1条 (目的)
1項 この法律は、今次の大戦に起因して生じた混乱等により本邦に引き揚げることができず引き続き本邦以外の地域に居住することを余儀なくされた中国残留邦人等及びそのような境遇にあった中国残留邦人等と長年にわたり労苦を共にしてきた特定配偶者の置かれている事情に鑑み、中国残留邦人等の円滑な帰国を促進するとともに、永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援を行うことを目的とする。
2条 (定義)
1項 この法律において「 中国残留邦人等 」とは、次に掲げる者をいう。
1号 中国の地域における1945年8月9日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年9月2日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの及びこれらの者を両親として同月3日以後中国の地域で出生し、引き続き中国の地域に居住している者並びにこれらの者に準ずる事情にあるものとして厚生労働省令で定める者
2号 中国の地域以外の地域において前号に規定する者と同様の事情にあるものとして厚生労働省令で定める者
2項 厚生労働大臣は、前項第1号又は第2号の厚生労働省令を定めようとするときは、あらかじめ、法務大臣及び外務大臣と協議しなければならない。
3項 この法律において「 特定配偶者 」とは、
第13条第2項
《2 前項に規定する永住帰国した中国残留邦…》
人等60歳以上の者に限る。であって1961年4月1日以後に初めて永住帰国したもの以下「特定中国残留邦人等」という。は、旧被保険者期間又は新被保険者期間同項の規定により旧被保険者期間又は新被保険者期間と
に規定する特定 中国残留邦人等 が永住帰国する前から継続して当該特定中国残留邦人等の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、同項に規定する特定中国残留邦人等以外の者に限る。)である者をいう。
4項 この法律において「 永住帰国 」とは、本邦に永住する目的で本邦に帰国することをいう。
5項 この法律において「 1時帰国 」とは、親族の訪問、墓参りその他の厚生労働省令で定める目的で本邦に短期間滞在するために本邦に帰国することをいう。
3条 (国等の責務)
1項 国は、本邦への帰国を希望する 中国残留邦人等 の円滑な帰国を促進するため、必要な施策を講ずるものとする。
4条
1項 国及び地方公共団体は、 永住帰国 した 中国残留邦人等 及び 特定配偶者 の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
2項 国は、必要があると認めるときは、地方公共団体が講ずる前項の施策について、援助を行うものとする。
5条
1項 国及び地方公共団体は、 中国残留邦人等 の円滑な帰国の促進並びに 永住帰国 した中国残留邦人等及び 特定配偶者 の自立の支援のための施策を有機的連携の下に総合的に、策定し、及び実施するものとする。
6条 (永住帰国旅費の支給等)
1項 国は、 中国残留邦人等 が 永住帰国 する場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該永住帰国のための旅行に要する費用(当該永住帰国する中国残留邦人等と本邦で生活を共にするために本邦に入国する当該中国残留邦人等の親族等であって厚生労働省令で定めるものがいる場合には、当該親族等の本邦への旅行に要する費用を含む。)を支給する。
2項 国は、 中国残留邦人等 が 永住帰国 する場合には、当該中国残留邦人等及びその親族等(前項に規定する当該親族等をいう。以下
第11条
《教育の機会の確保 国及び地方公共団体は…》
、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等が必要な教育を受けることができるようにするため、就学の円滑化、教育の充実等のために必要な施策を講ずるものとする。
までにおいて同じ。)が出入国管理及び難民認定法(1951年政令第319号)その他出入国に関する法令の規定に基づき円滑に帰国し又は入国することができるよう特別の配慮をするものとする。
7条 (自立支度金の支給)
1項 国は、 中国残留邦人等 が 永住帰国 した場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、中国残留邦人等及びその親族等の生活基盤の確立に資するために必要な資金を、1時金として支給する。
8条 (生活相談等)
1項 国及び地方公共団体は、 永住帰国 した 中国残留邦人等 及びその親族等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、これらの者の相談に応じ必要な助言を行うこと、日本語の習得を援助すること等必要な施策を講ずるものとする。
9条 (住宅の供給の促進)
1項 国及び地方公共団体は、 永住帰国 した 中国残留邦人等 及びその親族等の居住の安定を図るため、公営住宅( 公営住宅法 (1951年法律第193号)
第2条第2号
《用語の定義 第2条 この法律において、次…》
の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 1 地方公共団体 市町村及び都道府県をいう。 2 公営住宅 地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い、低額所得者に賃貸し、又は転
に規定する公営住宅をいう。次項において同じ。)等の供給の促進のために必要な施策を講ずるものとする。
2項 地方公共団体は、公営住宅の供給を行う場合には、 永住帰国 した 中国残留邦人等 及びその親族等の居住の安定が図られるよう特別の配慮をするものとする。
10条 (雇用の機会の確保)
1項 国及び地方公共団体は、 永住帰国 した 中国残留邦人等 及びその親族等の雇用の機会の確保を図るため、職業訓練の実施、就職のあっせん等必要な施策を講ずるものとする。
11条 (教育の機会の確保)
1項 国及び地方公共団体は、 永住帰国 した 中国残留邦人等 及びその親族等が必要な教育を受けることができるようにするため、就学の円滑化、教育の充実等のために必要な施策を講ずるものとする。
12条 (就籍等の手続に係る便宜の供与)
1項 国は、 永住帰国 した 中国残留邦人等 が 戸籍法 (1947年法律第224号)
第110条第1項
《本籍を有しない者は、家庭裁判所の許可を得…》
て、許可の日から10日以内に就籍の届出をしなければならない。
に規定する就籍その他戸籍に関する手続を行う場合においてその手続を円滑に行うことができるようにするため、必要な便宜を供与するものとする。
13条 (国民年金の特例等)
1項 永住帰国 した 中国残留邦人等 (1911年4月2日以後に生まれた者であって、永住帰国した日から引き続き1年以上本邦に住所を有するものに限る。以下この項及び第5項において同じ。)であって、1946年12月31日以前に生まれたもの(同日後に生まれた者であって同日以前に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるものとして厚生労働省令で定める者を含む。)に係る1961年4月1日から初めて永住帰国した日の前日までの期間であって政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、 国民年金法 等の一部を改正する法律( 1985年法律第34号 。第3項において「 1985年法律第34号 」という。)第1条の規定による改正前の 国民年金法 (1959年法律第141号)(以下「旧 国民年金法 」という。)による被保険者期間(以下「 旧被保険者期間 」という。)又は 国民年金法
第7条第1項第1号
《次の各号のいずれかに該当する者は、国民年…》
金の被保険者とする。 1 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であつて次号及び第3号のいずれにも該当しないもの厚生年金保険法1954年法律第115号に基づく老齢を支給事由とする年金たる保険給
に規定する第1号被保険者としての国民年金の被保険者期間(以下「 新被保険者期間 」という。)とみなす。
2項 前項に規定する 永住帰国 した 中国残留邦人等 (60歳以上の者に限る。)であって1961年4月1日以後に初めて永住帰国したもの(以下「 特定中国残留邦人等 」という。)は、 旧被保険者期間 又は 新被保険者期間 (同項の規定により旧被保険者期間又は新被保険者期間とみなされた期間を含み、旧 国民年金法
第5条第3項
《3 この法律において、「保険料全額免除期…》
間」とは、第7条第1項第1号に規定する被保険者としての被保険者期間であつて第89条第1項、第90条第1項又は第90条の3第1項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るもののうち、第9
に規定する保険料納付済期間、 国民年金法
第5条第1項
《この法律において、「保険料納付済期間」と…》
は、第7条第1項第1号に規定する被保険者としての被保険者期間のうち納付された保険料第96条の規定により徴収された保険料を含み、第90条の2第1項から第3項までの規定によりその一部の額につき納付すること
に規定する保険料納付済期間その他の政令で定める期間を除く。第4項において同じ。)に係る保険料を納付することができる。
3項 国は、 特定中国残留邦人等 に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定中国残留邦人等の 旧被保険者期間 (第1項の規定により旧被保険者期間とみなされた期間を含む。)及び 1985年法律第34号 附則第8条第2項に規定する厚生年金保険の被保険者期間(政令で定める期間に限る。)並びに 国民年金法 による被保険者期間(第1項の規定により 新被保険者期間 とみなされた期間を含み、政令で定める期間を除く。)に応じ、政令で定める額の1時金を支給する。
4項 国は、前項の1時金の支給に当たっては、 特定中国残留邦人等 が満額の老齢基礎年金等の支給を受けるために納付する 旧被保険者期間 又は 新被保険者期間 に係る保険料に相当する額として政令で定める額を当該1時金から控除し、当該特定中国残留邦人等に代わって当該保険料を納付するものとする。
5項 永住帰国 した 中国残留邦人等 に係る 国民年金法 に規定する事項及び前各項の規定の適用に関し必要な事項については、同法その他の法令の規定にかかわらず、政令で特別の定めをすることができる。
14条 (支援給付の実施)
1項 この法律による 支援給付 (以下「 支援給付 」という。)は、 特定中国残留邦人等 であって、その者の属する世帯の収入の額(その者に支給される老齢基礎年金その他に係る厚生労働省令で定める額を除く。)がその者(当該世帯にその者の 特定配偶者 、その者以外の特定中国残留邦人等その他厚生労働省令で定める者があるときは、これらの者を含む。)について 生活保護法 (1950年法律第144号)
第8条第1項
《保護は、厚生労働大臣の定める基準により測…》
定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
の基準により算出した額に比して不足するものに対して、その不足する範囲内において行うものとする。
2項 支援給付 の種類は、次のとおりとする。
1号 生活 支援給付
2号 住宅 支援給付
3号 医療 支援給付
4号 介護 支援給付
5号 その他政令で定める給付
3項 支援給付 を受けている 特定中国残留邦人等 であって、その者の属する世帯にその者の 特定配偶者 があるものが死亡した場合において、当該特定中国残留邦人等の死亡後も当該特定配偶者の属する世帯の収入の額(厚生労働省令で定める額を除く。)が当該特定配偶者(当該世帯に厚生労働省令で定める者があるときは、その者を含む。)について 生活保護法
第8条第1項
《保護は、厚生労働大臣の定める基準により測…》
定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
の基準により算出した額に比して継続して不足するときは、当該世帯に他の特定中国残留邦人等がある場合を除き、当該特定配偶者に対して、厚生労働省令で定めるところにより、支援給付を行うものとする。ただし、当該特定配偶者が当該死亡後に婚姻したとき(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者となったときを含む。)は、この限りでない。
4項 この法律に特別の定めがある場合のほか、 支援給付 については、 生活保護法 の規定の例による。
5項 支援給付 の実施に当たっては、 特定中国残留邦人等 及び 特定配偶者 の置かれている事情に鑑み、特定中国残留邦人等及び特定配偶者が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするために必要な配慮をして、懇切丁寧に行うものとする。
6項 支援給付 については、政令で定めるところにより、支援給付を 生活保護法 による保護とみなして、 国民健康保険法 (1958年法律第192号)その他政令で定める法令の規定を適用する。
7項 前項に定めるもののほか、 支援給付 に関する事項に係る他の法令の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
8項 前各項に定めるもののほか、 支援給付 の実施に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
15条 (配偶者支援金の支給)
1項 この法律による配偶者支援金の支給は、前条第3項の規定により 支援給付 を受ける権利を有する 特定配偶者 に対して行うものとする。
2項 配偶者支援金は、月を単位として支給するものとし、その月額は、 国民年金法
第27条
《年金額 老齢基礎年金の額は、780,9…》
00円に改定率次条第1項の規定により設定し、同条第1項を除く。からの五までの規定により改定した率をいう。以下同じ。を乗じて得た額その額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100
本文に規定する老齢基礎年金の額(同法第27条の三又は第27条の5の規定により改定した同法第27条に規定する改定率を乗じて得たものに限る。)を十二で除して得た額に3分の2を乗じた額とする。
3項 前条第4項、第5項及び第7項の規定は、配偶者支援金の支給について準用する。
4項 国は、政令で定めるところにより、市町村及び都道府県が支弁した配偶者支援金の支給に要する費用を負担しなければならない。
5項 前各項に定めるもののほか、配偶者支援金の支給に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
16条 (譲渡等の禁止等)
1項 第13条第3項
《3 国は、特定中国残留邦人等に対し、厚生…》
労働省令で定めるところにより、当該特定中国残留邦人等の旧被保険者期間第1項の規定により旧被保険者期間とみなされた期間を含む。及び1985年法律第34号附則第8条第2項に規定する厚生年金保険の被保険者期
の1時金、 支援給付 及び配偶者支援金を受ける権利は、譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
2項 租税その他の公課は、
第13条第3項
《3 国は、特定中国残留邦人等に対し、厚生…》
労働省令で定めるところにより、当該特定中国残留邦人等の旧被保険者期間第1項の規定により旧被保険者期間とみなされた期間を含む。及び1985年法律第34号附則第8条第2項に規定する厚生年金保険の被保険者期
の1時金、 支援給付 及び配偶者支援金として支給を受けた金品を標準として、課することができない。
17条 (情報の提供)
1項 日本年金機構は、厚生労働大臣に対し、厚生労働省令で定めるところにより、
第13条第3項
《3 国は、特定中国残留邦人等に対し、厚生…》
労働省令で定めるところにより、当該特定中国残留邦人等の旧被保険者期間第1項の規定により旧被保険者期間とみなされた期間を含む。及び1985年法律第34号附則第8条第2項に規定する厚生年金保険の被保険者期
の1時金の支給及び同条第4項の保険料の納付に関して必要な情報の提供を行うものとする。
18条 (1時帰国旅費の支給等)
1項 国は、 中国残留邦人等 が 1時帰国 する場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該1時帰国のための旅行に要する費用(当該1時帰国する中国残留邦人等に同行する当該中国残留邦人等の親族等であって厚生労働省令で定めるものがいる場合又は当該1時帰国のために介護人が必要な場合として厚生労働省令で定める場合には、当該親族等又は当該介護人の本邦への旅行に要する費用を含む。)を支給する。
2項 国は、 中国残留邦人等 が 1時帰国 する場合には、当該中国残留邦人等並びに前項に規定する当該親族等及び当該介護人が出入国管理及び難民認定法その他出入国に関する法令の規定に基づき円滑に帰国し又は入国することができるよう特別の配慮をするものとする。
19条 (事務の区分)
1項 第14条第4項
《4 この法律に特別の定めがある場合のほか…》
、支援給付については、生活保護法の規定の例による。
(
第15条第3項
《3 前条第4項、第5項及び第7項の規定は…》
、配偶者支援金の支給について準用する。
において準用する場合を含む。)においてその例によるものとされた 生活保護法 別表第3の下欄に掲げる規定によりそれぞれ同表の上欄に掲げる地方公共団体が処理することとされている事務は、 地方自治法 (1947年法律第67号)
第2条第9項第1号
《この法律において「法定受託事務」とは、次…》
に掲げる事務をいう。 1 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要
に規定する第1号法定受託事務とする。