1条 (目的)
1項 この法律は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止及び除去並びにその汚染に係る農用地の利用の合理化を図るために必要な措置を講ずることにより、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されることを防止し、もつて国民の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 農用地 」とは、耕作の目的又は主として家畜の放牧の目的若しくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう。
2項 この法律において「 農作物等 」とは、農作物及び農作物以外の飼料用植物をいう。
3項 この法律において「 特定有害物質 」とは、カドミウム等その物質が 農用地 の土壌に含まれることに起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は 農作物等 の生育が阻害されるおそれがある物質(放射性物質を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
3条 (農用地土壌汚染対策地域の指定)
1項 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の一定の地域で、その地域内にある 農用地 の土壌及び当該農用地に生育する 農作物等 に含まれる 特定有害物質 の種類及び量等からみて、当該農用地の利用に起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、若しくは当該農用地における農作物等の生育が阻害されると認められるもの又はそれらのおそれが著しいと認められるものとして政令で定める要件に該当するものを農用地土壌汚染 対策地域 (以下「 対策地域 」という。)として指定することができる。
2項 環境大臣は、前項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央環境審議会の意見を聴かなければならない。
3項 都道府県知事は、 対策地域 を指定しようとするときは、 環境基本法 (1993年法律第91号)
第43条
《都道府県の環境の保全に関する審議会その他…》
の合議制の機関 都道府県は、その都道府県の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置く。
の規定により置かれる審議会その他の合議制の機関及び関係市町村長の意見を聴かなければならない。
4項 都道府県知事は、 対策地域 を指定したときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、環境大臣に報告し、かつ、関係市町村長に通知しなければならない。
5項 市町村長は、当該市町村の区域内の一定の地域で第1項の政令で定める要件に該当するものを 対策地域 として指定すべきことを都道府県知事に対し要請することができる。
4条 (対策地域の区域の変更等)
1項 都道府県知事は、 対策地域 の指定の要件となつた事実の変更により必要が生じたときは、その指定に係る対策地域の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。
2項 前条第3項及び第4項の規定は、前項の規定による 対策地域 の区域の変更又は対策地域の指定の解除について準用する。
5条 (農用地土壌汚染対策計画)
1項 都道府県知事は、 対策地域 を指定したときは、当該対策地域について、その区域内にある 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染を防止し、若しくは除去し、又はその汚染に係る農用地(以下「 汚染農用地 」という。)の利用の合理化を図るため、遅滞なく、農用地土壌汚染 対策計画 (以下「 対策計画 」という。)を定めなければならない。
2項 対策計画 においては、農林水産省令、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めるものとする。
1号 対策地域 の区域内にある 農用地 についてその土壌の 特定有害物質 による汚染の程度等を勘案して定める利用上の区分及びその区分ごとの当該農用地の利用に関する基本方針
2号 対策地域 の区域内にある 農用地 に係る次に掲げる事業で必要なものに関する事項
イ 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染を防止するためのかんがい排水施設その他の施設の新設、管理又は変更
ロ 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染を除去するための客土その他の事業
ハ 汚染農用地 の利用の合理化を図るための地目変換その他の事業
3号 対策地域 の区域内にある 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の状況の調査測定に関する事項
3項 前項第2号に掲げる事項に係る 対策計画 は、当該事業に係る 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の程度、当該事業に要する費用、当該事業の効果及び緊要度等を勘案し、第1項に規定する目的を達成するため必要かつ適切と認められるものでなければならない。
4項 都道府県知事は、 対策計画 を定めようとするときは、農林水産大臣及び環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。
5項 都道府県知事は、前項の協議をしようとするときは、 環境基本法
第43条
《都道府県の環境の保全に関する審議会その他…》
の合議制の機関 都道府県は、その都道府県の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置く。
の規定により置かれる審議会その他の合議制の機関及び関係市町村長の意見を聴かなければならない。
6項 都道府県知事は、 対策計画 を定めたときは、遅滞なく、その概要を公告するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。
6条 (対策計画の変更)
1項 都道府県知事は、 対策地域 の区域の変更により、又は対策地域の区域内にある 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、 対策計画 を変更することができる。
2項 前条第3項から第6項までの規定は、前項の規定による 対策計画 の変更(農林水産省令、環境省令で定める軽微な変更を除く。)について準用する。
7条 (排水基準設定等のための都道府県知事の措置)
1項 都道府県知事は、 対策地域 を指定し、又はその区域を変更した場合において、当該対策地域の区域内にある 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の程度、当該対策地域に係る 対策計画 の内容等を総合的に勘案して、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は 農作物等 の生育が阻害されることを防止するため必要があると認めるときは、 水質汚濁防止法 (1970年法律第138号)
第3条第3項
《3 都道府県は、当該都道府県の区域に属す…》
る公共用水域のうちに、その自然的、社会的条件から判断して、第1項の排水基準によつては人の健康を保護し、又は生活環境を保全することが10分でないと認められる区域があるときは、その区域に排出される排出水の
若しくは 大気汚染防止法 (1968年法律第97号)
第4条第1項
《都道府県は、当該都道府県の区域のうちに、…》
その自然的、社会的条件から判断して、ばいじん又は有害物質に係る前条第1項又は第3項の排出基準によつては、人の健康を保護し、又は生活環境を保全することが10分でないと認められる区域があるときは、その区域
の規定により、当該農用地に水が流入する公共用水域に排出される排出水に係る排水基準若しくは当該対策地域の全部若しくは一部を含む区域におけるばい煙発生施設において発生するばい煙に係る排出基準を定め、又はこれらの規定により定められた当該排水基準若しくは排出基準を変更するために必要な措置をとるものとする。
8条 (特別地区の指定等)
1項 都道府県知事は、 対策地域 の区域内にある 農用地 のうちに、その土壌及び当該農用地に生育する 農作物等 に含まれる 特定有害物質 の種類及び量等からみて、当該農用地の利用に起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産されると認められる農用地があるときは、当該農用地において作付けをすることが適当でない農作物又は当該農用地に生育する農作物以外の植物で家畜の飼料の用に供することが適当でないもの(以下「 指定農作物等 」と総称する。)の範囲を定めて、当該農用地の区域を特別地区として指定することができる。
2項 都道府県知事は、前項の規定により特別地区を指定したときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、環境大臣に報告し、かつ、関係市町村長に通知しなければならない。
3項 市町村長は、当該市町村の区域内にある 農用地 で第1項に規定する農用地に該当するものを特別地区として指定すべきことを都道府県知事に対し要請することができる。
9条 (特別地区の区域の変更等)
1項 都道府県知事は、特別地区の指定の要件となつた事実の変更により必要が生じたときは、その指定に係る特別地区の区域若しくはその区域に係る 指定農作物等 の範囲を変更し、又は当該特別地区の指定を解除することができる。
2項 前条第2項の規定は、前項の規定による特別地区の区域若しくは 指定農作物等 の範囲の変更又は特別地区の指定の解除について準用する。
10条 (農作物等の作付け等に関する勧告)
1項 都道府県知事は、特別地区の区域内にある 農用地 において当該農用地に係る 指定農作物等 の作付けをし、若しくはしようとし、又は当該農用地に生育している当該指定農作物等を家畜の飼料の用に供し、若しくは供しようとしている者がある場合には、その者に対し、当該農用地において当該指定農作物等の作付けをしないよう、又は当該農用地に生育している当該指定農作物等を家畜の飼料の用に供しないように勧告することができる。
11条 (農用地の土壌の汚染の防止に関する措置の要請)
1項 環境大臣は、 農用地 の土壌が工場又は事業場から排出される排出水、ばい煙等に含まれる 特定有害物質 により汚染されることを防止するため特に必要があると認めるときは、 鉱山保安法 (1949年法律第70号)その他の法令の規定に基づきその防止のために必要な措置をとるべきことを、関係行政機関の長に対し要請し、又は関係地方公共団体の長に勧告するものとする。
11条の2 (常時監視)
1項 都道府県知事は、 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の状況を常時監視しなければならない。
2項 都道府県知事は、前項の常時監視の結果を環境大臣に報告しなければならない。
12条 (農用地の土壌の汚染に関する調査測定等)
1項 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の状況に関し、調査測定を実施し、その結果を公表するものとする。
13条 (立入調査等)
1項 農林水産大臣若しくは環境大臣又は都道府県知事は、 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の状況を調査測定するため必要があるときは、その必要の限度において、その職員に、農用地に立ち入り、土壌若しくは 農作物等 につき調査測定させ、又は調査測定のため必要な最少量に限り土壌若しくは農作物等を無償で集取させることができる。
2項 前項の規定により立ち入ろうとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
14条 (関係行政機関等の協力)
1項 農林水産大臣又は環境大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料又は情報の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる。
2項 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の提供その他の協力を求め、又は 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の防止に関し意見を述べることができる。
14条の2 (国の指示)
1項 環境大臣は、 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染により人の健康を損なうおそれがある農畜産物が生産されることを防止するため緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、次に掲げる事務に関し必要な指示をすることができる。
1号 第3条第1項
《都道府県知事は、当該都道府県の区域内の一…》
定の地域で、その地域内にある農用地の土壌及び当該農用地に生育する農作物等に含まれる特定有害物質の種類及び量等からみて、当該農用地の利用に起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、若しく
及び
第8条第1項
《都道府県知事は、対策地域の区域内にある農…》
用地のうちに、その土壌及び当該農用地に生育する農作物等に含まれる特定有害物質の種類及び量等からみて、当該農用地の利用に起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産されると認められる農用地がある
の規定による指定に関する事務
2号 第4条第1項
《都道府県知事は、対策地域の指定の要件とな…》
つた事実の変更により必要が生じたときは、その指定に係る対策地域の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。
及び
第9条第1項
《都道府県知事は、特別地区の指定の要件とな…》
つた事実の変更により必要が生じたときは、その指定に係る特別地区の区域若しくはその区域に係る指定農作物等の範囲を変更し、又は当該特別地区の指定を解除することができる。
の規定による変更又は解除に関する事務
3号 第7条
《排水基準設定等のための都道府県知事の措置…》
都道府県知事は、対策地域を指定し、又はその区域を変更した場合において、当該対策地域の区域内にある農用地の土壌の特定有害物質による汚染の程度、当該対策地域に係る対策計画の内容等を総合的に勘案して、人
の規定による措置に関する事務
2項 農林水産大臣又は環境大臣は、 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染により人の健康を損なうおそれがある農畜産物が生産されることを防止するため緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、次に掲げる事務に関し必要な指示をすることができる。
1号 第10条
《農作物等の作付け等に関する勧告 都道府…》
県知事は、特別地区の区域内にある農用地において当該農用地に係る指定農作物等の作付けをし、若しくはしようとし、又は当該農用地に生育している当該指定農作物等を家畜の飼料の用に供し、若しくは供しようとしてい
の規定による勧告に関する事務
2号 前条第2項の規定による協力を求め、又は意見を述べることに関する事務
15条 (国及び都道府県の援助)
1項 国及び都道府県は、 対策計画 の達成のために必要な助成、指導その他の援助を行なうように努めるものとする。
16条 (研究の推進等)
1項 国及び都道府県は、 農用地 の土壌の 特定有害物質 による汚染の防止及び除去に関する技術並びにその汚染が 農作物等 に及ぼす影響について研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。
16条の2 (権限の委任)
1項 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、地方農政局長に委任することができる。
2項 この法律に規定する環境大臣の権限は、環境省令で定めるところにより、地方環境事務所長に委任することができる。
16条の3 (事務の区分)
1項 第11条の2
《常時監視 都道府県知事は、農用地の土壌…》
の特定有害物質による汚染の状況を常時監視しなければならない。 2 都道府県知事は、前項の常時監視の結果を環境大臣に報告しなければならない。
の規定により都道府県が処理することとされている事務は、 地方自治法 (1947年法律第67号)
第2条第9項第1号
《この法律において「法定受託事務」とは、次…》
に掲げる事務をいう。 1 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要
に規定する第1号法定受託事務とする。
17条 (罰則)
1項 第13条第1項
《農林水産大臣若しくは環境大臣又は都道府県…》
知事は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の状況を調査測定するため必要があるときは、その必要の限度において、その職員に、農用地に立ち入り、土壌若しくは農作物等につき調査測定させ、又は調査測定のため必
の規定による調査測定又は集取を拒み、妨げ、又は忌避した者は、40,000円以下の罰金に処する。
2項 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。