臣は、一定の範囲の…》
自動車又は検査対象外軽自動車について、事故が著しく生じている等によりその構造、装置又は性能が保安基準に適合していないおそれがあると認めるときは、期間を定めて、これらの自動車又は検査対象外軽自動車につい
、
第66条
《自動車検査証の備付け等 自動車は、自動…》
車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない。 2 国土交通大臣は、次の場合には、使用者に検査標章を交付しなければならない。 1 第6
、
第73条第1項
《検査対象軽自動車及び二輪の小型自動車は、…》
第60条第1項後段の規定により指定を受けた車両番号を記載した車両番号標を国土交通省令で定める位置に、かつ、被覆しないことその他当該車両番号の識別に支障が生じないものとして国土交通省令で定める方法により
、
第97条
《登録自動車に対する強制執行等 登録自動…》
車に対する強制執行及び仮差押えの執行については、地方裁判所が執行裁判所又は保全執行裁判所として、これを管轄する。 ただし、仮差押えの執行で最高裁判所規則で定めるものについては、地方裁判所以外の裁判所が
の三、
第99条
《保安基準の規定の準用 第40条から第4…》
2条までの規定は、道路以外の場所において使用する自動車であつて多数の人員の輸送を行うものその他政令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上特に重要なものの使用について準用する。
から
第99条
《保安基準の規定の準用 第40条から第4…》
2条までの規定は、道路以外の場所において使用する自動車であつて多数の人員の輸送を行うものその他政令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上特に重要なものの使用について準用する。
の三まで及び
第100条
《報告徴収及び立入検査 当該行政庁は、第…》
75条の6第1項に定めるもののほか、第1条の目的を達成するため必要があると認めるときは、次に掲げる者に、道路運送車両の所有若しくは使用又は事業若しくは業務に関し報告をさせることができる。 1 道路運送
の規定は、適用しない。
3章 刑事手続等の特例
4条 (逮捕された英国軍隊の構成員又は英国軍隊の文民構成員の引渡し)
1項 検察官又は司法警察員は、逮捕された者が 英国軍隊 の構成員又は英国軍隊の文民構成員であり、かつ、その者の犯した罪が 協定 第21条第4項(a)(i)又は(ii)に掲げる罪のいずれかに明らかに該当すると認めたときは、 刑事訴訟法 (1948年法律第131号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を英国軍隊に引き渡さなければならない。
2項 司法警察員は、前項の規定により被疑者を 英国軍隊 に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、速やかに書類及び証拠物と共に事件を検察官に送致しなければならない。
5条 (英国軍隊によって逮捕された者の受領)
1項 検察官又は司法警察員は、 英国軍隊 から日本国の法令による罪を犯した英国軍隊の構成員又は英国軍隊の文民構成員を引き渡す旨の通知があった場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡しを受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡しを受けさせなければならない。この場合において、 刑事訴訟法
第201条の2第2項
《裁判官は、前項の規定による請求を受けた場…》
合において、第199条第2項の規定により逮捕状を発するときは、これと同時に、被疑者に示すものとして、当該請求に係る個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した逮捕状の抄本その他の逮捕
の規定による逮捕状に代わるものの交付があったときは、当該逮捕状に代わるものを示して、その引渡しを受けることができる。
2項 検察官又は司法警察員は、前項に規定する場合において、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる10分な理由があって、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡しを受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
3項 前2項の場合を除くほか、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取った後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
4項 第1項又は第2項の規定による引渡しがあった場合には、 刑事訴訟法
第199条
《 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、…》
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。 ただし、310,000円刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則
の規定により被疑者が逮捕された場合の手続の例による。ただし、同法第203条第1項、第204条第1項及び第205条第2項の時間の制限は、それぞれ第1項又は第2項の規定による引渡しがあった時から起算する。
6条 (英国軍隊の財産の差押え、捜索等)
1項 英国軍隊 の財産(英国軍隊が日本国内に所在していない場合にあっては、日本国内に所在する英国の軍隊の財産であって、英国軍隊の用に供されていたものを含む。)についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押え(差押状の執行を含む。)、記録命令付差押え(記録命令付差押状の執行を含む。)又は検証(検証状の執行を含む。)は、検察官若しくは司法警察員が英国軍隊(英国軍隊が日本国内に所在していない場合にあっては、英国の軍隊。以下この条において同じ。)の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員から英国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。ただし、裁判所又は裁判官が必要とする検証は、その裁判所若しくは裁判官が英国軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又はその裁判所若しくは裁判官から英国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。
7条 (英国軍隊等への書類又は証拠物の提供等)
1項 裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、 英国軍隊 その他の英国の権限ある当局から、英国軍隊の構成員又は英国軍隊の文民構成員が犯した罪に係る刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があったときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを1時貸与し、若しくは引き渡すことができる。
8条 (日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力)
1項 検察官又は司法警察員は、 英国軍隊 から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、英国軍隊の構成員又は英国軍隊の文民構成員の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。
2項 前項の場合において、逮捕の要請があった者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官又は司法警察員は、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索し、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその場所に入りその者を捜索させることができる。ただし、追跡されている者がその場所に入ったことが明らかであって、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。
3項 第1項の規定により 英国軍隊 の構成員又は英国軍隊の文民構成員を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を英国軍隊に引き渡さなければならない。
4項 司法警察員は、前項の規定により 英国軍隊 の構成員又は英国軍隊の文民構成員を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。
9条
1項 検察官又は司法警察員は、 英国軍隊 その他の英国の権限ある当局から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。
2項 検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさせることができる。
3項 前2項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して 英国軍隊 その他の英国の権限ある当局の要請による旨を明らかにしなければならない。
10条 (自衛隊に係る構成員又は文民構成員への準用)
1項 第5条
《英国軍隊によって逮捕された者の受領 検…》
察官又は司法警察員は、英国軍隊から日本国の法令による罪を犯した英国軍隊の構成員又は英国軍隊の文民構成員を引き渡す旨の通知があった場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡しを受け、又は検察事務
の規定は、英国の権限ある当局から、 協定 第1条(c)に規定する訪問部隊として英国内に所在する自衛隊に係る同条(d)に規定する構成員又は同条(a)に規定する文民構成員(次項において「 自衛隊に係る構成員又は文民構成員 」という。)であって、日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があった場合について準用する。
2項 第7条
《英国軍隊等への書類又は証拠物の提供等 …》
裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、英国軍隊その他の英国の権限ある当局から、英国軍隊の構成員又は英国軍隊の文民構成員が犯した罪に係る刑事事件の審判又は捜査のため必要があ
の規定は、英国の権限ある当局から、 自衛隊に係る構成員又は文民構成員 が犯した罪に係る刑事事件の審判又は捜査のために必要があるものとして申出があったときについて準用する。
11条 (刑事補償)
1項 刑事補償法 (1950年法律第1号)又は 少年の保護事件に係る補償に関する法律 (1992年法律第84号)の規定の適用については、 英国軍隊 その他の英国の権限ある当局による抑留又は拘禁は、 刑事訴訟法 による抑留若しくは拘禁又は 少年の保護事件に係る補償に関する法律
第2条第1項第2号
《少年法に規定する保護事件を終結させるいず…》
れかの決定においてその全部又は一部の審判事由の存在が認められないことにより当該全部又は一部の審判事由につき審判を開始せず又は保護処分に付さない旨の判断がされ、その決定が確定した場合において、その決定を
に掲げる身体の自由の拘束とみなす。
4章 国の賠償責任の特例
12条 (職務遂行に係る賠償責任)
1項 英国軍隊 の構成員又は英国軍隊の文民構成員が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、国の公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合の例により、国がその損害を賠償する責任を負う。
13条 (工作物等の設置等に係る賠償責任)
1項 英国軍隊 が占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために日本国内において他人に損害を生じたときは、国が占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じた場合の例により、国がその損害を賠償する責任を負う。
14条 (適用除外)
1項 前2条の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
1号 被害者が 英国軍隊 の構成員又は英国軍隊の文民構成員である場合
2号 協定 第23条第6項の規定により同条第5項の規定の適用を受けない場合
5章 特殊海事損害に係る賠償の請求についての援助
15条 (請求のあっせんの申請)
1項 特殊海事損害( 協定 第23条第6項(c)に規定する損害であって同条第5項の規定の適用を受けないものをいう。)を被った日本国民又は日本国法人は、防衛省令で定めるところにより、その被った損害について英国に対して行う賠償の請求のあっせんを防衛大臣に申請することができる。
16条 (請求のあっせん)
1項 防衛大臣は、前条の規定による請求のあっせんの申請があったときは、当該申請に係る請求のあっせんを行わなければならない。ただし、請求の理由がないと認められるときは、この限りでない。
17条 (訴訟の援助)
1項 政府は、前条本文の規定によるあっせんにより当該あっせんの申請をした者に係る請求が解決されない場合において、その者が英国の裁判所に当該請求に係る訴訟を提起するときは、政令で定めるところにより、訴訟に関する費用の立替えその他当該訴訟について必要な援助を行うことができる。
2項 前項の立替金には、利息を付さない。
18条 (立替金の償還等)
1項 政府は、前条第1項の規定により費用の立替えを受けた者に係る訴訟が終了した場合には、その立替金を償還させなければならない。ただし、政令で定めるところにより、償還金の支払を猶予し、又は立替金の全部若しくは一部の償還を免除することができる。