1章 総則
1条 (目的)
1項 この法律は、医療技術の進歩に伴い医療的ケア児が増加するとともにその実態が多様化し、医療的ケア児及びその家族が個々の医療的ケア児の心身の状況等に応じた適切な支援を受けられるようにすることが重要な課題となっていることに鑑み、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、保育及び教育の拡充に係る施策その他必要な施策並びに医療的ケア児支援センターの指定等について定めることにより、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資し、もって安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現に寄与することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 医療的ケア 」とは、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為をいう。
2項 この法律において「 医療的ケア児 」とは、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に 医療的ケア を受けることが不可欠である児童(18歳未満の者及び18歳以上の者であって高等学校等( 学校教育法 (1947年法律第26号)に規定する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部をいう。次条第3項及び
第14条第1項第1号
《都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福…》
祉法人その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者以下「医療的ケア児支援センター」という。に行わせ、又は自ら行うことができる。 1 医療的ケア児18歳に達し、又は高等
において同じ。)に在籍するものをいう。次条第2項において同じ。)をいう。
3条 (基本理念)
1項 医療的ケア 児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児の日常生活及び社会生活を社会全体で支えることを旨として行われなければならない。
2項 医療的ケア 児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が医療的ケア児でない児童と共に教育を受けられるよう最大限に配慮しつつ適切に教育に係る支援が行われる等、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、切れ目なく行われなければならない。
3項 医療的ケア 児及びその家族に対する支援は、医療的ケア児が18歳に達し、又は高等学校等を卒業した後も適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けながら日常生活及び社会生活を営むことができるようにすることにも配慮して行われなければならない。
4項 医療的ケア 児及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たっては、医療的ケア児及びその保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、医療的ケア児を現に監護するものをいう。
第10条第2項
《2 学校の設置者は、その設置する学校に在…》
籍する医療的ケア児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。
において同じ。)の意思を最大限に尊重しなければならない。
5項 医療的ケア 児及びその家族に対する支援に係る施策を講ずるに当たっては、医療的ケア児及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるようにすることを旨としなければならない。
4条 (国の責務)
1項 国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、 医療的ケア 児及びその家族に対する支援に係る施策を総合的に実施する責務を有する。
5条 (地方公共団体の責務)
1項 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、 医療的ケア 児及びその家族に対する支援に係る施策を実施する責務を有する。
6条 (保育所の設置者等の責務)
1項 保育所( 児童福祉法 (1947年法律第164号)
第39条第1項
《保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を日…》
々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設利用定員が20人以上であるものに限り、幼保連携型認定こども園を除く。とする。
に規定する保育所をいう。以下同じ。)の設置者、認定こども園( 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 (2006年法律第77号)
第2条第6項
《6 この法律において「認定こども園」とは…》
、次条第1項又は第3項の認定を受けた施設、同条第10項の規定による公示がされた施設及び幼保連携型認定こども園をいう。
に規定する認定こども園をいい、保育所又は 学校教育法
第1条
《 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、…》
中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
に規定する幼稚園であるものを除く。以下同じ。)の設置者及び家庭的保育事業等( 児童福祉法
第6条の3第9項
《この法律で、家庭的保育事業とは、次に掲げ…》
る事業をいう。 1 子ども・子育て支援法2012年法律第65号第19条第2号の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受けることが困難である乳児又は幼児以下「保育を必要とする乳児・幼児」とい
に規定する家庭的保育事業、同条第10項に規定する小規模保育事業及び同条第12項に規定する事業所内保育事業をいう。以下この項及び
第9条第2項
《児童福祉審議会において、特別の事項を調査…》
審議するため必要があるときは、臨時委員を置くことができる。
において同じ。)を営む者は、基本理念にのっとり、その設置する保育所若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保育事業等を利用している 医療的ケア 児に対し、適切な支援を行う責務を有する。
2項 放課後児童健全育成事業( 児童福祉法
第6条の3第2項
《この法律で、放課後児童健全育成事業とは、…》
小学校に就学している児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。
に規定する放課後児童健全育成事業をいう。以下この項及び
第9条第3項
《児童福祉審議会の臨時委員は、前項の事項に…》
関し公正な判断をすることができる者であつて、かつ、児童又は知的障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験のある者のうちから、都道府県知事又は市町村長が任命する。
において同じ。)を行う者は、基本理念にのっとり、当該放課後児童健全育成事業を利用している 医療的ケア 児に対し、適切な支援を行う責務を有する。
7条 (学校の設置者の責務)
1項 学校( 学校教育法
第1条
《 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、…》
中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
に規定する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校をいう。以下同じ。)の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校に在籍する 医療的ケア 児に対し、適切な支援を行う責務を有する。
8条 (法制上の措置等)
1項 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
2章 医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策
9条 (保育を行う体制の拡充等)
1項 国及び地方公共団体は、 医療的ケア 児に対して保育を行う体制の拡充が図られるよう、 子ども・子育て支援法 (2012年法律第65号)
第59条の2第1項
《政府は、仕事と子育てとの両立に資する子ど…》
も・子育て支援の提供体制の充実を図るため、仕事・子育て両立支援事業として、児童福祉法に規定する施設同項の規定による届出がされたものに限る。のうち同法第6条の3第12項に規定する業務を目的とするものその
の仕事・子育て両立支援事業における医療的ケア児に対する支援についての検討、医療的ケア児が在籍する保育所、認定こども園等に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
2項 保育所の設置者、認定こども園の設置者及び家庭的保育事業等を営む者は、その設置する保育所若しくは認定こども園に在籍し、又は当該家庭的保育事業等を利用している 医療的ケア 児が適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、保健師、助産師、看護師若しくは准看護師(次項並びに次条第2項及び第3項において「看護師等」という。)又は喀痰吸引等( 社会福祉士及び介護福祉士法 (1987年法律第30号)
第2条第2項
《2 この法律において「介護福祉士」とは、…》
第42条第1項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護喀痰かくたん吸引その他
に規定する喀痰吸引等をいう。次条第3項において同じ。)を行うことができる保育士若しくは保育教諭の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。
3項 放課後児童健全育成事業を行う者は、当該放課後児童健全育成事業を利用している 医療的ケア 児が適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。
10条 (教育を行う体制の拡充等)
1項 国及び地方公共団体は、 医療的ケア 児に対して教育を行う体制の拡充が図られるよう、医療的ケア児が在籍する学校に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
2項 学校の設置者は、その設置する学校に在籍する 医療的ケア 児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとする。
3項 国及び地方公共団体は、看護師等のほかに学校において 医療的ケア を行う人材の確保を図るため、介護福祉士その他の喀痰吸引等を行うことができる者を学校に配置するための環境の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
11条 (日常生活における支援)
1項 国及び地方公共団体は、 医療的ケア 児及びその家族が、個々の医療的ケア児の年齢、必要とする医療的ケアの種類及び生活の実態に応じて、医療的ケアの実施その他の日常生活において必要な支援を受けられるようにするため必要な措置を講ずるものとする。
12条 (相談体制の整備)
1項 国及び地方公共団体は、 医療的ケア 児及びその家族その他の関係者からの各種の相談に対し、個々の医療的ケア児の特性に配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするため、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に必要な相談体制の整備を行うものとする。
13条 (情報の共有の促進)
1項 国及び地方公共団体は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体が行う 医療的ケア 児に対する支援に資する情報の共有を促進するため必要な措置を講ずるものとする。
3章 医療的ケア児支援センター等
14条 (医療的ケア児支援センター等)
1項 都道府県知事は、次に掲げる業務を、 社会福祉法 人その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「 医療的ケア児支援センター 」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる。
1号 医療的ケア 児(18歳に達し、又は高等学校等を卒業したことにより医療的ケア児でなくなった後も医療的ケアを受ける者のうち引き続き雇用又は障害福祉サービスの利用に係る相談支援を必要とする者を含む。以下この条及び附則第2条第2項において同じ。)及びその家族その他の関係者に対し、専門的に、その相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言その他の支援を行うこと。
2号 医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し 医療的ケア についての情報の提供及び研修を行うこと。
3号 医療的ケア 児及びその家族に対する支援に関して、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行うこと。
4号 前3号に掲げる業務に附帯する業務
2項 前項の規定による指定は、当該指定を受けようとする者の申請により行う。
3項 都道府県知事は、第1項に規定する業務を 医療的ケア 児支援センターに行わせ、又は自ら行うに当たっては、地域の実情を踏まえつつ、医療的ケア児及びその家族その他の関係者がその身近な場所において必要な支援を受けられるよう適切な配慮をするものとする。
15条 (秘密保持義務)
1項 医療的ケア 児支援センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、職務上知ることのできた個人の秘密を漏らしてはならない。
16条 (報告の徴収等)
1項 都道府県知事は、 医療的ケア 児支援センターの
第14条第1項
《都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福…》
祉法人その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者以下「医療的ケア児支援センター」という。に行わせ、又は自ら行うことができる。 1 医療的ケア児18歳に達し、又は高等
に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、その業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該医療的ケア児支援センターの事業所若しくは事務所に立ち入らせ、その業務の状況に関し必要な調査若しくは質問をさせることができる。
2項 前項の規定により立入調査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3項 第1項の規定による立入調査及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
17条 (改善命令)
1項 都道府県知事は、 医療的ケア 児支援センターの
第14条第1項
《都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福…》
祉法人その他の法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者以下「医療的ケア児支援センター」という。に行わせ、又は自ら行うことができる。 1 医療的ケア児18歳に達し、又は高等
に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、その改善のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
18条 (指定の取消し)
1項 都道府県知事は、 医療的ケア 児支援センターが
第16条第1項
《都道府県知事は、医療的ケア児支援センター…》
の第14条第1項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該医療的ケア児支援センターに対し、その業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該医療的ケア児支援センター
の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合において、その業務の状況の把握に著しい支障が生じたとき又は医療的ケア児支援センターが前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
4章 補則
19条 (広報啓発)
1項 国及び地方公共団体は、 医療的ケア 児及びその家族に対する支援の重要性等について国民の理解を深めるため、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。
20条 (人材の確保)
1項 国及び地方公共団体は、 医療的ケア 児及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるよう、医療的ケア児に対し医療的ケアその他の支援を行うことができる人材を確保するため必要な措置を講ずるものとする。
21条 (研究開発等の推進)
1項 国及び地方公共団体は、 医療的ケア を行うために用いられる医療機器の研究開発その他医療的ケア児の支援のために必要な調査研究が推進されるよう必要な措置を講ずるものとする。